2011年07月の思いつき


変なねじれ

今のアメリカが「やっぱりオバマではダメだった」という世論を作りたがっているように見えてなりません。

2008年にオバマ大統領を世に送り出したのは、時の勢いであって、アメリカの本心ではない、と言いたい人が沢山いそうです。

単なる与野党のねじれ、ではなく、もっとある意味で「たちの悪い」ねじれが今のアメリカを覆っていることが気がかりです。

ロイターの表現を借りれば、「瓢箪からコマの米国金融危機」ということが、まさか起きないと、世界中が信じている、この週末です。
寺本名保美

(2011.07.29)



極まった先

「文明が 極まつて今 うちは風」(修文)
高校時代の恩師が詠んだ句です。

この句に特別気持ちが惹かれるのは、極めた先がどん詰りで、出口が見えずに崩壊寸前、という金融道に居るからなのかもしれません。

団扇風に涼む昭和レトロの生活に戻るように、きっと金融市場もどこかの地点まで戻らなければいけないのだと感じています。

この十数年で急激に拡大した「金融技術」に、幾分かの使用制限を付け、安全基準を高め、実態経済との折り合いを付けやすくすることで、金融市場はその本来の役割をむしろ取り戻せるのではないかとも思います。

前進だけが進歩ではない。行き過ぎたと思えば戻ればいい。

暑くて少しレトロな日本の夏は、そんなシンプルな答えを金融界に示してくれているのかもしれません。
寺本名保美

(2011.07.28)



値幅の拡大

「相場」とは不思議なもので、一度経験した値段の記憶を消し去ることは、決してできません。

たとえそれが、異常な環境下で瞬間的についた値段であっても、その値は現実のものとして認識されます。
従って、震災直後につけてしまった76円25銭というドル円は為替市場には歴然と存在し、だからこそ、一年前には想像だにしていなかった77円台の為替を今の我々は意外に平然と受け入れているのです。

逆にいうなら、76円25銭は何がなんでも死守しないことには、為替市場の潜在リスクは拡大するばかりということになります。

そうはいっても今回ばかりは日本独自でできることには限界があります。頼みますょオバマさん!
寺本名保美

(2011.07.27)



観光立国、器は着々…

先日の大阪駅リニューアルに続いて、今度は北海道の新千歳空港のリニューアルを見てきました。

空港のなかにある映画館は「じゃがポックルシアタ-」と言います。

映画館のとなりには、温泉施設もあり、有名な鮭の小売屋さんの出店など、商業施設も充実しています。

あとは、観光客を待つばかり、、、なのですが、やはり7月とは思えないほど、海外観光客の方の姿が少ない、というのが現実です。

東京でもそうですが、海外観光客を見かけると、報奨金でもあげたくなる気分になります。

間が悪いことに、過去最高の円高。
海外からの旅行者には、為替交換レートを10%ディスカウントする位の策を講じる必要があるのではないかと思ったりしています。
寺本名保美

(2011.07.26)



ただの国

ユーロの通貨としての信任を維持すべく、なりふり構わず手を打ち出してくる欧州を尻目に、米国議会がドルの通貨としての信任を人質として政争をしているのであれば、それは米国の傲り以外のなにものでもありません。

すでに軍事大国としての抑えがきく時代でもなく、金融が世界を動かす時代でもない中、基軸通貨としての威光がなくなった米国に何がのこるのか…

米国議会はもう少し真剣に考えたほうがよいのではないだろか?
寺本名保美

(2011.07.25)



これだけ?

ギリシャ国債を保有する民間金融機関に与えられたオプションは以下の4つ。

1)30年債との額面での交換、2)償還を迎える国債を額面で30年債とロールオーバー、3)額面の80%での30年債との交換、4)額面の80%での15年債との交換――。金利は、1)と2)が4.5%、3)が6.42%、4)が5.9%。(ロイター)

ちなみに、昨日のギリシャ10年国債の利回りは15%ぐらい。どれをとっても大損。これをデフォルトと言わなければ、何をデフォルトと言う?

