2012年04月の思いつき


政治リスクのゴールデンウィーク

海外市場が閉まってからのスペインの格下げに、一瞬ヒヤッとしましたが、日銀による金融緩和期待で均衡状態が保たれています。

昨年のゴールデンウィーク明けの急落は、商品市況の変調がシグナルとなりました。

連休明けの5月6日にはフランスの大統領選の結果がでます。

日本の消費税議論を含めた政局も、この数週間が山場かもしれません。

今年のゴールデンウィークは、経済面ではなく、各国の政治や社会面に注意を払わなければいけなくなりそうです。

上も下も政治次第、というのは金融市場参加者が一番嫌う展開です。売買量も減少しているなか、当面は静観していくしかありません。
寺本名保美

(2012.04.27)



整合性

四半期報告会の時期です。

昨年度は国内外共、個別銘柄でのイベントリスクが大きく、パッシブファンドが受難な一年でした。

信用リスク管理をしていたはずの、多くの国内株式パッシブファンドがエルピーダの破綻をさけられず、東証の顔色をうががった結果オリンパスを安値で売って高値で買い戻すことになりました。

エルピーダの破綻を受けた反省として、決算注記のある銘柄の精査や公的支援の有無に関わらない客観的判断をあげるのも各社共通ですが、そう言いながら、東京電力の保有を継続しているのも各社共通です。

別に東電の保有が良い悪いということではなくて、基準が見えない中での損失はやや納得できない感もあります。

会社更生法という形をとらなくても、公的資金投入で既存株主の権利が毀損することは信用リスクではないのか、という疑問もあります。

パッシブファンドだからといって安穏としていられる時代ではなくなったということかもしれません。
寺本名保美

(2012.04.26)



選択と集中の功罪

ノキアの格付けがジャンク級に引き下げられたそうです。

ノキアと言えば、ノキアの業績がくしゃみをすれば、全世界の半導体株が急落するほどの力を持った、通信機器メーカーだったはずです。

iPhoneの登場以降のスマートフォンのトレンドに乗り遅れた結果、あっという間に市場から見放されました。


ノキアの行ってきた選択と集中を評価してきた株式アナリスト達は
一転してノキアのプロダクトラインの狭さを批判しています。

これは、日本の総合電機各社がプロダクトラインを絞り込めずに批判されながらも、液晶テレビが崩壊しようが、携帯がガラパゴス化しようが、 なんとか潰れずにいることと、対象的な光景でもあります。

技術革新と製品の回転が非常に激しい時代において、製造業とはどうあるべきなのか、とても難しい課題ではあります。
寺本名保美

(2012.04.25)



不毛地帯

助ける側の国民も助けられる側の国民も
Noという救済スキームなどありえないだろう。

そんなスキームに頼らざるを得ないユーロというシステムはすでに終わっているのではないか…というのが昨晩の市場の反応でしょうか。

国民の不満のはけ口として政治の頭を替えたがるのは、身に覚えのあることではあるものの、それが何一つ解決につながらないことも私達は経験すみです。

政治も市場も「不毛地帯」に入ってしまったのでなければよいのですが…。
寺本名保美

(2012.04.24)



無骨な気遣い

ひなびた、というより、むしろ傾いてしまった温泉町に行ってきました。

その町で、比較的評判のよい昔ながらの旅館に泊まりました。

旅館のわりに仲居さんはなし。数人の無骨なおじさんが
給仕もしてくれます。

部屋全体のリフォームはできないけど、水回りだけは新品。畳は色あせていても掃除だけはピカピカ。

お金は使っていないけど、頭と気は遣う旅館の姿勢に、色々考えさせられました。

気遣いはサービス業の基本だと改めて実感した週末です。
寺本名保美

(2012.04.23)



お金がなければ国有化?

