2007年12月の思いつき


新興国リスク

後味の悪い大納会となってしまいました。

欧米金融市場が大きな転換点を向え、世界の不動産市場の過熱感も徐々に冷やされ、戦後最長と言われた日本の景気拡大局面もおそらく山を確認したと思われます。

そんな中、新興国の急成長の裏側に潜む歪みが、今の国際経済において残された最大の懸念材料であるということに気付くには、昨晩のブット女史暗殺事件はあまりに象徴的です。

来年度当初の景気の下落が緩やかなものに収まるか、激震に見舞われるかは、インド周辺に限らず、中国・ロシアを含めた新興国の政治的安定が維持されるかどうかにかかっているかもしれません。

本年も大変お世話になりました。
来年も後半になれば、もう少し明るい話題が書けるような環境になるのではないかと期待しています。
では、よいお年をお迎えください。

(2007.12.28)


退職金への幻想

今年の日本経済でもっとも予想が裏切られたことは、「団塊世代の退職金」だったのではないでしょか?

年の始めごろには、消費関連だけでなく証券会社までも彼らの退職金目当ての大キャンペーンを張っていたように記憶するのですが、いつの間にか「団塊世代」という言葉すら眼にしなくなってきました。

退職して、定期的な収入がなくなった人達が、高額自動車を買うわけもなく、リスク商品に投資するわけでもないことは、考えればわかりそうなことなのですが、実際に現金を手にすれば多少は衝動的な消費が起きるのではないかという現役世代の思惑は見事に外れたということになります。

団塊退職金争奪戦のシナリオは、あくせくと住宅ローンを払い続ける現役世代の退職金への憧れが招いた幻想だったのかもしれません。

(2007.12.27)


議員と日当

ある村で七人いる村議の報酬を日当にすることが村議会で決まったそうです。これで年間報酬が約三分の一に下がるらしいとのこと。
所詮村議は名誉職だから、という学者のコメントとも如何なものかとは思いますが、税金で報酬を貰っている人は兼業禁止にするか、さもなくば日当というのも一つの考え方かもしれません。

政府のなんちゃら委員会の審議委員などというものにサラリーマンの年収を越える報酬を払うなと゛という悪習も少し見直してみたらいかがでしょう。

(2007.12.26)


観光大国

地味~な扱いで、あまり話題になりませんが、政府は来年度「観光庁」を新設すると、決めた、らしい、です。

私的には、国の方向性として、久々に納得感があるのですが。

これで、さっぱり進まないカジノや免税特区の話も、もう少し進展するかもしれません。

海外の観光客が沢山くるようになれば、自然と英語に親しむ機会も増え、国際感覚も磨かれるでしょう。

日本の最大の売り物は、日本そのものです。
カジノなどの新しいサービス産業を作りながらも、「日本」という商品の質をを落さず、いかに観光大国となることができるかは、工夫のしどころです。

新規投資には夢が必要です。未来図を描いてわくわくするようなテーマでなければ長続きしません。
「観光大国」というテーマは、一部の人達だけが潤う「金融大国」論よりは、国民全員が参加でき、中長期の安定成長が期待できるよいテーマではないかと思っています。

(2007.12.25)


投資一任と証券会社

ある証券会社が投資顧問一任業務の登録をしたとの新聞記事の文中に、こんな表現があります。

「今回の登録で年金基金にも金融商品を直接販売できるようになる」
「PEやHFでなどで運用する商品を中心に、年金基金に売り込む考えだ」

何がおかしいか気付きますか?

投資顧問というのは、金融商品を「販売」するのでもましてや「売り込む」業務でもありません。
顧客の資産を預かり、自らが投資家として、特定の金融商品に対し自らの責任において投資判断を行う、のが仕事です。

金融商品を売って手数料を得る「売り手」ではなく、金融商品に投資して中長期の利益を求める「買い手」です。

このように証券会社が言ったのか、新聞記者が勝手に書いたのかは知りません。
ただ、売り手と買い手の区別もつかないような業態には、免許があろうがなかろうが、年金資産に近づいて欲しくはありません。

(2007.12.21)


日本株LSと日本語

昨年度、ヘッジファンド戦略で唯一マイナスだったのは日本株ロングショート戦略だったと言われています。

そして今年度のヘッジファンド戦略でのワースト3にも、どうやら日本株ロングショートはノミネートされそうです。

ロングショート戦略というものが大なり小なりロングバイアスがかかっているため、市場の下落局面が続けば勝ちにくいという性格ではあるものの、去年も今年もTOPIXより下落幅の大きなファンドがゾロゾロしているというのは困ったものです。

投資環境や制度などにも原因はあるのでしょうが、日本語の判る日本人には優秀なマネージャーが少なく、優秀なマネージャーには日本語のわかる人が少ない、という辺りにも一つ原因がありそうな。