欧州各国が保証を与えるといっているギリシャ国債の総額は350億ユーロ。ギリシャに対する金融支援金額二回分の3000億ユーロのたった10分の1。

これだけ時間を掛けて出した答えとしては、ひどく貧弱に見えるのは気のせいでしょうか。
とりあえず戻している株式市場に敬意を表して、気のせい、ということにしておきますが…
寺本名保美

(2011.07.22)



感動の裏の厭世観

マスコミは未だ「なでしこ」一色です。

久々良い話、、、同感。
感動した、、、同感。

でもですね、、、

やっぱり女性は強い!と連呼する、男性諸氏、、、なさけない。

スポーツの世界以外でも耳にする事の多くなったこのフレーズ。
そうはいっても歴然とした男性社会である日本においてのこのフレーズは、どこか厭世観が漂う、投げやりさを感じます。

そんなこと言ってるからダメなんだってば!!!
寺本名保美

(2011.07.21)



セミナーお礼とグローバルスタンダード

昨日は台風接近の中、弊社セミナーを無事開催させていただきました。ご参席いただきました皆様、ありがとうございました。

今回は「少し風変りな年金数理人」から少し刺激的な年金ALMのお話をさせていただきました。

英米がいう「グローバルスタンダード」は「イギリススタンダード・アメリカスタンダード」であって、それが日本で「スタンダード」としてマッチするとは限らない。という年金数理のお話は、そのまま運用の世界にも成り立つものです。

「インフレによる賃金上昇」と「積立余剰」という二つの前提に立って構築されてきた彼らの「年金理論」は、日本では適合しないだけでなく、これからの英米の年金制度においてもその適合性が問題になっていくかもしれません。

日本が日本の置かれた前提のもと、独自のスタンダードを構築していけば、いつしかそれがグローバルスタンダードになるのではないかと、結構本気で思っています。
寺本名保美

(2011.07.20)



お足元が悪いですが…

本日は、弊社の定例セミナーです。

なでしこの「旋風」は、歓迎ですが、台風の「暴風」は困ったものです。

本日のキーワード…

「過去の常識は、今の非常識。今の非常識は将来の常識」
「米国の常識は、日本の非常識。今の日本の常識は将来の米国の常識?」

詳細はまた明日。
寺本名保美

(2011.07.19)



たかがAAA、されどAAA

米国の債務上限引上げ問題が、欧州ソブリンのように格付け機関との「イタチごっこ」になりそうな気配がしてきました。

とりあえず、目先小幅な引上げで時間を稼げば、あとは大統領選で決着を付ければよい、という米議会の思惑に対し、「根本的な解決を先延ばしにするのであれば格下げをする」と格付け機関がクギを刺しにきています。

万が一米国国債がAAAでなくなると、まず米国のMMFに甚大な影響が出ます。直近のルールが確認できませんが、当初のルールのままであれば米国MMFは純資産の95%を「二つ以上の格付け機関でAAAを取得」している債券に投資しなければならず、この制限に抵触した債券は、5営業日以内に売却しなければならない、ということになっています。

こうした制限がついているのは、各国の外貨準備資産を含め、米国MMF以外にも非常に広範に渡ると見られており、米国がAAAでなくなることの影響は、想像をはるかに超えるものになる可能性があります。

国と格付け機関との不毛なバトルの第二ラウンドが始まりそうです。
寺本名保美

(2011.07.15)



あまりの暑さで

お昼に一歩外に出た瞬間、あまりの暑さに「思いつき」を書くという作業が、頭から飛びました!

