2005年04月の思いつき


世界経済の中国離れ

中国がくしゃみをすると世界が風邪をひく。
という環境に徐々に変化が見られるようになってきています。

対米貿易黒字が拡大していることで、米国世論が中国に対し厳しくなっていることも一つの背景かもしれませんが、インドなど他の新興国の巻き返しが最近目立ってきているようです。
インドの人口構成は中国より若く、質のよい労働力の供給先としては中国を遥かに上回ると言われています。
こうしたインドを中心とするアジア諸国への資本流入はこの1年加速しており、「インドバブル」という言葉が欧米の新聞市場に登場するところまで来ています。

中国がだめならインドがあるさ、ぐらいの軽い気持ちで対中政策に望んだほうが、よい結果がでるのかもしれません。

(2005.04.28)



「選ばれたい」 と思わせる。

米国でもっとも洗練された機関投資家は大学や財団などの基金。次が公的年金。最後が企業年金だそうです。日本と印象が逆転しているのが大変面白いところです。
ヘッジファンドなどが、財団や州年金などからの受託を望むのは、単に彼らの資金量が多いからや有名な投資家だからではなく、投資スキルが高く経験も豊富な一流の投資家に自分達のファンドが選ばれたい、と言う気持ちからのようです。
日本において、ファンド運用者から「選ばれたい」と思われるような機関投資家がいるのかと、自問自答しています。

(2005.04.27)



なぜIT警察はないの?

週末のコンピュータウィルス騒動を見ての素朴な疑問。
泥棒を捕まえるのは警察。薬や物の安全基準を定めて許認可を出すのは都道府県や各省庁。
コンピュータウィルスは犯罪?捕まえるのは誰?経済に甚大な被害を与える可能性があるソフトが売り出されたり配布されることを監視する役所はある?結局それぞれが自費で雇っている警備会社の信用は誰がどうやってチェックしてる?
そろそろIT省やIT警察の創設を真剣に考えたほうがよいのではないだろうか?

(2005.04.26)



ヘッジファンドバブルという言葉

昨年、ヘッジファンドの収益が過去と比べ低調であったにも関わらず、ヘッジファンドやゲートキーパーの勢いが全く衰えていないことに少し驚きました。
収益とは関係なく、年金等からの新規の資金流入が止まらないため、実際のファンドやゲートキーパーだけでなくプライムブローカーやリスク管理会社などの周辺ビジネスも含めた、ヘッジファンド業界全体が潤い、さらに拡大スピードを速めているようです。
「この業界に関わるビジネスは自分達も含め去年は誰もが急激に拡大した。」
というファンド経営者の言葉から、成功していることへの自信や誇りと同時に、若干の警戒感も感じることができます。
ヘッジファンドバブルという言葉が、ヘッジファンドによって株や債券市場が過熱していることを指すのではなく、むしろITバブルのようにヘッジファンド産業全体の過熱感を指しているのだということを認識した1週間でもありました。

(2005.04.24)



NYの風景・その2

ニューヨークの物価は相変わらず高い!コーヒー牛乳と不味そうなパン一切れで600円とか、1.5Lのミネラルウォーターが3ドルもしたりと、感覚的には日本の1.5倍近い気がします。8.625%の税金の影響もあるのですが、それにしても高い。こちらに済んでいる日本人がたまに日本に帰ると、物価の安さに驚くと言っています。
米国株式市場が、消費者物価に過敏に反応するのも、これ以上の物価にはさすがの米国消費者も耐えられなくなるからだ、とテレビのキャスターは解説してます。今のNYはバブルなのかもしれない、という言葉をこの数日で何度となく耳にしています。

(2005.04.22)



NYの風景

ニューヨークは、今桜が満開です。桜に誘われてか、20度を超す陽気のせいか、街には平日にもかかわらず人が溢れています。かつて日本人観光客ばかりが目立ったブランドショップでは、常連らしき立ち振る舞いの女性達が楽しげに店員と話をしています。表面的には景気の陰りは全く感じられません。

(2005.04.21)



お知らせ

担当者海外出張中のため、今週は思いつきの更新をお休みいたします。

(2005.04.18)



