2013年10月の思いつき


また0.5%

日本の10年国債利回りが、再び0.5%台に戻ってしまいました。

日銀が大量に買入れを行い市場の流通量が減少しているために、誰かが買うかもしれない、売るかもしれない、という思惑だけで、簡単に値段が動いてしまいます。

意味もなく0.5%に戻った金利は、然したる意味もなく1%に戻ることもあります。

瞬間風速マイナス2%からプラス2%までの乱高下。

そういえば、金利を機動的にヘッジするという戦略が、今年前半に流行ったらしいのですが、どうなったのでしょう。

景気動向や本来の需給とは無関係で、実際の売買を伴わない今の債券市場では、あまり芳しい噂が聞こえてこないのですが…

寺本名保美

(2013.10.31)



天下泰平・唯我独尊

米国株式が最高値を更新しました。

量的緩和を停止するだの、政府機関を閉鎖するだのと、散々世間を騒がせた割には、結局昨年の10月を底値に、ほぼ一本調子で上昇している、「天下泰平・唯我独尊」な市場です。

足元の米国経済を真面目に見ている人達からは、財政問題の深刻さや雇用統計の改善度合いなど、米国の金融市場環境には、首を傾げる声も聞こえてきます。

一方で、シェール革命や、それに伴う製造業の国内回帰など、まだまだ期待先行の部分が多いものの、米国国内の個人を中心に『インカムからキャピタルへ』と、この数年続いた投信の志向を変化させてきているのも、事実のようです。

とはいっても今年もあと2か月。
ファンド決算に向けて一勝負したあとは、年初からの財政崖とFOMCを材料に一旦お休み。多少水準を切り下げて再び買いから… という感じでしょうか。
寺本名保美

(2013.10.30)



金融商品としてのREIT

金商法の政省令の改正により、REITがインサイダー取引規制の対象となりました。

例えば、組み入れる物件についての内部情報を知りながら、REITを売買してはいけない、ということです。

というよりも、今までそれが規制の対象になっていなかったことの方に、驚いた方がよいかもしれません。

2001年に創設された、日本のREIT市場。

利益相反やインサイダーなど、当初から金融市場の常識とはかけ離れたところからスタートした業態です。

この10年で、かなり改善はされているとはいえ、まだまだ不透明な部分の多い市場です。
インサイダー取引規制に組み込まれたことで、ようやく金融商品としての立ち位置が、明確になるのであれば、なによりです。

寺本名保美

(2013.10.29)



総理もタレントも国民も…

仮にも一国の総理大臣を務めたひとが、陰謀などという言葉を発言することに呆れます。

さらに、総理であった自分とタレントキャスターとを、同じ次元で語ってしまうことの幼稚さに、呆れを通り越して腹がたちます。

日本の総理の椅子の重さなど、そんなものですか…

まぁ、タレント議員の多さを考えると、そんなものなのでしょう。

選挙結果は、国民の責任…
それは判ってますが、それにしても悲しい現実です。

寺本名保美

(2013.10.28)



やっぱり、いやだ…

またまた台風が接近中です。

異常は、続くと、恒常になります。

過去100年の気象統計から外れた状態が、恒常化すれば、統計から導かれた推論は、リスクだらけになります。

天気予報の2重渦巻きを見るながら、やはり「損害保険の証券化商品」のリスクは手に負えないと、ふと思う今日この頃です。
寺本名保美

(2013.10.25)



環境に振らされない説明

「絶対収益目標なので、市場環境の悪化局面でも大丈夫です」というセールストークも、いきすぎると問題ですが、採用後の四半期報告会で「絶対収益を目指していますが、市場環境の悪化局面には弱いです」と思いっきり言われるのも、困ります。

採用前のセールストークが、採用後は真逆に言い訳されている気分にさせられます。

本当は、採用前にはリスクの話を、採用後にはどれだけ頑張ったか、という話をするのが、顧客側からみれば、心地よいのですが、どうも逆のパターンが、多いです。

環境に振らされない運用、環境に振らされない説明、どちらも大切です。
寺本名保美

(2013.10.24)



有難い 平穏

本当に、大人しく穏やかな市場環境が続いています。

外的な政治イベントがなく、純粋に経済や企業の指標によってのみ、金融市場が反応する、ごく当たり前の環境が、久方ぶりに戻ってきました。

動かなくてつまらない、などと思うのは、贅沢なことで、繰り返しますが、これが当たり前の姿です。

平穏な日々からあまりにも遠ざかっていたので、私も含め市場参加者の多くは、何か落とし穴があるのではないかと、順調な収益率を眺めながら、むしろ落ち着かない気分になったりもしています。

この平穏が、逆に当たり前、になった時は、きっとどこかの市場に歪みが発生しています。

皆がびくびくしながら享受している、今のような平穏が、最も「有難い」環境なのです。

寺本名保美

(2013.10.23)



朝御飯もグローバル?

