2014年12月の思いつき


しなやかに したたかに

今年の12月22日は「朔旦冬至」という19年に一度のおめでたい冬至だったそうです。

森羅万象、朔旦冬至を境に、物事にひと区切りをつけ、新たな一歩を刻み始めると、ものの本にはありました。

2014年が終わります。
国内外共に、政治も経済も市場も大きな変化が形になり始めた一年でした。

この大きな変化の波を上手に利用できるのか、波に飲み込まれてしまうのかは、当事者各々のしなやかさとしたたかさ次第かとも思います。

本年は本当に本当にお世話になりました。

支えてくださった、沢山の皆様のお気持ちに応えることができるよう、来年も技量を磨き、勇気と信念を持って、お客様と共に前を向いて歩んでまいる所存です。

2015年が皆様にとって、幸多き一年となりますようお祈り申し上げます。

寺本名保美

(2014.12.26)



ボラティリティの計測期間

株式の足下のボラティリティの高さを嫌がるコメントが増えていますが、一方で中期で計測するボラティリティはそろそろ低下局面に入りつつあります。

2008年9月からのリーマン大暴落の半年から、ようやく6年が経過しました。

過去10年で計測したボラティリティはこれから下がり始めますし、弊社のように過去5年や6年で計測しているボラも大きく低下します。

リスク管理の基準となるボラティリティが下がれば、リスク資産は組み入れやすくなるため、市場全体のリスク許容度は上がります。

この5-6年の経過時間というものが、人間や組織が過去の痛みを忘れる経過時間に符合していることも加味すると、ここからしばらくは市場全体がややリスクの拡大に抵抗感が薄れてくる時期であるともいえます。

参加者のトレンドの変化には逆らわず、でも冷静に市場を鳥瞰していく一年にしたいと思っています。

寺本名保美

(2014.12.25)



Happy Xmas !

米国の第3四半期GDPの確報値を受けて、NYダウは市場高値を更新しました。

米国の景気の良さは今更コメントすることでもありません。

ただ、10月末の「アナリスト予想3.0%」から始まって、「速報値の3.5%」、「11月末の改定値3.9%」、そして「今回の確定値5.0%」、という変遷には、やはり驚きます。

一定のトレンドを持って上昇修正されている、と好意的にみれば、あまり実害はありませんが、当初予想から2%も離れる経済指標に一喜一憂するのも、なんだか馬鹿馬鹿しい気分になります。

所詮GDPの速報値などというものは各国ともこの程度の精度である、と思うなら、足元での我が国のGDPに一喜一憂するのもやめておいた方がよい、ということかもしれません。

何はともあれ、株式市場にとっては「Happy Xmas !」ではあります。

寺本名保美

(2014.12.24)



GPIFの前提条件

今回のGPIFにおける種々の変更は、アベノミクスの成功を前提とした経済シナリオにのっとって決定されていると、関係者だったかたのコメントが出ています。

ある意味危険であり、ある意味とても正しいコメントだと思います。

資産運用の大枠を決める際、一定の経済環境を前提として置くことは当然であって、その前提の確からしさをどう確認していくかは、資産配分を管理していくための基本です。

従来のGPIFの運用において、この前提に対する議論が極めて硬直的であったことは確かだったといえます。

一方で、その前提を現政権の政策の成否に依存することの危うさについては、当然議論のあるところとなります。

足下の前提はこれで仕方ないとして、今後アベノミクスのシナリオが狂ってくる局面がもし来た場合、GPIFが独自で前提条件を修正することがてきるかどうか、国民全体で監視をしていく必要がありそうです。

寺本名保美

(2014.12.22)



資本主義の振り子

この数年、私は資本主義が「多角化」していくことを、将来の金融資本市場における最大の潜在リスクだと考えていました。

特に金融市場のように、「参加者による約束事」によって成り立っているものにおいて、「似て非なるルール」をもった取引主体が大きな力を持つことによるリスクは、将来必ず大きな危機の引き金になるだとうと思っていました。

例えばロシアや中国のような全体主義体制での資本主義や、イスラム金融という独自ルールによる金融取引が拡大することが、従来の英・米型の資本主義体制の均衡に、いつか大きな亀裂を与えるような気がしていたのです。

今年後半になり、中国やロシアの金融経済でのプレゼンスが落ち、イスラム金融も原油価格の下落と共にかつてほどの勢いはありません。

結果論ではありますが、リーマンショック以降大きく振れていた振り子の振動が少し収まりつつあるようにも見えます。

もちろん「資本主義の多角化」が世界経済のダイナミズムを拡大すると肯定的に見る人達もいます。

いずれにしても、世界の経済秩序が大きな地殻変動を起こしていることに敏感になっていた方が良いと思っています。


寺本名保美

(2014.12.19)



目先のリスク

FOMC後の記者会見でロシアの問題に触れたことは、少し意外感がありました。

目先の問題としては、やはり懸念があるということでしょうか。

一方で、少なくてもあと2回のFOMCにおいて政策変更はない、と時期を特定してきたことに、利上げの現実感が高まったと為替市場は判断したようです。

円安に戻っていることで、日本株は買い戻しが優勢になっていますが、目先のリスクが消えたわけではないことを、認識しておいたほうが良さそうです。

寺本名保美

(2014.12.18)



