2012年11月の思いつき


エネルギー革命による平和

今年の年初、市場で最も恐れられていたシナリオは、中東に戦火が広がることでした。

12月が近くなり、ワーストシナリオはどうやら回避されそうではありますが、きな臭ささは越年してしまいそうです。

中東・北アフリカの「油田」という、近代エネルギーのほぼ唯一最大の源泉は、この地域に富とそして、それ以上の災いを、呼び込んできました。

今、中東油田以外のエネルギー資源に注目が集まる中において、緩やかにではありますが、この地域の持つ世界的な意味、そしてこの地域の中における国家間のパワーバランスに変化が起きつつあるのではないかと感じています。

地域外の国々が、この地域との人々の思いや生活とは無関係に、自らの利権に従って、この地域を水面下で操り、分断してきた不幸な歴史があります。

中東油田の経済バランスにおける相対的な地位の低下は、一時的には地域の均衡を崩す可能性がありますが、中長期的にみればこうした不幸な歴史に終止符を打ち、本来の地域経済の確立に転換するよいチャンスでもあります。

数世紀にわたって戦争を繰り返してきた欧州各国が、曲りなりにも経済共同体を作ることで潜在的な戦争の抑止力を構築できたのと同じような未来が、世界の火薬庫にも訪れることを、希望を捨てずに見守りたいと思っています。
寺本名保美

(2012.11.30)



夢か妄想か現実か…

安倍さんの金融緩和論。

はじめは歓迎していた金融市場も、段々眉に唾を付けはじめ、ほとんど誇大妄想狂の世界へと評価が傾きつつあります。

個人的には、どうもそれなりのブレーンがついているように見え、政権与党となった後のそのブレーンの人達の顔ぶれや処遇が決まってこない内に夢物語と切り捨てるのはやや早計な気もしています。

今回の金融政策が「薬か毒か」の劇薬となりうることは、多くの方が指摘されているとおりでしょう。

劇薬投与で既存概念を破壊する、という意味においては小泉政権下の竹中イズムに近いものを感じます。

そういえば、安倍さんって、小泉改革の後継者だったのですよね。
妙なところだけ真似しなければいいのですが…
寺本名保美

(2012.11.29)



一休み

今朝からバイオリズムが落ちています。

株式市場の連騰に舞い上がった疲れが出たのかもしれません。

株式市場もお休み。
私の頭もお休み。

市場も私も、転がらないように気をつけて…
寺本名保美

(2012.11.28)



なんとなく…Part2

上海株式市場と香港株式市場のグラフです。
この半年、この2市場での乖離が継続しています。

不動産の話を聞いていても、中国本土では暗い話、香港では明るい話と、全く様相が異なります。

不動産への融資規制の有無などの金融政策での違いで説明できる部分もあるとは思いますが、それにしても少し違和感があります。

過去の経験から、こうした違和感には、ファンダメンタルズでは説明できない、お金の流れが隠れているケースがあります。

本土から香港市場への資金移動?
政権交代で上がる国もいれば、下がる国もあります。

どちらにしても、一時的なものなのかもしれませんが…
寺本名保美

(2012.11.27)



なんとなく思うこと

2010年12月に起きたチュニジア革命を発端とした「アラブの春」。
エジプト、リビアと続いた既存体制の崩壊は、新体制への期待と不安とか相殺し、株式市場にとっては新興国市場からの一旦退避のきっかけとなってしまいました。

2011年9月から始まった米国の「ウォール街を占拠せよ」。
お祭り騒ぎにすぎないと思われていたものが、昨年末まで優勢だったロムニー候補を一転敗北させたきっかけを作りました。

今、欧州各国で起きている財政緊縮策を巡るデモやストライキ。
今のところ一時的なガス抜き行動の域を出ていないとは思われますが、何かもっと大きなうねりを呼ぶきっかけになりそうな、漠然とした不安があります。

少し気が早いですが、年末年始が明けるころ、世の中に大きな変化の兆しが見えているかもしれません。

来年の話をすると鬼が笑いますが…
寺本名保美

(2012.11.26)



絶対収益なら、それらしく

運用機関が運用商品の概要で「絶対収益」という文言を用いる際には、細心の注意が必要であると思います。

運用機関側からすれば、単に「複合ベンチマーク」や「TOPIX」などの指標に対する相対収益を意識しない運用である、ということを強調したいだけなのかもしれませんが、「絶対収益」という言葉には「相対収益」の反対語、というだけには留まらない、強いメッセージを相手に与える危険があります。

