2003年11月の思いつき


ロケットの失敗

日本のロケット開発の失敗が報道される度に不思議に思います。
技術に強い友人は開発技術が劣っているわけではないと言い、財政に強い友人は開発資金が足りないわけではないと言います。
では何故上がらないのか?友人らとの結論は「成功させようという意志がプロジェクトとして足りない」のではないか、というものでした。
資金を出す人、設計図を書く人、部品を作る人、組み立てる人、高度な専門知識の元で作業が会社単位で分業化されているため、最終的な成功に対する責任の所在が、どうしてもあいまいになる仕組みになっているような気がするのです。
ロケット打ち上げの失敗は、優秀な人材を多く抱えながら何時までも離陸できない日本経済や、ひいては、一人一人は優秀なのに組織になると思考が停止する大企業や金融機関を象徴しているように思えてなりません。

(2003.11.30)



解なし

来年度のアセットアロケーションをそろそろ決定しなければいけない季節となりました。今回は代行返上や給付改変などで、目標利回りを2-3%台まで下げるスポンサーも多いようです。
ところが、目標利回りを2.5%と置いたとしても、ご提案するアロケーション案が従来の5.5%の時とあまり変化がないことに皆さん驚かれます。
今回設定した2.5%の収益率というものが、あくまでも今のゼロ金利を基準にしているものであり、金利が上昇すれば、目標も切り上がる、という短期的な性質のものであるのなら、ポートフォリオで取らなければいけないリスク量はこれまでとほとんど変わらないからです。
いわゆるビルディングブロックが成り立つタイムスパンは最低10年だと考えます。
投資期間を10年以上とし且つ予定利回りを2.5%と固定して始めて、安全資産の比重をある程度高めたアロケーション案がでてきます。
投資期間の設定しだいでは、伝統的投資手法だけでのアロケーションでは、たった2.5%の目標であっても「解なし」になる可能性が高いのです。

(2003.11.27)



走り続ける日本

今日本で最も元気のよい業種は、DVD録画器や液晶・プラズマテレビといったところでしょうか。
株式の運用報告でも、これらに関連するメーカーや部品企業のオーバーウェイトが目立つようです。
ただファンドマネージャーの方々の感覚でも、業績に対するピーク感はそろそろでてきているような感触を受けます。
1997年にDVDプレーヤーが市場で認知されるようになった時の値段は平均7万円ぐらいです。2000年には4万円代、今は1万円を切る価格で販売されています。DVD録画器も1年半まえに20万円弱だったものが、いまは10万円を切るのではないでしょうか。新規開発から2年ほどの、アジアのメーカーに真似されることなく価格とシェアを維持できている期間だけが、日本の独壇場であることは、時代の流れとして受け入れざるをえません。液晶やDVD録画器の廉価版が市場を圧巻するのは時間の問題でしょう。
ということで、日本のメーカーとしてはそろそろ次のネタを探しにいってもらわなければなりません。
走り続けること、開発し続けること、でしか日本の生きる道はないのです。

(2003.11.26)



企業と記者

経済紙の記者の質が落ちたとの評判を、あちらこちらで耳にします。知識がない、取材をしない、正確でない。とないない尽くしでは、話にならないです。
元来、新聞記事にその時々の時勢に従った偏向があることは認識していますし、その偏り具合も含めて一つの記事だと思えば、それなりの使い道もありました。しかし偏るか偏らないか以前に、記事を書く準備ができていないとすれば、それは論外です。
このような現象を生んだ一つの理由に、企業と新聞社との関係が希薄化してきていることがあげられそうです。昨今の株式市場を意識した経営では、新聞記者よりも証券会社や運用機関のアナリストとの情報交換をより重視する方向に企業スタンスが変わっていています。またインターネットを使ったオンラインの情報公開が進むにつれ、新聞記事を介さないディスクローズが中心となり、企業が新聞記者を重視しなくなったともいえます。新聞と言う媒体の経済活動に置ける役割が大きな転換期を迎えているのと同時に、企業が経済担当記者を育てるという従来の構造も終焉してしまったのかもしれません。
資本市場の変化は、マスコミのあり方にもまた影響を与えるものなのだと実感しています。

(2003.11.25)



