2012年06月の思いつき


夢でもいい、ないよりは…

先週経済産業省から発表された、新潟県沖に大規模な石油ガス田があるかもしれない、という話。

今日報道された、日本に大規模レアアース層があるかもしれない、という話。

米国ではシェールガス開発が盛り上がり、国内では石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を中心にメタンハイドレートの実用化試験が行なわれています。

いずれにしても、地下深層から何かを掘り出すわけで、コストの問題だけでなく、今の日本では地震の呼び水にならないか?という非常に素朴な疑問も解消しなければいけないので、そうそう手放しで喜べるわけではありません。

そうは言っても、この手の夢物語。閉塞感溢れる世界経済・日本経済にとって、話だけでもないよりはましです。
寺本名保美

(2012.06.29)



金融市場との対話

一般報道において、欧州危機の取り上げ方が少な過ぎると昨日書きましたが、逆に金融報道において国内問題の取り上げ方が少なすぎるのも気になります。

消費税の進捗が、金融市場でどのように評価されているのか、いないのか、各種メディアを眺めていてもさっぱりわかりません。

今回の消費税議論は、国際金融市場との対話の元に成り立っている議論です。金融市場が日本の財政にも消費税にも本当に無関心であるのなら、極論すれば消費税など上げなくても構わないのです。

国際金融市場が要求している日本の財政改善策の一環として、今回の消費税法案の幅やタイミングが十分なのか、十分でないのか。
実態経済に与える影響は、本当のところどうなのか。

そういったことを、政策担当者はきちんと市場と対話して理解していく必要があるし、その過程を国民もまたよく聞き理解する必要があります。

そのためには、金融市場参加者の声を十分吸い取って報道していくマスコミの力はとても重要です。

欧州のようなボタンの掛け違いが起きないように、マスコミも自覚を持った行動が求められているように思うのです。
寺本名保美

(2012.06.28)



欧州を知る

とりあえず、半歩前進した消費税。

実際にこれによって財政が改善するかどうかより、前進しているように、国際社会から見られることが何よりも大切です。

為替戦略を行なっている運用機関と話していると、EUROとドルとどちらが健全か?という議論に行き着きます。

加盟国全体の財政を合算するとトータルでは黒字となるユーロと、単体で大幅な財政赤字である米国$とでは、長期的にはドルの方が危ない、という意見を持つ人も多くいます。

それでも、今金融市場が評価していることは足元でのユーロの信頼感の喪失であり、中長期の米国の健全性ではありません。
幾ら域内に財政的余力を抱えていたとしても、それを再配分するシステムを持っていない現在のユーロというものを評価することはできないのです。

同様に、日本全体でみれば黒字であっても、それを国庫と民間とで再配分するシステムが機能しなければ、この国の血流は必ずどこかで止まります。帳簿上の収支の問題ではないのです。

欧州財政問題について、日本では報道が少なすぎます。
今の欧州を知ることは、今後の日本を理解するにはとても大切なことです。
寺本名保美

(2012.06.27)



虚しいデジャヴ

金融を幾ら緩和しても、お金は金融機関内に溜まるばかりで、実体経済には流れない。

もっと融資に積極的になれと言う政府に、貸出先がないという金融機関。

不良債権を抱えた地域金融機関の破綻処理が地域経済の破綻につながると救済の正当性を主張する政府と、税金投入に懐疑的な国民。

今の世界経済で起きていることは、15年前に日本で議論されていたことそのまま。

わかりやすくも、虚しいデジャヴ。
寺本名保美

(2012.06.26)



政治家の罪

「社会のモラルが落ちてきているのは、政治家がルールや約束を守らないからだ!」と弊社の社長が怒っております…

こっそりルールを破る、のではなくて、ルールを破って何が悪い、という態度で開き直る政治家の存在は、子供の教育上も極めてよろしくないと。

「ルールはどうして守らなくてはいけないの?
それはルールだからです。」

という基本をずらすと、どうして働かなくてはいけないの?とか税金を払わなければいけないの?とか子供に教育をさせなくてはいけないの?とかいう社会的義務の履行への疑問を許すようになります。

社会的義務の履行への疑問を許した社会は間違いなく崩壊します。
日本の社会の未来は政治家の心構え一つに掛っている、のかもしれません。
寺本名保美

(2012.06.25)



