2005年01月の思いつき


財テクと資産運用

日本は金融機関以外が資産運用を行うことを嫌う傾向が未だに強い国です。
本業ではない資産運用を指す「財テク」という言葉には、蔑称的なニュアンスを未だに感じます。

ノルウェイでは、石油産業での利益を将来の年金原資として、国が積立て、運用しています。外国株式などにも積極的に投資を行い、石油価格の上昇とあわせて非常に豊かな財源となっているようです。東南アジアの中央銀行は歴史的に資産運用に積極的です。市場運用である以上、いつも上手くいくとは限りません。ただ、こうした国には、実態経済の発展と金融経済の発展をとを区別することなく、むしろこの2つのバランスを取ることで、経済の安定性を長期的に確保しよう、とする曇りのない視点があるように思います。

金融行政というものは、金融システムの安定化以外にも、なにかやるべきことがあるような気がしています。

(2005.01.31)



BISのストレステスト調査

ポートフォリオの標準偏差を計算していると、1年前と比べて随分リスク値が下がってきていることに気がつきます。
株式のボラティリティの低下、資産間相関の低下、などが主な要因です。
また、国内株式の中だけでみると銘柄間の価格変化に差がなくなってきていることで推定トラッキングエラー値も下がり続けています。

理論的には、ポートフォリオリスクを一定に維持するために、リスク資産を増やしたり、個別銘柄でとるリスクを増やしたり、といった作業が必要になるのですが、そうした投資行動が正しいのかどうかは一概にはいえないと感じています。

こうした議論をする一つのヒントとして、日経金融新聞に掲載されている、「BISのストレステスト」調査が参考になります。
リスク管理というものが、統計学的な定量管理とシナリオ分析的な定性管理の両面で成り立っているということを改めて認識しなければいけない時期なのかもしれません。

(2005.01.28)



対中国貿易の『だけど』と『だから』

日本の対中国貿易額が対米国を抜いたそうです。
中国都市部での労働者が1億人を超えたと言われる中で、廉価な生産者としての中国より、巨大な消費者としての中国の存在意義が今後益々増してくることでしょう。

国際経済のテーマが「消費大国・中国」となった時、最も恩恵を受ける国はどこなのでしょうか?純粋なブランド力や商品の付加価値から考えれば、日本製品が躍進する余地はまだまだありそうな気がします。
その一方で、中国の国民感情という巨大な参入障壁があるのも、また事実です。この参入障壁を崩していくには国家戦略的な視点をもった政治力と外交力が絶対に必要です。

中国から見た貿易額では、日本は既に欧米について第3位までシェアを落としてきています。日本について「政治は3流、だけど経済は1流」と言われている内はまだよいとして、「政治は3流、だから経済も3流」にならないために、対中政策の舵取りをしっかりお願いしたいものです。

(2005.01.27)



犬も猿も猫もダメ…四半期報告の風景

運用結果をスポンサーに報告するときのパターンは会社によって、担当者によって、色々なのですが。

いかに上手に運用したかを強調しまくる、「誉めてほしい犬型」
上手くいかなかったことの説明に終始する「反省猿型」
何を言われても"ごもっとも"と相槌を打つ「借りてきた猫型」
どれもこれも、時間の無駄。まぁこの他にも国会答弁型とか数字を読上げるだけのATM型とか色々あります。

つまらない運用報告の共通点は、聞く相手の視点で話していないこと。自分の立場の保全だけしか考えていないこと。

人間同士のミーティングが持ちたいものです。

(2005.01.26)



カスタマイズベンチマーク

先日のセミナーでも少し触れさせていただきましたが、当社では国内株式のベンチマークを業種別指数の組合せでカスタマイズしてご提案することがあります。
元々のTOPIX指数の標準偏差が年率20%と高い中、財政の苦しい基金様ではどうしても株式ウェイトを減らさざるを得ません。そうした基金様が財務体力の範囲内で株式投資を継続させるには、標準偏差を抑えるように業種を組み合わせたカスタムベンチマークが有効であると考えるからです。

長期投資から果実を得ようとするのであれば、長期投資のできる環境作りが大切です。株式の長期投資が必要であると考えるのであれば、長期で持てる株式の選択が必要です。
こうあるべきである、という主張は、方法論と一緒でなければ、無意味だと思うのです。

(2005.01.25)



選挙の年を越えて出た驕り

"評価は歴史として先の人々によってくだされ、施政者は今為すべき事を淡々と行えばよい。"という考えは、大変格好良くはあるが反面大変独善的な言葉でもあります。

ブッシュ大統領の就任演説と小泉首相の施政方針演説からは、そういった意味でよく似た印象を受けました。

「圧制に終止符を打ち、あらゆる国の民主化活動を支援する」のが、なぜアメリカ合衆国の"政策"であるべきなのか?
「郵政改革の断行」がなぜ内閣総理大臣の"本懐"で、今国会が「そのために」存在するのか?

