2016年10月の思いつき


幻想

昭和から平成に替わるころ「フリーター」という単語が市民権を得ました。会社に縛られることのない自由な生き方という概念は、「会社人間」と揶揄されてきた当時の大人達の憧れでもありました。

2000年代になると学校教育において本格的な「ゆとり教育」が始まりました。公立校も完全週休2日制となりカリキュラム数が減少した結果、学習塾が全盛となりました。

小泉政権になり、「自己責任」という言葉が流行りました。2004-5年の株式市場のミニバブル期が重なり、老後の生活資金も国の年金に頼らず自己責任、との風潮が高まり、意図的な年金の未納が増加しました。

不定期就労者がこれだけ増加してしまった理由はどこにあるのか?
教育に異常なコストがかかるようになってしまったのは何故なのか?
年金制度を巡る根強い国民不信は何故生まれてしまったのか?

自分達がしたくてもできなかった夢を、若い世代に無責任に押し付けた結果の一部がここにあります。

そして今、労働環境の改善が謳われています。最終金曜日の半ドン化、プロフェッショナルな契約社員の勧め、社畜になるなと…

労働環境の改善は大切です。ただこれも度を超すと労働市場の単なる縮小を招き若者達の将来の職場を失わせます。

今ではなく次の世代に繋がる改革をしていかなければいけないと強く思います。

寺本名保美

(2016.10.31)



もう少しだけ慎重に

米国の大統領選挙まであと10日余りとなりました。

金融市場はクリントン氏の勝利、というか、トランプ氏の敗北をほぼ織り込んできていると言われてます。

実際にファンドマネージャー等と話しをすると、Brexitに懲りているため、完全に安心しているわけではありません。

選挙日当日まで出し続けると宣言しているウィキリークスによるクリントンメールが、クリントン氏に言い訳の機会を与えないギリギリのタイミングで爆弾化することが、最大のリスクでしょうか。

今は高値圏での小康状態となっている株式市場ですが、短期的な調整への警戒を解くのはまだ早すぎるかもしれません。

寺本名保美

(2016.10.28)



ミスリード

アクティブ運用に否定的なコメントが目立ちますが、アクティブの悪さよりもスマートベータに代表されるような、ファクターリターンが悪さの方が気になります。

バリューやグロース、低ベータ、高配当、大型小型、など、各種ファクターがあちらこちらで悪さを重ねています。

暴れるファクターを追いかけて、右往左往してしまっているアクティブファンドは別として、ある程度リスクコントロールをしながら、嵐が収まるのをまっているファンドのパフォーマンスは、良くはないものの我慢できる程度の損失ですんでいます。

むしろ、定量的にファクターリスクをとっているスマートベータ系の戦略はかなり頭が痛い展開になっていそうです。

人間が判断するジャッジメンタルを一方的に否定するようなコメントは、ややミスリードであると感じています。

寺本名保美

(2016.10.27)



英国の歪み

ポンドの下落が英国の物価動向に悪影響を及ぼし始めているとBOEが警戒を始めています。

通貨バスケット方式で見ると、少なくてもBOEが算定を始めた1990年以降で最安値、その前のIMFベースまで入れると1975年以来の最安値となっており、ちなみにFTによれば168年ぶりの最安値だそうです。

1930年代の金融恐慌時に金本位制を放棄し、その後2度の通貨切り下げを行った後のポンドは、常に暴落リスクを抱えた不安定な通貨でした。

通貨安でインフレになり、通貨防衛で利上げをし、利上げをすると景気が悪化し、景気が悪くて通貨安。という絵に描いたような悪循環から解放されていたのは、世界の金融センターとして君臨した1990年代後半からリーマンショックまでのわずか10年間に過ぎません。

今BREXITによって世界の金融センターとしての地位が脅かされるようになった英国が再び通貨安と闘わなければならなくなっているのは、ある意味当然であるといえます。

未だ史上最高値近辺にいる英国株式市場と史上最安値を更新している英国通貨市場。

早晩この歪みが大きく修正されるリスクには警戒が必要です。

寺本名保美

(2016.10.26)



こちらは本当につまらない

昨日ここに書いた金融庁が発信している文書の面白さに比べ、昨日発表された日本銀行の「金融システムリポート」のつまらなさが際立って見えます。

もちろんこのリポートは基本的にリスクリポートなので、同列に比較することはできないのですが、それにしても一貫して「現状を肯定し変化をリスクと捉える」旧態依然とした内容は、ある意味黒田総裁の目指す方向性にも反した内容にも思えます。

