2007年10月の思いつき


怒りたくはない

昨日も今日も、朝から怒っています。

四半期の運用報告の時期なのでしかたないのですが、気分のよいものではありません。

誤解しないでいただきたいのですが、私は怒るのは好きではありません。もう一つ、パフォーマンスが悪いというだけで怒ることもありません。

もちろんスポンサーの立場にたって腹を立てることもありますが、運用会社の立場にたって怒っているときもあります。せっかく現場が一生懸命運用しているにも関わらず、運用報告が稚拙であるために商品そのもののイメージが劣化してしまっているのをみると、ファンドが可哀想になるのです。

できることなら笑って一時間を過ごしたいのは、私だっておなじです。

(2007.10.31)


最後の砦は懲り懲りです

ロシアの企業が日本で円建外債の発行を検討しているとの記事をみて、2005年のGMショック前夜の駆け込み起債を彷彿させられました。

欧米市場での資金調達が難しくなっていた米国大手自動車の金融子会社が最後に数千億円規模の債券発行をしたのが日本市場でした。

今は、個別企業の問題ではなく、クレジット市場全体の問題ではありますが、サブプライムの余波を受け欧米市場での発行が厳しくなった企業の資金調達が日本に向いているのは、それだけ日本の投資家のクレジットに対する認識が甘いと思われているということです。

世界の投資家が格付け神話から目覚めようとしている中、日本の投資家だけが未だ格付けさえよければ良いとうスタンスから抜け出せていないようにもみえます。

GMショックでヒヤリトした個人や事業法人は懲りているでしょうか?すくなくても年金資金が海外発行体のババを掴むのは、もう懲り懲りです。

(2007.10.30)


ねじれが解消する時

世の中いたるところでねじれが生じています。

投資資金は潤沢にあるにも関わらず、金融機関間の資金フローは正常化しない。
米国経済の先行きに不透明感が強まっているにも関わらず、S&P500は高値圏にいる。
物価への懸念が日増しに高まる中、利下げ期待が収束しない。
国内に目を転じてみれば、コアの物価が確実に上昇する中消費者物価はマイナスを継続し、人手不足と就職難が共存している。

輪ゴムと同じように、ねじれというものは元に戻る時、大きな力を発揮します。その時何が振り落とされるのか?振り落とされるものは、ねじれの中心にあるものではなく、握力の弱いもの、より周辺にぶら下がっているものかもしれません。

しばらくは、あまりニッチな場所には近づかず、王道を探して歩いた方がよいのではないかと思っています。

(2007.10.29)


もう大切にされない…

所詮経済は誰かがものを買ってくれることで成り立っています。

どれほどよいものを作っても買ってくれる人がいなければしかたありません。

だから消費者は大切にされます。米国の住宅問題に政府が真剣に取り組むのも、中国経済の安定化に各国が神経を尖らすのも、そこに巨大な消費者の存在があるからです。

そして日本の構造改革に世界が注目したのは、負の遺産から解放されさえすれば豊かな日本の国民は必ず巨大な消費者となるであろうと期待されたからです。
しかし現実は大きく異なるものとなりました。少なくても消費のエンジンという意味において日本は世界の期待を裏切ったのです。

昨今の日本株の外人売りには期待ハズレの日本消費に対する怒りと諦めのようなものを感じます。

(2007.10.26)


公職の給与

汚職は悪い。それは当たり前のこととして。

何か問題が発生するとその人やその業種の所得水準の高さを問題にするのは、いい加減止めませんか。

国家公務員の給与が高くてもいいじゃないですか。
医者の給与も学校の先生の給与ももっと高くてもいいじゃないですか。

それよりも、こういった業種に優秀な人材がどうしたら集まるのか真剣に考えましょうよ。

民間企業に対し、あえて言うなら外資系企業に対しても競争力のある雇用体制を早く作らないと、日本の中心が崩壊します。

志しや信念だけで公職に奉仕するという時代は、残念ながら終わっているのです。職の安定だけを求めるような人材が官僚や教育の中心を占めるようになるなら、この国の成長は本当に止ります。

(2007.10.25)


外為証拠金取引会社の構造的破綻

銀行で一般投資家が外国為替取引をするには、通常売値と買値との間に2円の差があります。
一方で、銀行間の為替市場の値幅はおおよそ5銭から10銭です。但し、この値幅での取引は億円単位での売買となります。

一般投資家の小口の為替売買に対し、銀行は為替市場で都度反対売買をするのではなく、自分のリスクとしてポジションを引き受けます。そのリスク引き当て見合いの値幅が、売値と買値の2円の差であるということができます。

