2005年11月の思いつき


信じていたものが嘘だった時

2002年のエンロン・ワールドコムの決算書偽装事件をきっかけに、米国の株式市場は大幅な価格調整を余儀なくされました。
投資家が判断のよりどころとしていた公開情報の信頼性が失われ、適正価値を算出するための基準をどこに置けばよいのかもわからなくなってしまったからです。
今付いている値段が、正しい情報に基づいているものなのか、偽装された数字に基づいているものなのかのを精査し、市場が安定するまで2年近い月日がかかりました。

さて、今回の建築偽装事件。
この数年、収益還元法が適用されることにより、不動産価格そのものが建築費用を含めたコストとテナント料との差額により決定される仕組みが出来ています。
マンション需要がこれまでのように続くのかという利益面の不安だけではなく、今の不動産価格が適正なコストを果たして織り込んでいたのかどうかという、もっと基本的な部分への懸念が出てきました。基礎数値の信頼性自体が疑われ、投資判断そのものが停止してしまった時何が起きるのかは、米国の会計疑惑が物語っているかもしれません。
不動産関連商品が大きな転機を迎えることになりはしないかと心配しています。

(2005.11.30)


良かれと思った人事でも

転職したファンドマネージャーやアナリストに理由を聞くと、前職での人事待遇への不満を口にする人が多くいます。

運用者として、比較的成功していたにも関わらず、配置転換されたことがきっかけになる人が多いようです。

話を聞いていて不思議に思うことは、昇進人事であったり、優秀な人材に報いるためのプロモーションの一環であったりといった、会社としてはこれまでの業績に対してのプラス評価の結果のつもりで行ったことも、当の本人には単に現場をはずされたとしか受け止められていないことです。

経営者や人事に運用経験者が少ない金融機関系の運用会社などでは、特にこうした人材流出パターンが見受けられます。

将来の幹部職員の養成も大切ですが、本当のプロフェッショナルの養成はもっと大切です。

(2005.11.29)


懲りない政治家

武部さんという政治家は、本当に懲りない人らしい。
BSLで発生源を特定しない方が良い、と言って大臣を首になったことなど、全く記憶にないかのように、今度は耐震偽装問題の原因追及はいい加減にした方がよい、と言っていらっしゃる。

確かに、最近のマスコミによる悪者探しの風潮は、年金問題も含めて非常に感情的であり世の中をミスリードする、百害あって一利なしという類のものであると、私も思います。
ですから、一般論として言うならば、武部さんの言っていることはある意味バランス感覚のある発言なのかもしれません。

但し、それはあくまで人の命に直結しないこと、そして一般人であることが前提であって、国民の命を守る立場にある公人が口にすることではないと思います。
そういえば医療費の問題で延命治療は無駄だと発言した政治家も今は現職大臣になっています。
近隣諸国の感情を逆撫でして歩く外務大臣もいます。

公人として言って良いことと悪いことの区別もつかないような人達が今の日本の政治の中枢にいることに、寒気がします。

(2005.11.28)


いつまでたってもエマージング

日本の株式市場というのは、何故これほどボラティリティが高いのでしょう?
TOPIXの値動きを見る限り、どう見てもエマージング株式の仲間入り、という感じです。
他の先進国株式が比較的、経済成長や企業利益を反映した株式形成をするのに対し、日本の株式は一旦動き始めると外部要因はお構いなく、株式市場そのものの要因で上下します。

ヘッジファンドにとって、日本の株式市場は非常に魅力的な市場だそうです。これほど流動性のある市場で、価格に歪みがあり、変動幅の大きな市場は他にはない、と言われます。
はっきり言えば、これほど理論的ではない巨大市場は、金融・商品市場足し合わせても、見当たらないと言われているわけです。

日本の株式市場が普通の市場になるまでには、まだ長い道のりがかかるのでしょうか。

(2005.11.25)


訳あり商品

「安い・広い・近い」不動産が売れるのは当たり前です。別にビジネスモデルという程のものではありません。
「安全・確実・高配当」の金融商品が売れるのは当たり前です。別に商品がよいわけではありません。