日本人の投資スキルが上達するか、優秀なファンドマネージャーが日本語を勉強するか。いずれにしても先は遠そうです。

(2007.12.20)


失敗の繰り返し

家の本棚にあった『平成金融不況(中公新書)高尾義一著』というを、ふと読んでみたくなり手に取りました。

1980年代後半からの資産バブルの構造とその崩壊の過程を書いたものです。1994年に書かれた本で、資産バブル崩壊が金融システムを介し如何に実体経済に影響を与えるか、までが書かれています。実際の日本はその後実体経済の悪化がもう一度金融システムに跳ね返り、最悪の時を過ごすことになります。

当時の状況に現在の金融危機を重ねあわせてみると、"恐ろしいほど近似しており"、"悲しいほど進歩がない"ことに気付かされます。

外部環境も違い、金融部品は進歩し、リスク管理という概念が定着しているにも関わらず、国や制度を超えて同じことが繰り返されるのは何故なのでしょう?「人間は他人の失敗からは何も学ばない」という友人の言葉がふっと頭をよぎりました。

(2007.12.19)


日本と金融立国

日本が金融業務に長けていないのは事実として。

グローバル経済において金融センスを持つということは一般の企業経営にとっても大変重要なことだと思いますし、唯一無二な国家資源である個人貯蓄を無駄に消耗しないためにも金融知識の啓蒙は大切です。

だからといって、金融立国を目指すことが日本の将来の展望か、と問われると、それは違うのではないかと思うのです。
苦手意識を克服することは大切ですが、それで国家としての生計を立てていこうと思うのはあまりに無謀です。

先進国は皆、製造業から知的サービス産業への転換をはからざるを得ないとしても、それがイコール金融ということにはなりません。
もっと製造業に近い知的サービスはないか?もっと日本にアドバンテージのあるサービス産業はないか?を国として真剣に考えてみる必要はないでしょうか。

相手の土俵ではなく、自分の土俵に相手を引き込む術を日本はもっと磨かなければいけないように思うのです。

(2007.12.18)


一山超えて

価格の異常性や、市場の脆弱性に気付いたとして、それが一般に認識され価格に織り込まれるのにかかる時間を予想するのは、大変に難しいと実感しています。

特に制度リスクに関わる部分については、実際にトラブルが起きてリスクが顕在化されないかぎり、市場ではほとんど無視されます。

日本にREIT市場ができた時、「新しい市場への投資は制度の不備が顕在化してから投資してください。」というお話をしました。もちろんスタートアップ時の高収益を取り損ねる可能性はありますが、制度リスクというものがどこで顕在化するかわからない以上、中長期の投資期間を持つ年金資金では、市場が成熟した後に投資すべきであると考えたからです。

ここにきて日本のREIT市場にも、様々なトラブルが散見されるようになって来ました。業者も投資家も今まで見えなかったリスクを認識するよいチャンスです。随分長くお待たせいたしましたが、来年一年ぐらいかけて制度や業界の基盤が安定化すれば、ようやく安心して投資対象に加えることができるでしょう。

(2007.12.17)


デカップリング?

デカップリング経済、などとカタカナで書くと、何か新鮮な感じがしますが、要は「二極化経済の上に成り立つ不安定な均衡」を示しているにすぎません。

先進国経済は後退期に入っても、新興国経済は成長を継続するだろう。先進国の内需が低迷しても、新興国の内需がそれを補うに違いない。

というデカップリング経済論が、今マーケットの強気を支えています。

何度も書いていますが、ニューエコノミーだの、IT革命だの、ファンド資本主義だの、何か新しいコンセプトを持ち込まなければ現状を説明できないような状況は、決して長続きしません。

ものごと素直が一番です。

(2007.12.14)


バブル崩壊早送り

今の世界の金融市場を見ていると、1989年からの日本の不動産バブルの崩壊後の12年間を10倍速の早送りで見ているような気がします。
金融緩和だけでは対処しきれず、そのうち住専買取機構のようなものが登場したりするのかもしれません。
今年流行った「バブルでGO」という映画では、日本のバブル崩壊は日本資産を安く買い叩くための陰謀だった、という落ちがついていましたが、アメリカでリメイク版ができたりして?

