2011年08月の思いつき


不況なれしたフランス

以前友人が、「こんな低成長がいつまでも続いたら、日本はダメになる。」と言ったので、「気が付くといつも不況のフランスよりはましだろう」という会話をした記憶があります。


フランスの銀行が今回万が一国有化されても、きっとフランス人はあまり動揺しないでしょう。

基本的にパリがフランスの中心というより、パリはパリであってフランスではない、という意識が強い土地がらでもあります。

国の景気と人々の生活の満足度があまりリンクしていないのは、国の発展という意味ではマイナスかもしれませんが、成熟した国家の有り様としては正しいように感じます。


但し、国の景気との感応度は低くても、社会保障等の財政支出への感応度は高いことがこうした成熟国家のリスクです。
日本の将来を重ね合わせる先としてフランスが適当かどうかは、まだ判断に悩むところではあります。
寺本名保美

(2011.08.31)



やっぱりプレゼンは大事

昨日の民主党総裁選演説を、全部聞いてしまいました。

昨日の演説が選挙結界にどの程度影響を与えたのかは知りませんが、やはりプレゼン能力は大事だと実感しました。

原稿片手に伏目がちな海江田さんは典型的な日本のサラリーマンタイプ。

自分の気持ち先行の馬淵さんは、聞き手との気持ちのキャッチボールが出来ていない。

反省ばかりの前原さん、プレゼンで反省はほどほどに…

経験豊富の鹿野さんの演説、私は好きでしたが上手さが老獪にとられたかもしれません。

そういう意味では野田さんの演説は、初回、決戦、決定後、との3回の演説の使い分けも含めて、プレゼンとしてみてお見事でした。

但し、プレゼンテーションが上手いことと、パフォーマンスがよいことが必ずしも一致しないのは、運用の世界だけにしてくださいね。
寺本名保美

(2011.08.30)



お題目ばかり

おひさしぶりです。

家に居るとテレビを見る機会が多く、必然的に民主党総裁選関連を見てしまうことが多く、見る度に不愉快になっていた夏休みでした。。。

デフレ解消を公約とします、とか成長戦略なしに税の議論はできない、とか、過去15年間歴代の政権が唱え続け、結局解決できなかったお題目を、単にお題目として繰り返すだけの候補者にうんざりです。

過去15年は日本は苦しくても、米国やドイツや中国などの新興国の成長やインフレが、代わる代わる日本の低成長を補ってくれていました。

おそらくこれからは、各国が日本と同じように苦しむなか、誰も日本の低成長を助けてはくれません。過去15年よりこれからの15年の方がよほど深刻です。

助けがなくなって本当に追い詰められた環境になって、はじめて馬鹿力を発揮するのが日本であるとするならば、好機到来なのかもしれませんが。
寺本名保美

(2011.08.29)



重石と碇?

来週夏休みをいただこうと思ってい。。。ますと、市場が荒れる。

社長の田口が東京にいないと、市場が下がる。

田口が重石で、私が碇?

東京は大雨。嵐の予感。

雨が降ろうが槍が降ろうが、休みは休み!

まぁ家でも仕事は出来るし(苦笑)

とうことで、来週は思いつきはおやすみです。但し緊急告知版としては機能させますので、市場が荒れているときはチェックしてみてくださいませ。
寺本名保美

(2011.08.19)



鞘寄せ

多くの市場で直近の高値をつけた2007年を基準に株価を累計すると、負け組が日本とフランスと中国。
勝ち組が米・英・独に、圧倒的な強さでブラジル、という結果になります。

フランスは6月からの二ヵ月半であっというまに日本の仲間になってしまいました。

さて、ここからです。
この数週間の値動きは、これまで上昇ピッチの早かったものほど、下落幅が大きくなっています。

上げ下げの順番は色々あるにせよ、2-3年の周期でみると一旦はどこの市場も同じ水準に落ち着くタイミングがきます。

日本市場に鞘寄せされるのは、フランス市場だけではないかもしれません。(追記グラフの一番上の緑の線がブラジルです)
寺本名保美


(2011.08.18)