世の中当たり前に売れるものばかりであるのなら、誰も苦労しません。
マンションは広くて都心から近ければ、高いのです。
金融商品は安全で確実であれば、配当は低いのです。
もしそう見えない商品があったら、それは必ずどこかに錯覚や隠れたリスクがあるだけの話です。

数百円の野菜や肉でさえ、仕入れ方・売り方に苦労する今の時代、飛ぶように売れる数千万の不動産や数百万の金融商品には、どこかしらの『訳』があるはずです。

訳あり物件を取り扱うだけの、経験や選択眼がないのなら、見た目の良過ぎるものには近寄らないのが一番です。

(2005.11.24)


こんなところに信用リスクが

「構造躯体の10年保証」などという一戸建てでもマンションでも常識的に使われている言葉に、信用リスクが発生するなどということを、事前に想像していた人がどれだけいるでしょう。

保証している建設会社が、万が一破綻してしまえば、10年保証などという言葉には何の意味もなくなってしまうわけです。

更に恐ろしいことは、自分の物件の設計には違法性がなかったからといって、その設計会社を使った他物件の保有者が無関係ということにはならない点にあります。
問題物件の保証能力がなく建設会社が破綻してしまえば、問題物件以外の保有者の保証も自動的に消えてしまうからです。

「保証」という言葉の持つ潜在的リスクを、今回の事件は見事に解説してくれています。

(2005.11.22)


別にドウってことではないかもしれませんが

先週、ロンドンの銅先物市場で大量の銅先物の空売りをしていた中国人トレーダーが失踪したとのニュースが流れ、銅先物市場が急騰したそうです。
同日、中国政府は価格安定の為、銅の国家保有在庫の市場放出を決めたと発表し、銅先物は急落したそうです。
そして週末、失踪したトレーダーは、実は中国政府関連の役人であり、空売りポジションは、中国政府の損失になっているとの報道がされています。???

ありえない…

中国という国はやはり謎です。

(2005.11.21)


ピークは何時?

日本の株価の前回のピークは2000年2月、その前のピークは1996年6月です。
2000年のITバブルの終わり方は、2000年問題で発生した過剰流動性の回収のため、各国が揃って金融引き締めに転じたことが、きっかけでした。
1996年は、阪神大震災や79円の超円高を受けて、村山政権が組んだ超低金利・大型財政という方針を、橋本内閣が財政再建内閣へ転換させたことがきっかけです。
90年のバブル崩壊が、不動産金融への総量規制であったのは言うまでもないことです。
このように日本の株式相場というものが、欧米と比べ金融財政政策の影響を受けやすい構造にあるということを考えると、日銀の量的緩和解除が株式市場に与える影響は、事前に予想されていたものよりも大きくなるのかもしれません。
逆説的に言うならば、量的緩和の解除が実行され、消費税引き上げ議論が現実化するまでは、この相場は続くのかもしれないということです。

(2005.11.18)


代替商品の受難

年金の資産配分で国内債券に人気がないことは、今に始まったことではありません。株式では10%の価格変動を受け入れるにも関わらず、債券で一時的に1-2%の損失を出すことが何故そんなに嫌なのか、少し不思議ではあるのですが、債券投資への心理的抵抗はかなり強いようです。
こうした投資家心理を利用して拡大した「国内債券代替投資」と呼ばれるものが、結果的に債券よりパフォーマンスがよかったかと言われると、決してそうとは限りません。
ファンドオブファンズしかり、変動利国しかり、ヘッジ外債しかり、マーケットニュートラルしかり、です。

国内債券よりパフォーマンスが良いことだけを期待されたこれらの代替商品が、理由を問わず国内債券よりパフォーマンスが悪いということだけで非難されるのは、ひとえに営業の戦略ミスであり、結果を出せなかった運用者だけの責任ではありません。

この間まで「国内債券だけは嫌だ」といっていたスポンサーが、今度は「国内債券とファンドオブファンズだけは嫌だ」に変わり、嫌いなものが増えただけ、という笑えない話も聞こえてきます。

(2005.11.17)