油断してました

冬の北海道出張は、通常「前泊後泊」と余裕をもったスケージュールにするのですが、まだ12月中旬だったということもあり、油断してました…

昨日は、着けるか、帰れるかの綱渡りの一日となってしまい、お客様にもお気を使わせて申し訳なかったです。

最近の天気予報の「過去何年に一度の規模の大***」という表現には、ひどく緊張感が高まります。

緊張感は高まるのですが、何年に一度と言われても具体的なイメージにはならないので、何かを決断するにはあまり役に立たないかな、というのが、今回経験した感想でしょうか。

いずれにしても、昨今の気象事情を甘くみてはいけないと自戒した一日でした。

寺本名保美

(2014.12.17)



嫌な感触

ロシアが気になります。

昨日ルーブルがロシア危機以降で最大の10%の下落を記録したことをうけ、ロシア中銀は先ほど緊急利上げを決定しました。

11月の変動相場制への移行を好感して上昇していたロシアの株式市場も、その上げ幅をこの数日で全て失いました。

10年金利は1か月前に比べ3%上昇し、13%台に突入しています。

原油の下落とルーブルの下落のスパイラルが、やや投機的に行われているようにも見えます。

1995年の1月3日。新聞の一面に掲載されたメキシコのデフォルト記事を見た時のショックが、ふと頭によぎりました。

年末年始、何事もありませんように。

寺本名保美

(2014.12.16)



そして、本当に材料がなくなった

何も変わらず選挙が終わり、閣僚もほぼ全員が留任と伝えられ、本当に何も変わらずの週末となりました。

何も変えないというのが、国民の判断ということになるのでしょう。

ということで、本日の金融市場は日本の問題は関係なく、先週末の米国の地合いを引き継いでの円高・株安となりました。

当面の注目は、国内は補正予算・国外は原油動向ということになるのでしょうが、どちらもあまり本質的な問題ではないようにも思います。

所詮は株式も為替も、今の水準とスピード感ににやや居心地の悪さを感じている中、売り材料に反応しやすいセンチメントになっているだけなのかもしれません。

米国のシェール開発熱も収まり、中国はニューノーマル宣言をし、日本も当面の差し迫った期限に追われない巡航速度の政治経済運営に戻ります。

来年は良く言えば地に足の着いた、悪く言えば面白味のない、平穏な一年になるのではないかと、希望を込めて思っています。

寺本名保美

(2014.12.15)



さっぱりわからないまま週末

というわけで、あっというまに、選挙の週末になりました。

東京にも雪の予報がでている週末です。

株式が乱高下を始めたので、少しリバランスで株式比率を落としましょうか?という話をあちらこちらの委員会でしているのですが、「選挙が終わってからにしよう」と言われるケースが多く。

選挙が終わると何があるのか?
選挙が終わって何を期待しているのか?

全てが、曖昧模糊としたまま、月曜日のお楽しみとなりました。

不安定な株式市場の救世主となるのか、想定外の地雷となるのか、選挙結果を見て、且つ、海外投資家の反応を見てみないことには、さっぱり見当もつかない、というのが正直な実感でしょうか。

寺本名保美

(2014.12.12)



オバマ政権の置き土産

あまり評価が高くないオバマ大統領ですが、このオバマ政権において今後の世界の方向性を大きく左右する決定が2つあったと思っています。

一つは「米国の資源国化」
もう一つが「産業と軍事のロボット化」

一つ目の資源国化は良くも悪くもその影響についての議論が認知されつつありますが、二つ目のロボット化についての議論はまだ水面下です。

「ホーキング博士の警告」という文章が、この1週間、ネットを騒がせています。
人口知能への依存は、人類の終焉を意味する、という博士の趣旨が話題になっています。

欧州議会がGoogleの分社化命令を決議したというのも、ある種のロボット依存に対する社会の警戒の表れです。

ロボットと人間との付き合い方について、これから長く深刻な議論が始まります。

寺本名保美

(2014.12.11)



年末休暇入りと少しの違和感

12月に入り、実質的なクリスマス休暇入りと共に、リスク資産に手仕舞い売りが出ています。

このところの高騰に違和感があった中国の株式市場や、過去の騒動を忘れていたギリシャを、思い出したかのように売ってみた、という感じでしょう。

違和感という意味では引けを取らない日本株が素直に反応したのは仕方のないことです。

唯一気味が悪いとするならば、やはり中国の株式市場で、この1年半、石油利権絡みの政局が噂される度に株式市場が乱高下しています。

それも、株式市場にとっては一時的な需給に過ぎないとするならば、あまり気にする必要もないのかもしれません。

一方的にあげてきた強気相場も、年末年始で一休みしたかったのかと、少し気楽に考えていますが。

寺本名保美

(2014.12.10)



