2016年01月の思いつき


白黒つかない不安

足下での市場参加者の混乱を表していることの一つに、経済統計等の材料に対する評価に対するバラツキの大きさがあります。

例えば、アップルの四半期業績が、前年比小幅のプラスであったことに対し、売れていない6sであってさえも四半期で5超円もの売上高がある、と取る人もいれば、プラス幅の小ささで将来を悲観する人もいます。

昨日のFOMCが、3月利上げの見送りを予感させるものであったという人がいれば、3月は予定通りだと判断されているという人もいます。

この白黒はっきりしない状態は、個人を含めた多くの投資家の心を、一層不安にさせるのです。

もちろん、市場参加者が100人居れば、100通りの解釈があって然るべきではあるのですが、これまでの数年間の金融相場の中で極めてわかりやすい市場環境に慣れてしまっている参加者には、白黒がはっきりしない現状に対応するのには、少々時間が必要なのかもしれません。

寺本名保美

(2016.01.28)



そろそろ目が慣れてきた?

昨晩の米国では、小売りや住宅関連の経済指標の強さが話題になりました。

原油価格が年平均で半値以下になったことで、米国家計の可処分所得は明らかに上昇していますから、当然といえは当然です。

日本国内でみると、ガソリン価格に占める税比率が異なるため、個人家計には米国ほどの直接的な恩恵はありませんが、一方で製造業に与える影響はまだ目に見える形で市場には伝わってきていません。

原油下落がデフレ要因と言われていますが、原油価格が下がって一緒に下がる消費者物価は電気ガス代位しか思いつかず、デフレ要因というよりはむしろ企業利益のかさ上げ要因と捉えた方が良いように思います。

この水準の原油価格にそろそろ目が慣れて、価格下落の功罪を冷静に判断できるのも、もうすぐかもしれません。

寺本名保美

(2016.01.27)



ニーズと信頼

[上海 26日 ロイター] - 2015年の中国の債券発行額は22兆3000億元(3兆3900億ドル)で、前年比87.5%増加した。昨年導入された新たな地方政府向け債務交換プログラムや社債の発行が伸びをけん引した。


市場から低コストで速やかに大量を資金を調達するためには、その市場が規律正しく機能し、発行体に対する投資家の信頼が厚く、二次流通市場での流動性が充分に維持されていることが重要です。

米国や英国が金融市場を優遇してきたのは、高債務国であるがために大量の国債を発行するニーズや、高金利国であるがために少しでも効率的に資金調達を行いたいというニーズが生み出した歴史的な背景に裏打ちされています。

今後中国において、資本市場での資金調達が常態化していくのであれば、それに伴い金融市場はより健全に解放されていく必要があります。今の中国株式市場の乱高下を見る限り、健全な調達市場の形成にはまだまだ時間がかかりそうではありますが。

寺本名保美

(2016.01.26)



藁ではなくて雪にすがる?

本来シベリアにいるはずの寒気が、北半球をすっぽり覆った、らしく、日本だけでなく北米でも大雪の被害が出ているそうです。

ニューヨークやワシントンが大雪になり経済活動が停止した場合、米国の雇用や消費などの経済統計は一時的に明らかに悪化します。

今回の大雪被害があとどの位続くかにもよりますが、1月から2月の数値に影響がでるとするならば、3月中旬に予定されているFOMCの頃に発表される経済統計は一時的に弱い数値となり、次回以降の利上げスピードを緩和するとの期待もでてきています。

また原油価格にとっても、今回の寒気が石油の需要を引きあがるとの思惑が、当面の下止まりに寄与しているようです。

突然の気候異変にすら頼ってしまうほど、市場センチメントが不安定であるということの証左でもあるのですが…

寺本名保美

(2016.01.25)



そしてロシア

昨晩のECBで本当は何が話し合われたのでしょうか。

ドラギ総裁の言う「ECBと市場への新たな懸念」というものが具体的に何を指すのか、思惑が錯綜しています。

人々が中国の通貨や株式市場に目を奪われている数日において、ルーブルが静かに急落しています。

ダボス会議に参加するはずであったロシア中銀総裁は昨日になって突然参加をキャンセルしたそうです。

それでも大きな騒ぎにはならないのは、ロシア政府は昨年から既に「経済危機」という言葉を公に使用しており、ロシアが経済危機であることは既に織り込まれているから、なのでしょうか。

昨年末辺りからでているロシアの各種経済・財政予測を見る限り、原油価格は40~50ドルであることが前提とされています。

原油価格がその半分近くになってしまった現状を前提とした2016年のロシア情勢が、ECBを想定以上に弱気にさせているのかもしれません。

寺本名保美

(2016.01.22)



