2015年05月の思いつき


米国 対 新興国 

FIFAの巨額汚職の話が、政治の話になりつつあることに、嫌な感じを受けています。

「Wカップ・ロシア開催」目前のタイミングにおいて、米国司法主導で今回の事件が取り上げられたことに、プーチン大統領は怒りを示していますが、今後資金の提供側として名指しされている南アフリカ政府等を含め、関係国とスイス・米国との間でどのような騒動が持ち上がるのか気になります。

AIIBの設立もそうですが、このところ必要以上に、いわゆる先進国といわゆる新興国との間での対立構造を強調するような展開が目につきます。

このことを指して、グローバル世界における米国の政治力の弱体化だという人もいますが、私はむしろ米国が強くなりすぎていることに対し諸外国が過剰に反応してるように見えます。

いずれにしても、されどサッカー、たかがサッカーです。こんなこことで国際紛争の火種を作ることは願い下げです。

寺本名保美

(2015.05.29)



小噴火

明日から始まるG7を前に、大荒れの為替市場です。

昨晩の黒田日銀総裁、本日の菅官房長官ともに「為替レートの安定化を望む」という発言で、急激な円安を牽制していますが、どちらもG7で「円安誘導」との批判を回避するためのアリバイ作りをしているだけにも見えます。

米国の足元の景気の強弱感や欧州問題に気を取られ膠着状態にあったドル円市場には、それなりのエネルギーが貯まっています。

変動が小さくなっていた分、一定の範囲内での値動きを想定したようなデリバティブ取引も拡大していた可能性もあります。

いずれにしても為替市場参加者が、G7において何を期待し、何を恐れてポジションを動かしているのか、理由がよく見えないことが不気味でもありますが。

寺本名保美

(2015.05.28)



不招請勧誘

周期的に波が来る、通信サービス会社の代理人を名乗る電話勧誘の嵐。
このとろろ、再びピークが来ています。

「不招請勧誘」という単語を検索しても、金融商品取引や商品取引関連での事象が中心で、こうした通信回線業者に関わる規制は見当たりません。

事務所に対する電話だけでなく、留守宅に年寄り一人の頃を見計らったかのようなタイミングで「ここにハンコを押してください。ご近所皆さん押していらっしゃいますよ」みたいな事例もあります。

押し売りまがいの代理営業をしている会社の品性は論外として、こうした会社に営業を懲りもせず委託している通信会社そのものの品性を心底疑います。

通信技術は目を見張るほどの進歩をしているのに比べ、営業体制や行政監督のなんと進歩のない業界かとあきれるばかりです。

寺本名保美

(2015.05.27)



ハードランディングはお早めに

ギリシャの次の山場は来月5日だそうです。

ギリシャのブーチス内相の「返すお金はありません」発言で、昨晩の南欧市場はやや荒れ模様になりました。

「返済する資金はない」が「デフォルトを望んでいない」けど「ドイツ等からの条件を飲むつもりはない」

という堂々巡りが、相変わらず続いています。

ここまで開き直られるともはや苦笑するしかなく、むしろこの手の発言には辟易しているはずの金融市場が、未だにネガティブに反応したことの方が驚きです。

ギリシャは多分払う気はなく、EU各国も多分払われなくてもよいと思い始めている状況において、何時かハードランディングをするならば、米国と金融市場が元気なうちにしてほしいと、願うばかりです。

寺本名保美

(2015.05.26)



負の遺産処理の終焉

大手のディストレスト系ファンドが日本での投資から事実上撤退することが報道されています。一方でガバナンス系ファンドが企業経営に対しコンタクトをしたことで株価が大きく動くケースが出ています。

2000年初頭、日本に進出した再生ファンドは、不動産等の保有資産価値目当てものと、ガバナンス系とは半々ぐらいでした。投資開始後ガバナンス系は株主総会対策等で苦戦をし2004-5年には早々と撤退を始め、残ったのは不動産ファンドと化していたディストレスト系ファンドだけでした。

