2005年09月の思いつき


低迷ファンドへの判断

パフォーマンスの振るわない運用機関を解約するタイミングというのは、本当に難しいと思っています。
運用スタイルや戦略が時代にあっていない、などの外的な理由がある場合は別として、組織にも戦略にも定性的には採用時点とは特に変化がなくパフォーマンスだけが低迷しているような場合、その低迷がいつまで続くのか判断がつきにくいのです。

FOFsのゲートキーパーの方にもよくお尋ねするのですが、ヘッジファンドの解約の基準としてあげるのは、組織や運用手法などの定性的な変化が第一で、パフォーマンスだけで解約することはあまりないという答えを多くお聞きします。
特に年金を含め、日本の投資家は、ヘッジファンドなどの投資に対する解約頻度が高すぎるのではないかという指摘を受けることも少なくありません。

受託者責任において、マイナスパフォーマンスの会社にダラダラ委託することはできない、というスポンサーサイドのご意見は本当に尤もなことだと思いつつ、安値売りにならないためにも、どこまで我慢してもらうべきなのか、悩ましい日々を送っています。

(2005.09.30)



確定給付の時代?

団塊世代の引退と共に到来する人手不足の時代に供え、良質な人材を如何に確保するかが企業の将来にとって大きな課題となりつつあります。
この数年の流れは、人材の流動化を促進しより優秀な人をハンティング(狩る?)しやすい社会構造を推進することが、この問題の解であると考えられてきました。
しかしながら、というより、当然のことながら、流動化した人材市場では、自社の社員も流動化してしまうわけで、より市場価値の高い社員ほど辞める危険が高くなるという事実に、そろそろ企業も気付くころでしょう。
流動化した人材市場において、如何に囲い込みをかけられるかが、これからの経営にとっては重要な課題になってきそうです。

こうした流れの中で、代行部分もなくなり過去の負債からも開放されつつある確定給付型企業年金基金制度が、少しずつ見直されつつあるような気がしています。

(2005.09.29)



集中投資

これまで年金などで採用してきた株式運用の特色は、まずTOPIXなどの市場収益率に勝つことを目的とした相対パフォーマンスであること、そしてロングオンリーと呼ばれるようにカラ売りなどを組み合わせることのない買うだけの運用であること、を前提としていました。
この対極として、ロング-ショート運用と呼ばれる、絶対収益を目標として、かつカラ売りを組み合わせるヘッジファンド的手法があります。
さらに、最近の傾向としては、集中投資という、第三の商品性が増えてきているようです。
従来運用では100銘柄近く保有していたポートフォリオに対し、集中型は20から30銘柄に絞り込んだ構成になっています。アナリストの評価方法やモデルのファクターなどは従来型の運用と変わりなく、単にトラッキングエラー管理を止めただけ、というものもありますし、投資ユニバース自体を絞り込んで、調査頻度を高めたというタイプもあります。
総じて従来型のものと比べると売買頻度は上がり、市場収益率との乖離は大きくなりますが、今のところ不思議とパフォーマンスが好調なものが多いようです。
もちろん、失敗したときのダメージもまた大きくなることは覚悟しなければいけません。
いずれにせよ、運用手法のバリエーションが増えていることは、喜ばしいことです。

(2005.09.28)



米国不動産と時代の空気

日銀は、1980年後半から1990年までの日本の不動産バブルの総括に、「時代の空気」という表現を使っています。
それがバブルなのかどうか、中にいる人間が判断することがいかに難しいかということを端的に表した言葉であると思います。

最近、米国の州連銀のレポートや、他のエコノミスト等のレポートで、現在の米国の不動産市況を正当化しようとする試みを多く目にするようになりました。
曰く、
今の賃貸価格が正当であるとするなら現在の不動産価値は正当である(逆もまた真?)
今の雇用情勢が維持されるのであれば、今の賃貸価格は維持される。
短期金利が上昇しても長期金利さえ低位安定すれば住宅ローンには影響はない。

不動産会社や証券会社ではなく、本来客観的であるはずのエコノミスト達でさえ、時代の空気に押し流され現状を追認するための論文を書かざるを得なくなっている、そのこと事態がまさにバブルを象徴しているように思うのです。

(2005.09.27)



誰が悪いのではなく。

民間が行っているの同じようなリストラ策が公的部門にも必要であると、竹中大臣は言います。
それは正しい。
郵貯の民営化の次は、政府系金融機関の整理統合だそうです。
きっとそれも正しい。

ただ、思うのです。
公的セクターが肥大化したのは単に役人が傲慢で怠慢だったからだけなのでしょうか?90年半からの約10年間、完全に機能不全に陥った民間金融の受け皿として政府系金融機関や郵貯簡保の果たした役割は無意味なものだったのでしょうか?民間企業がリストラとする代償として生まれた膨大な失業者を抱え込んだ失業保険が破綻寸前なのは当たり前です。
民のリストラの踏み台として膨れ上がった公的セクターだからこそ、民の健全化と共に縮小させなければいけないのだと思うのです。
誰かを悪者にしなければ、改革を進めることのできない今の風潮がとてもとても嫌いです。