元に戻った

変化幅の話は一旦横に於いて、水準の話をしてみます。

弊社のモデルから算出した、日本や米国の株式市場の理論値に対し、実績の株式市場の水準が上方乖離を始めたのは、日本も米国もほぼ同時で2014年1月以降のことです。

それから2年で、日本も米国も理論値に対し2-3割ほど割高な方向まで乖離幅を拡大して息切れ。

足元で、米国株式は理論値をやや下回り、日本株式は数%の上方乖離まで収束しました。

ちなみに、日本株式で試算している「日銀のインフレターゲット」成功シナリオを当てはめると、今の日本株の水準でほぼ理論値です。

原油価格も資源バブル以前の水準に戻り、中国株式市場も2015年の水膨れが萎み、米国株も日本株も理論値に収れんしと、期を同じくして主要市場がスタートラインに揃った感もあります。

体力を戻して、リスタートとなれば、なによりなのですが。

寺本名保美

(2016.01.21)



解らないものはわからない。と…

先日、知り合いの記者さんと会った時、「どう?今の市場。」と聞かれ、「解らないものはわからない。」と答えたら、「いいなぁ、それで済むなら。こちらはそれでも何か書かないといけない。」と言われ、そりゃそうだと思い。

昨日市場関係者達との雑談で、「マスコミも解らないからと言って中国と原油と書いておけばいいというものではないよね。」という会話になり、そりゃそうだと思い。

記者さん達の立場も解るのですが、お題目のように中国と原油と唱えていると、いつの間にかそれが人々の頭に刷り込まれてしまうことの弊害もあり、程々にしておいていただきたいとも思い。

解らないことが一番怖い、というのは皆共通なのですが。

寺本名保美

(2016.01.20)



システム売買の増殖による負の連鎖

人間の判断によらないシステム取引の原型は、いわゆる罫線と呼ばれるものです。カタカナでいえばチャートです。

こうしたシステム取引は、如何にも人間の感情とは無関係な無機質なものであるような印象を受けますが、実はそうでもなく、日本の伝統的な罫線の教科書などを読むと、罫線というものは単に市場参加者の損得とそこから発生した人間の感情の蓄積を表したものに過ぎない、ということを知ることができます。

つまり、システム売買というものは、人間の心が支配する市場において、その傾向をパターン化することで、先を読む取引手法であるということです。

さて、最近の市場ですが、高速取引システムの発展が、こうしたシステム売買の取引量を格段に増殖させています。
人間の心が介在しない取引量が市場で増えていくことによって、システム売買による価格形成が次のシステム売買のパターンを作る、という奇妙な循環が起き始めているようにも見えます。
恐らくですが、この循環からは誰も利益を創出できません。

このところの説明できない市場変動の原因には、こうした市場そのものの変質もあるのかもしれないと感じています。

寺本名保美

(2016.01.19)



天気予報通りなのに

今朝の東京は、久々の積雪で交通機関は大混乱となりました。

雪が日常ではないとはいえ、たかが5センチ10センチの積雪で、且つ、通勤時間は既に雨になり、おまけに昨晩から雪になると予報が出ていた通りだったにも関わらず、どうしてここまで、という位の混乱ぶりです。

で、市場。

特に何か変わったことが起きているわけではなく。
米国の利上げも、原油価格の30ドル割れも中国の減速も、ほぼ想定通りの材料が出揃って、いわば天気予報通りであるにも関わらず、どうしてここまで、という位の大混乱。

暖冬といわれで緩んでいた身体が、急な寒気で萎縮してしまったように、市場もやや過剰に萎縮してしまったのでしょうか。

寺本名保美

(2016.01.18)



日本郵政はどこへ向かっているのでしょう?

年末年始に日本郵政が作った年賀状印刷のwebから、年賀状をfacebookに投稿できることを知り、不思議だなぁと思いつつ利用してみました。


今度は日本郵政が公共料金の請求書を郵送せずにネットで確認できるサービスを始めるそうで、謎が深まりました。

ペーパーレス化の波に如何に抵抗するかが郵便サービスの本筋かと思っていたのですが、自ら電子サービスに参入してしまうわけです。

今や何でもありの日本郵政グループ、どこへいく?

寺本名保美

(2016.01.15)



マグマ

毎日毎日、売りにしても買いにしても、エネルギーがよく続くものだと感心します。

大きな地殻変動に伴う、マグマの噴き出しを彷彿します。

今見えているのは、噴き出されたマグマだけ。地下でなにが起きているのか、収束後の地殻形状がどのように変化しているのか、見えないなかでの噴火が、恐怖心とアドレナリンを高めている段階。

急な旋回は滑落のもと。
不用意な接近は火傷のもと。

エネルギーが収まるまで静観するしかありません。

寺本名保美

(2016.01.14)



メモ程度

結局昨日の下落はなんだったのか?と考えてもしかたがない。

今年に入ってからの下落について、説明できる人は多分どこにもいない。

そういう意味では、昨年の8月下旬の下げに似ている。

振り返ると、あのときは、チャイナマネーと思われる換金と、原油由来とされる国家ファンドの現金化が、後付けでの理由となった。

今回も、構図は似ているかもしれないと思う。

単なる一時的な需給であれば、早晩止まる。

よくわからないので、単なるメモとして…

寺本名保美

(2016.01.13)