例えば絶対収益を本来的に唱っている市場中立型ヘッジファンド戦略であったとしても、どのようにして元本の毀損を最小化し絶対収益を確保できる仕組みを持っているかを、我々は注意深く確認します。

株式の低β戦略であっても、低リスクのバランス型ポートフォリオであっても、絶対収益を掲げるのであれば、ヘッジファンド戦略と同様に損失を回避する仕組みが必要であると考えます。

ただでさえ、運用機関に対する信認が低下している昨今。
顧客対応は慎重にしてほしいと、願います。
寺本名保美

(2012.11.22)



あぁ自省

昨日、大学でヘッジファンドの単発講師をしてきました。
この講師のお仕事をさせていただくようになって、もう4年目になりますが、未だにコツがつかめないでいます。

この90分という時間で、結局私は何を伝えたいのかが、絞り切れていないのだと思います。

年金運用におけるヘッジファンド投資というものは、従来のロングオンリーのポートフォリオが行き詰った結果として拡大してきたものです。
「伝統的」資産への閉塞感があるからこその「代替投資」であるわけで、この閉塞感を共有していない学生さん達に、ヘッジファンドの存在理由を説明しようとすればするほど、空回ってしまっているような後味の悪さが付きまといます。

もう少し未来志向で、ヘッジファンド業界を捉え直さないといけないと、深~く自省しています。
寺本名保美

(2012.11.21)



格好いいだけでは、ダメだけど

国内外の政権交代に目を奪われていたら、突然フランス格下げの話が飛び込んできました。

なんというか、ちょっと現実に引き戻された感?があります。

それにしても、フランス財務相の「格下げは、改革を推進するに当たってのよいインセンティブになる」、との発言は、格好いいですね…

こういうキザッポイ見栄を切れる政治家が、日本にはいないものでしょうか(笑)

欧州危機、現在進行中です。
寺本名保美

(2012.11.20)



歪んでいようが、上げればOK?

やや極端に反応している、国内株式市場。

このまま上がり続けるとは思いませんが、12月決算を前にした海外勢にとっては、ショートを持ち続けるのはかなり勇気が必要な局面ではあります。

そもそも日本株に興味を失って久しい昨今、日本株の急伸についていこうにも何を買ってよいのか判らないというのが海外投資家の本音でしょう。

2005年9月の郵政選挙後の急反発の時に、とにかく知名度のある優良銘柄が意味もなく買われたように、今回も個別銘柄ベースではかなり大きな歪みを伴った上昇になるかもしれません。

まぁ上がってくれるなら、文句はなく、多少ベンチマークに負けようが気にしないことです。

絶対収益型の運用にとっては受難な日々にならなければよいのですが…
寺本名保美

(2012.11.19)



高楊枝はもう嫌?

思い返せば2009年9月、民主党政権発足と共にドル円相場は前代未踏の領域に入っていきました。

リーマンショックの後遺症から立ち直るための苦肉の策として、欧米が自国通貨安競争に突入する中、民主党の当時の藤井財務大臣が言った「日本は通貨安競争に組しない」との発言が、その後の日本の運命を決めたといえます。

自国通貨の切り下げ競争は、ブラックマンデーのような大きな危機のきっかけになる、という藤井さんの主張は理屈としては正しかった。

理屈としては正しかったものの、結果としては「やった者勝ち」となり、姿勢を正して臨んだ日本は「武士は食わねど高楊枝」の世界でじり貧となった3年間でした。

昨日来、多少は理論より現実に近い政権ができるという期待が市場を席巻しています。
やや反応が極端な気もしますが、便乗して期待したいと思っています。
寺本名保美

(2012.11.16)



冬眠の終り?

さて、選挙です。

民主党には全く興味がない私でさえ、野田さん個人は面白いと思います。

第三極などといわれている新興政党より、野田さんと自民党との再編が起きた方が、よほど納得感のある政権になりそうな気もしています。

昨日の米国が200ドル下げたにも関わらず、今日の東京株式市場は1%程度の上昇で始まっています。

今回の選挙は、政治家達にとってだけではなく、日本の株式市場にとっても大きな転換点になるかもしれません。
寺本名保美

(2012.11.15)



日本だけではなく、皆大変

今年はエルピーダに始まり、シャープ、ソニー、ルネサス、パナソニックの巨大赤字と、大手製造業には受難の年となりました。

雑誌などが日本の製造業の終わりと囃したてたこともあり、株式市場全体のセンチメントを大きく引き下げたのは間違いありません。

ただし、足元周辺をみまわすと、米国の半導体、中国の太陽光パネル等、日本で苦しんでいる業種はグローバルにどこも苦戦しています。

日本企業に特別問題があるというよりは、むしろグローバルなシクリカルの影響を真っ先に受けただけともいえます。

日本は日本はと、あまり卑下せずに、現実を冷静に判断する視点が必要なのではないでしょうか。
寺本名保美

(2012.11.14)



アメリカンドリーム?!