選挙の年を越え、彼らの言葉の裏側に見え隠れする、「国民は施政者を選んだ段階で白紙委任状を渡したのだから個々の政策を理解する必要はない」といった驕りのようなものが、ひどく耳障りに聞こえる年頭です。

(2005.01.24)



パソコンが家電化した先

バブルのころ、冷蔵庫や洗濯機、ポットや炊飯器、といった家電製品が数ヶ月毎に新製品を出していたことがあります。デザインを変えただけ、のモデルチェンジであっても、新製品をだしCMを打たないと、製品シェアが落ちると信じられていた時代でした。
その後、使い捨て消費が見直されるに従って、家電ではこうした技術開発の伴わないモデルチェンジは下火になっていきました。

さて、いまだに半年(四半期?)ごとに新製品を出している市場に「パソコン」があります。技術的革新が目覚しかった2年ほど前にくらべ、最近のモデルチェンジは操作性やソフト面での付加価値の変更程度で、かつての家電の世界に入りつつあります。

新製品を出しCMを流しても売れないものは売れない、という家電と同じ道を、そろそろパソコンは歩み始めてしまっているような気がしています。

(2005.01.21)



今年のテーマ

今年の産業的なテーマは、「少子化対策」と「ロボット」あたりではないかと思っています。
今年の、というより今年からの中期的テーマ、と言った方がよいかもしれません。
ただ、どちらもかなり未知の部分を抱えているので、「ポストデジタル家電」といえるまで育ってくれるかはわかりません。

「株式は夢を買うものだ。夢の描けない株には将来はない。」
と、社会人になりたてのころに言われた言葉を思い出しました。

子供が増え活気のある社会。一家に一台ドラえもんがいる社会。
こんな未来図を想像するだけで、モノトーンな画が少し色付くような気がしませんか?

もちろん、夢は描くものではなく実現するものである、のは言うまでもないことですが。

(2005.01.20)



アジアの懸念

昨年、インド・インドネシア・フィリピン・マレーシアでそれぞれ行われた総選挙で、現政権が問題なく信認されたのはマレーシア一国だけでした。インドとインドネシアは与党が交代し、フィリピンは現政権が維持されたものの選挙結果の確定に1ヶ月を要する接戦となりました。

中国だけでなく、アジア諸国全般の経済環境が改善しているといわれている中、国内の経済格差の歪みについてはなかなか我々には伝わってきません。
こうした歪みの恐ろしさは、ある日暴動や内乱といった形で爆発するところにあります。

今回の地震や津波がこうした"内-内格差"を拡大するきっかけにならないかが心配であるとともに、最近漏れ伝わってくる中国内陸部の小競り合いも気にかかっています。 過去の思いつき 参照

(2005.01.19)



ヘッジファンドバブルって?

ヘッジファンドがバブルであるか、という質問に多くのゲートキーパーがNOと答えます。
また、クレジットスプレッドの縮小や不動産価値の高騰はヘッジファンドが原因か、という質問には、ヘッジファンドは原因の一つに過ぎない、と答えます。

何故なら、新興のヘッジファンドの多くが、商業銀行や証券会社の自己売買で、同様の運用を行っていたファンドマネージャーが独立したもので、ヘッジファンドという形を取ろうが銀行内で行おうが取引実態にはさほどの差がないと見ているからです。銀行など金融機関自身も、自ら社内の資本と人員で資産運用を行うより、ヘッジファンド投資など外部委託を増やす傾向が強まっており、自己売買勘定がヘッジファンドに振り変わっただけであるのなら、ヘッジファンド的運用の総額はヘッジファンド残高の上昇に見られるほどの影響はないと考えられるからです。

もちろん、一つの運用会社にキャパシティ以上の資金が流入しているという問題は、業界全体の話ではなく、個別評価の問題として存在しますが。

(2005.01.18)



トレーダーというサガ

10年前の今日、関西方面で大きな地震があったとの報を受けて、私が居た証券会社の外人の上司は興奮していました。
サンフランシスコの大地震の時の、財政支出状況や復興特需の数字を調べさせ、景気や金利に与える影響を計算し、債券を売るべきか買うべきか議論をしたがっていました。
当然のことながら、日本人スタッフはそれどころではなく、売買スクリーンよりテレビ画面に集中し、結局外人達だけで議論をし何かポジションを決めていたような記憶があります。

その外人の上司の行動は、トレーダーとしてはきっと正しかったのでしょう。ただ、少なくても私はその人の下で働いている自分に嫌悪感を覚え、そして自分がこの仕事に向いていないのではないか、と初めて考えた瞬間でした。
甘いと言われ様が、今も昔も、人の痛みの中で商売をする気にはどうしてもなれないのです。