手つかずたった富裕層

バフェット氏が、富裕層への増税を進言しています。
「政府は我々金持ちを甘やかすのはもう止めたほうがよい」と。

2008年の金融危機前の米国の経済構造で、確かにこの部分については手つかずになっています。

金融が米国の主要産業であった時代は、大金持ちの税制を優遇することで、金融資産の値上がりによる資産効果が、米国の消費や税収を底支えすることが期待されてきました。

大金持ちの税収を抑え、投資資産の拡大を推進することは、一般国民の利益にもつながった時代です。

さて、今のアメリカを見る限り、金融業が米国産業の中心ではもはやなく、金融資産からのあがりで、政府が潤うような環境でもありません。であるなら、富裕層から直接的に富を社会資本に分配する仕組みを作らなければならない、というバフェット氏の主張は非常に的を射たものであるといえるのかもしれません。

日本にも、バフェット氏のような大金持ちや、見識のある人がいそうなものですが。
寺本名保美

(2011.08.17)



自転車操業

1990年代半ばに「和牛商法」というものが社会問題となりました。

その後、牛がダチョウになり、金の延棒になるなど、投資(するはず)の対象は、コロンコロンと変わりましたが、基本的には同じ仕組みの自転車操業詐欺はあとを絶ちません。

出資金で投資をし、その利益を配当にすると謳いながら、実際の配当や償還金は次の出資者の新規資金が充当されます。

新規資金の提供者が居る限り、高額の配当は維持され、当初の償還金の払い戻しも行われます。高額の配当が行われることで新規資金の集まりもよくなります。

但し、この夢のような好循環は、なんらかのきっかけで、新規資金の流入が停止する、または資金回収が集中すると、悪夢の逆回転となり、あっと言う間もなく破綻するのが常です。

初めから詐欺を目的としない仕組みであっても、高配当型の運用スキームの多くが抱える潜在リスクを説明する材料として、和牛商法は適材といえます。

大切な日本の個人貯蓄が、再び大きな投資トラブルの禍中に巻き込まれています。悲しく情けない現実です。
寺本名保美

(2011.08.16)



ぼんやり ゆるゆる 考えみた

静かなお盆の市場となりました。

雑然とした海外市場とは、やや一線を画した日本市場の値動きが続いています。

「変化」というキーワードでみてみると、大きな変化の中での軋みに苦しむ欧米と、変化することを未だに拒み続ける日本、とみるのが一般的なのかもしれませんが、私には少し異なってみえます。

日本は自らの意思では、確かに緩やかにしか動かないかもしれませんが、環境の変化に対する適応力という意味では、非常に大きく変化する国だと感じています。そして幸か不幸か日本の置かれた環境は、欧米各国から比べれば、異常なほど大きく振れ続け、結果として非常に大きく変化する国となりました。

日本という国は、環境に対応することで、確実に何かを変えて、変わらないものを次世代につないできた国なのだと思います。

表面的には確固とした信念がないことが、過去の激変する政治経済環境において、むしろプラスに働いてきた部分が多いともいえるでしょう。

意地や信念やプライドがぶつかりあっている今の欧米諸国の混乱を見ていると、「ぼんやりとゆるゆると環境を受け入れる」日本的な対応こそが、今の世界経済を救う、一つの手がかりになるのではないかなどと感じています。
寺本名保美

(2011.08.15)



