2010年06月の思いつき


自信喪失?

このところ、伝統的な株式投資家は根本的に自信を失っているように見えます。別の言い方をするなら、世界の株式市場が投資家の信頼を失いつつあるように見えます。

昨年の急反発にも関わらず、投資家の多くが一昨年の悲惨な急落の記憶に縛られています。
少しでも株価が上昇すれば投資配分を減らすために売り、少しでも悪材料が出れば怖いから売る。

一方で、CTAに代表されるような、企業業績とは無関係なアルゴリズム的な売買が市場の出来高の過半を占めるようになり、高速売買システムの導入で株価の歪みは人間の判断を待つことなく収斂していきます。
そして長期投資家の資金フローが減少し、企業ファンダメンタルズが反映しにくい市場環境の中、意味無くボラティリティだけが上昇し、長期投資家資金が更に逃避する、という悪循環が繰り返されているのがこの数ヶ月です。

本来の株式参加者が自信を取り戻すには、値段の問題ではなく、もう少し時間が必要なのかもしれません。

(2010.06.30)



どんよりとしたエコ

ゴア元副大統領の「不都合な果実」から始まった、米国の脱石油戦略は、今年2月のオバマ大統領による「原子力発電再開宣言」により、一定の方向性が出てしまったようです。

石化燃料でもなく、原子力でもない、クリーンエネルギーへの開発熱がすっかり醒めてしまっていることを、今回米国出張をしても感じます。

またここに来て、ロシアと旧東欧圏との間での「天然ガス」供給について頻繁に争いが起きていることに呼応し、ポーランドなどの旧東欧圏でチェルノブイリ事故以来24年ぶりに原発の誘致活動が活発化しているとの報道も見られるようになりました。

原発先進国である日本にとって、このブームは産業的には悪いことではありません。

などというお話を基金の理事会でさせていただたいていた際、ある年金の理事の方が発した「地球の方向性、それで本当にいいの?」という一言が、今の梅雨空のように私にはとても重く感じられました。

(2010.06.29)



時間の経過

米国金融規制法案。原案が膨大すぎて誰も全文を理解していない、といわれていますが…。
施行後数ヶ月、一年経ってから、密かに埋め込まれていた地雷が破裂し金融市場を更に萎縮させるのか、隠されていた穴が露出しザル法となるのか。
時間軸の問題はあるにせよ、金融機関の緩やかな衰退、という方向性は明確であるように、私には思えます。

時間軸という概念でいえば、G8の財政赤字半減目標の採択。
財政赤字を減らすには、「支出を減らす」か「収入を増やすか」ということで、「支出を減らす」のに手っ取り早いのが「年金の支給開始年齢の延長」、「収入を増やす」には増税。

年金の支給開始年齢の延長は既に欧州各国では実行に移されつつあり、増税も金融機関増税や消費税の引き上げが決定されている国もあります。

最も健康寿命が長く、最も消費税の低い日本は、よく言えばいずれの改革も実行余地が十二分にあり、悪く言えば対応が極めて遅い。

他国より2年余分に与えられた執行猶予期間を、どれだけ有意義に活用できるのか。5年などあっという間です。

(2010.06.28)



!!!!! zzzzzz ……

勝ったぁー。
点入ったぁー。

日本が変わりそうな予感?
株上がれぇー。
円上がるなぁー。

米国の金融規制法案など、日本株には関係なかろうー。
なんで米国市場以上に売られてはじまるんだぁー。

興奮と寝不足と暑さとで、ちょっと脳みそ溶け気味です…

(2010.06.25)



ようやく行政処分

不動産証券化商品を個人向けに販売していた証券会社が、事前のリスク説明義務が不備であったと行政処分を受けました。

証券化のエクイティ投資に内在するレバレッジのスキームについて、顧客だけでなく、社内でも知識が共有できていなかったとみられています。

証券化商品やデリバティブ型の仕組債など、販社自身がリスクの所在を理解できていない個人向け商品は、他にも沢山あります。

今回は被害総額も大きく、社会問題化したために、行政処分にまでいきましたが、似たような事象は到る所に散在していそうな気がしています。

個人向け金融商品の組成の在り方について、業界全体が反省するよいきっかけになればよいと思っています。

(2010.06.24)



見聞録

消費税を巡る党首討論、、、あまりのレベルの低さに愕然としたのでコメントしないことにします(怒)。

ということで、米国見聞の続きです。
「I phone」 の時代です。携帯電話もブラックベリーも駆逐されています。ご自分でPCメールを打てないはずのシニアな方が「I phone」を握っていたのをみて、ちょっと笑いました。

次に自転車。ニューヨーク市が自転車通勤を推奨し、各テナントビルは自転車を持ち込めるエレベータを完備するか、駐輪場スペースを確保するか、ということが義務になったそうです。それに連動してか、街にはレンタサイクル屋さんが沢山います。自転車タクシーの数も急増しているように感じました。