(2005.01.17)



復興支援を断る国

今回のスマトラ島沖地震に伴うインド洋大津波の被害に対し、インドが海外からの復興支援を辞退しているとの記事が出ていました。

インドには今回の災害に対し自ら解決することのできるだけの資金と人力があるから、支援は要らない、というのがインド政府の姿勢です。又、タイ政府は日本からの無償資金枠の辞退を申し入れています。
一方で、今回の被害地域が各国の経済の中心地から離れていることで、人的被害に対し被害国の経済的被害は想定よりかなり小さいのではないかとの見通しも出ているようです。

国際緊急援助の必要性を否定するつもりはありません。7億ドルが多いか少ないかを問うつもりもありません。ただ、このお金は被災国にとって本当に必要不可欠でかつ感謝される資金なのか、少しだけ疑問に感じています。

(2005.01.14)



貿易収支とUSAブランド

米国の貿易収支が更に悪化し、為替は再びドル安に戻っています。
当たり前のことですが、貿易収支というのは輸入額と輸出額の差です。赤字の拡大が輸入額の大きさだけで議論されることが多いようですが、その裏側には輸出額の減少という問題が隠されています。

我々消費者がMADE IN USA というものに価値を見出せるものが、はたして存在するか、ということだけを考えても判るように、消費大国アメリカの存在意義はあっても、生産者としてのアメリカの存在感を示すことが難しくなっています。アメリカの輸出製品の40%以上が資本財によって占められていますが、この多くはIT関連部品であり中国を初めとする新興国へシェアを奪われています。

MADE IN USA にブランド的価値を見出せない中、為替政策頼みには限界が見えていると思えてなりません。

(2005.01.13)



リスク指数と東京集中

再保険会社が発表した自然災害に対するリスク指数で、東京横浜都市圏がダントツ1位となった、とのこと。詳細がまだでていないので、「大地震での犠牲者数十万人」などという表現に、若干違和感があるのですが、海外の保険会社から、東京という都市がどのように評価されているのか改めて認識するには、格好の材料であると感じます。

こうした議論が出てきたのは、最近のことでは決してありません。東京のビルに再保険が付きにくいことは、有名な話です。それが一般の投資家の耳に届かなかっただけのことです。
今ではすっかり影が薄くなった首都機能移転問題も、そもそもの発端はここにあったはずです。

今回のリスク値の高さは、東京という都市そのものではなく、東京一極集中という日本の政治経済構造の脆弱性を指摘されていると受け止めるべきでしょう。

(2005.01.12)



貴方は詐欺に遭いやすい??

金融詐欺に遭いやすい人々。「先生」と「社長」と官僚。 言い方を替えれば、金融知識に乏しい知的労働者。
①理解力があるので、複雑な仕組みを解った気になる。②プライドがあるので、疑問を口にできない。③知的好奇心があるので、難解さが心地よい。
後は、“特別に・残りわずか・今だけ”の3点セットに弱いのは誰でも同じ。
私だけは大丈夫、と思っているそこの貴方、どうぞご用心を…

(2005.01.11)



イメージがわかない

社内で話していても、社外の人と話しても、今年の相場のイメージがどうもはっきりしません。
あたるか外れるかは別として、金融経済を動かすキーとなる要素が見えてこない、という声が多いように感じます。

昨年の米国大統領選のような大きなイベントがない、ということだけでなく、景気水準も株価水準も現在見えている材料はほぼ全て織り込んでしまっており、よく言えば均衡点、悪く言えば踊り場にある、ということなのかもしれません。

このまま目新しい材料がなく淡々と一年終わるのか、市場を大きく動かす未知の材料で振らされるのか。
出たこと勝負の一年、といった印象を持っています。

こういう時ほど、市場から目を離さず慎重な対応が必要なのかもしれません。

(2005.01.07)



アフター7は

夜、丸ノ内や六本木の巨大ビルを見上げて、その窓の内側で光る無数の蛍光灯にぞっとすることがあります。あの灯りの中では、あれだけのエネルギー消費に見合うだけの生産活動がはたして行なわれているのだろうか?と思ったりもします。かたや我が身を顧みて、どんどん夜型の仕事ペースになっていることに反省しきりです。有給であろうがなかろうが、夜業はサラリーマンの美徳でもなんでもなくて、単なるエネルギーの無駄遣いなのではないかと、今ごろ気付く私はそうとうニブイのかもしれません…
アフター5は無理としても、せめてアフター7を楽しめるような生活習慣を今年は目指してみましょうか。

(2005.01.06)



愛情を持って!!

あけましておめでとうございます。

愛情のある投資
愛情のある経営
愛情のある政治
愛情のある行政

愛情一杯のコンサルティング!!

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

(2005.01.05)


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