資産運用ビジネスの戦国時代

資産運用業界での規制の強化は資産運用業界にとっては、戦国時代の始まりなのかも知れません。
それぞれの分野での規制監督が厳しくなることで、一時的には資産の流出が起きるかもしれませんが、長期的には新規資金の呼び水になることが期待されるからです。
ヘッジファンドへの監督強化は、年金資金など受託者責任に厳しい投資家にとっては必要不可欠な環境整備であるし、日本における商品取引市場の整備はこれまで異様に高かった金融市場と商品市場の垣根を少しは下げることが期待できます。
投資顧問と投資信託、伝統的資産運用とヘッジファンド、金融取引と商品取引、といった壁が取り除かれることによって、囲いこまれていた資金が流動化していくと思われます。
運用機関にとって守りから攻めへの方針転換が必要であることは言うまでもなく、年金スポンサーもまた、こうした資金の流れのなかでの意識変革を求められるかも知れません。新しい波をチャンスとして前向きに捉えていきたいものです。

(2003.11.24)



団塊世代

団塊の世代の年金給付を引き下げることを財政制度等審議会が提案したそうです。理屈の上では最もです。好きで沢山生まれてきたわけではない!と当社の団塊世代は常々叫んでいるようですが、それを支える世代も好きで少なく生まれてきたわけではないので、どこかで痛み分けをせざるを得ないのは事実でしょう。
ただ、経済効果からみると、圧倒的に人口の多い世代が裕福であると、経済が活性化する点を忘れてはいけないようにも思います。1980年代後半の住宅バブルは、金融行政の影響だけではなく、この団塊世代が30歳代後半から40代になり持ち家購入の時期を迎えたからであるという説には説得力があります。今日本の消費が伸び悩んでいるのは、実は最も消費を支えるはずの団塊世代がリストラのターゲットにされているからであるともいえるのです。
さて、後10年後この世代が年金受給者になった時思いっきり消費してくれることを期待して、年金額維持と言う選択肢は、検討に値しませんか?

(2003.11.20)



様子見…

アメリカの金融市場が明らかにおかしいです。
今日の為替業者47人逮捕が何を意味するのか、今の段階では全くわかりませんが、ユーロがドルに対して急騰しているところをみると、資金が米国から逃避し始めているのだと思われます。
市場環境に大きな不透明要素が生まれた時、海外で投資していた資金を自国の安全な資産に回避させることを、「リパトリエーション」といいます。米国の資本収支が恒常的に赤字であると言うことは、米国の証券市場を支えているのが海外からの投資資金であることを意味しています。従って世界的な「リパトリ」は米国市場とドルの下落を呼ぶ危険があるのです。
今の米国金融業界の混乱が、今後の業界の発展と健全化のための通過点であると仮定したとしても、動きがあまりにも唐突で不気味である感は否めません。
こういう時はできるだけ無理をせず、リスクをとらず、静観すべきでしょう。「休むも相場」と昔の人は言っています…

(2003.11.19)



変動利付債

このところ、「変動利付国債投資について」といったプレゼンテーションを基金のかたもよく耳にするようになっているのではないでしょうか?
最初は、金利が上昇するとそれにあわせて受け取り利息が増え、通常の債券とは反対の値動きをする、今の環境にまさに適合した商品だ、と感じられる方も、説明を聞く内に、「ベアスティープ」だの「ベアフラット」だのという聞きなれない言葉がでてきて、結局何のことがわからなくなってしまう、というのが殆どだと思います。
ようするに、この債券が主にどのような経済環境で有利かというと、①経済の回復スピードが早すぎて当局の金融政策の変更が間に合わない時。②経済以外の外的要因で物価が急上昇するとき③日本の信用力が低下して国債価値が下落するとき。この内、③以外は比較的短期に状況が変化してしまうため、この債券が貢献してくれる期間は限定的でしょう。後は③の場合ですが、変動利付債も所詮国債ですから、信用力低下の影響とは無縁ではありません。
結局、この債券自体はあまり儲かりそうな代物ではないということになります。そうは言っても通常の利付債と組み合わせることで、ポートフォリオ収益の安定化に役立たせることはできるはずなので、運用機関も含めてよく検討をしてみてはいかがでしょうか。

(2003.11.18)



多数決の意思

金融市場というのは、究極的な多数決原則の場です。一人一人の意思が明確であろうとなかろうと、集団として示すのはたった一つの答えでしかありません。
昨日10000円だった株価が今日9500円という値段をつけたとすれば、この9500が今日買った人売った人見ていた人、全員の総意のプライスであるのです。
こうした市場の総意は、時に参加者の潜在意識を明確に指し示すことがあります。
選挙でNOということができなかった問題であっても、株式市場を通してであれば意思表示ができることもあるものです。
問題は市場からの警告を政治家が汲み取るかどうかにかかっています。もし市場の意思をあくまでも政治が無視するのであれば、市場はこのまま壊れていくことにもなりかねません。
今日の株式市場が何故下げたのか、小泉さんはわかってくれているのでしょうか?それでも年内派遣にこだわるのでしょうか?