自転車はエコの象徴、といっている割には、ビルの中の空調はクールビズにはほど遠い低温で、なんともチグハグであるのは、この国ならではのおおらかさでしょうか。

それにしても来るたびに印象が変わるこのニューヨークという街は、本当に不思議な生き物です。

(2010.06.23)



次の時代へのダッシュ

お久しぶりです。
半年振りの米国出張でした。

予選2位の石川遼君は無名すぎてゴルフ中継にほとんど映らず、宮里藍にいたっては、女子ゴルフのニュースすらない、という悲しい環境から、盛り上がる日本に戻ってニュースを満喫しています。

金融と不動産の専門家の先生とお話してきましたが、共通していたことは、欧州危機は米国経済にとってむしろプラスだったのではないか、という認識。長く米国経済を牽引していた産業構造としての「金融」「不動産」の時代が2008年に確実に終った、という認識。

次の時代を担う産業が「IT-特に無線技術」という話に意外な思いをして帰国したところ、民主党の中期経済戦略が「IT]になっていたので、妙に納得してしまいました。

土曜日のウォールストリートが、新宿の歩行者天国のように国内外の観光客で溢れ返っていたのも、米国の金融界が「過去の物語の一つ」になりつつあることの証なのかもしれません。

この時代の変化は日本にとっては悪くない方向性のはずです。
日本が乗り遅れてしまった時代がようやく仕切りなおされようとしている今、スタートダッシュが大切です。

(2010.06.22)



街の黄昏…

海外の方へのお土産を探しに久しぶりに日本橋を歩きました。

寂れた…とまではいきませんが、街に錆がつき始めている印象があります。

あっちのデパート、こっちのデパート、老舗と言われてたはずの小売り屋さん。全くやる気が感じません。
古くからの上得意さん以外はお客に見えない街柄なのかもしれませんが、この時代それでやっていかれるのでしょうか…

大衆的になりすぎているといわれながらも、集客力のある銀座の隣で、生きる場を見失いつつあるのかもしれません。

近代日本の商売の中心が元気でないのは、物悲しいものです…

ということで、来週の月曜日まで海外です。

思いつきは火曜日再開します。

(2010.06.16)



礼儀正しいヒーロー

こまかいことは判らないし、そもそも前半のゴールまでで睡魔に負けて意識を失った軟弱ものなのですが…

なんと言っても、若手中心で勝った!というのはとても気持ちのよいものです。

テニスの伊達選手のように、ピークを超えた年齢で頑張っているスポーツ選手はそれはそれで感動しますし、尊敬するのですが、心身ともに老齢化が進む今の日本に必要なのはやはり「若い勢い」だと、心底実感してしまいました。

それにしても、このところの若手で活躍している人たちは、随分礼儀正しくなりました。
若者が、変な肩肘を張って突っ張らなくても、社会が自然と彼らを認めてくれる環境が出来てきた証なのであれば、それはとてもうれしいことです。

(2010.06.15)



天下りでもなく、地滑りでもなく

道路関連事業五社の社長を民間から採用するというニュースが流れています。

トップの天下りと民間からの地滑りと、私から見るとどっちもどっちです。

郵政民営化にしても、当初トップの人選の経緯がもう少し明確であれば、その後の展開があれほど拗れなかったのではないかと思います。

トップ人事がボトムアップではない組織の足腰は弱い、というのは運用機関でも一般企業でも同じなのではないでしょうか。

(2010.06.14)



情報の共有化!?

弊社の社内での作業や資料作成の際でも、その作業の先にあるお客様の顔を思い浮かべた仕事をして欲しい、というのが社長の田口の口癖です。

ですから、少しでもお客様を身近に感じてもらうべく、お客様方のあんな口癖こんな口癖、あんな失敗こんな失敗!?を社内情報としてで共有化させていただいております…

これもサービス向上のためと、皆皆様どうかご容赦くださいませ(笑)

(2010.06.11)



気持ち

このところ、運用機関のプレゼンにあまり参加していないのですが、昨日は社内の人繰りの都合で久々にプレゼン四件を聞かせていただきました。

やはりファンドマネージャーさんと話すのは楽しいです。特に、自分の子供のようにプロダクトを愛でているファンドマネージャーの話は聞いていて飽きません。

もちろん、その思いにこちらが飲み込まれてしまうと、適正な評価ができなくなる、というリスクは十分自覚しする必要はあります。

それでも、やっぱりプレゼンは気持ちが伝わることが一番だと再認識をした一日でした。

(2010.06.10)