それから10年が経ちました。リーマンショック後に立ち上がった不動産系ファンドにそれほどの盛り上がりが見られず、欧米に比べれば落ち着いた金融環境の中において不良債権も多くは出てこない中、2000年初頭から頑張っていたディストレスト系ファンドがついに退場し、一方で新規のガバナンス系ファンドが進出をする2005年とは逆のパターンが起きています。

ガバナンス系ファンドが良い影響を与えるかどうかは意見も多々あるかもしれませんが、とりあえずこのことだけを見ると、日本企業を取り巻く環境が非常に健全化していることがうかがえます。

日本の真正バブルの崩壊から25年。ディストレスト系ファンドの撤退は、ようやく負の遺産が終焉したことの証しであるのかもしれません。

寺本名保美

(2015.05.25)



偶然かもしれませんが

日本企業が出資するドイツ企業の香港子会社が突然決算上の理由から破たんしました。

昨日、香港の特定グループの株式が、一時7割を超す下落幅を記録しました。

いずれも原因はよくわからず、決算に対する信頼性が取りざたされています。

上海と香港とでの相互取引が可能となって以降、本土マネーの大量流入により、株価形成の歪みが増したといわれる香港株式市場。

相互取引解禁が、投資資金だけでなく、政治や経済の歪みも一緒に香港に流入させてしてしまったのではなければよいのですが。

寺本名保美

(2015.05.22)



配当はあるけどボラもあります。

この四半期報告で繰返し聞いた表現に、「債券代替としての株式投資」というフレーズがあります。

債券が異常な低金利を記録した昨年末から今年年初に掛けて、欧米投資家の多くが、債券の代わりに低ベータの株式を購入したといいます。

一瞬もっともらしく聞こえる話ではありますが、所詮は株は株。債券の替わりにはなり得ません。

例えば、始めて米国の利上げか意識されたバーナンキショックの時、低ベータ高配当戦略はボロボロになりました。
理論的にはインフレには強いはずのリートも金利の上がり始めには極めて脆弱です。

何を意図して、債券代替と言っているのか真意は判りかねるところもありますが、債券のボラティリティの逃げ先として、高配当株式やリートというのは、あまり適切な選択肢とは思えません。

寺本名保美

(2015.05.21)



債券市場のインサイダー

株式市場にとって主要な発行体は企業であり、主要な最終投資家は年金や個人となります。

一方で国債市場にとって主要な発行体は国であり、主要な最終投資家は年金や金融機関となります。

このように発行体と最終投資家が異なる状況において、発行体にアプローチする組織と投資家にアプローチする組織とを明確に分離することができることが、市場取引におけるインサイダー犯罪防止の大きな基盤です。

ところが、昨今の国債市場。発行体であるはずの国が主要な最終投資家を兼務するような状況が各国で顕著になっています。このことが財政規律上のマッチポンプであるという問題はさておき、国債の市場取引におけるインサイダー疑惑を招く要因になっているのではないかという話が散見されるようになりました。

そもそも国債の最大の買い手が政府中銀である、などということを事前に想定したルール作りなど、どこの国においても行われていなかった状況において、債券市場は長く緩い慣習の中で市場形成が行われています。
昨日欧州中銀の理事とヘッジファンド等との間で起きたようなことが繰り返されることが、債券市場の藪の中の蛇をつつくことになりやしないかと少々心配です。

寺本名保美

(2015.05.20)



高度成長期の悪弊

何かを壊して、新しいモノを作る際、「壊す」ことが目的なのか、「新しくする」ことが目的なのかがはっきりしていないと大変なことになります。

「旧」競技場の解体が終了し更地になったタイミングにおいて、「新」競技場の設計が完了していない、などどいう状態に陥っている東京オリンピックのメイン会場問題を見ていると、不思議と今の厚生年金基金問題に思考がリンクしていきます。