この数ヵ月で、日本の主要都市のビジネスホテルの価格が3割から5割位上昇した気がします。

特にグローバルフランチャイズ系の値上がりに、驚きます。

元々、同一ブランドでありながら、日本のホテル代金は、ニューヨークロンドンの半額程度だったので、それをグローバル水準に戻し始めたのかもしれません。

それにしても、大阪のあるホテル…
本来ご飯のお釜かあるはずの所に中華粥のお釜が二つ。
白いご飯は…ものすごーく隅っこに小さいのがひとつ…

これもまた、観光グローバル化の一環なのでしょうか…
寺本名保美

(2013.10.22)



キャパシティ管理の失敗

CTA-マネージドフューチャーズの苦戦が続いています。

色々と言い訳はあるようですが、所詮はキャパシティ管理の失敗だと、私は思っています。

プログラムの分散も、タイムスパンの分散も、逆張り順張りの分散も、投資市場の分散も、当初想定していたような効果がありません。

リーマンショック以降、業界全体の残高が急激に膨らんだ結果、ポジションは金利に偏り、分散効果を持つはずの商品市場の寄与は低下しています。

大きなトレンドが狙える通貨市場が生み出してくれる数年に一度の収益に、皆が群がることで、ボラティリティが無駄に上がります。

キャパシティオーバーの問題は、単に運用者側の問題ではなく、資金を集中させた投資家や、そこに誘導した販社やコンサルタントの責任でもあります。

業界が適正な規模に戻るまで、皆で痛みを分かち合うしかなさそうです。
寺本名保美

(2013.10.21)



本当に世の中が変わるかも…

予想外に盛り上がりが早い、自動運転装置付自動車。( 8月28日の思い付きを参照)

まわりの男性陣の誰に聞いても、ひどく評判の悪い話。

車が単なる道具になって、趣味で乗る人が居なくなって、台数が減って、交通渋滞が減って、二酸化炭素が減って、事故が減る。

ついでに自転車、バイクも全部憧れのセグウェーになって、歩行者と仲よく共存する。

何か問題あります?!!?

そういえば、損害保険や、生命保険業界の有り様も大きく変わるかもしれませんね…

これ以上書くと、車好きの男子諸君から、本当に殴られそうなので、この辺にしておきましょう。
寺本名保美

(2013.10.18)



国会議員なんだから…

米国の債務上限条項が、今回もまた3ヶ月の先伸ばしで、決着しました。

来年の2月にまた同じ騒動が起きるのでしょうか…

外から見ていると、米国の政治的デフォルトなど議員が選択するわけがないように思うのですが、米国の友人曰く、「金融システムリスクを真剣に考える事ができる議員は多くはない」そうで、一概に茶番とも言い切れない怖さがあるようです。

選挙地盤の利益と、自己アピールしか眼中にない政治家というものは、どこの国でも、いるものだ…ということです。
寺本名保美

(2013.10.17)



運用のプロとスポンサーの成熟度

GPIFを含めた公的資金運用を見直す有識者会議において、株式などのリスク資産を増やし、そのための運用のプロ人材を確保すべきとの意見が出ているという報道が見られます。

一方で別の報道では、「GPIFの運用においてはこの4-6月で国内債の損失が9500億円近くに膨らんだ。」との表現もあります。

株式と債券、国内資産と海外資産を保有していれば、どこかの資産で損失がでるのは当たり前です。100兆円規模の運用をしていれば、1%の損失で1兆円です。通常のポートフォリオ運用において四半期で1%の収益の振れが発生するのは、極々当たり前のことです。現状のGPIF資産の収益の振れは、年間で6%超あります。100兆につき6兆円の損失が発生する可能性のある運用をすでに行っています。

広義での公的資金である、企業年金の運用においても、年間や四半期ごとに発生する収益の振れについて、スポンサーである経営者層に理解してもらうことは、尋常ではない苦労を伴います。
企業年金における運用担当者の役割の半分以上は、資産運用というものは「損と益を繰り返し」ながら行われていくものであるということを理解させることに注力されます。

GPIFのスポンサーは、いうまでもなく「国民」です。
資産運用を成功させるには、運用側がプロであることと同時にスポンサー側もまた委託者としての自覚があることが大前提となります。スポンサーの成熟度なくして、委託運用は決して成功しません。

今の日本の成熟度とマスコミの自覚を前提に、100兆円規模の運用の説明責任の重さを理解し、そのリスクを本気で負う覚悟のある人など、少なくても私の周りには一人もいません。

単に公的年金の資産を使って、株価を持ち上げたいとか、道路を作りたい、というだけならば、運用のプロフェッショナルなどという大義を掲げずに、昔のようなPKOや財投を復活させればよいだけです。

資産運用を甘く見てはいけません。
寺本名保美

(2013.10.16)



あと7年。がんばれー

伊東温泉に行ってきました。
駅もホテルもバリアフリーは、ほぼ完璧。
ただ、英語対応は、まだ全然。

先週海外の友人を連れていった、和食屋さん。
英語のメニューがあり、店長さんは流暢に英語を操り、大変気に入った友人が英語の名刺を希望したら、ない…。
おしい!