これを読んでようやく日銀が金融機関の窮状に理解を示してくれたと金融機関が喜んでいるとするならば、日本の金融ビジネスが正真正銘の斜陽産業になりつつあることを当局も業界も揃って認めているにすぎません。

大きな組織の流れを変えるということは本当に難しいことです。

寺本名保美

(2016.10.25)



金融行政

監督官庁から出された文章を「面白い」というと、不謹慎なのかもしれませんが、この数か月に亘って金融庁から出ている金融行政方針関連の文書は、かつて私が目にした行政からの文書の中では比類なく面白いです。

そもそも金融行政方針の文頭が、自らの「PDCA-計画・実行・評価・改善」で始まるということ自体が驚くほど新鮮で、このPDCAに基づく昨年度のまとめ資料である「金融レポート」の内容もどこかのシンクタンクが書いたのかと思うほどわかりやすい。

これまでの行政文書と何が違うのか考えてみると、視点が金融業界内ではなくて、その先の国民をしっかり捉えた内容になっていることで且つ、文章もお役所言葉ではなく、且つ業界内でしか通じない言葉でもなく、一般国民が読むことを意識した書きぶりになっているところでしょうか。

せっかく行政が大きく舵をきってくれようとしています。
業界側も真摯に受け止めないといけません。

寺本名保美

(2016.10.24)



サウジアラビアの国債

今週のグローバルなハイライトは、サウジアラビアの30年国債の起債。

米国債券に2%程度の上乗せ金利。需要は堅調。

今後の流動性は?
30年後のサウジの姿は?
この債券の値動きをみていれば、中東情勢が解る?

色々と考える材料の多い、面白い素材です。


寺本名保美

(2016.10.21)



カタカナ言葉

最近ITと日常生活との関わりが強くなってきたこともあり、カタカナ言葉の使用が一段と増してきています。

良くも悪くもカタカナ言葉の先駆者である金融市場でも経験してきたことですが、特定の業界発のカタカナ言葉は、使用している当人が思っていることの半分も、相手に伝わっていません。

一般メディアも流行りのように使いたがりますが、言葉の認識としては、「のようなもの」程度の理解です。

その言葉の認知が深まるまでは、発信側が正確な定義を示した使い方をしていく努力が必要です。

解らないぐらいが格好いい、という類いの発想は事故の元です。

寺本名保美

(2016.10.20)



低温相場

今の金融市場を「低温相場」という人もいます。

一言で言えば「どこもかしこも行き詰り」。

金融政策への期待も、シェール革命の高揚も、AI革命への期待も、あらゆることが終わるわけでも始まるわけでもない、ひどく中途半端な状態にあります。

株式市場は正直で、大きく売られるわけでもなく、だからといって買うだけの熱はない。

これを大きな変化における踊り場と思えるか、閉塞感に辟易とするかかは、取り方ひとつです。

私としては来年以降のポジティブな変化を前に市場が体力を温存するための踊り場だと思っているのですが。

寺本名保美

(2016.10.19)



可哀想の先

最近色々な問題において「可哀想」議論が多いです。

①本当に可哀想な人や事象が増加している。
②他人を可哀想だと思える程度には自分が安定している人が増えた。
③自分が可哀想だと思わないために、自分以外の可哀想を探している。

きっと、答えは一つではなく、全部なのでしょう。

海外になると、この先には先鋭的なポピュリズムがあります。

まだそこまではいっていない日本ですが、いつ風向きが変わってもおかしくない状況ではあります。

よくわからないのですが、年末年初は選挙風が吹くとの話も出ています。一時シノギの迎合的な政策が羅列されるような嫌な予感がします。

寺本名保美

(2016.10.18)



MMF規制とドル調達

米国でのMMF規制が日本企業のドル調達コストの上昇に拍車をかけているようです。

あまり日本では話題になっていませんが、米国ではリーマンショック時におきたMMFの取り付け騒ぎが深刻な金融システム不安を引き起こしたとの反省から、元本割れを認めてこなかったMMFの規制を変更し、非政府債券を組み入れ対象とするプライムMMFについては元本割れを可能とすることとしました。

この結果、元本割れを回避する投資家資金がプライムMMFから政府債券のみのMMFへと移行するため、これまで邦銀等の短期債の最大投資家であったプライムMMFの残高が急減することが懸念されています。