暫しの平穏

2年前のシェール開発の本格稼働時に想定していた米国一人勝ちの構図が、早くも出来上がりが見えてきた2014年となりました。

来年は、この構図が生み出すであろう歪みに目を配る一年になりそうな気がしています。

米国の金利高から来る資金の逆流だけでなく、ドル高による新興国ドル建て債務の実質負債の増加、原油安による外貨不足などが、当面の懸念です。

そして経済も通貨も資源も米国に支配されていくなかで追い込まれていく国々、取り込まれていく国々。

米国が良くなればよくなるほど、水面下の歪みは拡大していくでしょう。

少しずつ、ガス抜きが上手くできることを祈りつつ、今しばらくの平穏を享受することにしましょうか。

寺本名保美

(2014.12.09)



逆らえない…

何なんでしょう、このまったりとした緊張感のない総選挙は。

週末の折り込みを読んでも、テレビを観ても、ネットを漁っても、全く論戦らしいものがありません。

争点がない解散だと言うならば、自ら争点を作るのが野党の仕事だと思うのですが、その気概すら伝わってきません。

だから、市場にも緊張感の欠片もなく、GDPの下方修正すら、買い材料にしてしまうのです。

状況には首を傾げながらも、勢いには逆らえず。

資産配分を考えていると、いまの野党になった気分になります。

寺本名保美

(2014.12.08)



中長期での変化

為替というものが「交換レート」である以上、それが動くことにより交易条件が有利になる人も不利になる人もいます。

株式や土地のように、資産価格の上昇や下落とは意味が異なるのです。

為替というものを交易条件の一つと考えれるならば、その条件を前提にした、企業活動というものを設計するしかありません。

この先数か月で為替レートがどのように動くか、来年3月末のドル円がどの水準にいるかを当てることは不可能ですが、1年2年単位でのトレンドとして、為替の居所にめどをつけた経済活動というものを検討することはできそうです。

民主党政権になってからの円高。自民党政権になってからの円安。それぞれ転換期にはそれなりの節目がありました。

目先のトレンドを追う必要はありませんが、中長期での金融環境の変化に対応していくことは、資産運用においてだけでなく企業経営においては無視できないファクターであると思うのです。

寺本名保美

(2014.12.05)



ふるさと納税ヒット

プライベートな行事の記憶が殆ど何もない本年において、唯一記載できるイベントが「ふるさと納税」です!

細かい金額ですが、計5か所に送金し、各地の名産品を美味しくいただきました。

この制度、地域振興として、想像以上によい感じがします。

もちろんきっかけはおまけの名産品目当てではあるのですが、受領書等と一緒に送ってくださる地域の名所・名産のパンフレットを拝見したり、送金等の手続きの中で市町村の担当者の方とのメールのやりとり等をしている内に、私の中に「ふるさと感」がフツフツと醸成されてくるのが不思議です。

「身近なお得感のある寄付」という、これまでありそうでなかったシステムが、地域振興という「ひと肌の温もり」が必要な政策に上手くマッチしたのだと思います。

市町村が大判振る舞いをしすぎているという懸念も聞こえてきますが、できることなら細く長く続いて欲しいシステムです。

寺本名保美

(2014.12.04)



東京様変わり

子供の頃から通いなれた渋谷駅。
大改修が始まって早2年。
未だに迷子になります。

見慣れた景色と新たな迷路が混在しているので、頭の中の地図がいつまでも更新されない。

そういえば、先日大手町の交差点に立って、迷子になりました。
こちらも、以前は十何年通いつめたはずの場所。

私、ボケたのか?と思うほどの東京の変わり様。

まだまだ進行中です。

寺本名保美

(2014.12.03)



格付け機関も色々

Moody'sで日本のソブリン格付けがA1に格下げになりました。

2002年5月にA2まで2段階下げられて以来のシングルA格です。

2002年の時も、S&P社がダブルA格を維持している中での格下げでしたが、今回の消費税先延ばしを巡る判断も,M社とS社では意見が同じではないようです。

今回の引き下げの一因にM社が消費税引上げ延長を上げているのに対し、S社は消費税引上げ延長が一概に格付け判断にマイナスとは限らない、という言い方をしています。

ようするに、財政再建を優先するか、景気対策での需要を優先するかという古典的な議論が格付け機関内でもおきているということです。

日本の10年金利も、先日の消費税先延ばし決定で跳ねあがった日本のクレジットスプレッドも、昨日の格下げではとりあえず反応していません。

これが日本の信用力の賜物か、日銀が国債を買い漁っているからか、あまり楽観せずに様子を見たいと思っています。

寺本名保美

(2014.12.02)



不自然な均衡

原油安と株高とドル高が当時に進行している状況は、極めて不思議な光景です。

この状況は今の株高が資産インフレを伴っていないことの証左であり、今のドル高が地政学的リスクの高まりの結果ではないことの証左でもあります。

インフレでもなく、リスク環境でもないなかでの米国一人勝ちという構図は、ある種ユーフォリアでもあり、ある種の虚無感を感じます。

スケールはかなり小さくはなりますが、いまの安倍政権に感じるのと同じような感触でしょうか。

この違和感のある均衡を当たり前に思えるようになったらば、潜在リスクに目を配り始めることにします。

寺本名保美

(2014.12.01)


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