すみません。

来週の火曜日の弊社の定例セミナーは、普段とは少し趣を変えて、日頃、運用機関さんとの面談で私が思っていることの本音トーク、といきたいと思っています。

だから資料は今回は少なめ。。。
別に暑さで手を抜いたわけではありません。。。ので。
寺本名保美

(2011.07.14)



支援網の破綻

アイルランドの格下げ。

ポルトガルが格下げになった先週初から、アイルランドの信用スプレッドが急拡大しているところを見ると、この格下げは少なくてもクレジット市場では予想通りの展開といえそうです。

一昨年、救済ファシリティを使ったギリシャ・アイルランド・ポルトガルとが足並みを揃えて格下げされたことは、日本や中国まで資金拠出を行った欧州への国際支援網が、たった一年持たずに破綻したことを意味しています。

今回の一連の騒動を、ギリシャやアイルランドといった個別国の財政問題という枠組みに押し留めたい欧州各国政府に対し、そもそもこうした国を抱え込んだユーロというシステムの問題だと主張する市場参加者との間の亀裂が再び拡大を始めています。

数ヶ月前までは、「起きたとしても10年後」と言われていたユーロの再編。想定外に早いかもしれません。
寺本名保美

(2011.07.13)



ユーロ急落

それにしても、日本のニュースのヘッドラインに欧州財政危機が取り上げなさすぎます。

為替にしてもドル円で動かなければ話題にならず、先週末に116円80銭だったユーロ円が、111円80銭になってもニュースにならない。

国内に大切な話が沢山あるのはわかりますが、今の国民生活に多大な影響を与えるかもしれない危険について、事前に何の警告も発せされないようなマスコミであるのなら、その存在価値を疑います。

一旦事が起きてから、立派な解説記事を書くのではなくて、事が起きる前にもう少し伝えられることがあるのではないかと思うのです。

世の中本当に動いています。目と耳をよく働かせておかないと、思わぬケガをします。
寺本名保美

(2011.07.12)



格付け消滅?

欧州で格付け機関に規制を掛ける動きがとうとう出てきたようです。

格付け機関を規制するのではなく、格付けの使い方を考え直したほうがよいのですが、欧州各国がヒステリーを起こしたくなる気持ちも判らないでもありません。

もし世の中からソブリン格付けというものがなくなったら、お墨付きをなくした投資家は外国債券投資に慎重になるでしょう。各国は債券発行をするためにより投資家との会話を重視せざるを得なくなり、より厳格な財政規律が必要となります。

ある意味格付けというフィルターかなくなることで、国にも投資家にも本来あるべき規律が回復するのなら、格付けがなくなるのも悪くはないかもしれません。

もちろん、金融市場には一時的な大混乱が生じるので、ソブリン格付けが突然なくなるようなことにはならないでしょうが。寺本名保美

(2011.07.11)



よく似た光景

今の金融市場の雰囲気が、2008年の7月と非常に近いことが気になります。

1年前からの市場の問題がむしろ悪化しているにもかかわらず、株価が上がることで、問題そのものが解決に向かっているような錯覚。

市場の問題が悪化している中で、意を決したような欧州の利上げ。

2008年はベアスターンズの救済で、今年は日本の震災で、異常な規模で行われた流動性の供給から3ヶ月。市場価格はよくわからないまま押上げられています。

株価の動きより、ニュースフローの方を当面重視したほうがよいと感じています。
寺本名保美

(2011.07.08)



どこもかしこも進歩ない

あちらこちらで「日本は大きく変わろうとしています」とかいうキャッチフレーズを目にしますが、あちらこちらで全く変わっていない現状を目にします。

国の公的年金運用(GPIF)についてのマスコミ各社の理解度や報道姿勢は進歩ないどころか若干後退気味です。GPIFサイドの公表資料が以前に比べ詳細で且つ高度になってきている分、受け手の記者サイドの知識がついていけなくなったのかもしれません。

九州電力のアンケートのやらせ。これは一時代前のシャンシャン株主総会で使い古した手口ですよね。もしかして今の総会でも使ってます?

