2014年10月の思いつき


さてGPIF

GPIFの方向性について、何らかの発表がある、らしい、と報道されています。

そもそもこういった資産価格に直接的なインパクトのある決定が事前に流れる、ということ自体が問題だ、という形式論は置いておいて。

新聞記事を素直に読むと、
①リスク資産を大きく増やします
②そのためには、ガバナンス体制やリスク管理体制の確立が重要です
③従って、①②を前提とした議論をするための委員会を11月に設置します。
④実際の資産配分の変更については③の結論の後になります

と読めるので、どちらかというと方向性だけは示したものの、結論は先延ばしにしている印象があります。

実際のところは塩崎大臣の記者会見待ち、ということになりますので、感想はまた明日。

寺本名保美

(2014.10.31)



捻じれ

注目されていたFOMCが終了しました。

ほぼ想定通りという評価が高いわりには、為替市場は反応しています。

FFの誘導レンジを現状の0%~0.25%で維持する期間は「相当な期間」、但し「雇用とインフレ率の進展が現状の認識より早まれば誘導レンジ引上げのタイミングは早まるだろう」と表現されており、これについては確かに想定通り、というところでしょうか。

為替市場が反応したのは、恐らく雇用についての認識が、やや強気に変更された点で、イエレン議長が従来から重視していた「労働市場の活用不足」が改善しているとされたことのようです。

「失業率は低下しているが実態が伴っていない」、という雇用統計を巡る、FRB内、更には、FRBと市場との間での「捻じれ」が解決に向かいつつあることを、為替市場は素直に好感しているように見えます。

何はともあれ、何故か捻じれ始めてしまった政治のお蔭で、やや雲行きが怪しくなっている日本の株式市場にとっては、恵みの円安になったことは間違いなさそうです。

寺本名保美

(2014.10.30)



量的緩和はお金持ち優遇?

欧州の景気低迷が明確になっていく中において、ECBの本格的なQEに対する期待が高まっています。

一方で、QEのような金融緩和による景気刺激策は、富裕層への貢献が大きく、格差拡大に繋がる、という主張も目につくようになりました。

確かに、米国においてのQEは、金融危機によって大きなダメージを受けた資産価格を反転させた効果が明らかで、富裕層への恩恵が厚かったように見えています。

しかし、日本の失われた20年におけるゼロ金利と量的緩和が、国内の富裕層に寄与したかどうかは、一概には答えがでないように思います。
日本においては、株式や土地の資産価格が戻った効果は個人ではなく金融機関に対し恩恵が高く、むしろ富裕層にとっては「ゼロ金利」のデメリットの方が大きかったのではないでしょうか。

そもそも「富裕層」という概念が、米国・欧州・日本とそれぞれ異なる中で、一緒には語れない部分はあるのですが…
寺本名保美

(2014.10.29)



タマゴかにわとりか

今日・明日は、米国の中間選挙直前のFOMCとなります。

政治的に、緩和維持を匂わすのではないか、などという期待もあるようですが、選挙前だからこそ淡々と規定路線を踏襲するのではないかと思っています。

一方の日本ですが、消費税を巡る鍔迫り合いがやや激しくなってきました。

「景気の減速」と「消費税引上げの先延ばし」との間で、主従がクルクルと入れ替わります。

一番怖いのは、消費税の先延ばしを画策することを意図した景気減速発言によって、本当に消費センチメントを悪化させてしまうことかもしれません。

FRBのように淡々と振れない政策遂行はとても大切なことだと思うのですが。

寺本名保美

(2014.10.28)



銀行が便利になるのはよいことですが…

金融機関が24時間決済ができるようになることを検討しているようですが、このコストは誰が負担するのかと考えてしまいます。

銀行の収支が改善している中において、銀行自身が負担し利用者に転嫁させない、と言葉でいうのは簡単ですが、実際はそれほど単純なことではないように思います。

そもそも銀行の収支は預金者に完全に公開されているわけではなく、定期預金の金利が適正かどうかなど、誰も判断できません。

銀行のコストが水面下で上昇すれば、今後の金利上昇局面において預金金利の頭が抑えられるような事態に繋がるかもしれません。

また、これが銀行の基礎体力を奪うことになれば、将来必ず再来する金融システム不安の局面において、国民負担の増加を招くことにもなります。

金融機関のサービス向上は、消費者や国民負担に転嫁されないことを、事前に担保する必要があるように思えます。

寺本名保美

(2014.10.27)