今あるものを壊すには、意外に高額な費用と、想像以上のパワーが必要となります。
新しいものを作るためのコストの問題以前に、まず「壊す」という作業に対して生じる「コストと労力と時間」の費用対効果を検証する必要があります。

且つ、その後の受け皿となる「新しいモノ」が必須なのであれば、当然その設計は、「古いモノ」の取り壊しが終わる前に出来上がっていなければなりません。

更地にしてしまえば何とかなるという高度成長期の悪弊が、まだそこここに残っているのかもしれないとも思います。

寺本名保美

(2015.05.19)



面白いけど…

顔写真から年齢を推計する、というスマートフォンサービスが話題になっています。

女性はお化粧前・後で、かなりの年齢差があったりと、試してみるとかなり面白い。

問題は、このサイトの運営者が、マイクロ***で、且つ、無料のサービスであること。
どうしても、何の目的で立ちあげたものなのかと、勘繰りたくはなります。

今後様々な場面で広がっていくと思われる「顔認証」技術開発のためのデータを蓄積しているのかもしれない、という想像は容易くつきますが、だからといって私の顔写真が彼らのサーバーにこっそり登録されたとしても、私自身は問題を感じないので、気にはしていません。

いずれにしても、サイトやサービスの活用には全て自己責任がついてくるということを、大人も子供も日々認識していかなければならない時代となっているということです。

寺本名保美

(2015.05.18)



地に足のついた議論

世界のパワーポリティックスを動かす要素は、経済力と軍事力、イデオロギーと宗教。

ソ連の崩壊でイデオロギーと宗教のバランスが変わり、2008年の金融危機で経済力と軍事力とのバランスが変わりました。

中国の台頭は旧G7とその他の国のバランスを崩し、米国のシェール開発は世界のエネルギーバランスを崩壊させました。

日本にとって心地よいかどうかは別として、パワーポリティックスのこの大きな変化に対し日本もまた何らかの対応が必要であったのは確かでしょう。

現実の変化を直視しつつ、でも平和国家としてどうあるべきか、もう少し地に足のついた議論ができるとよいと思います。

寺本名保美

(2015.05.15)



安全の根拠

米国の高速鉄道アムトラックで脱線事故が起きました。

飛行機が嫌いな私が米国出張の際に、ニューヨークからワシントンやボストンへの移動に活用させていただく列車です。

乗っているとどうしても日本の新幹線と比較してしまうので、乗り心地やスピード感など物足りなく、日本の新幹線を導入すればよいのにと思いながら、乗っていました。

ただ、こういう事故が起きると改めて、地面に敷かれた線路の上を、あの長くて重い車体が200キロや300キロのスピードで事故もなく走り抜ける新幹線というものが、単なる走行車両としての技術だけでなく、日々のメンテナンスや運行技術の集大成の賜物であったかということがよくわかります。

新幹線という機械が安全なのではなく、新幹線技術全体が安全を確保しているのであれば、新幹線の輸出は即ち日本の繊細な運行管理技術やメンテナンスの心得そのものを輸出しなければなりたちません。

日本では安全の代名詞でもある新幹線が海外に渡ってもそうであり続け、安全の輸出になりうるのかどうか、やや心配でもあります。

寺本名保美

(2015.05.14)



金利引き上げの前哨戦

欧州金利の落ち着きどころがみえず、金融市場が荒れています。

何か具体的な材料に反応して、金融市場が変動しているのではなく、勝手に右往左往している金融市場に対し、材料が後付けされている状況です。

債券市場の調整は、この数か月各国の中央銀行から幾度となく警告されていたことで、ある意味想定内の状況です。

願わくば、こうして小規模のガス抜きを繰り返すことで、米国や英国の本格的な利上げ局面でのショックが緩和されるのが一番です。

寺本名保美

(2015.05.13)