残るは最終投資家のみ

金融機関15行が格下げとなりました。
予想されていた範囲とはいえ、気持ちのよいものではありません。

金融機関がリスクの受け手でなくなっていることは承知しているものの、それでもこうした状況が続けば、グローバルなリスクの許容量が低下する要因になります。

金融機関に変わるリスクの受け手として期待されていた、ヘッジファンドにしても5月は目を覆うばかりの惨状となり、6月には今度は商品系ファンドに亀裂が入りつつあるように見え、役割不足は明らかです。

金融機関やヘッジファンドなどの一時的なリスク提供者が減少していくなか、最終投資家の役割は増すばかりです。

よく言えば、中間搾取される部分が減少し、資産価格は限りなくフェアで割安な水準に修正されているということになります。

足元、嫌な感じで市場が壊れてきているので、急ぐ必要はありませんが、最終投資家にとってはチャンスが近づいているともいえそうです。
寺本名保美

(2012.06.22)



危機の瞬間は必要か

『リーマン破綻のような「危機の瞬間」欧州に必要-ゴールドマン (bloomberg)』

これまでの常識や利権を全てリセットするような大きな改革を決断するには、それに見合うだけの痛みを経験する必要がある、と過去の歴史は言っています。

でも、それが判っているのなら、その痛みをつい最近経験したばかりなら、その痛みを想像するだけで行動できるのが、人間の知恵というものなのではないか、とも思います。

しかし、、、2008年政治家がやるべきことを行う決断をするためにリーマン破綻は必要だった、とも読めるこの一文。言っている意味は分かりますが、この会社の人には言ってもらいたくない一言、かもしれません。
寺本名保美

(2012.06.21)



インフラ投資のコスト

海外のインフラファンドの話がひどく魅力的に聞こえたり、国内で進んでいる代替エネルギー関連事業への投資が魅力的に見えたりするのは事実です。

配当構造に特に問題があるわけではなく、設備に問題があるわけでもなく、単に利回りがよいだけなのですが、どうも釈然としないのは、この利回りの良さを裏打ちしているものが、そのインフラの使用者である国民の負担であると思ってしまうからかもしれません。

今回の代替エネルギー買取り法案を受けて、とても沢山の太陽光発電業社が新規参入を表明しています。
今まで、こういった分野とは全く縁のなかったような事業体が、「エネルギー開発事業部」とかを作ってみたりしています。
新しく会社を作ってしまいたいと思うほど、この事業が魅力的に見えるのはなぜなのか、ちょっと考えてしまいます。

インフラファンドにしても、太陽光発電事業にしても、各種コストが適正であるのかという検証がなされないままでは、このビジネスモデルは長続きしません。

ファンド投資家としても、一生活者としても、先行きがどうも不安です。
寺本名保美

(2012.06.20)



そろそろ投機の世界へ

一日で、10年国債利回りが0.3%以上も上昇するという異常事態が、昨晩のスペインとイタリアの金融市場で起きました。

ギリシャの再選挙後、初日の市場展開としては、やや悲惨すぎる結果となっています。

ギリシャが予想外(?)にソフトランディングをしたことで、先週末に高まっていた中央銀行等による協調政策や、イギリスまでも巻き込んだ更なる管理体制の強化などが先延ばしされると市場が判断したことが、却ってセンチメントを悪化させたのかもしれません。

7%という金利は、10年間で借金の元本を2倍にしてしまう金利です。
先週まで、スペインの問題はあくまでも金融機関の不良債権問題であったはずですが、このままではスペインそのもののファイナンスの問題に転嫁してしまいます。

個人的には市場にも若干投機的な色彩が強くなってきているようにも思えます。
G20で投機を抑え込めるだけの強いメッセージが出せればよいのですが…
寺本名保美

(2012.06.19)



ワンダーランド

世界の終りとハードボイルドワンダーランド。。。別にこの本の中身には全く関係ないのですが、この週末このフレーズが頭の中をフワフワ浮遊していました。

とりあえず、ギリシャ国民の健全で現実的な志に支えられ、ユーロというおとぎの世界は、終わらずに済んだようです。

但し、つい百年前まで領地合戦に明け暮れていたヨーロッパ大陸が、一つの国のごとく経済統合をするということが、所詮「ワンダーランド-夢物語」に過ぎないのではないかというリアルな疑問が、これで打ち消されたわけではありません。

ワンダーランドをより現実的なものとするために「部分的な主権の放棄」にまで踏み込んだ統合を進めていくのか、単なる夢物語に終わらせるのか、結論が出るにはまだまだ時間が掛るでしょう。

