2008年01月の思いつき


縮め縮め

もし今、とても割安な投資対象が沢山あると考えるなら、いったん縮むことです。

市場が回復したら身軽にスタートダッシュできるように。
市場にもう一度ショックが起きてもジッと我慢できるように。

水ぶくれした資金フローを前提にしたポートフォリオも、戦略も、組織も、そしてリスク許容度も、適正水準を探る時期に来ています。

既に縮み終わって涼しい顔をしている人。出番です。ステージ中央にお進みください。

(2008.01.31)



ボラティリティの上昇と金融市場の縮小

投資家のリスク許容度が低下する要因には、大きく分けて二つあります。一つは実際の損失額の増大。もう一つは潜在的な損失可能性額の増大です。

特に現在のように定量的なリスク管理モデルが発達している状況においては、この潜在的損失可能性金額というものが、リスク許容度に大きく影響を与えます。

潜在的損失許容度に最も大きく影響を与えるのが、市場の変動幅(ボラティリティ)です。ボラティリティの上昇は将来の損失(利益)の可能性を大きくします。

直近見られる日本の株式市場のボラティリティの上昇にはややオプションヘッジ的な異常値が見られますが、それを別としても株式も債券も為替もクレジットも世界的に変動幅が大きくなっていることは、投資家全般のリスク許容度を確実に低下させています。

資金フローとは別の次元で、金融市場の縮小は確実に進行していると見るべきでしょう。

(2008.01.30)



株価対策と景気対策

米国にしろ、欧州にしろ、今回の金融市場の混乱を受け、個人消費を喚起するような「景気対策」を出してきています。

それに対し日本で騒いでいるのは、「株価対策」です。

個人投資家の株式保有比率が高い米国であれば、株価対策が景気対策といえないことはないかもしれませんが、それでも直接的な株価対策はしません。ましてや個人の持株比率が10%そこそこの日本において、株価対策をすることにどれだけの経済効果があるのでしょう。

株式の逆資産効果が金融システムの安定に影響するような局面であるならともかく、今の日本経済がこの水準の株式で金融不安を起すような環境にはないと思われます。
必要なのは株価対策ではなく、景気対策です。対策を打つ必要があるほど日本経済は悪くないと政治家が判断するのであれば、株価に左右されず静観するしかありません。

株式市場は経済活動の結果でしかないということを、もう一度思い出す必要があると思います。

(2008.01.29)



遅い…遅すぎる

2005年から2006年半ばまでの、明らかな景気上昇局面で、日本が手を打ち損ねたこと。

利上げ・雇用所得の上昇・新興市場の健全化。

環境が悪化してからでは、できないこともありますし、手遅れなこともあります。

たとえ景気が不安定になったとしても、ない金利は下げられません。
日本の構造改革の遅れに市場の目が向きつつあるときの賃上げは、日本の株式市場への興味を減退させることになるかもしれません。
散々市場が壊れてから上場基準に問題があったと公表するなど、日本の新興市場はジャンクだと世界中に宣言しているようなものです。

改善や改革は環境のよい時に行うものです。
日本の経済政策がどうもめぐり合わせがよくないように見えるのは、別に運が悪いからではなく、現実に結果が出てからしか動かないからです。
なんとなく誰かが走り出したらついていくという、スターターのいないマラソンレースを見ているような気がします。

(2008.01.28)



麻痺した?

ソシエテジェネラルの7500億円損失という報道そのものより、それが市場でさらっと受け流されているのには驚きます。

95年にベアリングが破綻した時の損失が1100億円ぐらいです。当時と通貨価値が異なるわけではないので、如何に金融機関の規模が拡大したかということでしょう。

とは言うものの、このところのサブプライム関連損失の規模が大きかったため、損失額への反応が弛緩しているとするなら恐ろしいことです。

(2008.01.25)



ケチはエコ

大阪にいます。大阪の地下道は夏暑く、冬寒い。外気並みに寒い地下を歩きながら、これは「ケチ」なのか「エコ」なのかと考えた。

結果論としてみれは゛大阪はとても環境にやさしい街、なのかもしれなぃ…結果論ですけどね。

(2008.01.24)



自分のことで精一杯

昨晩、米欧日の協調利下げを期待していた向きには、失望感もあった米国の利下げですが、一昨日休場だったNYマーケットが100ドル程度の下げで済んだのは、それなりに評価すべきでしょう。