(2005.09.26)



ガソリン価格とハリケーン

この2年のエネルギー価格の推移は大きく分けて3つの段階に分けられます。
第一段階は、2003年の初頭から2004年の7月にかけての緩やかな上昇。この過程では原油価格も最終消費者に渡るガソリン価格(米国)もほぼ平行に上昇してきました。
第二段階は、2004年後半から2005年8月までの振幅の大きな上昇。この過程ではどちらかというと原油独歩高となり末端ガソリン価格は比較的安定していました。
そして、第三段階。日本では5月ごろから、米国では7月ごろから、傾向はでていましたが、9月の米国ハリケーンを契機に原油ではなく、ガソリン価格が急騰し始めています。
資源としての石油ではなく、製品としての石油に、焦点が変わってしまいました。
一般生活や小売への影響は、これからが本番なのかもしれません。

(2005.09.22)



株高・円安

日本株式独歩高にもかかわらず、ドル円では久々の112円台という安値をつけているところに、今の世界の潮流がよく出ているように思います。
景気減速感の強い欧州や、ハリケーン被害の影響が懸念される米国に比べ、選挙も終え安定感の増している日本の株式市場は相対的な魅力感があります。不動産市場にしてもバブルを指摘されるほどの高値圏にある米国や英国と比べ、日本市場には出遅れ感があります。より儲かるものを貪欲に求めているリスク選好の資金は、日本に向かっているといえるでしょう。

一方、異様な原油高やテロや天災の影を警戒する慎重な資金は、より金利の高い市場に流れます。政策金利の引上げ方針に変更が見られない米国ドル市場には、リスクを拒否する資金が向かっています。

原油上昇の恩恵を受け増え続ける有り余る投資資金は、リスク分散をしながら、世界中の金融資産全体を底上げしています。

(2005.09.21)



お墨付き、もらう側、与える側

監査法人の公認会計士が逮捕されるという現実は、違法指南役として積極的に関わるという点を論外としても、監査法人がサインをするという行為そのものの、法的重要性を改めて認識させられた結果となりました。
これは、我々コンサルタント会社にとっても、人事ではないと思っています。
年金コンサルタントという業務が、業界全体で少しずつ浸透していく中で、段々コンサルタントの役割も多様化してきたような気がしてます。本当にスポンサーの運用組織の一部として意思決定過程に関わっていく場合もありますし、中には事務局の出した結果にお墨付きを与えることだけを期待される場合もあります。
ベンチマークに対する相対リターンの横並び運用の世界ではあまり問題にならなかったお墨付きとしての役割も、運用環境がより高度・複雑化していく中で、その意味合いや重要性は大きく異なってきています。
少なくても、コンサルティング費用というものは、お墨付きを出したり貰ったり、のリスクの対価ではないということを、もう一度お互いに認識すべきなのではないかと思っています。

(2005.09.20)



悲しいゼロ金利

最近、少し不調のマーケットニュートラル型のファンドのマネージャーと話していて、「米国ではこのファンドは日本ほど問題になっていないのですが」とのボヤキに、納得してしまいました。

株式のマーケットニュートラルのような絶対収益型投資にとって、表面的は目標は短期金利をどれだけ上回るかですが、究極の目標は元本を減らさないこと、です。

元本を減らさないという目標にとって、短期金利が3.5%ある国と、ゼロ%との国とでは、年間の最大損失で3%ものリスク許容度が違うのです。モデルが効かなくて獲得収益がゼロで且つ取引コストを払っても元本を毀損しなくてすむ世界は、取引コストを払ったらマイナス3%になってしまう世界からみると夢のような世界です。

日本で金利のつく国になるのは何時のことなのでしょう…

(2005.09.16)



破産と値動き

米国の大手航空会社2社が破産法の適用を申請しました。
米国の破産法は、企業再生を支援することを主眼としているので、破産イコール企業の消滅ということは意味しません。従って破産申請の後も、通常通り運行は継続、興味深いことにはマイレージポイントも有効であると、各社は言っています。

とはいっても、株式や債券市場には明確に破綻の影響は出ています。破産法適用の可能性が高まった7月以降、4ドル近辺で揉み合っていたデルタ株は急落を続け昨日時点で0.71ドルとなっています。また債券価格も4年債で額面1ドルにつき0.16ドルとなっており、これも7月当初の約4分の1になりました。

デルタの債券発行残高は約1兆円に上ります。株式保有者の上位にはパッシブファンドと推測されるファンド名が並びます。それでも破綻するものは破綻するのが、米国の資本市場です。
企業破綻というイベントに遭遇する可能性のきわめて小さい日本の投資家にとっては、今回のような破綻事例から学ぶべきことが沢山あると思うのです。

(2005.09.15)



元気な女性の素

100歳以上の高齢者の内、85%が女性だそうです。
元々、生命体としてみても女性の方が丈夫であると言われているので、当然の結果なのかもしれませんが、それにしても男性人のため息が聞こえてきそうな結果です。