さて、今流行りの外為証拠金会社ですが、構造は銀行の外為と同じです。個人の小口売買を寄せ集めて、まとめて銀行に反対決済を持ち込みます。個人の取引の売り買いの方向が均衡している時は管理もしやすいのですが、8月のように急激に取引が傾くと、外為証拠金会社に予想外の負荷がかかります。通常外為証拠金取引での売り買いの値ざやは、大口の外為市場並に提示してあることから、リスクの引き当ても足りません。

つまり外為証拠金会社の破綻はある意味構造的な問題です。今回の破綻をきっかけに、外為証拠金会社の淘汰がいっそう進むことになるのでしょう。

(2007.10.24)


規模を追わない経営

日立がパソコン生産から撤退しました。

世界的な陣取り合戦では勝算が薄くなっている日本企業にとって、製品と技術を集中させ、特定分野でのオンリーワンを目指すことの重要性は増してきているように見えます。

任天堂のような「単品依存型企業の株価は長続きしない」という株式市場の常識が覆っていることでも判るように、広く薄い成長を求めた企業戦略がやや時代遅れになってきているのだと思います。

規模を追う経営から抜け出すことができるかが、今後10年の日本企業の明暗を分けるような気がしてなりません。

(2007.10.23)


弱気の雪崩

最近新聞の経済面のトーンが弱いです。
今更のように日本株のセンチメントの悪さを強調するような記事も目に着きます。

それに呼応するわけではないのでしょうが、運用機関の年度見通しの切り下げも聞こえてくるようになりました。

米国経済の失速が明らかになったとか、日本の個人消費が弱いとか、やや円高になったとか、今更材料にするような内容ではないのですが、一人が反応し始めると皆横並びで反応します。

人より早すぎるのも問題ですが、一斉に弱きになったり強気になったりする日本の運用センチメントというのは、そろそろ卒業してもらえないものでしょうか。

(2007.10.22)


ブラックマンデーとドルの信認

ブラックマンデーから20年です。
株式市場面が、ウリ気配を示す「ウリ」という文字1色となった10月20日付けの日経新聞と一緒に束ねられた当時のメモを見ると、「ドルの信認」という言葉が多用されていることに気がつきます。

その2年後の1989年10月に米国株式市場は再度急落します。この時既に引退をしていたボルカー氏は「ドルに対する外国人のコンフィデンスを維持する努力が政府に足りない」と警告をしています。

米国の双子の赤字とドル危機への恐怖に世界中が振り回された1980年代を超え、90年代米国は「金融大国」として生まれ変わることにより赤字を抱えながらも外国人の資金を取り込み続けることに成功しました。

構造問題の根本的な解決を放棄したまま、新しいエンジン開発に注力する米国の方向性に危機感を覚える人は常に存在します。20年もたったにも関わらず、未だドルが信認を得るに到っていないことは、奇しくも今日最安値を更新したことでも判ります。それでも、一度出来上がった金融大国としての地位がある限り、ある意味ドルは安泰なのかもしれません。

構造問題の解決より、何をエンジンとしていくのかというビジョン作りの方が大切だということを、米国のこの20年は教えてくれているように思います。

(2007.10.19)


中小企業貸出の証券化

2002年の金融再生プログラムにおいて、中小企業向け貸出しの拡大が要請され、貸し出し残高の増加が数値目標化されて以降、メガバンクの貸し出し攻勢はやや異常とも思えるものがありました。

一定の財務基準さえ満たしていれば、資金使途や業務内容の精査などほとんどなく貸し出しを行い、その後一定の貸出し残高に達すると私募債の発行に切り替えさせて手数料をとります。この私募債は証券化商品としてパッケージ化されて外部に売却されるので、銀行には与信リスクが残りません。

仕組みとしては今の米国の住宅ローン市場と全く同じで、銀行に最終リスクが残らないため、どうしても審査が甘くなります。

多くの優良な中小企業がこのビジネスローンで助かったのは言うまでもありません。一方、優良ではないローンが相当数混在してしまっているのは、周知の事実です。

「3年後日本の中小企業ローン市場は不良債権の山になる。その時我々の出番がやってくる。」とあるヘッジファンドに言われてからそろそろ3年になります。
あたって欲しくない予言です。

(2007.10.18)


