2004年09月の思いつき


慎重な運用

小さな記事ですが、あるドイツの銀行が投資したCDOの損失をめぐり、CDOを販売した大手証券会社を告訴した、との報道がされています。投資リスクの説明が不十分であったとの申し入れのようです。裁判はこれからのことですので真偽のほどは判りません。
また、CDOという言葉は聞いたこともない、という方が年金運用ではほとんどであると思いますので、直接皆さんには関係のない記事かもしれません。

ただ、この記事が示唆していることは、金融の専門家であるはずの銀行ですら、投資商品のリスクの把握が難しいものが、金融市場には沢山あるという事実です。
一般に金融機関の投資は、年金スポンサーの投資に比べ、より多くの時間をかけて調査をする傾向にあります。それでもこのような係争が大小取り混ぜて絶え間なく起きているのが現実です。

運用に保守的であれ、と言うつもりはありません。ただ運用は真摯に慎重であるべきだと思っています。

(2004.09.30)


原油価格と個人消費

原油価格が50ドルの大台を突破しました。この一年でおおよそ倍になったことになります。

ここまでは、物価や景気に対する軽挙は、価格差に比べると比較的軽微であったように感じますが、これから冬にかけて予断を許さない状況を迎えます。

米国の多くの地域では、冬になると暖房用の灯油を家庭で直接購入します。ニューヨークでもマイナス10度を超えることは珍しくありません。従って家庭用のガソリン価格の上昇は、そのまま家庭の可処分所得の減少に直結することになります。米国の景気の行方を左右するクリスマス商戦までに、ガソリン価格の上昇に歯止めがかからなければ、個人消費中心の米国経済には再び暗雲が漂うことになりかねません。
現在FRBの行っている利上げもそれを見越した行動(景気悪化局面で利下げ余地を持つ)といえるのではないでしょうか。

これまで市場で漠然とした不安、としてしか取り上げられなかった原油動向が、これからはより深刻な問題となっていくかもしれません。

(2004.09.29)


聞き上手なプレゼン

国内外の沢山の方とお会いしていて、プレゼンの上手な人より、聞き上手な人との出会いの方が印象に残ります。

そして、聞き手の興味や疑問がどこにあるのかを、適格に判断して下さる方のお話は、概して面白いものです。

どんな切り口で聞いても、判で押したように同じ主張を繰り返す方も、中にはいらっしゃいます。投資哲学は一つなのだからなんと聞かれようと答えは一つ、と心に決めていらっしゃるかのようです。
だったら、ミーティング時間は10分で十分、と思ってしまったりもします。

有意義な時間を共有できた運用会社のファンドには、より強い興味を持つのは、ごくあたりまえの心理です。

(2004.09.28)


かぎりなく軽い政治家の存在…

"本日は内閣改造だそうです"とか、"官房長官まで勤めた人が起訴されました"とかいう話題が、「ふーん、あっ、そう。」と、ともすれば聞き流してしまいそうなほど軽い話題にしか聞こえないのは何故だろう。

"郵政改革担当大臣を置くらしい"と聞いて、「大臣のお給料がもったいない」とか思ってしまうのは私だけ?

自民党の中枢部にいた人達の関わったお金がらみの事件の割には、驚きも失望もないのは私だけ?

政治家の言葉も存在も軽く、そして遠い。

(2004.09.27)


様々な基準

ヘッジファンドや未公開株投資など、これまで投資情報の公開に消極的だった運用手法に情報公開の圧力がかかっています。
グローバルな年金資金がこうしたファンドに投資し、ディスクローズの徹底を求めているからです。
こうした動きを、歓迎する声がある一方で、投資手法そのものに影響を与えかねない情報開示を疑問視する意見もあります。

他人資産である年金資金が、投資先情報の完全開示を求めるのは、当然のことです。年金資金を取り込みたいと考えるファンドは、年金基準にあわせてもらうしかありません。
一方で、年金資産だけが世の中の運用資産の全てではない以上、年金基準と一線を画したファンドの存在を否定するものでもないはずです。