香港のアジア化

久々に香港に行ってきました。思った以上に中国化が進んでいる、というのが第一印象でした。

薬局に入ると、日本語のパッケージやポスターが目に付きます。日本製品が多いということではなく、中国製品に日本語のパッケージをつけて売っているからです。
今、香港ではクオリティの高さをアピールするのに日本語を使うのが流行りだそうです。
ちなみに、マグロの目玉で有名なDHAタブレットの箱には「日本の子供の頭の素」と書いてありました。
誇大広告かどうかは別として、「日本人は賢い」というイメージが今でも通用していることにホッとしたりもしました。

香港は中国化しているのではなく、アジア化しているだけなのかもしれません。少なくてもその仲間に日本は今のところ入れてもらえているようです。

(2005.11.16)


ファンド規模と機動性

株式のファンドマネージャーが、今まで1年かかったバリエーションの修正が1ヶ月で起きるようになり、1ヶ月かかっていた価格の波動が1日で終わるようになっている、と話してくれました。

ヘッジファンドのゲートキーパーが、ヘッジファンドストラテジーの有効期限が短くなり、ストラテジーローテーションの頻度を高くせざるを得ない、と言っています。

投資判断のタイムスパンが短くなることで、ファンド規模がパフォーマンスに与える影響が思いのほか大きくなってきているようです。
数千億規模のファンドと数百億規模のファンドとでは、個別銘柄や個別戦略の投資アイディアを実行するのに掛かる時間が異なります。従来のような1ヶ月単位のスピードでオペレーションをしていては、投資アイディアの価値そのものが失われてしまうことも、ありうるのです。

今のような異常な高速回転がいつまでも続くとは思いませんが、規模を大きくしすぎたツケが回ってきてしまったファンドが出てきていることも事実です。

(2005.11.15)


お金・お金・お金

雑誌の広告をみても、本屋さんに行っても、「お金」という言葉の多いことに驚かされます。
『誰でも儲かる***』、とか、『絶対に上がる***』とか、大丈夫?と心配になるようなフレーズが踊っています。

金融商品だけでなく、職業も給料でランキングされ、一攫千金狙いの起業記事、お金になる資格。
究極は金の切れ目は縁の切れ目とばかりの夫婦年金分割の損得勘定本。

これでいいのかニッポン?と思っているのは、時代遅れなのだろうか、と首をかしげる今日この頃。

昔の人は言いました。お金は追っかけると逃げますと。
お金お金と追いかけて、中身が空っぽになった時、日本そのものからお金が逃げていきやしないか、とても心配です。

(2005.11.14)


ポートフォリオの潜在リスクが上がっています

ポートフォリオのリスク計算をしてみると、9月・10月で急速にリスクが上昇してきていることがわかります。
これは国内株式の配分が増えているからではなく、市場特性の変化によるものです。

国内株式市場のボラティリティの上昇。
国内株式内での業種リスクの上昇。
国内株式と為替、国内株式と外国株式、などの相関の上昇。
などが主な要因です。
さらに、ディレクショナル系の戦略を含んだファンドオブヘッジファンズでは、株式へのロングバイアスが強くなっている傾向が出始めているため、伝統資産と一部のオルタナティブ資産との相関も上昇しています。

現在は、株高の円安、といったように、収益に貢献する形でリスクが上がっているため、あまり気にならないかもしれませんが、潜在損失が上昇しているということを常に意識して、注意深くモニタリングしていく必要があると思います。

(2005.11.11)


バブルの入口

バブルというものが、何時始まって、何時終わったのか、そして誰が当事者だったのか、を理解するのは、結局その後の被害を確認してみないことにはわからないものです。

80年台の日本のバブルが銀行と不動産が主役であったこと、90年台のITバブルが上場ブームと業界内M&Aで自己増殖していったネット企業そのものが主役であったこと、はその後の株価の回復にかかる時間の長さで検証することができます。

今の日本の株式相場が、ITバブルの入口と似たような雰囲気を持ち始めていることを警戒しています。出口に到達するにはまだ少し時間がかかるかもしれません。
出口で倒れているのは、ヘッジファンドでしょうか?オイルマネーでしょうか?はたまたネット投資家なのでしょうか?少なくとも年金資金ではないと、信じています。

(2005.11.10)


代理更新

申し訳ありませんが本人による更新は明日になります。

(2005.11.09)


