2016年02月の思いつき


ドイツ様

注目のG20がいよいよ始まります。

昨日あたりから妙な雰囲気を醸し出しているドイツですが、直前になっても過激な発言が止まりません。

これ以上の財政出動も、金融緩和も、断固阻止!という雰囲気が滲み出ています。

確かにG20の中で財政余力があるのはドイツであることはドイツ自身が一番よくわかっているはずで、金融政策については所詮ECBの決定に従わざるを得ない中、財政だけでも拒否したい、というところなのでしょう。

米国については、公言するかしないかは別として、利上げテンポを調整することを約束することはできるでしょうし、日本については何等かの財政出動は選挙前でもあり否定しないでしょう。中国はやれることはなんでもやる。
という中で、で、ドイツは??と言われる可能性は、火を見るより明らかなわけです。

お願いですからちゃぶ台ひっくり返すような言動だけは止めてくださいませ。

寺本名保美

(2016.02.26)



ドイツの違和感

週末のG20を前にして、様々な思惑が出入りするなかで、昨晩のドイツ首脳の相次ぐ強硬発言に、欧州の株式市場参加者は冷やりとさせられたかもしれません。

景気の回復は来年まで続く。
デフレには程通い。
これ以上の緩和的政策には副作用がある。等々。

直近の経済指標が悪化したことへの懸念も、それこそ数週間前に自国の大手銀行の財務問題で世界の株式市場を大きく揺るがせたことへの躊躇も、何も感じられません。

これまで、利上げを前提に、景気に対して強気の発言を繰り返してきた米国のトーンが足元で穏やかになり、日銀とECBが超緩和的に舵を切っていく中でのドイツのスタンスにやや違和感も感じます。

G20に過度な期待をするな、という市場への警告であるのかもしれませんが、金融協調における不協和音の中心が指定席となっているドイツの言動には、注意が必要かもしれません。

寺本名保美

(2016.02.25)



量でも質でも

ロシアでは、2030年国家戦略プランの制定が始まっているそうです。資源に依存しない国つくりを目指すとのことですが、このプランが出来上がるのは2020年だそうで、なんとも気の長い話です。

ところで、この戦略プランにおいて、まず初めに手を付けなければいけない分野を、「学校教育」としています。

オバマ政権の後半においても、学校教育が成長戦略の核におかれています。

「人口×生産性」がその国の潜在成長力の源泉であるとするならば、とりあえず充分な人口が確保できる大国においては、生産性の底上げこそが今後の成長を左右する、ということでしょうか。

これまで人口の減少を、労働の質で補ってきた日本ですが、若年層の質の問題はそろそろ他人事ではなくなってきています。

日本が量でも質でも置いていかれる、などということがないような対策は、果たして打てているのか心配です。

寺本名保美

(2016.02.24)



ソブリンウェルスファンドというもの

SWFIというサイトによれば、ソブリンウェルスファンドは2015年中に20兆円強の株式を売却し、もしこのままの原油価格の水準が続くのであれば2016年には更に45兆円程度の株式の売却をするかもしれない、とBloombergが報じています。

1年ほど前、北欧の金融機関の財務担当者とお話をする機会があり、その時原油価格の下落が北欧の資源国の国家財政や金融機関経営に与える影響を聞いたことがあります。

その時の彼らの返答は、「原油が下落した時のために、全世界の金融資産に分散して投資をしているから大丈夫」というものでした。

原油が下落すれば、恩恵を受ける産業もあり、グローバルに見てプラスマイナスが相殺されるという前提だったのでしょうが、当の本人達がリスク資産の換金に走り、市場を壊してしまっては本末転倒です。

自らの売りで市場を壊す前に、資源国それぞれ他にやることがあるのではないかとも思うのですが。

寺本名保美

(2016.02.23)



キャリーが消えて

債券金利がなくなってしまったので、債券を満期まで保有する意味が理論上はなくなってしまいました。

調達コストが大きくマイナスになる海外勢であれば話は別ですが、そうでない限りおいて、国内債券でキャリーを取ることも厳しい展開が想定されます。

この数年残高を増やしたリスクパリティ型の商品の多くは、収益の源泉の5割程度を、債券のキャリー収入に依存していました。

外債のヘッジコストの上昇も合わせ、収益の源泉であるキャリーが期待できない環境下、債券であろうが株式であろうが収益源泉をキャピタルに頼らざるを得ない環境になっています。