リスクに過敏

エボラ熱の拡大が、金融市場でのリスク材料として反応を始めました。

2003年のSARSの際では、発症地域が香港という金融都市だったことから、もっと激しい反応をしましたが、今回については今のところ、まだ落ち着いた反応となっています。

カナダでのテロ疑惑や米国のでエボラ感染など、ここのところ事実確認が不確かな材料で、金融市場が反応しやすくなっているようです。

投資家心理の不安定さは、こうしたところにも出てくるものだということです。

寺本名保美

(2014.10.24)



組織論

10月に入って、官邸の猪突猛進姿勢に変化が出てきたことが気になると、10月8日に書きました。

単に少し冷静になって巡航速度での航海になってくれただけであれば、それに越したことはないと思っていたのですが、ここに来て少し政権内部の軋みが表面化してきたようにもみえます。

アクセルを緩めたから軋みが表面化したのか、軋んできたからブレーキを踏んだのか、単なる時節柄の問題なのかはわかりませんが、組織というものは不思議なものだと思います。

この仕事を始めた時に読み漁った組織論のような書物を、久々に読んでみたくなりました。

寺本名保美

(2014.10.23)



復習

値動きの激しい展開となっています。

復習ですが…

上下動が大きくなると、いわゆる市場のボラティリティが上昇します。

ファンドや機関投資家の多くは、運用資産全体のリスクをボラティリティで把握しているために、個別市場のボラティリティが大きくなると、運用資産全体でとれるリスク資産の絶対量が減少する傾向があります。

単純に言ってしまえば、これまで100億円の株式を保有できたところが、ボラティリティが上がると95億円しか持てなくなる、という意味です。

下がりっぱなしというもの困りますが、上下動が激しすぎるのもまたリスクということを認識しておく必要があります。

寺本名保美

(2014.10.22)



7%の壁

今月のチェックポイントの一つの中国GDPが7.3%と発表されました。

政府目標の7.5%は下回ったものの、市場予想の7.2%は上回ったという意味においては、ネガティブサプライズにはならずに済んだといえそうです。

「中国経済のハードランディングとは何を指すか?」という議論をすると、「7%成長を維持できなくなる」という答えが多いように感じます。

7.3%という数値を悲観的に見るならば、危険水域が接近してきていると表現され、一方で楽観的に見るならば、政府目標近辺で維持されており政府のコントロールが効いていると表現することもできます。

いずれにしても、この水準を下に切ることだけは中国政府が死守するというのが、今のところの市場コンセンサスであることを前提にものごとが進んでいることは頭に置いておく必要がありそうです。

寺本名保美

(2014.10.21)



顔色窺い

安倍首相が消費税の引き上げに慎重な発言をしたという報道が、今日の株式市場にはプラスに働いているようです。

一方で、国のクレジットリスクを測るデリバティブ市場は、マイナスに動いています。

日本の株式市場参加者の体勢を占めるのは今でも海外投資家である中において、消費税の引き上げ延期が彼らにとって、プラスとマイナス、どちらの評価になるが、判断の難しい局面になっています。

今日のように、発言を振ってみた時の市場の反応を確かめる作業を繰り返しながら、着地点を探すことになるのでしょう。

しばらくは、政治家も市場も、海外投資家の顔色を窺う展開になりそうです。

(2014.10.20)



債券市場の反動

一昨日の米国10年債券利回りは、2.22%から1.86%と一日で0.36%の変化幅を記録しました。

急激な株価の調整の次に来るリスクは、限界値を超えるところまで低下した市場金利の反動かもしれません。

良くも悪くもインフレ懸念が収まっているなかで、先進国の長期の金利が継続的な上昇過程に入る可能性は当面先とみてよいと思いますが、行き過ぎた低金利が弾ける可能性は、充分にあります。