ただ、たかだか0.5%しか金利がない日本はともあれ、欧州の足並みが揃わないことに、やや不安を感じます。

各国ともどこか他人事で、最終責任を取ろうとしないようにも見え、また各国とも目先の株価の下落と潜在的なインフレの押さえ込みとの間で身動きが取れないようにも見えます。

中国の銀行の潜在損失が実現していくなかで、新興国株式が調整を始めても、それに構う余裕も意志も欧米にはないでしょう。

急成長した新興国の金融市場に、各国の金融当局の調整能力がついていっているのかどうか、これから試されることになります。

(2008.01.23)



黙っていても年が変われば1月になり2月になる。
日本にいる限り1月と2月は寒い。
充分わかってはいても、生まれてこのかた何十度と経験していても、寒いものは寒く、寒いのは辛い。

上がったものは下がる。永遠に上がり続けることはありえない。
充分わかってはいても、何度経験していても、下がれば辛い。

春まだ遠く…冬眠。

(2008.01.22)



アジア???

北京オリンピックまであと200日。

海外から見ると日本と韓国と中国の区別がはっきりしないらしいのですが、当人達にアジア全体としての盛り上がりに欠けるのはもったいないことです。

オリンピックというお祭りですら一体感がないのですから、経済圏や通貨圏など、先のまた先の話…

(2008.01.21)



自業自得とばかりは言っていられない

昨年までのサブプライム関連政策発動の際には必ずと言っていいほど「我々にはマネーゲームに踊った投機家を救う意志はない」という意味の言葉が付け加えられていたことでも判るように、アメリカの政策当局には、株や住宅価格が下落することを、どこか冷ややかに見ている部分があります。

それは、日本の資産バブルが崩壊して数年の間、日本の政治家が言っていたことと同じです。

金融市場や不動産市場の自業自得が、本当に国民生活を直撃するようにならないと、根本的な解決策は発動されません。

今のアメリカにはまだ余裕がみられます。利下げや減税といった時間稼ぎだけでソフトランディングできると考えている様子が窺えます。

アメリカの基礎体力の強さがかえって病状を長引かせる要因にならなければよいのですが。

(2008.01.18)



銀行の変質と中小企業

この年末を挟んで、中小企業の倒産がこの数年になく多かったとある経営者の方が言っていらっしゃいました。

海外からの受注の伸びが止ったという実需の問題だけではなく、ここに来て金融機関の貸し出し態度が急激に厳しくなっているという印象があるとも指摘されました。

1年前に施行されたバーゼルⅡによる銀行のリスク規制の強化、公的資金斡旋融資の金融機関へのオンバランス化、日本初の商業ローン証券化商品の失敗、そしてサブプライム問題。

中小企業とは直接的な関係は極めて薄い領域でのわずかなほころびが、ジワジワと中小企業の体力を失わせているのかしれません。

新興株指数の下落が止らないのは、不動産関連の投げだけが原因ではないのかもしれないと思っています。

(2008.01.17)



親の背中

当社が計算する国内株式の理論値に、TOPIXがほぼ収斂しました。

TOPIXが理論値を上回ったのが2005年8月末。まさに第二次小泉内閣の郵政解散の直後です。

郵政選挙での小泉圧勝後に始まった過度な成長期待とその反動が一巡し、冷静に周囲を見回してみると、日本の金利水準にも期待名目成長率にもなんの変化もなかったことに気がつきます。

そして株式の水準も元に戻りました。

調子に乗ると手に負えないほど暴れることもありますが、株式市場は親の背中を見て育つ子供のように、ある意味とても素直だと思います。

(2008.01.16)



バルチック指数

バルチック海運指数(不定期船運賃指数)というものがあります。
海上輸送の需給判断をするのに使われる指数です。

2007年夏のサブプライムショック以降、新興国を中心とした実体経済が好調を持続していることの根拠として、この指数の堅調さが指摘されてきました。

さて、下記のグラフにみるように、今年に入ってからバルチック海運指数の急落が起きています。今のところこの指数の下落の影響を受けているのは、先進国の海運株が中心のようですが、この指数は中国株との連動性が高いことでも有名です。

昨年来の金融市場の混乱が少しずつ実体経済を侵食してきている兆しではないかと懸念しています。


(2008.01.15)



日本売り?