法人ご担当者様向け資産運用セミナーのご案内

少々先になりますが、3月2日に久々のセミナーを開催します。

今回は、「金融主導による市場の終焉と産業主導の始まり」と題し、大きく構造転換が進もうとしている市場経済環境における運用戦略についてお話をさせていただきます。

ゲストスピーカーとして、慶應義塾大学の深尾光洋教授にご登壇いただき、最終局面を迎える黒田緩和の今後の展開について解説いただきます。

荒っぽい環境での新年となりましたが、こういう時こそ大局観を持った視点が重要なのではないかと思っています。

お客様にはまた改めてご案内をさせていただきますが、詳細はセミナーページをご確認ください。

寺本名保美

(2016.01.12)



ほんの少しずつの備え

世界第二位と第四位の産油国である、サウジとイランが喧嘩を始め、原油価格は上がるかと思いきや、直近安値を更新。

ホルムズ海峡に代表される輸送ルートからのボトルネックより、OPECでの減産合意の見通しが立たなくなったことでの増産懸念のほうが重く受け止められています。

これまで原油価格の下落に対して肯定的なコメントを出してきた日本の内閣からも、これ以上の下落に対する懸念の声がでてくるようになり、米国では発射台が低くなりすぎているガソリン価格が今後何らかの刺激で価格を戻したときに、国内での急激なインフレが発生することへの懸念も出始めました。

意図してかしてなくてかはわかりませんが、この水準が続いて生き残れる油田は、それこそサウジやイランなどの大規模油田です。新興油田が排除されたあと、突然この2国が手を組んでOPECでの価格統制が復活する、などという物語も笑えなくなってきます。

そろそろ、本当に少しずつ、将来のインフレへの備えを仕込み始めてもよいのかもしれません。

寺本名保美

(2016.01.08)



ノイズが大きすぎて頭が痛い…

中国株式市場が寄付きから急落し、今年2度目のサーキッドブレーカーの発動となりました。

昨年の6月同様、何故下がったのかを明確に説明できる人がいないというのが最も厄介なことです。

意見として共通していることは、2015年1月以降の上昇部分(上海総合で3000PT以上の上昇分)は、そもそも経済実体が伴っていなかったこと。
従って昨年の6-8月での下落は、自然な調整であったにも関わらず、政府が強制的に価格を反転させてことの歪みが、足元で露呈していること。

という感じでしょうか。

つまり、ここで再び政府が強制的に売却を阻止したり、売り手を処罰するような行為にでることは決してよい結果を招かないと、多くの人が思っています。

中国の株式市場内部での問題です。
他市場が必要以上に反応する必要はないはずです。

寺本名保美

(2016.01.07)



サイボーグ

北朝鮮は6日、朝鮮中央通信の「特別重大報道」を通じ、「水爆実験に成功した」と発表した。(毎日新聞)

特にコメントすべき事象とも思えず、以上。

話は変わりますが…

オバマ大統領というのはつくづくサイボーグみたいだと思います。
「空気が読めない」のではなく、「空気を読む」ということがそもそもプログラミングされていない。
非常に緻密に計算され、シミュレーションされた通りの言動を、全くためらうことなく淡々と行う大統領。
ある意味とても優秀で、ある意味とても不気味でもあります。
今回、銃規制に関する演説も「涙を流す」というプログラミングがされているのではないかとさえ感じてしまう。

2月になると大統領予備選が始まります。通常であれば現職大統領がレームダック化し機能を停止し始める時期に差し掛かっているはずなのですが、オバマさんはどうもこのまま突き進みそうな気がします。

話を戻して…

極東の強烈な駄々は、オバマプログラムに織り込み済みなのでしょうか?

寺本名保美

(2016.01.06)



新年早々だったので、昨日は書くのを控えましたが、今年の大きなテーマの一つはやはり「国際政治の緊張」ということになるのでしょう。

中近東にせよ、ロシア周辺にせよ、火種が消えかかると自ら薪をくべている、とみえなくもありません。

個人的な主義主張や思いは横に置いておいて、純粋に資産運用上の視点からだけで言うならば、株式市場や経済拡大にとって今のこの薪はマイナスに働きません。

禍で売られ、実利で買われる、という心地悪い循環を前提にした一年になりそうです。

ちなみに、私の頭の中では、中国問題は主要テーマではなく「ノイズ」です。上海株式市場が何故売られたのか?考える気もなくなってきました。

そういえばこの数日話題の焚書の焚は焚火です。薪と焚火…。つまらない共通項です。

寺本名保美

(2016.01.05)



新年あけましておめでとうございます

毎年元旦一面の新聞記事から、今年を占う兆しを感じようとするのですが、最近はどうもピンとがあいません。

と思いつつ3が日、パラパラと紙面をめくり頭に残ったキーワードは2つ。

「第4次産業革命」と「重商主義」

金融政策主導という意味だけでなく、金融機関が描いたシナリオに乗った社会というものが、そろそろ終わるような気がしています。

ここからの株式市場は、この大きな波の変化に乗ってみたり、振り落とされたりの一年でしょうか。

足腰は強く、頭は柔軟に。

新しい波乗りを、しっかり楽しんでいきたいと思っています。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

寺本名保美

(2016.01.04)


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