低リスク型のパリティ運用や、債券の絶対収益型運用については、運用のコンセプトが維持できるか否か、基本から見直す必要に迫られているといえるかもしれません。

寺本名保美

(2016.02.22)



正しいリスク資産

2000年台初頭、ゼロ金利が始まった頃、個人向けの仕組み債や、通貨選択型預金とか、後世に禍根を残す商品が沢山世に出ました。

利率年率10%の3ヶ月限定定期、とかいう、紛らわしい年率表示が横行したのも、この頃からです。

今、マイナス金利の導入で、なんとなく当時の雰囲気が再現されつつあるように感じます。

預金からリスク資産へという意味のリスクが、危ない資産、という意味になってしまうのは、日本の悲しいことです。

金融機関もマスコミも、正しいリスク資産への誘導を心掛けて欲しいと心から思います。

寺本名保美

(2016.02.19)



一言だけ

これまで、ドル円の変動を加味してみてみると、ほぼシンクロしていた日米の株価が、足元でやや乖離を始めたようにみえます。

少なくても2月は日本株の一人負けになっていて、気になります。

すみません。時間がないので、続きはまた。

寺本名保美

(2016.02.18)



追い込まれて

ECBによるABSの買い取り対象に不良債権担保証券を含めるかどうかについて、ドラギ総裁が格付け基準を満たせば担保として受け入れることはあり得るとの発言をしています。直接買い取りを期待している周辺国からすればまだまだ道程は半ばとはいえ、多少の進展を感じます。

OPECと非OPEC産油国との間で、増産しない、という合意が形成されそうです。減産合意を期待している市場からすれば物足りないかもしれませんが、これも多少の進展です。

国会では、現在の株安円高について、G20で目に見えた効果がない場合、政府として具体的な対策を検討すると言っています。何ができるかは別として日銀任せのお手上げ状態よりは進展がある、かもしれません。

年が明けて以降、あちらこちらの市場に反乱を起こされ、ようやくあちらこちらで重い腰が上がり始める気配がしてきました。

本当に追い込まれてしまう前に、早めに対応が出てくればよいのですが。

寺本名保美

(2016.02.17)



とりあえず電卓

今日から日銀の当座預金におけるマイナス金利がスタートします。

何かとんでもなく悪いことが始まるかのようなコメントが多いのですが、あくまでも個人ベースで考えると、それほど悪いことではありません。

預金金利が0.02%から0.001%になったと言いますが、1億円預けて年間2万円もらっていた利息が1000円になるだけです。1億円の預金をしている個人にとって2万円と千円、どれほどの違いがあるのでしょう。

お昼休みに、会社の者たちと、住宅ローンの借換えシュミレーションをしてみました。足元の下がるであろう金利を入れて試算をすると、狂喜乱舞してしまうほどの低減効果があります。

その分金融機関の収益が苦しくなるというかもしれませんが、個人や中小企業向け融資については、銀行の多くは住宅支援機構や中小企業向け公庫融資の斡旋をして手数料収入を得ているだけなので、利ザヤは関係ありません。

被害者意識の塊のようになっている金融機関のこ難しい解説を聞くよりは、手に電卓を持って自分で確認してみれば、今回のマイナス金利騒ぎが個人の生活にとっては顔をしかめて解説するような題材ではないことが判ります。

超低金利で融資をすることになる支援機構が将来不良債権化しないのか、とか、結果として日本国債の海外保有比率が高まることのリスクとか、気になる話はまた後程…

寺本名保美

(2016.02.16)



政治家、働け!