世界の金融システムの巨大な一角が、脆く不安定であるということを前提とした資産運用を、当面継続していくしかありません。
寺本名保美

(2012.06.18)



控えの準備は万端

世界中で金融緩和が期待されている中、米国では雇用統計が悪化し、消費者物価が大幅に低下しました。
経済統計というものは、時として非常に都合のよい数字になるものです。
これで、FRBが動くお膳立てが完了し、ボールは日銀に繋がりました。

日銀の場合は、特に事前のお膳立ては必要ないので、ウォーミングアップが充分であることを、ピッチ、ではなくて市場にアピールすることが、とりあえずの役回りになります。

とはいえ、米国も日銀も、控え選手にすぎません。

後はメインプレイヤーである欧州組が冷静に立ち回ることを祈るばかりです。
寺本名保美

(2012.06.15)



イギリスを巻き込めるかも?!

これまで、ギリシャ問題は通貨「ユーロ」の問題でした。
なので、救世主はドイツでしかありませんでした。

ここにきて、EU「財政・銀行」同盟、という話が持ち上がっています。
「ユーロ」ではなく、「EU」である以上、そこにはEUに加盟しているもののユーロ導入国ではない「英国とデンマークとスウェーデン」が組み込まれています。

週末にEU銀行同盟の話が出た時、英国は非常に強い拒否反応を示しました。これまで、お隣の火事、ぐらいに思っていた欧州財政問題が、突如自国の問題に転嫁する気配を見せ始めたからです。

ドイツからすれば、損を分かち合う相手は多い方がよいにこしたことはなく、表面的には銀行同盟に反対している振りはしていても、内心この流れを歓迎しているのかもしれません。

とりあえずはギリシャの再選挙ですが、今週末のEU首脳会議の議論の方向性に注目です。
寺本名保美

(2012.06.14)



運用業界の足元

最近、信託銀行や投資顧問との会話が、上手く成り立たないことがよくあります。

私の言っている意味わかります?と確認してしまうことも度々あります。

私だけかと思っていたら、お客様からも最近運用機関との会話に違和感を感じる、という不満を聞くケースが増えてきました。

今まで通りではいけないという危機感がある一方で、どこか萎縮している部分があり、本社機能が強化される一方で現場の強化がおろそかになっている部分がありで、業界全体がどこかチグハグな感じがします。

環境が悪いなか、経営にも現場にも余裕がなくなっているのはわかるのですが、それにしても少々劣化がひどすぎます。

こういう浮き足だった雰囲気の時は、大小問わず事故が起きやすいものです。業界全体、一度気を引き締めた方がよいでしょう。
寺本名保美

(2012.06.13)



ゼロ金利の弊害

スウェーデンのノーベル財団が、ノーベル賞の賞金を従来より2割減額することを発表しました。

15年前、日本の短期金利がゼロになった時、一番初めに悲鳴を上げたのが、財団や宗教法人などの利息事業者でした。

スウェーデンの短期金利も2008年の4.5%から、一機に0.25%まで下がり、一旦2%まで持ち直したものの昨年末から再び利下げトレンドに戻ってしまっています。

金利が半分になれば、無リスクの運用収益も半分になります。

プロの運用者を雇っている財団もありますが、多くは銀行預金や国債などの無リスク資産での運用が中心です。

短期金利が4分の1になって、賞金を2割しか下げないのは、ある意味大変なことです。

ゼロ金利の弊害が、世界あちらこちらに蔓延を始めています。
苦しいのは年金だけではありません。
寺本名保美

(2012.06.12)



救済、良し悪し

国に対してであっても、金融機関に対してであっても、何らかの救済資金が投入されることの弊害は、現在の株主や債券投資家の権利に毀損されるリスクが高まる点にあります。

救済しないで放置すれば、破綻処理によって毀損するわけで、投資家にとってはどうちらにせよ損失が出る話です。

但し、破綻ではなく救済の場合、これまでの例からみると、従来の金融ルールに従った損失分担にならないケースが多く、却って混乱を招くことに繋がることもあります。

今回再び、CDSが機能しない状態で、債券保有者に毀損が発生することになれば、CDSという市場の存在意義が根本から問われかねません。

救済スキームが確定するまで、まだまだ波乱はありそうです。
寺本名保美

(2012.06.11)