経産省次官のインサイダー疑惑。まさかね、という感じです。インサイダーであるかどうかはともかく、この立場の人に株式売買が許可されていること自体が理解不能です。そういえば、震災後東京電力株式を売却していた東電OBの国会議員もいましたっけ。

なんだかため息がでます。
寺本名保美

(2011.07.07)



節電CMはもういらない

節電の夏が到来しましたが、薄暗く、生暖かい環境にも、だいぶ慣れてきました。

とにかく外気がこれだけ暑いと、28度だろうが30度だろうが、室内は涼しいと感じる、という部分もあります。

企業努力というのは大したもので、これまで節電が難しいと思われていた、パソコンや書類仕事の会社でも、「薄暗+生暖+階段」という組み合わせだけで前年比二桁の節電は達成しているという話を聞きます。

むしろ心配なのは、企業ではなく一般家庭で、企業努力でソコソコ電力需要が安定しているのなら、家庭で必要以上の節電を推奨するCMは止めたほうがいいのではないかと思います。

特に「我慢強い」高齢者は、本当に「我慢」します。傍から見ていてもとても危険です。

法律で節電を命令されている企業は、CMがなくても節電は継続します。
無駄なCMも電気を食うということをお忘れなく。

(2011.07.06)



過去は過去

最近、生命保険各社からの新一般勘定の売り込みが盛んです。

一般的な傾向として、インフレ懸念の話が市場で盛り上がり、金利上昇のシナリオが出てくると、固定利率の一般勘定営業は活発化します。

とはいえ、冷静に考えてみると、インフレになる時に上がるのは長期金利だけではなく、普通は短期金利も一緒に上がるはずなので、一般勘定の1.2%内外の保証利回りが短期金利に対し逆ざやになる可能性があります。

過去15年のように、短期金利はほとんどゼロで、中長期の金利だけが思惑で上下動するようなシナリオであれば、比較対象は債券でよいのですが、無リスクの短期金利が予定利率を超えるようなシナリオにおいて、債券の収益率と比較することにどれだけ意味があるのかと考えてしまいます。

銀行預金のように、短期金利に連動して保証利回りが変わるわけではなく、各社とも現状で予定利率の引上げのシナリオは全く持っていなさそうなのも気に入りません。

過去15年の日本を、所与の条件としてモノを見る癖は、我々もスポンサーも運用機関も気を付けた方がよいかもしれません。
寺本名保美

(2011.07.05)



発想力

ギリシャは紀元前から現代まで、哲学の言葉を紡ぐことだけで生きてきた、とある友人に言われました。

それを聞いた弊社の社長曰く、
「じゃあ、プラトンとかアリストテレスとか、にギリシャ国が国際商標登録をして、世界中の歴史の教科書からパテント料を取ればよい!」と。

賢いというか、なんとというか。

まぁ発想力は大事ですけど。
寺本名保美

(2011.07.04)



かつてないへんな心地悪さ

さっぱり訳がわからない3ヵ月が終わりました。

市場を見ていて感じる居心地の悪さは、世界の市場全体があまりにも政治的に動きすぎていることが一因です。

来年、米国・フランス・ロシア・台湾を初め、多くの国で大統領選や日本のような総選挙が予定されています。

今年は本来であれば、国民受けのよいバラマキ型の政策が出て、よい雰囲気で終えられるはずの年であるはずが、どこの国も過去の精算と後始末に四苦八苦しています。

残り半年で、何かプラスの成果を国民に示したいという気持ちが、焦りに繋がり、政策判断が拙速になっているようにも感じます。

失われた10年を既に経験した日本からみれば、2008年からの4年間の政治が後ろ向きであったのは仕方がなく、オバマさん初め来年に改選を迎える政治家には少し同情します。

とはいえ、年金運用は誰が同情してくれるものでもなく、これからどうにか調子を上げて行かねばなりません。さてどうしたものか。
寺本名保美

(2011.07.01)


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