投資をしてから、無理やりディスクローズを求めることは、ファンドの運用手法そのものに影響を与えかねない危険な作業です。
年金基準にそぐわないファンドや運用手法には初めから投資しなければよいだけの話で、世の中全ての運用資産を年金基準に合わせるべきであるというような風潮には、違和感を感じます。

(2004.09.24)


債券の種別ファンド

株式運用が基本的に良い銘柄(割安な銘柄)を買う、もしくは悪い銘柄(割高な銘柄)を売る、というシンプルな投資行動しかないのに対し、債券運用の投資戦略はもう少し複雑で多角化しています。
例えば長期金利が上がる、という事象にどう対応するかだけでも、デュレーションを短くする、という以外に様々な答えがあります。
また、一般的な国債のように債券の仕組みには利息と償還金が事前に確定しているものや、最近名前を聞くことの増えてきている変動利付国債のように利息が変動するもの、物価連動債のように償還金の変動するものなど、幾つかの種類があります。さらに事業法人の発行した債券であれば、その企業の信用力が債券価格に影響するのはご承知の通りです。
こうした多様性の高い市場において、どのような種類の債券をどう組み合わせて保有すべきかを決めることは、株式の銘柄選択以上にむずかしいことなのではないかと考えます。
変動利付債や事業債などの特定種別に限定した債券ファンドを組入れるべきか否かの判断を基金スポンサーに求めるのは、少し酷なのではないかと感じています。

(2004.09.22)


F1はいらない

商品の仕組みとリスクを理解できない投資家に、金融商品を販売し損失を与えた場合、その損失の責任は投資家ではなく販売した側にある、というのが「投資適合性」と呼ばれる考え方です。

デリバティブを内包した、いわゆる"仕組み債"が、こうした投資適合性に抵触しトラブルになることが多いのは、SWAPや先物といったデリバティブそのものに問題があるのではなく、そうしたハイテク技術を組み込んだ商品の取扱いには、それなりの経験と技術が必要である、という認識が売り手ににも買い手にも足りないからです。

車の運転には免許が必要で、オートマ免許ではマニュアルの運転は不可能で、サーキットを走るには別の免許が必要で… と同じ車の形をしていても、ゴーカートからF1まで必要な技術は天と地ほどあるのです。

年金基金のほとんどが、ゴーカートとオートマ免許の間ぐらい、という状況の中、見た目のよいピカピカのハイテクマシンは、当分お呼びではありません。

(2004.09.21)


期待収益率の考え方

当社では、資産配分を策定する際の期待収益率の算出にビルディングブロックを使用しません。
ビルディングブロックという考え方が、間違っていると言っている訳ではなく、現在の年金基金の運用には適していないと考えているからです。
ビルディングブロックだけでなく、過去データを基準に導いた統計データは、導いた年数と同じだけの期間に用いるからこそ、統計的意義が生じるものだと思います。一方で統計処理をするためには、母数集団が多ければ多いほど、つまり参照期間が長ければ長いほどその精度は高まると考えられています。
ですから、ビルディングブロックが本来の役割を果たすには、100年の計測期間と100年の投資期間が必要だ、という論もあながち極論ではないのです。

今の年金制度が数十年の投資期間を許容できる制度であるのかどうかをよく考えた上で、それに見合った投資理論を考えそして利用していかなければならないのではないかと、私どもは考えています。

(2004.09.17)


つぶやき…

昨晩のテレビで映画監督の大林宣彦氏が言っていたこと。
「今日なすべきことを今日一生懸命行うから、明日また新しい出会いがある。今日やるべきことを明日に伸ばせば、明日は単なる"今日の続き"になってしまう」

行く先が見えないと、思い嘆く前に、今自分の目の前にあることに真剣に取り組め、ということでしょうか。

そして、今日もまた、「昨日の続き」を迎えている私です…

(2004.09.16)


物価と為替

世界の主要都市の中で、最も物価の高い都市は、相変わらず東京、2番が大阪・神戸、4番がパリ、ニューヨークは27位。
という英国のエコノミスト社の調査結果があります。