中国、英国、日本、と続いたお話、最後は米国。

目先の株価の調整や、一時的な景気後退は仕方ないとして、もう少し中長期の視点として「アメリカンドリーム アゲイン!」みたいな錯覚?を、外国株のマネージャー達から、感じます。

久々に世界をインフラごと動かした、アップルやGoogleの成功に勇気付けられたのか、2005年から始まった自動車産業のリストラ効果が、ようやくでてきたからか、世界一の消費大国という称号を中国ら奪い返す目処がついたからか、はたまたシェールオイル開発というアメリカンドリーム
そのものの効果か…

なんだかよくわからないのですが、米国の未来に妙に強気になっている人が増えている感触があります。

調子に乗らせれば天まで登る国民性。
日本の舵を少し太平洋側に切り直したほうがよいのではないかと、思ったりしています。
寺本名保美

(2012.11.13)



日本の未来と英国

日本の戦後を見ていれば、今の中国がわかるとするならば、英国の戦後を見ていれば、今の日本がわかるでしょうか…

60年代から始まった英国病。世界経済の主役の座から滑り落ち、福祉国家負担に苦しんだ英国の起爆剤は、鉄の女が仕掛けたフォークランド紛争と、北海油田の開発だったのかもしれません。

内に貯まる不満を外に向けさせたフォークランド紛争。
仮想敵国を明確化し、政治的に保守化させることで、国民の意識を景気以外のところに分散させる効果がありました。
日本には鉄の女どころか、鉄の男も、難しかろう、ということで実際の紛争にはならないでしょうが、国際情勢的には似たような構図にあります。

そして、北海油田。
英国は80年から石油の輸出国に転じ、その後外資の積極参入を促進したウインブルドン政策も功を奏し緩やかな景気回復に転じていきます。
日本がエネルギーの純輸出国になるという話は、夢物語の域をまだ超えていないというのが現状評価でしょうが、その可能性を一番信じていないのは、日本人そのものかもしれない、とも感じています。

さて、そろそろ日本の未来が見えてきましたか?!
寺本名保美

(2012.11.12)



超特急

中国の経済は本当に日本の戦後の早回しのようです。

国土インフラ整備の山が終わり、個人消費の経済に移移行する場面で登場した、「所得倍増計画」という文言を見て、苦笑してしまいます。

なんというか、日本の60年代と、80年代と、2000年代が同時にきているような印象でしょうか。

日本では、良くも悪くも立ち止まった、70年代や90年代が抜け落ちることには、功罪があるでしょう。

どちらにしても、走りつづけなければならない宿命にいる中国。

激突しないことを祈ります。
寺本名保美

(2012.11.09)



暴落スタート

少なくても、昨年末まで、ウォールストリートの人々はオバマ政権が終ることを期待を込めて確信していました。

金融規制の強化も、政権さえ変われば潮目が変わるという楽観が昨年まではあったように思います。

年が明け、どういうわけかムードが一変し、この数か月は諦めつつも、一縷の望みも昨日見事に打ち砕され、金融市場は自棄売り?に見舞われた、という感じでしょうか。

昨日の売りは、ショックによる一時的なものなのか、それとも来年の財政の崖に向けたスタートなのか。

再任されたその日に株価が暴落する大統領。オバマさんの次の4年も厳しいものになるかもしれません。
寺本名保美

(2012.11.08)



日本の信頼回復

日本株式に久しぶりに海外投資家からのまとまった委託が入ってくるようになったたと聞きます。

過去一年半以上、全く動きが見られなかった背景には、政策への失望感も多分にあったとはおもいますが、やはり震災の影響を否定する事はできなかったのだと感じています。

先日米国のあるヘッジファンドと話していて、震災直後に、日本の資産を全て撤収したと聞かされました。
メルトダウンの可能性を真剣に考えてた結果だと。

日本の中にいると、あえて考えないようにしている、日本そのものに対するリスクを海外投資家が消化するのに、これだけの時間が必要だったのかもしれません。

日本への信頼回復は株式市場のように、ゆっくりとではありますが着実に進んでいると願いたいものです。
寺本名保美

(2012.11.07)