世の中見回すとどうも男性陣に、覇気がない。芯がない。夢がない。体力がない。
今の若いものは、ということではなく、女性陣からみると、世代問わずこのように見えるのです。

何故、女性は元気なのか?真剣に分析してみると、閉塞感のある日本社会の突破口がみつかるのではないでしょうか。

(2005.09.14)



リバランス

国内株式への警戒感をもう一つ。先週、国内株式が4年ぶりに当社の理論値を越えたとのコメントを書きましたが、トピックスが1300を付けたことで、6月末からの変動幅が、2標準偏差を越えました。通常トピックスが3ヵ月間で変動する可能性のある上限を上回ったということです。
水準、変化幅、ともに一旦冷静になるべきだと、数字は言っています。
少なくとも、政策資産配分へのリバランス、少なすぎる債券比率の調整など、リスク管理を意識したオペレーションを、基金として考え始める時期がきています。

(2005.09.13)



逆張りはダメ?!

自民大勝、というより民主が弱すぎた、という印象の強い選挙結果でした。

マスコミの論調は国民が改革を支持した結果となっていますが、私には国民の順張り志向が極端に出た結果に見えます。

細かいことはよくわからないけれど、とりあえず流れに乗っておこう、的な感覚が今の日本にはとても強い。
これは、ネット投資家の株式投資を見ていてもよくわかります。

市場参加者の裾野が広がれば広がるほど強くなるムード優先の順張り相場。下手に逆張ると痛い思いをしそうです。

(2005.09.12)



運用会社の羅針盤

投資顧問や信託銀行の営業が、証券会社の投信営業と変わらなくなっていますね、とのご指摘を年金以外の業態の方から受けることが多くなりました。
投信営業のように、ファンドを回転させて販売手数料をとっているわけではないのに、何故あんなに沢山のファンドや提携商品を抱えているのかよくわからないと言われます。
また、海外の提携先からは、とりあえず提携してみたものの、売れ行きが芳しくないとすぐに放り投げてしまう投資顧問や信託が増えてきているとの苦情も聞くようになりました。
オルタナティブ運用での年率1%・2%という固定報酬に慣れてしまうと、伝統的運用の数十ベースというフィー商品にはなかなか力が入らなくなります。

運用会社はどこへ向かおうとしているのか、羅針盤がクルクル回っています。

(2005.09.09)



投資教育が必要なのは?

投資教育という言葉が、ようやく一般に認知されるようになったのはよいことだと思います。
ただ、最近の投資教育という言葉の流れに気になることが2点。

一つは、投資教育の中身が株式投資に偏っていること。
債券や為替の話はもちろんですが、そもそもお金とは何か?金融取引とは何か?という基本的なことを教えない投資教育というもので、健全な株式市場の担い手が育つのかどうかかなり疑問です。

もう一つは、証券会社だけでなく、銀行や郵便局の店頭でも買えるようになってきている投資信託商品についての、売り手サイドの投資教育。国債の窓販の延長線の知識で株式投信や外貨建て投信を売っている現状は、本当に目に余ります。

一番投資教育が必要なのは、結局こうした流れを放置している監督官庁そのものなのかもしれないと思ったりもしています。

(2005.09.08)



テイクオフの可能性

この8月末のTOPIXの水準が、当社の試算している理論株価を上回りました。2001年6月以来4年ぶりのことです。
このため今後5年をみた国内株式の期待リターンも、1%を割り込む水準にまで低下しています。

ITバブルの崩壊や金融不安、外的ショック、などによって、必要以上に下振れしていた国内株式が、ようやくあるべき水準まで浮上してきたということができるでしょう。
逆にいえば、ここから先はもはや割安感だけでは価格を切り上げていくことが難しくなるということです。

我々のモデルは金利の期間構造から将来の名目GDPを予想し、株価の理論値を求めています。今のデフレ環境が続くのであれば、TOPIXの期待リターンは早晩マイナスの世界に入ります。
デフレ脱却のシナリオが描けるかどうか、株式市場に残された時間はもうあまり長くはありません。

(2005.09.07)



台風です

台風に背中を押されながら東京に向かっています。
ターミナル駅にひどく警官が多いのは台風のせい?ではなく、選挙のせい?
ああ、そういえば今週末は選挙でした。ハリケーンと大型台風にすっかり存在を吹き飛ばされましたか??

(2005.09.06)



世界の縮図

米国でのハリケーン被害報道を見ていて、アメリカという国がまさに世界の縮図であることを実感しています。
かつてない好況に沸く石油精製施設を持ちながら、避難するための自動車すらない低所得層をかかえる州政府。宇宙への扉ヒューストンのあるテキサス州と隣併せていても、堤防施設は1960年代のまま。
富の偏在、技術の偏在、情報の偏在。この数年、活況を続ける世界経済の奥底で進行を続ける危うい軋みの極一部が、不幸にもハリケーンで露呈しています。
巨大ハリケーンを生んだ地球温暖化の恐怖も、ニューオリーンズで起きた暴動の火種も、世界のあちらこちらに転がっているような気がしています。

(2005.09.05)


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