為替の影響が含まれているので、実感とは少し異なった印象があります。
ニューヨークと日本との生活衣料品価格などはニューヨークの方が明らかに高いように感じます。
また、ホテルなどのサービス価格も東京が特別割高であるとは思えません。
現に、地方のゴルフ場や観光地には、韓国や香港などアジア地域からの観光客が急増しているといいます。日本の人件費を含めた物価が国際水準から見ても妥当な水準になってきていることは間違いなさそうです。
それでも"世界一物価の高い都市"であるということは、逆に言えば、それだけ「円」が割高であるということなのかもしれません。

(2004.09.15)


国への投資

以前、エマージング債券(新興国債券)投資に何故否定的なのか?と聞かれ、「国という発行体は嘘をつくから」と答えたら、ひんしゅくをかいました。

表現は悪かったかもしれませんが、基本的な考えは今でも変っていません。
公募市場で資金調達を行う(債券や株式を発行する)主体において、一企業であれば決して許されないトラブル隠しや、財務状況の非公開が唯一公然と大義名分を持って行われているのが、"国"という発行体であるからです。
特に国を支える民間より、国庫の政治・経済力の方が優位である新興国において、発行体である国の正しい情報を入手することの難しさは、債券投資において致命的な障害となりうるのです。

通常の経済活動の延長線ではない事象によって、資産価値が影響を受けるような投資には、慎重であるべきだというのが、私の基本的な考え方です。

(2004.09.14)


生命保険会社の一般勘定

生命保険会社の一般勘定やGIC(利率保証型積立保険)の定量評価をどう考えるのか、ということについての答えは、やはり「不可能」ということにならざるを得ないのではないかと思っています。
たとえ、一般勘定資産の全ポートフォリオをディスクローズされたところで、その情報は定性判断にしか使えないものだと考えています。
生命保険会社の商品は、"ファンド"ではなくあくまでも"保険"であるため、その健全性や安定性は"ファンド"ではなく"企業"の質そのものに影響されるからです。
今の資産ポートフォリオを分析したところで、その生命保険会社の10年後の経営状況を占うことは不可能です。
人口減少の影響や国際会計基準の変更など、決して順風とは言いがたい生命保険業界の将来を見据える限り、生命保険会社とのあまり固定的なお付き合いは、避けたほうがよいのではないかと感じています。

(2004.09.13)


郵政民営化とマスコミ

「郵政事業民営化」の議論が何故出てきて、何故必要で、結局それによって国民生活がどう変るのか変らないのか、新聞を眺めていてもさっぱりわからないのですが…

というより、国民生活全般や政府の財政規律そのものに関わるこれほど大きな政策決定が、国民がまったく理解できないまま、自民党の内部抗争のような形で進んでいくことに、そしてそれを黙認しているマスコミにも、疑問を感じます。

マスコミというものが、スキャンダル探しにかける情熱の何分の1でもいいから、国民が本当に必要としている情報の収集と解説に割いてくれればよいものを、と強く思います。

(2004.09.10)


台風一過

昨日は、台風に"風"という文字が使われている意味を実感した一日でした。まずは列島各地で被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げます。

峠を越してから札幌市内をタクシーで移動していると、あちらこちらが停電で信号機が停止していました。
だからといって、交通整理のおまわりさんがいるわけでもなく、運転手さんがあわてるわけでもなく、ごく普通に譲りあって車が流れていくことに、不思議さを感じたり、妙に感動したり。

たった一つの信号機が壊れただけで、怒号が飛び交い、大渋滞となるであろう東京という街の脆弱さと懐の狭さに思いを巡らせた一日でもありました。

(2004.09.09)


強風世界

担当者は今札幌で、風速50メートルの風に吹き飛ばされて本日の思いつきはお休みです。

(2004.09.08)


野球界とプロデューサー

プロデューサー不在のエンターテイメントはありえないし、どう考えてもつまらない…
というのが、最近のプロ野球のゴタゴタを見ての感想でしょうか。

というより、プロ野球がエンターテイメントであるという認識が、オーナーサイドにはなかったのだろうと思います。

オーナーは企業経営のプロであっても、興行のプロではないです。素人が集まって書いた急ごしらえの台本に、観客が来るわけはありません。

立派な舞台装置があり、優秀な役者が揃っているのなら、あとはプロのプロデューサーに構成を依頼するしかないでしょう。
資金源であるオーナーと演者としての選手との2者間のだけの話し合いには、将来展望が全く見えません。