世界総動員

昨晩、中国の3年半ぶりの利下げをニュースを見たときは、これで流れが変わるかと大いに期待したのですが、中国一国の神通力は数時間しか持ちませんでした。

バーナンキ氏が今回具体的な緩和策に踏み込んだ発言をしなかったことはほぼ予想の範囲で、当面の問題の元凶であるギリシャの再選挙の結果が判る前に動いても意味はありません。

長引く金融危機で各国ともとれる政策には限界が近づいてきているなか、切り札を温存せざるを得ないのは自明のことです。

むしろこれまで、インフレ懸念から動きの取れなかった新興国が、ここにきて積極的に利下げに転じていることで、先進諸国の政策判断の限界を新興国が補う構造になりつつあります。

景気だけでなく、金融政策までも新興国頼みになりつつある、世界経済。世界総動員での危機回避が続きます。
寺本名保美

(2012.06.08)



メディアのモラル

最近のFacebookに関するメディアのコメントには少々呆れてしまいます。

上場前はあれほど囃していたにも関わらず、いざ値段が下がり始めると追い打ちをかけるような内容が次々と掲載されています。

広告効果がない。
退屈だ。
使用者が減少している。
など等、毎日のように調査結果と評した記事が出てきます。

調査結果が正しいかどうかではなく、上場前と後とでの豹変ぶりにみられる、メディアとしてのモラル感のなさが、とても不愉快です。

金融市場とメディアの関わりというのは、本当に難しいものだと感じています。
寺本名保美

(2012.06.07)



コツコツとそろそろと

緊急開催されたG7ですが、スペインの銀行システムが危機であることを宣言しただけで終わってしまいました。

欧州のりセッションは既成事実として、米国経済の減速への不安も高まっているとされています。

日本はというと、金融危機でもなく、リセッションでもなく、ただ音もなく株式市場が崩壊しています。

きっと各国からすれば日本の問題は日本の中だけで解決すべき種類のもので、G7で話題にするほどのことではないのでしょう。

海外投資家のリスク許容度が高まる兆しが見えない中、日本の株式市場を救えるのは、日本の投資家でしかありません。

コツコツそろそろと出陣の支度を始めませんか?
寺本名保美

(2012.06.06)



愕然

シビリアンコントロールの国で、防衛大臣が民間人になる。

有り得なくはないか?

国内向けにどんな理由があろうと、その人物がどれほどの適性を持っていようと、有り得ないと私は思う。

国会議員は国民に対して恥ずかしくないのだろうか?
日本政府は諸外国に対して恥ずかしくないのだろうか?

この国、大丈夫か?

そして、TOPIXが1983年来の安値を割れた…
寺本名保美

(2012.06.05)



されど緩和

金融市場が米国のQE3を催促し始めています。

先日、日銀が追加緩和に言及しなかったことに市場が過剰に反応したことも合わせて考えるなら、一昨年年の秋に行われた、世界協調緩和のような展開を期待しているのかもしれません。

金融緩和をしてもギリシャ問題は解決せず、一方で米国経済は再緩和が必要なほど悪くはありません。

それでも再緩和が求められるのは、市場参加者の中で、金融危機への恐れが高まってきていることの表れだといえます。

とりあえずは7日のバーナンキさんの議会証言が目先の山場と言われています。

景気もバリエーションも関係のない、嫌な展開になって来ました。
売りも買いも、同じぐらい危険です。
寺本名保美

(2012.06.04)



創造的破壊へ

ユーロが11年ぶりに96円台に入っています。

リスクオンとかオフという次元ではなく、ユーロから離脱者がでることを織り込み始めた展開です。

今回、ギリシャが国民投票の結果如何で一旦ユーロ内に踏みとどまったとしても、今後ドイツとギリシャが同じ通貨圏に居続けることは現実的ではないということは、誰しもが理解しています。

ユーロから、財政悪化国の離脱を容認することで、むしろこれまで通貨統合に参加していなかった英国や北欧等が新規加入しやすくなるという側面もあります。

グローバルな金融経済の健全な発展のために、強固な二大通貨圏を確立する必要があるのであれば、ユーロは新たに生まれ変わるべきだと言えます。

その前には一度今のユーロを壊さなければなりません。
創造的破壊は既に加速度を付けて始まっているのかもしれません。

ドルユーロで1を割れる展開はもうすでに「想定外」ではないのです。
寺本名保美

(2012.06.01)


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