(2007.12.13)


「迷」

来年は迷路のような一年になりそうです。

株式市場の方向性も迷い、
金融政策の方向性も迷う。

ユーロとドルの均衡点で迷い、
円は水準を測るるものさしが判らず迷う。

先行きの判断ではなく、今の景気が良いか悪いかですら迷い、
先行きの判断ではなく、今がインフレなのかデフレなのかですら迷う。

米国は選挙で日本も多分選挙。政局も迷い、国民も迷う。

永遠に出口が見えないように思いつつ、いつか必ず行き着く出口に向って彷徨う一年。

迷ったら休む。相場の鉄則です。

(2007.12.12)


金融株の将来

あるヘッジファンドに、「今の世界の金融株は割安か?」とたずねたところ、「時価評価をしなくてもよい投資家にとっては割安かもしれない」という答えが返ってきました。

今後5年を見て、世界に名だたる金融コングロマリットに兆円単位で投資できるタイミングは今しかないかもしれないが、今後1年を見てこれ以上悪い材料が出ないと言い切ることはとてもできない、ということでしょう。

時価評価を意識する機関投資家のお金が引き、どんぶり勘定の政府系資金が流入するという構造は、グローバルにみれば民間のクレジットクランチを公的資金が補完しているという意味で、金融システムがかろうじて上手く機能しているといえるのかもしれません。

但し、今ある金融コングロマリットの全てが5年後も生き残っているとは限らないと思うのは、バブル崩壊と金融機関の栄枯盛衰を見てきた日本人ならではでしょうか。

(2007.12.11)


これからが本番?!

今回のNYは主に、マルチストラテジーやアロケーション型のファンドオブファンズを中心に、話を聞いてきました。

戦略配分に影響を与えるマクロの経済見通しについて、予想以上に悲観的だったのが大変印象的です。

「リアル・クライシス」という表現を使っている人もいましたが、10月までのサブプライムをきっかけとした市場の混乱と、11月からの混乱とは質が違うし、本当の危機は11月に始まったばかりだという意見が多かったようです。

金融機関の資産の評価損が拡大し、自己資本の毀損が深刻になっていること。
住宅価格が来年1年で10%から15%下落すると予想され始めたこと。
金融機関の体力が消耗するなか、一般企業へのファイナンスがつかなくなり、正常なM&Aも停滞せざるを得ないこと。

ブッシュさんが何を言おうが、雇用統計の数字がよかろうが、将来の懸念は払拭されることはない、とテレビのコメンテーターは口を揃えます。

急に寒くなったので、気持ちが縮んでいるだけなのではないか、という話もありますが、来年度の資産配分にはかなり頭を悩ませなければいけなくなりそうです。

(2007.12.09)


とりあえずの反発

雪のニューヨークです。
相変わらず米国国内からの観光客で賑わっています。

サブプライムローンの借り手に対する救済策や、次の利下げが0.25ではなく0.5%になるのではないかという話題で、NYの株式市場も活況のようです。

シティの資本増強の時もそうですが、この手の話は一時的にはカンフル剤の役目を果たしても、時間が経ってみれば結局状況の悪さをかえって際立たせるだけ、という悪循環に陥るだけなのではないか、という懸念の声も聞こえてきます。

年が明ければ、きれいさっぱり片付いていた、というような、魔法のような話は期待できそうもありません。

今の反発局面はちょっとしたクリスマスプレゼントだと思っていたほうがよいのかもしれません。

(2007.12.06)


再び出張です

本日より、来週の月曜日まで、ニューヨークにいます。

できるだけ、NYから更新する、つもりです。

ごめんなさい。

帰ってくるまで、平穏でありますように。

では。

(2007.12.05)


ミニクラッシュ

11月のヘッジファンド市場は、8月の悪夢が再来しています。
7月8月の損を9月10月で半分戻して、11月また吐き出したという感じでしょうか。

7月8月はヘッジファンド戦略の混乱が株式市場に影響を与えたのに対し、今回は株式市場の下落がヘッジファンド収益を押し下げています。

8月の混乱期に底値で買った投資家の利食いもありそうですし、サブプライム問題を軽く見た投資家の投げもでていそうです。

この11月で最悪期を脱したかどうかは定かではありませんが、市場は実体経済への影響をようやく織り込みにいっているように見えます。

時間を稼ぐことが最も需要であるといわれている今の金融市場において、年金を含め日本の決算が3月であることは、今回に限りややプラスに働くかもしれません。

(2007.12.04)


東京都の現実

渋谷の駅で男性向けに配られていた(らしい)フリーペーパー(広告費用でまかなう無料の雑誌)には、自己破産や金利の過払い分請求の代行業務の広告ばかりが掲載されていました。発売元をみると秋葉原の住所になっています。

秋葉原や渋谷を彷徨う男性の、何人に一人がこうした広告に縁があるという計算で、この手の雑誌が企画されているのかは知りませんが、どこか今の東京を象徴するようで、背筋が寒くなりました。

地方景気が悪化するなか、職を求めて東京に人口が集中するため、東京都の人口はコンスタントに増加しています。その一方で借金特集で雑誌が成り立つほど、生活環境の混沌は深まっています。

地方に都民の税金を還元するようなゆとりは、東京都にはもうないのが現実だと思うのは、都民の贅沢なのでしょうか?

(2007.12.03)

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