政治の方向性

何故か今日も売られている日本株式市場ですが、菅内閣の税制改革路線は、海外投資家にとって悪い方向性ではないと思われます。

但し、消費税も子供手当ての見直しも、選挙という視点でみるとあきらかな負け戦略とみなされそうなので、短期的には政局の不安定要因の増加で売り、中長期的には日本財政の構造改革から買い、という判断になるのかもしれません。

首相のメッセージ力、という観点でみても、少なくても鳩山政権よりは伝達力がありそうなので、これもプラスに働く可能性があります。

いずれにせよ海外投資家は実行力を重視します。

本当の評価はこれからです。

(2010.06.09)



ベンチャーキャピタルの現実

売上げを60倍に嵩上げし、粉飾上場をしたとして上場廃止が決まったエフオーアイ。

粉飾を見抜けなかった公認会計士が悪いとか、東京の上場審査が甘いとか、主幹事の責任とか、色々言われていますが、この会社に事前投資をしていた「錚々(そうそう)たる」ベンチャーキャピタルの面子を眺めていると、我が国のベンチャー業界の進歩のなさに、愕然とします。

IPOをするしない以前の問題として、この40件以上のリストに連なるベンチャーキャピタルの内、誰一人として粉飾に気づかなかったのでしょうか?

それとも、大手商社系のベンチャーキャピタルなどの音頭に、他の数十社は「何も精査することなく」、「いつも通り相乗り」をしただけなのでしょうか?

巨額粉飾企業に投資をした、という現実を、たとえ相乗りであったとしても、各ベンチャーファンドは真摯に受け止めなければ、この業界の将来は本当にないと、私は思います。

(2010.06.08)



どこも増税

先週末のハンガリーの財政危機宣言についても同様ですが、「この期に乗じて増税をしてしまおう」という、各国政府の下心が、市場の混乱を増幅しているようにも見えます。

増税は国民受けが悪いのはどこの国も同じで、でもお財布事情が苦しいのもどこの国も同じ。

であれば、責任を他人に押し付けられる環境でドサクサに紛れた増税という手が使えるなら、そのチャンスを逃したくはないでしょう。

日本の場合は、G20で財政緊縮を要請された、という国際世論を利用して、国内世論をどう説得するか、というところかもしれません。

ちなみに菅新総裁の経済顧問と言われている小野善康さんという方は、不況期の増税を唱えている方です(『不況のメカニズム』中央新書)。

日本も本格的な税制論議の時期が近づいているのかもしれません。

(2010.06.07)



ぴよぴよ♪

今週から、弊社で3人目の新卒さんが入社しました。

わが国の資産運用業界における人材不足はあきらかで、それを嘆くのであれば、自ら育成していくしかありません。

10年後の弊社だけでなく、10年後の業界全体のためにも、コツコツとした人づくりを続けていかなければならないと思っています。

そのうち、皆様のお目に触れる機会も増えてくると思います。ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、業界全体の将来のためと、暖かくご指導いただければ幸甚です。

(2010.06.04)



皆でマイナス?

乱高下の五月が終わりました。

四月後半から始まった下落相場の中で、ヘッジファンドも久々に大きなマイナスとなったようです。

株式市場もクレジット市場も約一年に渡るラリーで、ややロングに傾き過ぎていたこと、CTAなどの順張り資金が増えていたことなどから、業界全体のマイナスを大きくしている傾向があります。

今回の欧州危機の犯人かと思われているヘッジファンドですか、今のところ大儲けの話もあまり聞こえてこないのは、良くもあり、悪くもあり、です…。

(2010.06.03)



選挙選挙選挙…

本当に首相の回転率の高い国です。

短かったと思った麻生首相も、役に立たなかった森首相も、それでも1年に数日足りない程度の継続期間があったのに対し、鳩山首相は結局8ヶ月で終ってしまいました。

鳩山さんが首相の器でない、という意見には特に異論はないですが、それでも、「選挙に勝つため」という党内事情で、一国の総理大臣の首を挿げ替えるという今の政治家の発想は、間違っているとしか思えません。

市場の反応は円安。株高。

円安は正しいとして、これで買われる株というのも、本当に情けないことです。

(2010.06.02)



静観

トルコの人道支援船にイスラエル船が衝突し、緊張が高まっていると報道されています。

ドイツ大統領が口災で引責辞任をし、英国では財務大臣がスキャンダルと公費流用で辞任しました。

誰も彼も一体何をしているのか。
おかしいのは日本だけではない、と安心している場合ではありません。

金融も経済も最悪期を乗り切っただけで次の展開が見えないように、何かきっと「大きな過渡期」に差し掛かっている各国の政治も、方向性を失っているように見えます。

今のようになんとなく歯車が噛合わなくなっている環境で、無理に動いて局面の打開をはかるのは、事態を悪化させるだけのように思っています。

運用も当面静観です…

(2010.06.01)


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