(2003.11.17)



東京新銀行

冗談かと思っていた東京都の新銀行が現実化してきました。
資本金2000億円融資目標4兆円、内東京都が50%を出資する中小企業向け融資専門の普通銀行だそうです。
不良債権のないリスクの取れる新銀行が必要だ、というコンセプトは正しいとして、ではそういう銀行をなぜ一般企業が作らないかというと、預金が集まらないからに他なりません。銀行が貸し出しを行うための資金は原則預金と言う形で個人等から調達しなければならないわけですが、実績のないかつ中小企業融資専門銀行が兆円単位の資金を集めることは一般的には不可能です。それでももしこの東京新銀行に預金が集まるとするならば、それは「東京都の銀行なら安全そう」だからで、「なぜ東京都の銀行は安全なのか」、と言われれば「実は根拠のない幻想」と言うことになります。
将来的には貸し出し債権の流動化で資金調達を行い、幻想なしの健全な銀行になることを期待するにしても、走り出しは人々の幻想を利用して立ち上げていくしかないように思います。
新銀行の設立後、国内外の格付け機関がどのようなレーティングをいかなる根拠でするのか、大変興味のあるところです。

(2003.11.14)



政府を頼りすぎないで

運用見通しの話を聞いていて気になることが一つ。日本も米国も市場が少し政府を頼りすぎてはいませんか?
確かに過去米国の大統領選の前に政策金利が上がることは殆どなく、景気のピークが選挙の年に重なることが多かったのは事実です。
しかしながら昨今急成長しているヘッジファンドの多くは、政府が市場をコントロールする術としている「市場との対話」が通用する相手ではありません。むしろいかに当局の裏をかくか、に収益チャンスを求めるファンドも多いのです。
かたや日本では、株主棄損なしの公的資金導入が日本政府の継続的な基本姿勢であると市場、特に海外投資家からはみなされています。果たして日本政府にこの市場の思いは伝わっているのでしょうか?あれは例外、などといまさら言われたら日本の金融システムへの信頼が以前より増して失墜するという事を、どれだけ理解されているのか大変不安です。
自信過剰な米国政府と買被られている日本政府。どちらも頼りすぎると痛い思いをしかねない相手です。

(2003.11.13)



火種

終わっていそうで実は終わっていないこと。
BSE
SARS
イラク戦争
日本の不良債権処理
ユーロ域圏内の経済統合
米国証券市場のITバブルの後始末…
こうして並べて見る限り、この2年、世の中はあまり変わっていないような気もします。ただ時間の経過が一つ一つの問題に対する市場の免疫力を高めただけなのかもしれません。
あまり神経質になる必要はありませんが、火種が残っているという事実だけは、見過ごさないようにしたいものです。

(2003.11.12)



人事異動の多い会社、引継ぎのできない会社

国内外問わず、直接の運用担当者以外の人事異動の頻度は高いです。
基金への窓口とか、コンサルタントの担当者とか、データ管理者なとどいったミドルオフィスでの移動は、皆さん継続性をあまり気にせず人事を行っているのでしょうか?
基金や我々からすれば、移動がないにこしたことはないのですが、せめて引き継ぎぐらいきちんとできないものかと、感じることがしばしばです。
基金から出しているガイドラインの資産配分比率には、基金としての運用理念が込められているのです。ファイルに閉じたガイドラインの紙束を渡すことが引継ぎではないでしょう。
概して人事異動の多い会社ほど、引継ぎもできていないケースが多いところからみると、結局、外部のとのコミュニケーションをとるという業務を重視しているかいないかという、会社としての基本姿勢の問題なのかもしれません。内ばかりを向いて外の声を聞かない会社は運用会社でなくても成長しないのではないかと思います。

(2003.11.11)