アルゼンチン最大の石油会社YPFの突然国営化問題は戦略的パートナーであったスペインの石油会社だけでなく、アルゼンチンの関連企業にローンを出していた欧州の金融機関をまきこみ、大きな問題となりつつあります。

英国のFTによれば、これはアルゼンチンの外貨不足の深刻さを表しているとされています。

国にお金がなくなれば、お金を産む民間事業を接収してしまえばよいという、安易で乱暴な方法論が復活してきたことは、非常に嫌な兆候です。

新興国の資本主義化が後戻りする事はないという前提で構築されている今のグローバル経済の前提に一抹の不安を感じさせる出来事ではあります。
寺本名保美

(2012.04.20)



正しく恐れる

「リスク直視、正しく恐れて-東京都危機管理監(産経ニュース)」

首都地震被害想定の変更に関しての記事ですが、「資産運用」においても共有できる重みのあるフレーズだと思います。

リスクの存在の認識は、恐怖に繋がります。
恐怖に心が支配されると、行動に制限が起きます。
これは動物として当たり前の反応です。

行動に制限をおこさせないために、リスクの存在を意識的に忘れたり、見なかったことにしたい、と思う心理は、人間だれでも持っているものです。

この心理の存在をあえて認識し、正しく恐れることを目指すのは、人間としてとても難しいことではありますが、「リスクがリターンの源泉」である資産運用においては、避けては通れない道です。

「リスクを直視し正しく恐れる」肝に銘じていきましょう。
寺本名保美

(2012.04.19)



本当に解散は正しいのか

今、政治家やマスコミの皆さんが盛んに唱えている、「年金基金の解散条件の緩和」ですが、この議論が実は皆さんの大嫌いな?「霞が関」や「財務省」が大歓迎する議論であることを、どの程度認識しているのか、と不思議に思っています。

代行割れ状態で基金が解散すれば、本来あるべき積立金に足りない部分は、加入事業所が損失を「全額」補てんしなければいけません。

解散しないで継続していけば、利息は嵩みますが、一定の充足率を維持している限り、一括返済は求められません。

2002年の国内外株式の最安値で、多くの大企業が国に代行部分の一括返上をし、代行割れ部分を「企業利益で補填」したことは、株主利益の観点からみて正しい選択だったのかどうか、私は今でも疑問に思っています。

今、マスコミや政治家の誘導で、基金に解散風が吹けば、得をするのは一括で借金を返してもらえる国だけです。

国の財政全体、年金制度全体の観点からみれば、正しい議論の方向ではあるのかもしれませんが、基金加入事業所の経営者の皆さんの利益を考えない報道や議論にはなっとくがいきません

寺本名保美

(2012.04.18)



そういえば、4月月初は台風並みの嵐でしたっけ…

昨晩、スペインの10年国債利回りが6%を超え、$ユーロが一瞬1.3を割り込みました。

スペインは今晩と、19日に、国債の入札を控えているため、やや売り込まれやすい市場センチメントにあるとはいえ、あまりよい状況ではありません。

昨年11月、イタリア国債の利回りが7%を超えたところで、市場がパニックになったことが彷彿されます。

中国による人民元変動幅の拡大政策も、何故今なのか?という点において中国国内の政治リスクを含め懸念する見方も出ているようです。

ここ3年、束の間の春を味わってきた4月ですが、今年については春を通り越して台風が来てしまうかもしれません。
寺本名保美

(2012.04.17)



色々な意味で、、結構役にたった傍聴でした。

先週末「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議」の傍聴に行ってきました。

少なくても、国会中継を見るよりは、何倍も役に立ちました…

初回のキックオフだったので、まだわかりませんが、想像していたよりは現実的な議論が方向付けられそうな印象を受け、少し安心しました。

残念だったのは、今一番苦しんでいる中小の基金を代表する方がメンバーに入っていない点で、本当の意味での実情をどこまで汲み取ることができるか、やや心配な部分もあります。

それにしても、事務局が説明してくださった年金制度の歴史と仕組み。またしても「免除保険料率」あたりから、ついていけなくなりました。社内で勉強会もしてもらったのですが、全然自分の頭が進歩していないことを確認した、という意味でも有意義な傍聴でした(涙)…
寺本名保美

(2012.04.16)



他人どころではない?