しばしお休み

原油価格90ドル目前です。
幾ら過剰流動性の供給源であるといっても、さすがにここまで急騰されると、株式市場も歓迎ムードとはいかなくなってきました。

年末が近くなり、シナリオを書きやすく、値動きの軽い市場にはどんどんと投機資金が集まります。「金」もその内の一つでしょう。

今年大損をしたグローバルマクロ系のヘッジファンドがひと稼ぎするには絶好の相場展開となっています。

為替も含め、しばらくはボラティリティの高い展開が続きそうです。一般投資家の出る幕ではありません。

(2007.10.17)


飽きられた破壊

最近のスポーツ選手やタレントへの街角の批判を見ていると、「既成概念を壊す」というトレンドが完全に終わったことがよくわかります。

そういう意味では、人々が政治に求めるものと、カルチャーや娯楽に求めるものとには、共通項があるのかもしれません。

所詮自分ではできないしする気もない「型破りさ」を誰かが演じてくれることに対する快感が急速に失われてきたのでしょう。

深刻な不況の中で増幅された「破壊願望」が収束し、「平穏」を求めるようになった国民に対し、政治は改革を継続するためのより明確なビジョンを示す必要がでてきそうです。

(2007.10.16)


非効率な投資家

中国やロシアなど新興国から流入を続ける大量の資金は、リスクを好み、理論値を無視し、時価を意識しません。市場参加者というものが、常に理論的でリスク拒否者であるということを前提としている、現代投資理論からはかなりズレた人々の資金が、世の中を圧巻しています。

効率的ではない投資資金の流入がもたらしている金融市場の歪みを、潜在リスクととるか、収益機会ととるかは、投資家のスキルとタイムスパンによります。

長期的にみれば収益機会が、短期的にみれば潜在リスクが、やや高まっているといえそうです。

短期的な潜在リスクを充分意識した上での、投資戦略が必要です。

(2007.10.15)


年金特命大臣?

医療健康福祉年金雇用労働
何を羅列したかというと、今の国民の関心事ではなく、厚生労働省の所轄項目です。

我々の日常生活に直接関わるほぼ全てが含まれていると言っても過言ではありません。

とても一つの省庁や一人の大臣の手に負える範囲を超えているようにみえます。
舛添大臣が就任直後に仕事が多過ぎるとぼやいているのをテレビで見ましたが、笑い事ではありません。

堂々巡りの不毛な年金議論に時間を費やすことで、本来やるべき課題が先送りになってはいないか心配です。
いっそうのこと年金特命大臣でも作って、日常業務と切り離したほうがよいのではないでしょうか?

でもその大臣、引き受ける人いないかも…

(2007.10.12)


利上げ・ラストチャンス?

日銀は今回も利上げ見送りになりそうです。

気持ちはわかりますが、上げても良かったのではないでしょうか。

年末近くまで引っ張って、世界の株式市場が年末大相場状態になってからの利上げの方が、よほど悪影響がでると思うのです。
次の世界株式の高値に合わせて利上げするようなことになれば、今度は本当に日銀がトリガー役として悪者にされるでしょう。

国内では、消費税議論も再燃していますし、証券税制の優遇措置も実行される懸念もあります。議論の行方しだいでは、個人消費をはじめとする家計関連指標の弱さに追い討ちをかける可能性があります。

流行言葉を使うなら、「今の空気を読みすぎて、先の判断を誤っている」のではと、懸念しています。

(2007.10.11)


自浄作用

6月の建築基準法改正の影響を受け、住宅着工件数の減少が続いていることに、国土交通省が中小業者の資金支援策などの対応策の協議を始めたと、報道されています。構造計算のダブルチェックを義務化したことなどで、建築確認に時間がかかる、もしくはしばらく建築確認の提出を見合わせるゼネコンが増えており、セメントや木材などの素材産業にも影響がでているようです。

過去10年の規制緩和の影響で緩んだ業界体質を、結局は法で縛ることで、大きなマイナスの反動を生んでしまったという意味では、金融商品取引法とよく似た構造であるといえそうです。

国や法が動く前に、自浄作用が働かなかった、それぞれの業界の体質もまた、今の混乱の一因であることを忘れてはいけないと思います。

(2007.10.10)


会議と生産性

「政府は首相官邸に設けられた100以上の政策会議の統廃合に乗り出す-毎日新聞」

官邸主導を印象付けるために乱立させたら、収集がつかなくなったそうです。安倍内閣では1年間に22個の会議が新設されたとか。

会議の多い会社は儲からない。会議が多くなった会社は傾いている証拠。と昔の人はよく言ったものです。

もう一つ付け加えるなら、「忙しい」=「仕事をしている」とは限らない。

忙しい忙しいといっている国会議員の先生方、皆さんの時給は税金です。時間は有効に使いましょう。

(2007.10.09)