(2004.09.07)


世界とかけ離れた日本の商品市場

来年5月からの施行される改正商品取引法を受けての、商品取扱業者のコメントにはどうも首を傾げてしまいます。

今回の法改正によって、商品取引に興味のないことを表明している個人への電話勧誘が禁止されます。
「これによって個人投資家の数が大きく減少する。」
「個人が減るなら、その受け皿としてのCTA(投資一任ファンド)に必要とされている最低資本金額(1億円)の引き下げを望む」
「勉強会を開催して自分の意思で先物取引をする"個人投機家”を増やしたい」
などというコメントが業界団体のTOPや大手業者の経営者からでてくることに、市場の育成や個人の資産形成の一翼を担おう、といった理念が全く感じられない、この業界の本質が見えているように感じます。

シカゴを中心に既に世界の常識となっている、金融取引と商品取引との融合は、日本ではまだまだ遠い世界であることを実感せざるを得ません。

(2004.09.06)


不動産投資の常識

私が、不動産関連商品に慎重なのは、私に不動産業界に対する知識がないからかもしれません。不動産業に携わる方たちがどういった常識の中、どのような哲学を持って、どのような発想で物事を進めているのかが判らないので、投資判断基準が決まらないのです。
金融商品と不動産商品のレギュレーションを比較してしまうと、やはり不動産商品の"おおらかさ"が目についてしまいます。
また、同じREITという言葉を使っていても、国によって定義も税制も異なるため、幾つもあるREIT商品のパフォーマンスをどのように横比較すべきなのかも正直に言ってよくわかりません。

年金が不動産に興味を持ち始めているのは間違いのないことである以上、これから更に勉強していかなければならないと思うと共に、不動産業界と金融業界の常識がもう少し一致してくれるとよいのだが、と思ったりしています。

(2004.09.03)


投資助言とファンドの販売

米国の証券会社では、富裕層向けに投資助言と金融商品の販売をセットでおこなうスタイルが一般的でした。ある調査によれば証券会社から投資助言サービスを受けている人の割合は富裕層の4割近い数字になると見られていたようです。
ところが、最近になりこの傾向に変化が出てきていると言います。証券会社の投資助言の客観性に疑問を持った投資家の多くが、金融商品を販売しない独立系の投資助言アドバイザーとの契約に切り替える動きを見せています。その比率は証券会社の契約件数のおよそ1.5倍にまで上昇しているとのことです。

日本でも証券会社が投資顧問免許をとり、ファンド選択などの投資助言サービスに進出するとの方向性が出てきているようですが、ファンドの販売と投資助言を両立させるというビジネスモデルが成り立つかどうか、本家アメリカでの動向が注目されます。

(2004.09.02)


予想は科学・リスク管理は想像力

9月1日、防災の日です。
この1年で日本の地震災害について基本的な考え方が大きく変ったといわれています。これまでの"予知”を前提とした防災対策から、予知を前提としない防災対策へと主軸を移しつつあるとのことです。地震が起きるかどうかを事前に把握できるに越したことはありません。科学の粋をきわめて予想の確率を高める努力は今後も必要でしょう。ただどんなに精度の高い予想であっても外れることは必ずあります。もし外れた時に何が起きるのか、その時のために事前にどんな準備をすべきかを考えることは、大変重要なことです。最悪の事態を想像してその対処を考えておくことは予想の精度を上げる作業とは全く切り離して考えるべきものなのです。
リスク管理とは不測の事態が起きないようにすることではなく、不測の事態にどう備えるかを考えることです。
最悪の事態を起こさないための科学的な予想と、最悪の事態が起きてしまった時のための想像力を働かせたリスク管理との両輪が必要なのは、資産運用でも全く同じことですね。

(2004.09.01)

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