「民主党が円高株安を国会で追及する方針」という新聞見出しをみて「あなたにだけは言われたくない」と呟いたのは私だけではないと思い。

与党も野党もぜーんぶまとめて、「いい加減に政治家働け」と嘯くのも私だけではないと思う。

株式市場や為替が振れて、国民全般が景気の先行きに不安を持ち始めている今だからこそ、国が今目指している方向性や、方針について、国民に明確にビジョンを見せる義務が国会にはあるのです。

ここで上げ足を取り合って、センチメントを折ってしまうことは、国家運営においてある種の背任行為に近い。

企業経営者が不安になりながらも、どうにか踏みとどまっている内に、政治は政治としてできることを遂行してほしいと思っています。

寺本名保美

(2016.02.15)



上がらなくてもいいので、落ち着け

ここ数年でリスクを一定化する「リスクパリティ型」運用が増えている中、日本株のボラティリティの高さは、日本株市場を毀損します。

ポートフォリオの変動幅が一定になるようにリバランスを行うため、変動幅が大きい市場は組み入れ金額が減少する傾向があるためです。

この水準で構わないので、日々の値動きが収まってくれさえすれば、水準は自ずと適正値に戻ります。

今日もまた欧米市場の倍近く下げ、後場からは介入観測で一転急反発をしています。

下手に手を出しても、反動でボラティリティが増幅するだけになる可能性もあるだけに、官邸や中銀の手の動かし方も難しいといえそうです。

寺本名保美

(2016.02.12)



水膨れのつけ

大雑把な言い方をするなら、ドイツにとって金融業というのはたいした業界ではありません。

米国や英国の様にエンジンとなる業種ではなく、株式のアクティブファンドでドイツの金融業が話題になることはほとんどありません。

ドイツ経済が健全であるかと、ドイツの金融機関が健全であるかは全く同義ではないのです。

だからこそ、ドイツ政府は銀行の不良債権問題に対し、さほど真剣に取り組むことなく、ドイツの金融機関は水膨れした見かけ倒しの図体を抱えたままこの数年漂流を続けているのです。

市場は何年も前からECBに対し、流動性の供給たけでなく、不良債権の直接買い取り等の「信用の供給」を決断することを求めてきたわけですが、それに反対し続けてきたのは、ドイツそのものです。

欧州金融機関の不良債権処理が遅々としてすすまないことは、リーマンショック後の金融システムにとって、喉に刺さった棘のようなものです。

今回お膝元の大手銀行に火の粉が振りかかった以上、ECBが今度こそ不良債権の本格的な処理に乗り出してくれるのであれば、目先の混乱も無駄ではないのですが。

寺本名保美

(2016.02.10)



久しぶりに材料がみえてきた?

昨晩の海外市場は、久しぶりに具体的な材料に反応した下落となりました。

欧州金融機関の経営状況の悪化。
ギリシャ問題の再燃。
シェール関連企業の破綻懸念。
FANG-平たく言えばネット関連銘柄のバリエーション調整。
1月の寒波による雇用への影響。

燻っていたものが全部いっぺんに浮上。

訳もわからず下がるよりは、材料が表に出て時間をかけてでも消化されたほうがましです。

何れの材料にも遠いはずの日本の反応が一番大きいというのは、相変わらず困ったものですが。

暫し我慢継続です。

寺本名保美

(2016.02.09)



世の中みんな減点法

市場が下落しているしていないに関わらず、世の中のコメントは何故こんなに減点法なのかと、不思議に思います。

マスコミと野党は批判するのがお仕事なのでしかたないとしても、金融市場参加者が減点法なのは、金融機関のさが、というやつでしょうか。

アベノミクスに効果がなかった?
日銀の追加緩和は無意味だった?
マイナス金利を導入しても、為替市場は元の木阿弥?

冷静に、
もしアベノミクスと黒田緩和がなかったら、日本経済は今どのぐらい悪化していたのでしょう?

日銀の追加緩和以前の株価に戻ったというけれど、その上げがなかったら、今の株価はどこにいたのでしょう?

マイナス金利での刺激なく、米国の利上げ見送り機運が高まった時、為替はどこへ飛んでいくのでしょう?