本当に大変そうです

ニューヨーク郊外に住む友達のfacebookでは、ハリケーンから8日経ってようやく通じた電気が再び切れたこと、頼りの自家発電がプロパンガス切れになったこと、そして今晩の天気予報がゼロ度であること、などが綴られています。

幸いにも彼女の家には、深夜になってプロパンの配達が行われたらしく、自家発電は稼働したようですが、本当に大変そうです。

いくら米国とはいえ、全ての家で自家発電器があるわけではなく、多くの人々がゼロ度の夜を迎えることになるのでしょう。

被害の状況が長引く中で迎える大統領選。
両陣営の敵は、相手ではなく、むしろ投票率になってきているとも言われています。

ただでさえ、5分5分と言われた選挙戦。
投票動向も不安定な中において、結果は全く読めません。

株式市場は、オバマさん織り込み済み。ロムニーさん瞬間急騰、という感じでしょうか。
寺本名保美

(2012.11.06)



総論最悪、各論まぁまぁ

金曜日の夜に行われた「厚生年金基金制度に関する専門委員会」を傍聴してきました。

基金のあの理事長やこの理事長が聞いていらしたら、「ちゃぶだいひっくりかえす」事態になっていたような気がします。
中小企業をなめんなよ!って感じでしょうか(苦笑)

そもそも「総合型基金の母体企業の大半は不況業種であり」という枕言葉からにして、この場の雰囲気をよく表していましたが、委員メンバーに当の中小企業を代表するする人が一人も含まれていない構成にそもそも違和感がありました。

最後のほうはあたかも、中小企業の社長達が、自分勝手にこの制度を維持し、国と労働者に迷惑を掛けている、というようなトーンで締めくくられてしまい、唖然とするしかありません。

多くの基金の理事長や理事が、従業員の老後のためにと、ある意味身銭を切って維持してきた制度です。
そういった努力や思いを全く知らない人達による、机上の空論に対し無性に腹の立つ2時間でした。

そもそも、民主党の「今後の運用環境が好転することは期待できない」という発言に対しては、それはつまり日本の景気も物価もよくするつもりも見込みもない、と言っているのと同じです。
だったら、政権与党などやめた方がよろしい。

制度改善に関わる個々の改正案については、興味深いものも沢山あっただけに、全体感が空虚であったことが非常に残念な会合でした。
寺本名保美

(2012.11.05)



やっぱり、やめたほうが…

昨年8月にニューヨークに100年ぶりにハリケーンが上陸したと話題になりました。
そして今年、再び100年ぶりの大きさでハリケーンが上陸しました。

”ニューヨーク市長は「昨年8月のハリケーン「アイリーン」に続く今回のサンディの襲来という異常事態について「気候は変動している」と強調し(毎日新聞)”オバマ大統領の温室効果ガス抑制への取り組みを高く評価した、そうです。

まぁ、オバマ氏が本当に温室効果ガス抑制を目指しているかどうかは、やや疑問なので置いておくとして、気候現象が過去の統計値からどうも外れてきているのではないかという疑問を払拭するのは難しい状況になっています。

統計から外れた金融市場で定量モデルが効かないように、統計から外れた損害保険市場でもリスクモデルが効きません。

しつこいようですが、天候を相手に勝負をするのは、やはりしばらく控えた方がよいのではないかと、思うしだいです。
寺本名保美

(2012.11.02)



プロなんだから

今回の四半期報告会、どうも、運用機関の様子がおかしい…

妙に営業攻勢が強かったり、
妙にやる気がなかったり、
妙に暗かったり、
妙にヘラヘラしたり、
、、、、、、、

厚生年金基金という業態についての継続議論が出てきて以来、基金様だけでなく、受託機関側からもかなり強い不安心理を感じます。

これは恐らく担当者レベルではなく、会社全体、つまりは経営サイドが感じている不安や浮足立った感触が、そのまま現場に伝染しているだけなのでしょう。

わからないわけではありませんが、受託機関はプロの運用機関です。プロの運用機関である以上、今の運用で結果を出すというのが本分です。

こういう時こそ「自分たちの運用結果で制度を救う」ぐらいの気概が伝わってくるような、運用報告にはならないものかと、ひどくもどかしく思う四半期です。
寺本名保美

(2012.11.01)


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