制約条件をはずしてみる

例えば、運用利回りの目標はTOPIXのままとして、トラッキングエラーのコントロールを止める、売買回転率の管理をしない、組入れ市場の制限をなくす、といったような制約条件を外してみると、リサーチ体制や銘柄選択のエンジンはそのままで、パフォーマンスが思いの他改善した、という例に出会うことが、最近多くなってきました。
これまで、年金業界が作ってきた運用に対する厳格なルールが、年金業界全体の質の均一化と向上に寄与してきたことは間違いありません。ただ一方ではそれが年金資産が本来得られるはずの利益を自ら放棄することに繋がっていたことに、業界全体がようやく気づき始めたように感じます。
これまで築いてきた理論的な資産運用プロセスのプラットフォームは生かしたまま、制約条件を少し緩めるだけでも、かなり印象の異なるファンドが出来上がるような気がしています。

(2005.04.15)



マイナスの期待収益率

日本の長期金利が0.5%しかない時、国内債券の期待収益率を1.0%以上に設定していた信託銀行にその理由を尋ねると、「ビルディングブロックにはマイナスの期待収益率はありません」と断言されました。

平成17年度が始まり、各運用機関が期待収益率を見直してきています。幾つかの会社が国内債券にマイナスの期待収益率をつけてきているようです。

この心変わりの原因がどこにあるのかの、理論的な説明が必要であるのはあたりまえのこととして、何故今のタイミングでの変更だったのか、についても説明して欲しいと感じています。

まさか、運用報酬の高い『債券代替商品』を売り込むための、道具にしているわけではないとは思いますが…

(2005.04.14)



株式のリスクプレミアム

ABM AMRO社が毎年計測している「過去100年のリスクプレミアム」(参考書籍としては『証券市場の真実(東洋経済新報社)』)のデータから、面白い結果が出てきました。

過去105年において、株式リターンが国内短期金利を上回った年は、米国で全期間の50%・英国で64%・日本で40%となっています。
日本は圧倒的に負け越しが多い。
年代別に見ても、勝ち越しているのは1980年代と1950年代の2区間だけ、という悲惨な現実が見えてきます。
日本は株式の変動幅が大きいので、過去50年や100年といった長期の平均リターンをとると、短期金利には4%程度勝っているのですが、この勝ちも株式市場が倍になった1950年代を除くと少し怪しくなります。

日本の資本市場について、物思いに耽りたくなる、数字です。

(2005.04.13)



無理が祟った?米自動車業界

米国の自動車産業の業績に不透明感が高まり、欧州の自動車産業にも波及しています。

今回の業績不振の背景には、2001年の米国多発テロ後の無理な販売政策にあるように思います。
テロ後に自動車業界が行った、ローン金利を実質ゼロにした販促キャンペーンは、テロ後に予想された米国の景気低迷を多少なりとも緩和する効果はありました。一方で無利息で資金提供をする形となった系列ファイナンス会社の財務悪化が爆弾となるだろうという声は、当時から囁かれていたことでもあります。
また、当時自動車販売サイクルの下降局面にかかっていたにも関わらず、無理に販売台数を増やしたことが、その後の販売サイクルにあきらかに悪影響を及ぼしています。

無理をすると、忘れた頃に筋肉痛… といったところでしょうか。

(2005.04.12)



国としてのルール

正当化される暴力はない。
少なくても、国家レベルでは絶対に守るべき原則です。

経済活動というものは、"貨幣"という、互いの信用によってのみ成り立つ非常に不安定な仕組みの上に建つ楼閣です。
金融取引というものは、その信用にレバレッジをかけて行う、きわめて脆弱な地盤構造の上にあります。

国際経済の中心に躍り出ている国が、もしかしたら国家として守るべきルールをわきまえていないのではないか、という現実を改めて意識し時、国際金融市場の緊張は高まり、世界経済の成長速度を見直すきっかけにもなり得るかもしれません。

(2005.04.11)



全資産プラス

平成16年度をしめてみると、国内株式の成長株指数以外ほぼ全ての資産で、プラスの収益率となっています。

今年もまた、為替には大変助けられた1年となりました。外債インデックスの収益率約11.3%の内9.7%、外株インデックスの15.7%の内7.9%程度が為替効果です。
国内資産においては債券が株式を上回り、国内債券脅威論は再び狼少年となりました。