初めに、、
現在AIJ国会証人喚問の最中のようですが。
興味ありません。意味ありません。意見ありません。
ですから、感想を聞きに来ないでください。

気を取り直して、、
昨晩の欧州市場は、イタリア3年国債の入札が「不調」に終わったことで、一瞬ヒヤリとする場面がありました。

その後、米国の失業保険統計が「不調」だったことで、米国の再緩和期待が復活し、リスク資産が買い戻されるという、捻じれ市場が復活し始めています。

世界のラストリゾート「日本銀行」も、蛇口最大解放宣言で、米国と足並みを揃えて、役割を遂げようとしています。

昨年一年と構造はほぼ同じであるのですが、一点心配なことがあるとするなら、中国に他国を助ける余裕がなくなってきている、ように見えることでしょうか。

昨年のギリシャ・ポルトガルより、今年問題になっているスペイン・イタリアの方が圧倒的に規模が大きいことは言うまでもありません。
助けて欲しい側の規模が膨張する一方で、助ける側の規模が限界に近づいている状況を危惧しています。
寺本名保美

(2012.04.13)



慣れてはいけない

昨年一年間かけて稼いだ2%の収益を、期初10日で失うことの無常さを感じる今日この頃…

やや過熱気味だった金融市場が冷えることで、エネルギー価格の高騰が収まるのであれば、ある程度の調整も仕方がないと思いましょうか。

朝鮮半島厳戒態勢。。。
3年前、初めて「迎撃」という言葉が使われた時は、嫌な感じと緊張感とがありましたが、今回はそれほど気になりません。

こういう「慣れ」は、よくないですね。
何事もなく、今週が無事に終わりますように。
寺本名保美

(2012.04.12)



ラストリゾート復活

欧州情勢が再び悪化を始めています。

4月になって書いているように、欧州の財務問題というよりは、金融システムの問題になりつつあります。

ロイターによれば、「ECBが1兆€の資金供給をしたにもかかわらず、欧州の銀行間では貸し渋りが続いている」とされています。

ですから、米国の経済統計が好調で、再緩和(QE3)の可能性が遠のくと、むしろ欧州中心に株価が下落する、という変な循環が発生するのです。

欧州銀行どおしでの資金の融通がなくなり、米国でもなくなり、再びラストリゾートとしての日本が脚光を浴びる局面になりつつあります。

当事者の欧州市場でも、巨大な米国市場でも、資金調達が出来ない金融機関に、日本の金融機関だけはお金を貸してくれる、という構図は、よくあることとはいえ、やはり違和感があります。

ラストリゾートという言葉は決してほめ言葉ではないと、よくよく認識しないといけない局面なのではないかと思っています。
寺本名保美

(2012.04.11)



垣根を超えて

AIJ問題を受け、今後の代替投資における基準作りをしてみて、今の金融商品取引法が、年金運用の実態にあっていないと感じる点が幾つもあります。

個人投資家でもなく機関投資家でもないという中途半端な存在が、金融行政にとって掌握しにくいものになっているのかもしれません。

投資顧問会社というのは基本的にこの年金運用を最大顧客として成立している業態です。年金基金と同様に、投資顧問という業態にも、今の金融商品取引法はあまり相性がよくありません。

今回の事件をきっかけに行われている各種対策が、できれば厚労省と金融庁との垣根を超えた次元で行われることを、強く期待しています。
寺本名保美

(2012.04.10)



気候も応援。Welcome Japan!