ニッポン チャチャチャ

最近女子バレーの試合にはまっています。
すっかり世界から取り残された弱小チームだとばかり思っていたのですが、結構勝ち星をあげていて驚きです。スタープレーヤーもなく、大きい人から小さい人、高校生からベテランまで、日替わりで活躍しているのを見るのは、心地よいものです。
きっとお給料安いんだろうなぁ…などと余計なことを考えるのも、野球やサッカーなど高額スポーツばかりが話題になってきた反動でしょう。
日本の高度成長期に黄金時代を築き、バブルとともに低迷を始めた女子バレーの復活の兆しが、日本経済の復活につながってくれるとよいなぁと思いつつ、無名な選手達のチームプレーに拍手を送っています。

(2003.11.10)



投票率

何故、投票率がこんなに低い?
経済・外交・年金・教育、切羽詰って決めなければいけない課題がこれほど沢山あり、マスコミの注目度も高く、マニュフェストという新しい言葉も登場し、お天気が悪くて行楽日和でもない。それでも史上最低の投票率の地域が幾つもあるというこの事実は何?
ある当選者曰く、「今回はムードではない真面目な選挙だった。」そうで、その辺に低投票率の原因があるのかもしれません。
投票という行動をとらない事が、政治に対する当事者意識を更に薄くし、受動的な結果に対する非建設的な不平不満を増幅させることに繋がります。社会が組織として機能するためには、国民の参加意識を高めることがどうしても必要なのではないかと思うのです。米国の選挙運動のあのお祭り騒ぎがよいとは言いませんが、国民を選挙に向かわせるための工夫を真剣に考えなければいけなくなってきているような気がします。

(2003.11.09)



運用報酬

米国のある運用会社の経営者の退職金金額が報道されていましたが、桁が違います…
別にオルタナティブで成功報酬をとっているタイプの運用機関ではなくて、普通の伝統的資産の運用が主業務のはずなのですが、下手をすると日本の中堅投資顧問会社の年間手数料額は軽く超えるのではないでしょうか。
最近、運用機関は儲からないという話ばかりを聞いているのですが、儲からないのは実は日本だけだったのか、と妙に納得してしまいました。
何故日本では運用機関が儲からないのか?答えは簡単で運用報酬が安いからです。では何故運用報酬が安いのか?運用機関のありがたみが薄いからです。
スポンサーサイドから、是非御社に運用して欲しい、と言われれば、報酬を引き上げることは可能でも、運用会社から委託シェアを下さい、と言ってしまえば、報酬は下がる一方です。
結局は、よいパフォーマンスを上げ、評判を上げることが、運用機関の経営を楽にする唯一の方法ということなのでしょう。
もちろんコンサルタント会社も同様ですけど…

(2003.11.06)



運用報告会をチェックする

基金の方と実際運用をしているファンドマネージャーやアナリストとが直接話をする機会はあまり多くありません。
ファンドマネージャーは運用に専念すべきであり、スポンサーとのコミュニケーションはその専門の部署がカバーすべきであるというのは正論です。
ただ、基金との窓口が運用の過程やプロセスを伝えきれないがために、基金がその運用機関を正当に評価することができないケースが少なくないのも事実です。
四半期報告会などで、運用者の意図が全く伝わらない説明が行われることは、委託している基金にとってだけでなく、胃を痛くしながら毎日投資判断をしている運用者にとっても、大変不幸なことです。
ファンドマネージャーの皆さんは、自分たちの運用がスポンサーにどのように伝えられているのか、たまにはチェックしてみたほうが良いのではないでしょうか?

(2003.11.05)



公的年金と生活インフラ

公的年金がどうしても損得勘定の議論から抜け出せないですね…
選挙のテーマだそうですが、年金を個人間や世代間、または国家と納税者間の損得の議論にしてしまったら、絶対に解決しないということに、そろそろ気づいたほうが良いのではないかと思うのですが。
公的年金は国民からお金を集めて国が運用して増やしてくれるものではなくて、社会を維持していくための単なるコストなのだという事実に向きあうべきです。
現役時代の年収を基本に考えるのではなくて、人間一人月に幾らお金があったら暮らしていけるのかが基本だし、もしこれ以上国も企業も個人もコスト増に耐えられないのなら、今の負担の中で支払える年金額で暮らしていける生活インフラを作るのが政治の役割なのではないでしょうか?
「将来に不安のないだけお金をあげます」ではなくて、「将来これだけしか年金は払えないけど老後の生活は安泰です」という国作りの提案こそが、政治がテーマにすべき年金問題なのではないかと感じます。

(2003.11.04)


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