オリンピックまで、あと7年。
どこまで変われるか?
楽しみ半分、心配半分です。
寺本名保美

(2013.10.15)



大丈夫か?インド

インドは危機的状況にはない=インド中銀総裁(ロイター)

首相とか中銀総裁とかが、自分でこういうことを言い始めるのは、過去の経験からいって、あまり良い傾向ではありません。

また、別の記事では、インドが新興国債券ベンチマーク指数に採用されるようインデックスベンダーに協議を持ちかけている、というものもあります。EM債券指数に採用されれば数十億の外資を獲得することが見込まれる、そうです。

新興国市場の専門家の話を聞いていても、インドについての悲観論は共通しており、インド政府がそのことについて抜本的な対策を打とうとしていない、という認識についてもコンセンサス化してます。

インドにとって問題とされているのは、外貨規制などの金融資本政策ではなくて、もっと基本的な国家政策です。
簡単に言ってしまえば、「投資したいけどできない」のではなくて、「投資したくない」と言われているわけで、指数に入ろうが入らなかろうが関係ありません。

南欧の次は、南アジア、などということのないように、インドにはもう少ししっかりしてもらわないと困ります。
寺本名保美

(2013.10.11)



また、はじまった

昨日、喫茶店の隣の席で、不動産仲介業者さんとお客さん、それぞれ30歳代前半の会話が、聞こえてきました。

「不動産の先高感があって、中古マンションをオーナーさんが手放さないんです。
だから、今新築も中古も、値段はほとんど変わりません…
えっ!ワールド××サテライト毎日みているんですかぁ~さすがですね~」

みたいな、よくわからない、あまり聞きたくない、会話が続き、ふっと静かになったと思ったら、捺印していた…

インフレは必要です。資産インフレもある程度は必要です。
ただ、それが、大切な個人財産を無駄に塩漬けにする手段とされることは、やはり避けたいと思うのです。

これから、この手の話はまだまだ増えていくでしょう。
この20年のデフレ環境下で、全く進まなかった投資教育のツケが、回ってこなければよいのですが。
寺本名保美

(2013.10.10)



混乱から勝ち取るもの

米国の債務上限問題。

他国やIMFや格付け機関から言われるまでもないことだということは、当然米国自身が判っていることです。

それでも混乱が継続しているのは、混乱させたいと思っている人が少なからず存在するからで、その人達が混乱から何を勝ち取ろうとしているのかが問題の根幹です。

日本のように、任期途中での政権崩壊がありうるのであれば、トコトン揉めさせるという戦略も考慮に入りますが、おそらくターゲットはもう少し現実的な果実にあるように思います。

非常に穿った見方をするならば、想定以上に評判の悪いオバマケア(医療保険制度改革)で上げた拳を、オバマ陣営が降ろしたいがための、自作自演とも思えるふしもあります。

いずれにしても、何かを収獲するがための戦いであるとするならば、早晩、理性的な妥協点を見出すことになるのではないかと、期待しています。
寺本名保美

(2013.10.09)



ロンドンは元気だったが…

ロンドンは元気でした。

観光業を中心に、まだオリンピック効果が継続しているとのことで、気持ち悪いぐらい、人が沢山いました。

で、本題のエマージングですが…

中長期の成長シナリオは諦めていないものの、短中期的な市場の調整については、各社ともかなり深刻に受け止めているようです。

中長期の強気シナリオの根拠となっている、新興国の人口動態についても、人口の多い国ほど国内の経済改革が進まない、というジレンマの前に、説明にも以前ほどの力強さを感じません。

逆にいうなら、「人口」と「資源」という材料が出尽くした後の、メインシナリオを描ききれないところに、焦りのようなものを感じます。

心理的には、各市場間での資金フローの変化の影響が大きく、債券から株式、新興国から先進国、という投資家の変化が、先進国の株式マネージャーを必要以上に楽観的に、新興国のマネージャーを悲観的にさせています。

米国のQEが一つの材料ではありますが、新興国市場の安定には、まだ当分時間が掛かりそうです。
寺本名保美

(2013.10.08)



やっぱり心配なので…

米国の債務上限問題が、米国そのものに与える影響はさほどきにしていませんが、これがせっかく戻り始めた新興国市場のセンチメントを再び悪化させるきっかけになることが、心配です。

というわけで?、明日から月曜日まで、ロンドンでエマージング関連のヒヤリングをしてきます。

来週月曜日には、感触をご報告致します。
寺本名保美

(2013.10.01)


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