2013年02月の思いつき


意外な応援団

バーナンキFRB議長が、アベノミックスにお墨付きを与えました。

今の政権が日銀にさせようとしている政策は過去5年米国においてバーナンキさんが行ってきたことでもあるので、自らの政策の正統性を主張する意味も込められているのかもしれません。

ただ、もう少し深読みをするならば、これまで金融危機に対するセーフティネットの中心を担ってきた米国が、そろそろその役回りを降りたがっているからこそ、後継役として日銀を指名したのかもしれないとも言えます。

さらに、金融サービスから生産へと産業の軸足を変えつつある米国にとって、日本の復活は米国経済にとってもプラスに寄与するという判断が働いているのかもしれません。

意外な応援団が出てきたアベノミックス。
金融市場参加者からの期待値はまだまだ低いままですが、頭から否定するのは、それはそれでリスクかもしれません。
寺本名保美

(2013.02.28)



どこまで深刻なのか、どうもよくわからない…

金融市場は軽いイタリアショックに見舞われました。

特にこの3か月スピード違反気味だった為替市場については、しばらく乱高下が続くかもしれません。

次のイベントは明日を期限とする米国の歳出強制削減の行方です。
昨晩の米国市場を見ている限りにおいては、年末と同様にギリギリのところで与野党が合意することをメインシナリオとして、市場参加者は様子を見ているという感じでしょうか。

ある意味国民の生活を担保にとったような政府と議会の駆け引きが、この1年殆ど恒常化していることに、米国国民も市場も感覚が弛緩してきてしまったようにも思います。

今の米国は「水戸黄門と同じ」と誰かに言われことがあります。視聴者をハラハラさせて最後は印籠が出てきてめでたしめでたし…

オバマさんが印籠をどこかに置き忘れたりしなければいいのですが。
寺本名保美

(2013.02.27)



自分の持ち場をしっかりと固めてください

少し株式市場が上昇してくると、株式市場を上手く利用しようとする政治家の悪い癖がでてきます。

日本における株式市場の上昇は結果であって、エンジンではありません。

株式市場の上昇がエンジンであった、米国の90年代後半からITバブルまでも、日本の90年のバブルも、中国の最近のバブルも、終わってみれば全部気のせいだったように、資産価格の上昇をエンジンにすることはとても危険でむなしいことです。

ここにきて、国の年金運用における国内株式比率を上げていこうという声が聞こえてきます。
150兆円の運用残高の内、株式比率が数%上がるだけで数兆円から10兆円の潜在的購入圧力となります。

おそらく、このまま世界経済が順調に回復をしてくれば、一旦なりを潜めた日本版ソブリンウェルスファンドのような話も復活してくるでしょう。

株式市場というものは、所詮経済実体以上にも以下にもなりません。経済政策さえ機能していれば、国が自ら乗り出すまでもなく投資資金は自然に流れていくものです。

国がしなければいけないことは、ボトルネックとなっている堰を取り除き、水が流れるための水路を整備するところまでです。
自らのタンクを担ぎ出し、水を流し込む必要などありません。
株式市場を長続きさせるためにも、国の介入はできるだけ避けていただきたいと切に思います。

寺本名保美

(2013.02.26)



イタリアの我慢

財政再建と国際強調を重視した、藤井元財務大臣路線を最後まで踏襲した民主党政権が敗れ 当面の景気浮揚を重視した自民党 政権になって株価は上がりました。

さてイタリア。
財政再建と国際強調を無視して、当面の景気浮揚しか考えていない、ベルルスコーニ氏が、再登板したら、株価は上がるのでしょうか?