昨日発表された数値も含め、米国の雇用関連指標については堅調さが継続されています。

株式だけでなく、債券市場についても、過度な楽観も悲観も禁物かもしれません。

寺本名保美

(2014.10.17)



ポジション整理

上昇局面が長かっただけに、下落に向かった時の角度がやや急になるのはしかたのないことです。

9月中旬からの下落局面で、市場のトレンドを追うマクロ系ファンドの成績が急に上向いてきたところをみると、株式や商品市場に対し下向きのトレンドを取りに行きたい人達が、やや多くなっていたのかもしれません。

おそらく最後までポジションが偏っていた「ドル円」の通貨ポジションも、昨晩の米国の弱い数値に過剰反応して一旦解消されたようにもみえ、市場の歪みや過熱感については、大方始末がついた、という感じがします。

そうはいっても、傷ついてしまったセンチメントが癒されるには、少し時間が掛かるもの。

あせって買い下がる必要もなさそうです。

寺本名保美

(2014.10.16)



原油安のスパイラル

中国やロシアの景気低迷が原油価格を押し下げ、原油価格の低迷がロシア等の資源国景気を低迷させ、という悪循環が始まりつつあります。

原油価格の下限については、米国等のシェールオイル採掘コストとの駆け引きになっているようで、極端な価格低下はこれまで米国経済を牽引していた、資源ビジネスの採算悪化に繋がります。

もちろん悪い話ばかりではなく、円安での資源コスト上昇に怯える日本の製造業にとってはチャンスかもしれません。

モノ上がっても、下がっても、損する人もいれば得をする人もいます。
一喜一憂してもしかたありません。

寺本名保美

(2014.10.15)



あら、理論値

日本株は弊社の理論値に。米株はまだ少し上。

調整が深い分、戻りには時間が掛かるかもしれませんが、慌てる局面ではありません。

一休み、です。

寺本名保美

(2014.10.14)



原油の撒き散らす火の粉

今気になるとすると、株式市場よりは原油市場かもしれません。

昨日の米国市場では、原油価格が6月の年初来高値から20%の下落ラインを割り、2012年6月以来の安値圏となったことで、株式市場でもエネルギーや資源系の株式が大きく下落しました。

きっかけは、IMFの景気見通しの下方修正といわれていますが、やや後付けの言い訳に聞こえます。

米国の資源国化で原油・ガス市場の需給が崩れつつあるなかで、従来の中東に軸足をおいた価格支配に囚われている原油市場の参加者の梯子が外されてしまった感じかしています。

大きな市場が崩れる時は、必ず他に巻き添えがでます。
火の粉を浴びないように、フットワーク軽く身構えておく必要がありそうです。

(2014.10.10)



創造力の放棄

このところとの、再生エネルギーの買取を巡る騒動を見ていて、とても残念な気がしてます。

2012年の民主党政権末期に突如打ち上がった花火です。
決定する政権に持続性がないにも関わらず、20年という単位での買取保証。
買取に対する、政府と電力会社との間での責任の所在の曖昧さ。
買取コストの高さと、雨後の筍のように現れた新規参入業者。

色々な意味において、早晩、社会問題化することは、あまりも明らかだった政策です。

それでも、日本のエネルギー政策にとっては、意味のある第一歩だったはず。だからこそ、こうした判り切った結末にはしてはいけなかったのだと思います。

この当時の、創造力を放棄した、行き当たりばったりの政策に振り回されたのは、年金業界もまた同じですが。

寺本名保美

(2014.10.09)



不純物

市場の下落について、特に新しい材料に反応しているわけではないので、あまり心配していません。

国内に関しては、これまで「猪突猛進」だった自民党や官邸の皆様が、少しアクセルを離して、様子を窺い始めた気がするのですが、どうかしたのでしょうか?