外貨投信と説明責任

個人向けの外債投信が、あいかわらず好調だそうです。
円安になればなるほどパフォーマンスが上がる商品だけに、今の見た目は非常に魅力的なのでしょう。

為替市場では、日本の外債投信の新規設定がドル買い需要を呼ぶと囃して、円売りの材料にしています。
もちろん、今のドル高は日本の個人投資家需要だけで起きているわけではありません。
米国の雇用創出法に基づく米国企業の利益の本国送金が、12月までに大量に見込まれているという特殊要因もあります。

為替のヘッジファンドには、個人の為替投資や貿易為替などの需給で歪んだ相場は、絶好の収益チャンスだと思っている人が沢山います。
リスク感覚の薄い個人を、彼らの餌食にしないように、投信販売会社は、説明責任にいっそうの注意を払って欲しいと思います。

(2005.11.08)


移民政策の難しさ

『来る者拒まず』というのがフランスの移民政策の基本スタンスだと言われてきました。これは政治亡命者の受入れなどにも当てはまる自由の国フランスを象徴する政策だったそうです。

今、パリ周辺で起きている暴動の主役は、移民3世ではないかと報じられています。移民者としての覚悟と夢を持っていた1世から代を重ねて、孫の代になった時、いつしか貧困と差別感のみが既成事実として固定化されていたのかもしれません。

移民先進国であるフランスで起きている現状は、移民政策というものが、世代を超えた問題であることを、改めて認識させています。
少子化による労働力不足の解決策として、移民政策というものがあり得るのかどうかは、その政策が3世代先の日本にとって、そしてなによりも、移民をしてきた人々にとって幸福な未来を描けるのか、を見据えた議論をしていかなければならない問題なのだと、強く感じます。

(2005.11.07)


合併人事

結局のところ、専務以上全員の退任が決まった明治安田生命を見ていて、大規模合併では経営陣一掃というのが、統合成功への近道なのだろうと、感じました。

かつてのみずほHDなどの銀行合併でも似たようなことは起きていますが、どちらが主導権を握るかという次元を引きずっている限り、不祥事やその露見は止まらないということなのでしょう。

合併人事も喧嘩両成敗が、禍根を残さないコツなのかもしれません。

(2005.11.04)


公器と安全と経済合理性

「ソフトのバージョンアップしたら、パソコンが立ち上がらなくなったのですが」なんていう話は、どこにでもある話です。
「取引量の増加に対応するためにシステム変更をしたら、障害で半日システムが止まりました」という話も、ネット銀行やネット証券ではあまりめずらしくはなくなりました。
だからといって、東証で起きてもしかたがない、という類の話ではありません。東証でだけは起きてはいけない、という類の話です。
トラブルの発生確率が0.1%以下で、一般企業であれば合格とするなら、東証は基本システムと同じだけの予算を掛けてでも、その0.1%を0.01%にする努力をするべきだと思います。そこには費用対効果という概念を用いてはいけないのです。
「公器」という言葉があります。この数年急速に死語になりつつある言葉です。公器における経済合理性というものは、安全と収益の最大公約数にあるのではなく、限りなく100%に近い安全を確保した後の余力部分において考えるべき項目だと考えます。 公器という概念が社会から失われていく過程において、我々の日々の安全も失われていっているように思えてなりません。

(2005.11.02)


組閣人事と適材適所

国際関係論という学問が、冷戦構造の崩壊と、インターナショナルからグローバリゼーションと流れの中で取り残され、すっかり影が薄くなってしまっている中で、猪口先生は存在感のある、数少ない現役の学者として、昔、この学問をかじった私の憧れでした。
なのに、なのに。
政治家になったとたん、靖国参拝はノーコメントだは、今度は少子化対策特命大臣を受けるは、軍縮大使まで経験した方が、何をしているんだか…。少子化対策は大事です。でも猪口さんでなくてもいいでしょう。せっかく議員になったのだから専門外の大臣などに時間を使わないで、一国会議員として、しっかり外交を考えて欲しかった。小泉さんも、民間から優秀な人材を引き抜くのなら、宝の持ち腐れを作らないで欲しい。
ただでさえ、外交音痴の小泉政権にとっても、今回の猪口大臣は大変もったいない人事だったように思うのです。

(2005.11.01)

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