日本の今のリフレ政策が国際社会に受け入れられているのは、ひとえに野田政権が、消費税引き上げの道筋をつけていたからです。
もしこれがない状態で財政出動をしていたら、今頃日本の長期金利は上昇トレンドに入り、株式市場はむしろ下落していたかもしれません

イタリアが日本をお手本にするには、まだ時期尚早な気がします。

イタリアの皆さん、もう少し我慢できませんかね…
寺本名保美

(2013.02.25)



米国の身震い

米国での量的緩和の終了観測が出始めたことをきっかけに、市場の振り子が一旦リスクオフに転換しました。

QE3の中止が本格的に議論されるのは、おそらく6月のFOMC以降です。
米国の金融政策のいつものパターンとしてみられる、「事前に政策の方向性を市場に小出しにし、反応を見ながら、時期と規模を決めていく」、という地合い均しの工程が、そろそろ始まったということです。

市場が揺さぶられる中で、振り落とされる資産、意外に盤石な資産、むしろ資金の受け皿となる資産がこれから分別されていきます。

ここで振り落とされるような日本株であるのなら、そこはもう一度足腰鍛え直すためのテコ入れが必要ということでしょう。

今年もまた、5月の連休あたりが、大きな山場になるのかもしれません。
寺本名保美

(2013.02.22)



すみません…

新幹線や飛行機でのあっちこっち生活が続いています。

各地が大雪に見舞われている中、社長も私もやや際どいながらも、車中泊はなく過ごせています。

移動時間ではなく距離が長くなればなるほど、脳みその置き忘れ感が強くなっていくのは、本当に不思議なものです。

「移動距離と脳の疲労」も米国の脳みそプロジェクトで明らかにされるのでしょうか?

ということで、久々に自分の机で書いている思いつきは、私の頭の中同様空っぽなものになりました…
寺本名保美

(2013.02.21)



国家プロジェクトの目指す先

米国のオバマ大統領は、人間の脳の全容を今後10年で解明する 国家プロジェクトを設定する方針、とニューヨークタイムズが報じたそうです。

一瞬、エイプリルフールはまだなのに…と思ったのですが、人ゲノム解明の次に位置する、大真面目な政策のようです。

国民の半数近くが、今でも「種の起源」を否定していると言われている国で、ゲノムだの脳の機能だのを国家プロジェクトと言ってしまうのが、この国の「良くいえば」懐の深さであり、得体のしれなさでもあります。

数年前、これからの産業技術というものが、素材を加工して機能を生み出すものから、素材そのものが機能となるものに変わっていくのではないかと、ここで呟いたことがあります。

IPS技術によって作られた機能を持った細胞が、「自立的に」仕事をする世界?

米国の国家プロジェクトの目指す先には何が見えているのか、少し不気味ではあります。
寺本名保美

(2013.02.20)



バカじゃないか?!

今朝通勤途上で「某日経新聞」をスマートフォンで斜め読みをしていた時、怒りでスマフォを叩き潰すかと思いました。
大切な某シャープのスマフォでなかったら、投げていたかもしれません…

詐欺事件で公判中の被告に対し、社長という肩書で見出しを付け、プロフィールのような顔写真を載せ、被告人の非ではなく解約基金からの資金返還に論点を合わせ、最後に制度が悪いと締めくくる。

マスコミの言う「健全な批判精神」とは一体何なのか?

厚生年金基金制度の廃止という、自ら描いたシナリオのためには、刑事被告人すら利用することのどこが健全なのか?

そもそも日本の刑罰が経済事犯に対し軽すぎるから、事件に対するマスコミの取扱いも軽くなる。

これで、スマフォを壊したら絶対ニッケイに弁償してもらう!

あまりの怒りで論点がズレテきたので、この辺で。
寺本名保美

(2013.02.19)



仕切り直し

今年4月より、金融庁から投資運用業者に対し新たな監督指針が施行されます

昨年多発した年金顧客を対象とした業法違反や、この度の厚生年金保険法の規定の改正を受け、投資運用業者の行動規範を定義しなおした内容となっています。

基本的には
厚生年金基金が負っている「分散投資義務」「善管注意義務」「特定有価証券の個別指示の禁止」に対し、契約相手先である投資運用業者が「主体的に履行義務を負う」内容になっています。

これまで、一部チグハグであった厚生年金基金法と金商法との整合性に、幾分かのバランスがとれたという意味では、大きな進歩だと思います。

厚生年金基金側の規約整備についても、4月に向け各基金共粛々と準備が進んでいるようです。

委託側・受託側双方で、気持ちを新たにする新年度となりそうです。
寺本名保美

(2013.02.18)



道なかば?