ただでさえ、粗捜しばかりのマスコミに減点法の専門家のコメントがハレーションを起こして伝わると、企業や個人のいわゆるマインドが、本当に悪い方向に引っ張られます。

市場が悪い今だからこそ、景気や業績を、バイアスなくコメントできる専門家が欲しいものです。

寺本名保美

(2016.02.08)



タッチボタン相場

この数日の市場のテーマは「ジャパントレードの解消」

オイルトレードは、米国の利上げ見送り気分で一旦お休み。

チャイナトレードは、旧正月で文字通りお休み。

なんというか、画面に「ジャパン」とか「オイル」とかいうボタンがあって、その日の気分でピッとタッチをすると、自動的に売買してくれる、みたいなシステムがゴロゴロありそうな…

中銀にせよ、アナリストにせよ、マスコミにせよ、私自身せよ、毎日の市場の値動きを見て、そこから経済や政治を解説しようとすることに、ほとんど意味がなくなってきている気がしています。

所詮、どのボタンも儲かっていなさそうなので、押すボタンがなくなれば、そのうち落ち着くと思うのですが。

暫し、寝たふりでもしましょうか。

寺本名保美

(2016.02.05)



通貨安戦争に?

リーマンショック直後、欧米が通貨安を志向するなか、当時の民主党財務大臣だった藤井さんが「日本は通貨安競争にはくみしない。」と宣言したことで、その後の70円台に繋がる長い円高地獄が始まりました。

当時海外の心ある?ストラテジストからは、痩せ我慢はしない方がよいと苦笑されたものです。

今回のマイナス金利が通貨安を志向したものであると、日銀は決して言わないでしょうが、円高阻止を意図した部分があることを否定はできません。

直前のECBが3月の緩和を示唆し、足元では米国の3月利上げに確信がなくなっていく状況において、もし日銀が29日に何も動いていなければ、一時的にせよ為替は大きく振れた可能性があります。

お隣では元安が継続するとみられ、皆口には出さずとも、通貨安戦争に突入しつつあります。

今回は武士は喰わねど…というわけにもいかない日本が参戦したことで、通貨市場の駆引きは激しさを増しているようです。

寺本名保美

(2016.02.04)



日本の出番です

昨日からの市場の変調。きっかけは欧州時間に入ってからの原油の下落ですが、更に市場心理を悪化させたのが「米国ダラスでのジカ熱」の発症だったかもしれません。

2014年の10月に市場環境が悪化している中で、エボラ出血熱が米国国内で発見された時と同じような市場心理が働いているような気がします。

ジカ熱そのもののは、一昨年日本で問題になったデング熱より症状は軽いと言われていますが、ブラジルでの胎児への影響報告が事態を深刻化させています。

ブラジルでのリオオリンピックまであと半年。あれだけ短期間にデング熱を一掃させた日本のノウハウで、ブラジルを助けることができそうなものだと、皆な思っているに違いありません。

がんばれブラジル。がんばれ日本。

寺本名保美

(2016.02.03)



中国株の売り手?

中国でインターネット金融会社を1兆円の資金搾取の疑いで摘発したとの記事がBloombergに出ています。

こうして集められた資金はねずみ講のように投資家への支払いにあてられた他、株式市場にも流入していたとのこと。

この会社への捜査着手は昨年12月8日。12月後半から今年に入ってからからの中国株式や商品市況の急落の原因は、このあたりにもあったのかもしれません。

中国市場の健全化の一環であるとみれば悪い話ではありませんが、同種の資金があとどの位隠れているのかと考えると、やや気が遠くなります。

寺本名保美

(2016.02.02)



2つのマイナス金利

先週末の日銀の追加緩和には、2つのマイナス金利が宣言されていました。

一つは皆が注目している日銀当座の付利のマイナス。

そしてもう一つが、日銀の国債買入金利の下限の撤廃です。

量の緩和を継続させるために日銀は12月に買入対象国債の年限を拡大することを発表しました。これで日銀が買うことができる国債の面積は広がりました。

次に今回の下限金利の撤廃で、買入れられる国債の値段を青天井とし、国債買入による価格面での障害を取り除きました。これで買い取ることができる国債の縦軸がひろがりました。

面積×高さ=体積 ということで、量的緩和の量の確保をコミットしたことになります。

さて、こうなると、銀行からマイナス金利で国債を購入する一方で、その売却見合い金に0.1%の付利をするというのは、どう考えても変です。
だから、今後のオペによって増えた日銀当座に対しては、オペ金利と同様マイナスとすることとしました。

とみれば、今回のマイナス金利は、従来の量的緩和の単なる延長線に過ぎない、ということもできそうです。

個人的には良くできているなぁと感心しているのですが。

寺本名保美

(2016.02.01)


build by phk-imgdiary Ver.1.22