元々ゼロ金利下において元本保証で出入自由な短期ファンドなど、存在そのものが不可能である、という議論は15年前に日本で散々おこなった議論です。ある意味リーマンショックから8年も経った今頃という意味においてはやや遅すぎる話ではあります。

それにしても、世の中でドルが足りないこの状況が、対円でのドル高要因になっていないことが、なんとも理不尽ではありますが。

寺本名保美

(2016.10.17)



ノーベル賞とトランプ現象とAI

ノーベル文学賞が「本」ではなかったことに若干の怖さを覚えます。

WSJが米国のトランプ現象を批判する記事の中で、少なくても3人の若手大統領候補者に対し、彼らは頭もよく勉強もしているがその知識はネットと映画から得ている。

と言い、

ニューズウィークは、米国で普通に教育を受けた成人における米国の社会制度や歴史の知識は、米国への移民テストに受からない程度しかないかもしれない、

と言っています。

こうした日本でもよく耳にする、現代人が本を読まなくなったという嘆きに共通する指摘が如何に根の深いものであるか、今回のノーベル文学賞が証明してしまったようにもみえるのです。

映画や漫画や音楽が文字文化に対して上だの下だのと言っているわけでは決してありません。

映像や音によって出来上がったイメージを直接受け取れる媒体と、文字という記号から自分でイメージを組み立てる媒体とは、どこか根本的に異なると思うのです。

他者が作り出したイメージや大量に流れる情報だけで出来上がった思考回路は、それこそAIだけで十分なのではないかと思ってしまうのです。

こんな風に感じる私の思考回路はもう時代遅れなのかもしれませんが。

寺本名保美

(2016.10.14)



また政争の具

年金問題を国会の政争の具にするのはいい加減止めましょう。

TPPが問題ならTPPで政争してください。

そもそも今の民進党さんに年金を語る資格はありません。

少なくても、今国会で通すことになっている「公的資金の受給資格を加入期間25年から10年に短縮する年金機能強化法改正案」は、旧民主党政権が後先考えずに立案した厚生年金基金解散法案によって年金受給権が無くなってしまった加入年限未達者の救済のために約束された法案です。それを民進党が通さないのは道理から外れます。

年金問題を人質にとるような戦略をとるのは本当に本当にやめてください。

寺本名保美

(2016.10.13)



そろそろ心配

Brexitの後に想定された英国の緩やかな崩壊が始まったようにみえます。

英国の株式市場だけは不思議なほど堅調ですが、国に対しての評価は株式市場ではなくて通貨の方が正しいかもしれません。

とりあえずの注目点は、金融決済機拠点のロンドンからの撤退ですが、想像していたより他の欧州諸国の誘致活動に遠慮がなくなってきています。

あまり、話題になっていませんが、少々注意です。

寺本名保美

(2016.10.12)



金融途上国

毎年この時期になると、ノーベル賞において経済学賞だけは、日本の受賞者がいないのはどうしたものか、という意見を目にします。

もし、中央銀行が受賞の対象となるのなら、日本銀行はゼロ金利政策の先駆者として受賞できるような気もします。

折に触れ言い続けているのですが、わが国の年金資産は公的私的を問わず、「デフレ下のゼロ金利」という極めて特殊な金融経済環境下で20年近くも運用をしてきました。

今ではグローバルに当然のように思われている、グローバルな分散投資も通貨ヘッジもヘッジファンド投資も、本格的に取り組んだのは日本の年金が最初です。

ある意味の亜流に取り組まざるを得なかったのは、デフレのゼロ金利だったからで、フロントランナーであるがための失敗も沢山経験してきました。

そして足元で、世界が皆デフレのゼロ金利となり、過去20年の日本と同じ困難に直面し、日本の年金が取り組み続けてきた、亜流とみなされた日本での運用手法を追いかけてきています。

日本銀行が誰よりも先に非伝統的な金融手法を導入したように、日本の資産運用業界は誰よりも先に、非伝統的な資産運用スキルの開発をしていたはずです。

が、誰にもその自覚も自負もない。

ノーベル経済学賞が日本に来ないのは、日本人の誰もが、自分達はいつまでも金融途上国で、欧米の先進的理論と技術の後を追うだけで精いっぱいだと思っているからなのかもしれません。

寺本名保美

(2016.10.11)