株式市場が上昇している割には、ファンドマネージャーの顔色はさえません。

まぁだからといって、ベンチマークにはそれなりについていけているので、まだあまり心配はしていません。

今はまだ、市場全体のバリエーション調整が中心なので、ファンドマネージャーは置いてきぼり。

そのうち一旦業績相場が来て、そのあと何かのテーマ相場が噴いて、その時アクティブマネージャーさんは大負けをして、相場は天井。

というのが、これまでのパターンです。

さて、このように書いてみると、まだまだ先は長そうにも見えますが、始まってしまえばあっという間です。

問題は吹き上がるテーマが、まださっぱり見えてこないことでしょうか。

そういう意味では、この市場まだ長続きするかも…しれません。
寺本名保美

(2013.02.15)



人材不足の招くリスク

年金資産の内、日本では6-7割、海外では4-5割が債券運用で占められているのに対し 、資産運用の現場はいまだに株式運用が主流の構造から脱皮できずにいるように思います。

それでも、欧米ではインベストメントバンクの自己売買部門の縮小を受け、人材がヘッジファンドをはじめとする資産運用ビジネスに移動しはじめていますが、日本ではそもそも債券売買に関わる人材層の薄さも災いしてか、目立つ動きはほとんど見られません。

債券に関わる人材が育っていないことは、国内での運用プロダクトが組成されないだけでなく、海外のプロフェッショナルが運用する商品の精査やモニタリングや説明責任を果たせる人材すらいないことを意味します。

人材不足は、本来債券運用から得られるはずの利益を逸失するだけでなく、本来とるべきではない無駄なリスクをとって損失を被る可能性にも繋がります。

ここから1-2年、債券のボラティリティは確実に上がります。数少ない特定ファンドに資金が集中することも、できれば避けたいところです。

人材など急に育つものではなく、さてどうしたものか、頭の痛い問題です。
寺本名保美

(2013.02.14)



観光もお忘れなく

旧正月中の札幌。

シティホテルの朝食会場で、静かに朝ご飯を食べています…

つまり、
昨年からみれば随分戻ってきていると言われていますが、アジア系の観光客の姿は、あの騒々しさが懐かしく思える程度に少ない。

春休みに向けて円安が定着すれば、欧米系の方が増えてくれるでしょうか?

せっかくの円安。
政府の皆さん、観光立国への道筋も、忘れないでくださいね。

寺本名保美

(2013.02.13)



どうということのない水準

市場参加者も、政治家も、中銀も、エコノミストも、為替動向に騒ぎ過ぎです。

そもそも今のドルも、円も、ユーロも、過去3ヶ月の変化率はそこそこ大きく感じますが、水準としてはどうという程のものではありません。

日本が金融危機に見舞われるタイミングで、150円を目指すような展開や、ユーロが1ドルを割れるかもしれないというタイミングでは、ヒヤリとしますが、たかだか90円台の為替など、為替のボラティリティからみれば誤差の範囲です。

そんなことを言うならば、リーマンショック直前に、1ポンド250円換算で買った私のコートはどうしてくれる…
という感じでしょうか!?

通貨戦争などという言葉に惑わされず、皆さん少し冷静になりませんか。
寺本名保美

(2013.02.12)



自然体

ドラギさんが、通貨高について「やんわりと」警告しただけで、ユーロも株も1%調整。

大した話でもないことに反応するのは、それだけ市場参加者に警戒感がある証拠です。

今月末のイタリア総選挙で、「あの」ベルスコーニさんが復活するのではないか、とか、スペインの金融機関会計に不正があるのではないか、とか、昨年から判っていたものの、忘れたふりをしていた話で、欧州は右往左往しています。

欧州問題も米国の財政問題も、何一つ解決していない。
その中で、あまりにも放置されていた日本株と円相場が他国並みの水準まで訂正を始めているだけです。

過度な期待は持たず、それでもあまり悲観せず、自然体で市場についていけばよいのではないかと思っています。
寺本名保美

(2013.02.08)