株価だけがバタバタと

参加者の少ない薄いマーケットで乱高下する株式市場ですが、株式市場の値動きが、通貨市場やクレジット市場など他のリスク関連市場の動きと連携しなくなってきました。

株価が戻っても、通貨が戻るわけではなく、また欧州の信用リスク関連の数値も改善はしていません。

とうとうフランスは、イタリアやスペインと肩を並べて、「金融株の空売り規制」をかけなければいけない状況に追い込まれました。

この数年繰り返されることですが、市場はバカだ、間抜けだ、と政府が罵倒したところで、信用不安が改善されるわけではないし、空売り規制もまた同様に効果なしです。

今回は安全ゾーンに近いと思われていたヘッジファンドもそろそろ二桁マイナスの話が出始めています。

警戒を緩めてはいけません。
寺本名保微

(2011.08.12)



格付けはシグナル

フランスの格付けがAAAでないことに、それほどの意味があるのか、いまひとつ理解できない部分ではあります。

それよりもむしろ、ギリシャ等ではなく、イタリア債務の減価がフランスの金融機関のバランスシートに与える影響を市場は織り込み始めたということでしょう。

この数日のように、EUが力づくでイタリアとスペインの価格を押し上げることに、どれほどの継続性が期待できるのか。

金融機関を救うためとはいえ、フランスとドイツが自らの信用を削り続ける行為を、両国の国民が納得するのか。

格付けは、何かを表す一つのシグナルにすぎません。

格付け騒ぎの背景にある本質をよく見極める必要があると思います。
寺本名保美

(2011.08.11)



右往左往

今日の東京は凄まじい暑さです。

にもかかわらず、というか、だからなのか、買い物は忘れるわ、携帯は忘れるわ、この暑さの中会社の若手を右往左往させてしまいました… ごめんね…

なんだかあとは転びそうな予感。

右往左往も転ぶのも、相場だけで十分なんですが。
寺本名保美

(2011.08.10)



可能性の問題として

お客様にまとまったレポートを出すほどの根拠があるわけではないので、ここで呟きます。

金融システム危機になる可能性がゼロではなくなった、と感じています。

昨日の米国の下げの内、米国国債の格下げの影響は3分の1、GSEの格下げで3分の1、残り3分の1はフランスをはじめとする欧州金融機関への不安感の増大、というところでしょうか。

2008年以降、米国の金融システムの強化が進む一方、欧州金融機関については膿みを出し切れていない、という感触を市場は持ち続けています。各国の財政問題と政治機能の低下で揺さぶられている内、最も弱い部分に亀裂が入り初めてしまったように見えます。

金融危機への備えを、少しずつ始めた方がよいと思っています。
寺本名保美

(2011.08.09)



逃避資産としての日本株?

週末に、緊急の金融会合が立て続けに設定されたことで、問題の深刻さがむしろ強調された金融市場となりました。

異様な楽観論に取り憑かれていた、株式ファンドマネージャー達にとっては、刺激的な週明けともいえます。

緊急会合をしたわりには、市場が期待する具体策が出てこなかったことが、特に欧州情勢にとっての失望感を誘っています。欧州市場ではっきりしていることは、イタリア・スペインの手前で財政問題を収束させることに、欧州各国は失敗した、という事実です。

米国の格下げは、米国国債が安全であるかどうか、という問題ではなくて、これまで「米国がAAAであることを前提として構築されてきた国際金融システム」に綻びが生まれたことが問題なのです。

問題の根は市場が想定しているより深く、複雑です。だからこそ、市場の反応より早く、各国政府中銀は行動をおこしているのです。

今のところ日本株式は一種の逃避資産になっています。日本市場が落ちつているからといって安心できる状況ではありません。
寺本名保美

(2011.08.08)



米国のことばかり気にしていても

昨日までの四半期報告会で、この毎日のコラムが世の中の常識に比べ異常に悲観的すぎるのではないかと、やや反省していたところで市場が急落しました。

米国の雇用の問題は、深刻ではありますが、想像の範囲内での数値です。

一方で、欧州の財務リスクの話は、日々想像の範囲を超えていきます。

どちらが怖いかと言われれば、当然後者です。

とりあえず米国は今晩の雇用統計で、目先のトレンドは決まるでしょう。
欧州の先行きは闇、また闇、です。
寺本名保美

(2011.08.05)



あとは祈るのみ?