久々に、、、四半期報告で思うこと

このところこういった話をあまり書いてきませんでしたが…

四半期報告会の質が、この1年で目に余るほど低下しているように感じます。

単純に四半期報告会の問題だけであるなら良いのですが、これが年金基金の資産サービス全体の質を象徴しているのであれば、困った問題です。

総合型の解散問題だけでなく、企業年金のリスクの取り方の変化、アクティブ運用の低迷、営業の公的年金シフトなど、様々な要因はあるのでしょうが、特に信託銀行における年金基金対応全般に緊張感が感じられません。

言うまでもなく、運用とは生ものです。
緊張感の欠落は、すぐにトラブルに直結します。

一方で委託・受託の関係は鏡のようなものです。受託側の意識の低下は即ち委託側の意識の低下の裏返しであることも否定しません。

自らを含め、もう一度関係者全員、身を引き締めないといけないのではないかと思う、四半期シーズンです。

寺本名保美

(2015.05.12)



中国株式市場と経済

2006年の始めに6000ポイント超えで天井を付けた上海株式バブル。

その後のリーマンショックを挟んで2000ポイント割れまで売られ、足下の金融緩和で4000ポイント超えまで復活しています。

バブル崩壊に関わる経済のダメージが解消しているかどうかの判断ではなく、単なる金融緩和にだけ反応しているのは、バブル崩壊後の金融市場でよく見られる現象です。

問題は、株式市場等の資産価格の戻りが、実態経済に対しどの程度のプラス効果があるかですが、個人の株式保有比率の低かったバブル崩壊後の日本では殆ど意味がなく、個人比率の高かった金融危機後の米国では大きな意味を持ちました。

中国については、米国型に近いものの、資産保有者の裾野が現在どこまで広がっているかが不透明要素として残ります。

株高が低迷している中国経済のカンフル剤になるかどうか、期待半分でみていたいと思います。

寺本名保美

(2015.05.11)



シーソーゲーム

昨日の欧州市場では寄付き後から、主要国の10年国債金利が0.15%以上急騰し、株式も大幅に下落して始まりました。

その後、債券に急激な買戻しが入り、終わってみれば何事もなかったかのような展開となっていますが、一瞬冷やりとしたことは間違いありません。

戻った理由が、原油が下落したから、というのは、あまりにも短絡的ではありますが、どうもこのところの市場の足の速さを見ていると、原油と債券と株式との間のシーソーゲームが酷くなっているようにもみえます。

為替のボラティリティは収まってきている一方で、その他の市場の荒れ模様は今しばらく続きそうです。

寺本名保美

(2015.05.08)



債券市場発

連休前後の市場の変調を、米国の景気の弱さだけで説明すると、判断を間違うように思います。

やはりきっかけはドイツの国債利回りの上昇が、米国国債にドミノをを起こし、異常な金利低下と株高が両立しないことを、市場が改めて認識したことにあるように思うのです。

市場の期待インフレ率の物差しとなる、物価連動債の動きをみていても、原油価格の下げ止まりが市場の過剰な「デフレ期待」を鎮静化していることがうかがわれます。

債券市場を起因とした株式市場の調整は、資金の逃げ場がないだけに、パニックになりやすい傾向があります。

原油価格の安定や、期待インフレの醸成は、経済にとってはむしろ好材料であるはずです。

大きな深押しにはならないとは思いますが、少々気を付けてみていたいと思います。

寺本名保美

(2015.05.07)



無言の圧力

日銀が物価目標達成の期日を変更しなかったことについて、市場関係者の持つ疑問は大きく分けて2つ

①黒田さんは何を意地になっているのか?

②ここまで言うからには、今度は何をしてくるのか?

何をしてくるのか?という疑問について、おそらく市場が想定している手段は、ある意味最終兵器なので、最後のバズーカを打つタイミングを、息を潜めて推し量っている、という感じでしょうか。

そいう意味では、円を買うのも、国内株を売るのも、それなりの覚悟が必要ということになります。

こうした無言の圧力で、下押しが限定されるのは、よいことばかりではないのですが…

寺本名保美

(2015.05.01)


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