今日の東京はとっても暖かい、完璧なお花見日和です。
昨日までの寒さで、蕾の残っていた桜も、今日は全開という感じでしょうか。

先週京都に行くと、市営地下鉄に何組もの海外観光客の皆さんがいました。
東京のお花見にも、海外の方々が沢山参加されているようです。

仕事面で見ても、一時期止まっていた海外からのファンドマネージャーの来日も、以前のペースに戻ってきています。

震災の後遺症はまだまだ沢山残っていますが、海外の皆さんがまた、日本に戻ってきてくれていることは、とてもとてもありがたいと思います。

今日の陽気にこの桜。これ以上ないというぐらいの「日本」です。
どうぞ皆さん「日本」を満喫して、日本ファンになっていただければ、観光大国推進派として、これほど嬉しいことはありません。
寺本名保美

(2012.04.09)



豊かさと糖尿病と国家破綻

[5日 ロイター]中国で行われた研究で、生活習慣病の2型糖尿病を患う市民が2009年までの約7年間で約30%増と急増したことが明らかになった。

随分前、リン鉱石の採掘で急激に豊かになったナウルという南の国で、成人男性の8割が糖尿病になったと話題になりました。

アジアの人種は、栄養事情が悪い中で生き残ってきたので、栄養を体内に蓄積しやすい構造になっていると聞いたことがあります。

ナウルは、リン鉱石が枯渇したのと同時に、成年男子の糖尿病の激増によって、国家破綻の危機にあります。

中国国民10億人。国家破綻のきっかけにはならないと思いますが、糖尿病の治療薬の将来は、とっても明るい?かもしれません。

日本男子も気を付けないと…
寺本名保美

(2012.04.06)



スペインの災いの種

ロンドンで聞こえてきた欧州危機は、これまでの国の財政問題から、スペインの不良債権問題へと変質してきていました。

財政問題解決のために実行される緊縮政策の結果として予想される、欧州の景気後退が、これまで蓋をしてきたスペインの不動産融資問題を悪化させ、それが欧州発の金融危機に繋がる、というのが足元で出てきている懸念です。

スペインの不良債権問題が2007年のサブプライムショックの最大の後遺症であるという認識は、金融市場ではコンセンサスとなっており、浮上するのは時間の問題とみられていました。

新年度早々、新たな災いの種です。
寺本名保美

(2012.04.05)



しっかり立って、しなやかに。

嵐とともに帰ってきました。
ロンドンは天候が良かったので、私が嵐を連れてきたのではありません、、たぶん。

130円近辺とういうポンドの購買力には、そこそこの納得感があったように思ったのは数年前250円で買い物をしてしまったトラウマでしょうか!?

東京戻り、4月になって初めての通勤電車は、満員電車に乗り慣れない新人さんで、やや混乱状態でした。

自分の足でしっかり立って、上半身はしなやかに。

これ、電車にも社会にも、上手く乗っていくコツです。

弊社にもまた今年も一人、新人「君」が入社しました。
どうぞみなさまよろしくご愛顧のほどお願い申し上げます。
寺本名保美

(2012.04.04)



ロンドン滞在メモ その2

ロンドンが暖かいと喜んでいるのは旅行者ばかりで、実は深刻な水不足に直面しているそうです。

また、ガソリン価格の高騰が、市民生活に大きな影響を与えつつあるようで、テレビニュースでは、ガソリンスタンドに列をなす映像が繰り返し流れています。

ブランド店の多くは、イスラム系観光客と中国系観光客とに占領されていて、唯見てるだけの私はひたすら圧倒されています。

アセットマネージャーのコンセンサスは、欧州のマイナス成長と英国のゼロ近辺の成長。リスクシナリオはスペインと中国。議論の種は90年代の日本と現代の先進国との相関性。

皆に「日本株は割安か?」と聞くと、口を揃えて「そうだよね」と言ってくれるのは、単なるおせいじ、かも?

明日帰国します。
次の更新は水曜日です。
寺本名保美

(2012.04.02)


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