スイス国立銀行の金融緩和。米国のQE3観測。そして日本の為替介入と金融再緩和観測。欧州の利上げは年内凍結、との噂もあり、先進国の金融市場はいっきに超低金利時代に逆戻りの様相となりました。

ギリシャさえ終われば、米国の債務問題さえ片付けば、と期待していた各国の金融政策担当者からすれば、今週の株式や通貨市場の荒れ方は許容範囲をはるかに超えた動きだったといえます。

為替「介入」もそうですが、昨日のイタリア株式の値動きなどを見ていても、色々な意味での「介入」が見え隠れし始めました。

2008年の7-8月、米国の金融危機の拡大が止まらないなか、各国政府が必死になって金融市場を規制しようとしたことを彷彿させます。

金融緩和と市場規制、あとは皆で祈るだけ、みたいな雰囲気が日々醸し出される今日このごろ…
寺本名保美

(2011.08.04)



日本化

米欧が日本化している、という論調が海外で増えているそうです。

金融危機後のカンフル剤投入のため政府が大量に借金をする。結果として、景気底割れは一時的に回避されるものの、傷んだ経済そのものの回復には至らず、残ったのは政府の借金だけ。

借金で首の回らなくなった政府が景気刺激策を打てなくなるなか、国民には不満が溜まり、既存政府への支持率が急落。

慌てた政治家は、とにかく目先の支持率上昇が最大目的となり、国民迎合型の短絡的な政策に傾斜する。

短絡的な先延ばし政策が日常化する中、政府は金融市場の信頼を失っていく。

こうしてみると、1990年以降の日本がたどった道通りに物事は展開しているわけで、日本より対応が早かった分だけ、副作用も加速度を伴って進行しています。

この先にあるのは、実態経済の低迷と永遠と続く低金利。
本当の「日本化」というのは、そこまでを含みます。
欧米は日本化するのでしょうか?
寺本名保美

(2011.08.03)



欧州の異変

市場を見ていて一番不安を感じる時は、上昇でも下落でも、全く理由が見えずに動くことです。

例えば、昨晩の欧州市場のように、原因の説明が全くなく、通貨と株式が急落するような場面では、自分の把握していない、何か大きな材料が隠れていないかと、疑心暗鬼になります。

少なくても、昨晩の為替市場の動きは、ドルの問題ではなく、ユーロの急落がきっかけでした。

このところ、米国にしても欧州にしても、マクロの景気指標の減速を示す数値には、過剰に反応する傾向があります。

昨晩の欧州の異変が、なにを指しているのか、未だ不安なままです。
寺本名保美

(2011.08.02)



基軸通貨とトリプルA

ウォールストリートジャーナルのコラムに以下のような一節がありました。
「ただ、市場から「リスクと無縁」の資産と認識されている米国債の格付けが、「トリプルA」を持つオーストリア、デンマーク、フィンランド、オランダ、香港などの国債格付けよりなぜ低くならなくてはいけないのか理解に苦しむ。」

アメリカ以外の国からみれば、何十年間も「双子の赤字」という言葉と縁を切ることのなかった米国が、トリプルAで有り続けたことのほうが、理解に苦しむ、と思うのですが、この認識ギャップは甚だしい。

米国国債の代替になる投資先はなく、トリプルAでなくなることに金融市場は大きな意味を持たないだろう、という別の論説もありました。確かに米国ドルが基軸通貨である限り、米国国債の代替となる投資先はありませんが、逆にいえば基軸通貨としての信認を失えば、米国国債を買う必然性そのものが失われるだけです。

今回の米国債務問題の根本は、米国のデフォルト回避ではなく、米国がトリプルAでなくなる可能性とその影響です。

そういう意味において、8月2日は超えるべき峠の第一歩に過ぎないということを、よく認識しておく必要があると思います。
寺本名保美

(2011.08.01)


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