指南役の責任

2002年エンロン・ワールドコム事件で、刑事告発を受けた大手監査法人が解散に追い込まれました。

今回、大手格付け機関が米国司法省からサブプライムローンの証券化において詐欺的行為があったと50億ドル以上の損害賠償請求を提訴されました。

今回はまだ損害賠償請求の段階ですので、刑事告発を受けた監査法人とは異なりますが、「詐欺的行為があった」という文言が使われていることが、非常に気になります。
刑事告発を受けた会社が生き残るのは大変に厳しいという現実がある米国において、今後の展開次第では、金融市場を大きく揺るがすようなイベントに発展する危険が孕んでいそうです。

それにしても、監査法人が指南役となったデリバティブ会計といい、格付け会社が指南役となった証券化。末路も含め良く似た構造に思えるのは杞憂でしょうか。
寺本名保美

(2013.02.07)



マグマの微かな兆し

TOPIXが略1000PTだった2010年3月末、ドル円は93円台でユーロ円は126円台でした。

株式市場も通貨もきれいに3年前に戻っただけ、と言えます。

但し、日米ともに10年金利は当時の半分の水準にまで低下しています。

株と通貨と金利の関係は、一時的にはバラツキますが、必ずどこかで互いの関係について辻褄を合わせにいくものです。

今すぐにとは言いませんが、どこかに歪みが溜りはじめているという意識は持っていた方がよいかもしれません。

寺本名保美

(2013.02.06)



米国の芽

従来、多くのグローバル株式のポートフォリオにおいて見られてきた
欧州企業のオーバーウェイトと米国企業のアンダーウェイトという傾向が、足下で緩やかに変化し初めているように感じます。

これは欧州危機によるものではなく、むしろ米国の経済構造の変化に起因するもののように思います。

金融依存度が高く、内需は住宅市況次第という、これまでの米国株式市場は、シクリカル性が強すぎ、ボトムアップマネージャーの好む、コンスタントで質の良い成長には、縁遠い市場でした。

それが、この数年の製造業回帰によって、国内市況に過度に依存しない国際競争力のある企業が、米国でようやく育ってきたのでしょうか。

これが単なる芽に過ぎないのか、米国を支える幹に育つのか、楽しみに注目していきたいと思います。
寺本名保美

(2013.02.05)



冷静に踊りましょうか…

若干浮かれ気味の金融市場。

株式市場の居所が、目を見張るほど割高ではないので、それほど神経質になる必要はないと思いますが、ここから先の注意事項は「レバレッジ」。

例えば、「円のキャリートレード=円でお金を借りて、他の資産に投資すること」ですし、「REITを含む不動産証券化=ノンリコースローンでお金を借りて、不動産投資を行うこと」です。

資産価格の上昇がバブルかどうかの境目は、価格の位置ではなく、その価格形成の主体がレバレッジ資金であるかどうかです。

自らがレバレッジを使っているかどうかが問題ではなく、投資先にどれだけのレバレッジ資金が流入しているかどうかに目を凝らす必要があります。

踊るなとは言いません。ただ妙にハイテンションな人達に巻き込まれないだけの用心深さを持っておきたいと思います。
寺本名保美

(2013.02.04)



こっそりとプールの栓を抜いておきたい気分です

あっというまに、今年も1ヶ月が終わり、今年度もあと2ヶ月を残すだけとなりました。

1月末までの今年度収益率を概算してみると、為替効果を入れない現地通貨ベースで国内外株式が11.5%弱で頭を揃えました。

これに外貨効果が11%乗りますので、今年度は国内債券を除く3資産がオール二桁という結果となっています。

それにしても、年度途中まで、為替効果を入れずに20%近く外国株式に割負けていた日本株の大復活ぶりには目を見張るものがあります。

行き場のない過剰資金は、満タンになったプールから次のプールへと水が溢れだす様に、水位の低い所低い所にすさまじい勢いで流れ込みます。

日本株式というプールが満タンになるまでに、あとどのぐらいの日数が残されているのでしょう。
このままでは来年度投資する資産が本当になくなりそうなので、こっそりプールの栓を抜いておきたい気分です。
寺本名保美

(2013.02.01)


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