このように一般資産が好調であると、絶対収益型投資に総じて見劣りがしてきます。ただ、絶対収益型投資の組入れの意義は伝統的資産が悪い時のバッファーであることを考えれば、組入れの是非についてあまり短期的な評価はするべきではないと思われます。

何はともあれ、大方平穏無事に1年を終われたことに感謝です。

(2005.04.08)



実務経験

当社のコンサルタントの平均年齢は40台です。将来を考えるともう少し低くしたいのですが、現実的にはなかなか難しい問題です。
コンサルタントとしてお客様や運用機関の方と接するには、社会人として、また金融市場に関わる者としての、実務経験が絶対に必要だと思うからです。

本で勉強できることは理論だけです。最近ハウツー本が流行っていますが、マニュアル通りに物事進むならそんな楽なことはないわけで、人や物事にどう対処していくかは、結局自分で経験して考えるしかないのです。
職人さんの技の伝承に10年・20年かかるように、専門職になるのにはそれなりの時間が必要です。

というわけで、当社が多少"とうが立った"集団であることを、どうぞご容赦ください…

(2005.04.07)



円が弱い

ドル円が108円台になり、輸出関連株に買いが戻っているようです。というものの、あまり喜ぶべき状況ではなさそうです。

米国の金融リスク専門誌などは、日韓・日中の政治的緊張が高まっていることを、日本経済のリスクファクターとして注目しています。
特に日韓関係が悪化することで今年中に締結を目指していたFTA交渉が流れた場合の経済的損失について検討が必要だとしています。
米国誌の論調は大方、韓国国内の内政問題が対日外交に飛び火したとして日本に対し好意的ではあるもの、だからこそ問題解決には困難さが伴うと見ているようです。

日本経済のリスク懸念の高まりと、それが日本を含む東アジア経済全体のブレーキになる可能性を含めて、円が売られているのであるとするならば、それは今の日本・韓国両政府の対応の稚拙さへの資本市場からの警告と見るべきでしょう。

(2005.04.06)



世論の功罪

知り合いやかかりつけの医師と話していると最近気になる発言をよく耳にします。「医療過誤と訴えられるのが怖いからできれば手術はしたくない」「新しい薬は処方したくない」「事前によく説明して最終的には患者さんや家族に決めてもらう」
クレームが怖いがために、医師がかえって無責任になっているという印象を受けざるを得ません。

こうした現象が起きているのは、なにも医師の世界だけではないような気がしています。
ややもすれば集団ヒステリー的なバッシングが起き易い社会環境において、自己で背負えるリスクの量が急激に縮小しています。

リスクを取らない世界にはリターンも進歩もありません。世論という集団監視体制の強化が、日本人の技能とプロフェッショナリティをどんどん萎縮させていることに懸念を感じます。

(2005.04.05)



偶然の確率

お役立ち本の紹介です。
『偶然の確率』アーティストハウスパブリッシャーズ刊・アミール・D.アクゼル/著

統計学の基礎が2-3時間でわかる本です。
とにかく説明が平易で読み易い。少し下知識のある方にはちょっと物足りないかもしれませんが、確率や統計の話を他人に説明する際のよいサンプルになると思います。

賭け事の一発勝負は是か非?
分散投資の究極のコツとは?
偶然は確率で説明できるか?

正しい確率についての認識を持つことは、統計数値に騙されないためにも大変重要なことなのだと実感できる本です。

(2005.04.04)



格付けのボラティリティ

米国のAAA企業だったAIG保険グループが、会計不正スキャンダルを受けて格下げになりました。
「長期格付けAAA」を掲げてのビジネスモデルにとっては、大きなインパクトがあります。

格付けというもの、特に金融機関の格付けというものが、非常に大きく変動するということは、日本の銀行が最もよい例となっています。10年後・20年後といった長期の債務を評価しているからといって、格付け自体が長期的に一定であるというわけではありません。

AAAの会社が元本保証していたはずが、BBBの会社の保証になっているということは、充分ありえることなのです。

(2005.04.01)


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