巡航速度に戻って、一歩一歩前進してくれるのであれば、それに越したことはなく、よい傾向だと思っておくことにします。

IMFやFRBの方々が、「バブルの兆候」を「泡立つ」と表現されているのが、判りやすくてよいですね。

一般的に液体が「泡立つ」時は、不純物が混じっていることが多いのですが、今の金融商品のどこに不純物が入り込み始めているか見極めていかないといけないかもしれません。

寺本名保美

(2014.10.08)



小さな積み重ね

昨日の台風で、この会社のある地域にも、避難勧告がでていたそうです。

と、「過去の伝聞系」となっているところに問題があるわけですが。

ビルの外では、広報車が回っていたらしく、テレビのニュースでも流れていたらしいく…

10時ごろ母から携帯に大丈夫?という電話が入った理由が、これだったと知ったのは、夜、家に帰ってからでした。

ビルの中にいると判らない、では困るので、早速「港区災害お知らせメール」というのに登録してみました。

備えというものは、気づいた時に、気づいたことをすることの積み重ねであることを、実感しています。

寺本名保美

(2014.10.07)



住宅は一旦忘れて

米国の失業率が6%を切りました。

11月の中間選挙前の数字なので、今ひとつ宛にならないという人もいますが、方向性として米国経済が好調であることは否定しようがなさそうにみえます。

住宅関連指標がリーマン前にほど遠いことを懸念する向きもありますが、2006年までの米国の住宅市場は「明らかなバブル」だったわけで、そこを基準に物事を判断するのはミスリードだと思っています。

むしろ、住宅バブルでも金融バブルでもないにもかかわらず、リーマン前の経済成長に戻った、という事実から、今の米国経済というものを、見ていく必要があるのではないでしょうか。

いずれにしても、近づく利上げの音に耳を澄ませなければいけない時期はもうすぐそこです。

寺本名保美

(2014.10.06)



国をあげてのIR

前回のG20以降、EUには本格的な量的緩和が、日本には効果のある景気刺激策の提案を、早急に実現することを世界から求められている中において、日本の次の一手はカジノ法案になるのかもしれないと思っています。

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」-通称「カジノ法案」-略して「IR法案」といいます。

但し、景気刺激策の方向性としては、オリンピック効果を増幅させるだけとなるので、今問題になっている労働力の問題や資材高騰の問題がボトルネックになることは変わりありません。

一方で、東京に一極集中する案件ではない、という点においては、地方再生案件としてインパクトがあるとも言えそうです。

IR法が通って日本の税収が増えるなら、「国債のIR活動」にも役に立つ、という話はありませんか…

寺本名保美、

(2014.10.03)



経済大国だからこそ

「格差」というものは、景気が拡大している限りにおいて、また逆に急激に景気が悪化する局面においては、問題になりにくいものです。

一方で、景気の伸びが止まり、先行きに対し停滞感が広がるような局面においては、それまで表面化してこなかった不満が一気に爆発する傾向があります。

香港が中国経済の拡大の恩恵から、この数年で非常に大きく変化していたことは周知のことでした。変化の大きさに混乱しながらも、発展の恩恵に酔っているようにも見えました。

中国経済の先行きが不透明となり、それに伴い香港経済の伸びも止まったことで、色々なものが湧き出てきたのかもしれません。

経済大国中国の低迷は、色々なところに影響を与えていると言えそうです。

寺本名保美

(2014.10.02)



為替 様 様

市場収益率から見ると、色々な意味において、為替に助けられて、7-9月が終わりました。

外国株式については、8月に好調だった米国株式を除くと、株式指数そのものではマイナス圏となり、通貨効果分がプラスに寄与しています。

国内株式は、消費税後の立ち直りが期待より遅く、景気指標的には冴えない四半期であったにも関わらず、円安効果に押され株式市場は上昇傾向が続きました。

結果だけをみれば、まずまずの四半期であったといえるますが、中身については、年度後半に向け、やや不安が残ります。

10-12月は、米国の中間選挙あり、日本の消費税引上げ判断あり、と株式や金利市場はやや動きずらい構図となります。

唯一勢いがついて動きのよい、為替市場に左右される環境が、しばらく続くかもしれません。

寺本名保美

(2014.10.01)


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