この年末をはさむ1ヶ月の日本株のパフォーマンスの悪さは群を抜いています。
過去1ヶ月で10%以上下落している主要株式市場は、日本とオーストラリアぐらいです。

オーストラリアについては、為替も含めこれまで上がり過ぎた反動といえなくもないのですが、日本については正直よくわかりません。

ちなみにREIT市場でも、火元の米国REITよりJ-REITの方がはるかに下落しています。

感覚的にはいわゆるジャパンパッシングで買われない、というより積極的な売り(空売り?)が入ってきているような気がします。

日本売りの根拠がどこにあるのか、今ひとつ見えないのがとても不安です。

(2008.01.11)



中国リスク色々

「地球儀から台湾が消えた。」という記事の中の一文です。

"学研トイズは「当初は日本の学校教科書同様の表記をするつもりだったが、工場が中国にあり、中国政府から表記を変更しないと日本への輸出を認めないと迫られた。すでに注文が殺到していたので、仕方なく中国政府の指示に従った」と説明している。"

なんというか、ふぅーん。
中国リスクというのは、本当に幅の広いものだと、感心している場合ではない?

通常の商取引の常識が通用しない国が、国際経済での影響力を強めていくと、これまでの国際経済システムは今までどおり維持できるのでしょうか?

笑い話ではすまされない不気味さを感じる記事でした。

(2008.01.10)



インフラファンド

道路や空港、ダムなどの水資源など、国の公共施設の建設費用に、外部のファンドの資金を利用する仕組みを「インフラストラクチャーファンド(インフラファンド)」といいます。

インフラ建設の真っ只中にいる新興国だけでなく、欧州などインフラ設備の老朽化が進んでいる国においても、インフラファンドの存在感がこの数年で急拡大しています。

さて、我が国では、羽田空港ビルの株式をオーストラリアのファンドが購入したことをきっかけに、空港関連株式の外人持株比率の上限を20%とする法案が提出されるそうです。
これは、いわゆる「インフラファンド」の存在を基本的に日本は認めないと、世界に宣言したことになります。

確かにドイツなど欧州各国でも、急激なインフラファンドの増加に対しては規制をしようという流れはでています。
ただ、インフラファンドの投資が本格的に始まる前に締め出したのは日本ぐらいかもしれません。

世界的に企業買収ファンドが下火になりつつあるなかで、今最も投資機会が豊富であると考えられているのがインフラファンドです。

日本にとって中長期的によいか悪いかは別として、少なくても短期的にみれば日本への投資資金のパイプがまた一つ途切れることになるのは間違いありません。

日本の将来、自助努力あるのみ、です。

(2008.01.09)



幕末開国?

どうなれば日本市場にもっと興味を持つのか?という問いに、移民政策と答える海外投資家は少なくありません。
中国やインドは論外として、米国は三世代に渡る移民政策で、欧州は統一経済圏による労働力の流動化によって、変わったところではアイルランドは海外への出稼ぎ人口のUターンによって、制度的な労働力の底上げに成功しています。

北欧のような小国であれば別ですが、億単位の人口を抱える先進国経済で出生率議論だけで人口問題が解決できるなどとは、ナンセンスだと思われているのかもしれません。

もちろん海外投資家から評価されたいから移民の受け入れをするといった議論はそれこそナンセンスです。

ただ、そうでもしないかぎり日本経済には成長が期待できないのではないか、という彼らの意見に多少は耳を傾ける必要も感じます。
日本にとっては幕末開国ほどの大議論をそろそろ真剣に始めなければならない時が来ているのだと思っています。

(2008.01.08)



あけましておめでとうございます

金融市場は、相変わらず波乱の幕開けとなりましたが、気を落さず本年もよろしくお願いいたします。

新年早々明るい話ではなく恐縮ですが、今年のテーマは世界の金融と経済がどう着地するか、につきるでしょう。

ソフトランディングを目指して、各国中央銀行が必死で頑張ることになるのでしょうが、個人的にはソフトランディングというより、「不時着」のイメージの方が強いです。

無事に不時着をするために必要なことは、物騒ですが新興国株と商品市況が早めにクラッシュすること。
できるだけ燃料を軽くした状態で、世界経済全体がいったん縮むことです。

世界経済が「景気後退下の物価上昇」という最悪のシナリオに突入しないために、余分な燃料を一回捨てる覚悟が必要です。

これまでにも増して、慎重に慎重に一年を過ごしたいと思っています。

(2008.01.07)


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