祝1000回のはずが…

このコラムですが、1000回を超えたら威張ろうと昨年からひそかにカウントしていたのですが、なんととっくに行き過ぎていました。

今日でたぶん1027回目なので、8月の最終週あたりが、1000回目だったということのようです。
あぁあ。通過してしまった。つまらない。

とはいうものの、ようやく少しは市場環境が落ち着いてきたからこそ、こんな数字を数えることができただけのこと。大事な1000回を忘れてしまうほど、この2ヶ月は色々ありました。

そしてそれ以上に、2003年6月からの4年と少し、年金も金融市場も色々ありました。市場が静かな内に、昔のコラムでも少し読み返してみようかと思っています。

(2007.10.05)


プロ申請

金商法で、年金スポンサーでプロ申請をするケースは、今のところほとんどないようですが、今後のために一言。

この法律を作った方の審議会での発言の中に、「プロ投資家向けに説明義務が除外されているのは、プロ投資家の方が(金融商品の)仕組みなどについて詳細な説明を求めるだろうことから、法律上の義務としなくても事実上より詳細な説明を受けることになるから。」
というものがあります。

この言葉通りに解釈するのであれば、プロ投資家とは金融商品の仕組みやリスクについて、「相手の言ったことが理解できる」、というレベルではなく、「何を知らなければいけないか、についても自分で判断できる」スキルがある投資家、と理解されます。

これは知識だけではなく、ある程度の経験も必要とされる、かなり高いハードルです。年金スポンサーであれば専門の金融プロフェッショナルによるCIOや専門チームがある組織でなければ対応できません。

安易なプロ申請の受託も勧誘も自制すべきだと強く思います。

(2007.10.04)


有名人には近づくな

詐欺話に名前を使われた有名人や先生方のコメントは一様に、「勝手に名前を使われただけ。実態は知らなかった」となるのですが、きっと違うと思うのです。

実態は知らなかった、のではなく、実態は知っていた、もしくは話は聞いていたが、「悪いことだという認識はなかった」というのが大方の実感なのではないでしょうか。

こういっては悪いですが、広告塔にされる有名人や先生方は、大概において社会常識や経験がやや足りない。そして高尚な理念やもっともらしい理屈が大好きで、プライドが高いので人に意見を求めることはしない。詐欺師のターゲットとしては絶好の人材です。

だからまず彼らを騙して広告塔にして、その他多数を取り込むというのは、詐欺師からみれば正に王道。

つまり、パンフレットに有名人が載っているような団体には基本的には近づかないのが正解ということではないでしょうか。

まぁ広告塔にされた方たちも、知らなかったではなく、私も無知で騙されました、と頭を下げた方が、よほど潔いと思うのですが。

(2007.10.03)


国家の財テク

ロシアや中国や産油国の「国家ファンド」の残高が増えていることは、今の金融市場にとって、ある意味厄介なことであり、ある意味ありがたいことでもあります。

基本的に多少損をしても、彼らは潰れるわけではありません。例えば、一時期中国銀行で1兆円近いサブプライム関連投資が話題になっていましたが、続報はありません。米国のAAAのMBSの保有者の多くは、アジアの政府関連と言われていましたが、今回のMBSショックでだれがどれだけ評価損を抱たのか、全く報道されません。所詮、時価会計制度とは無縁であり、そこそこ体力もあるので、多少の震度では表沙汰にはならないのです。

もしかすると、今回の一連の金融ショックにおいての最大の被害者はこうした国家ファンドであったのかもしれないのですが、被害者が被害申告をしないので、立証ができません。被害の実態が把握できないことが、問題の解決を遅らせている要因にもなっています。

急激に膨張する国家ファンドは、金融市場に有益なリスクマネーだけでなく有害なモラルハザードも供給してしまっているのです。

(2007.10.02)


ストレステストのシナリオ追加

スタグフレーションとは、stagnation(停滞)とinflation(インフレーション)の合成語です。一般に原材料価格の高騰など、経済需給とは無関係なインフレーションが招く、景気後退を指し、代表的な事例は1970年台のオイルショック不況です。

最近この単語を、特に日本経済との絡みで、見聞きすることが増えてきたように思います。

教科書でしか知らないのだけど、という前置きをした上で、日本がスタグフレーションに遭遇する危険を説明してくれる海外の株式マネージャーもいます。

ストレステストに付け加えるシナリオを、一つ増やさなければいけないかもしれません。

(2007.10.01)

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