金融業

開催されているIMF・世銀総会において、IMFのラガルド専務理事は日本や欧主の銀行セクターについてビジネスモデルの転換を図る必要があると指摘しています。

特に日本の大手金融機関に関しては、リーマンショック後に対外融資残高が急増しており、足元のドルコストの上昇や新興国経済の乱高下の悪影響を受けやすくなっていることに懸念を示しています。

このあたりの話は、9月15日に公表された金融庁による「金融レポート」に詳しく説明されています。

世界的な低金利が当面継続することを前提とした金融機関ビジネスのありようについて、金融庁を初め世界の金融監督機関が懸念を持って注視していることが判ります。

足元の財務リスクについてではなく、金融機関のビジネスモデルについて国を超えて議論されるようになっていることに、今の金融ビジネスのおかれている厳しさが見て取れます。

このまま衰退産業となってしまうのか、変われるのか。
日本をみている限りにおいては、あまり期待はできませんが。

寺本名保美

(2016.10.07)



株価を甘くみてはいけません

昨日の続き。どんな脈絡であろうと上場企業のトップがメディアの前で、債務超過だの倒れるだのという単語を発すること自体がノーセンスです。

このところの大手電機や自動車のスキャンダルでも思いましたが、上場企業の経営者の方々は株式市場の本当の怖さをわかっていないようにみえます。

企業が傾けば株価が傾く、というのは通常の経営環境でのお話です。

一定の経営ラインの瀬戸際にいる企業にとっては、株価が傾けば企業が傾きます。

経営者の一言が株式市場にどう受け止められるのか、という想像力がどうも日本の経営者には足りないのではないかと感じることは少なくありません。

個人投資家の金融リテラシーを語る前に、経営者のリテラシーを語るほうが先なのではないでしょうか。

寺本名保美

(2016.10.06)



え?何?

お昼休みに突然流れたヘッドライン

「東電、債務超過リスクで政府に制度的措置を要望(時事)」

詳細は不明です。

他のニュースが頭から飛びました。

取り急ぎ。

寺本名保美

追伸

ちなみに日経新聞のヘッドラインは「東電社長、福島廃炉、国の救済受けず責任全う」となっています。

元ネタの広瀬社長の発言が2種類あったのか、それとも一つの発言で180度異なるヘッドラインとなったのか。

とんでもなく大きな謎です。

(2016.10.05)



代替が効かない

ドイツの主要企業や取引所がドイツ銀行支持を表明したとBloombergが報じています。

輸出企業にとって、主要銀行の国籍は重要な意味を持ち、国内にグローバルバンクがあるということは重要である、と言っています。

改めてドイツの銀行を探してみると、完全な私企業で(民営化された元公営企業でなはい)グローバルバンクと呼べる銀行はドイツにはドイツ銀行とコメルツ銀行しかなく、コメルツは既に公的資本が入っているので、完全民営という意味では本当にドイツ銀行しかないのです。

例えば日本でメガの一角に何かあったとしても、他行に乗り換えることができるのに対し、ドイツにはドイツ銀行しかない。
この銀行に過去何度問題が持ち上がっても、結局何も改善されないできているように見えるのは、国内唯一無二のメガバンクであるという事実とは無関係ではないのかもしれません。

早晩フランスの様に一旦国有化してリストラクチャリングをする道を選ぶことが、ドイツという国全体にとっては最適な道なのではないかと感じています。

寺本名保美

(2016.10.04)



記録的な日照不足のような

いつの間にか9月が終わり、いつの間にか今年度の半分が終わりました。

9月の金融市場で何があったか思い出せないのはどうしたことかと思いつつ市場の結果を見てみると、9月は市場収益率そのものに殆ど何も起きていません。2円弱円高が進んだ外貨効果を除くと、国内外債券・国内外株式の主要指数は共にプラスマイナス0.5%の範囲内に収まっています。

穏やかな、というよりは、いわゆる「動意がなくて」「体温が低い」。思い出せないのではなくて、結局何もなかった1ヵ月でした。

さて、注目の大統領選挙までとうとうあと1か月。

市場参加者はそろそろ固唾を飲んで結果を見守る体制に突入しつつあり、体温は益々低下するばかりです。
あの苦い記憶が蘇るBREXIT前のように、ブックメーカーと世論調査に一喜一憂するだけの10月となるのでしょうか。

寺本名保美

(2016.10.03)


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