2017年04月の思いつき


技術の世界のもったいない

10年ぶり位に任天堂DSで一世を風靡した脳トレゲームをしてみました。

私の頭の老化度合いはさておき、改めてハードもソフトも本当に良くできていることに驚いています。

DSブームのあと、暫くして、iPhoneとスマホの時代となり、タッチパネル方式のゲームの主役はスマホに奪われてしまいました。

日本にはおそらく、こういったいい線いっても市場支配が出来なかった「もったいない」技術が山ほどあるのだと思います。

資源だけでなく、知財の効率的活用も、日本のもったいない精神で、もう少し陽の目をみられるようにできないものかと感じています。

寺本名保美

(2017.04.26)



膾を吹いた債券市場

トランプ大統領は26日に懸案となっていた税制改革と減税案について発表することを表明しました。

今日の東京市場は、昨日の欧州株式の大幅上昇の余韻と、何やらのキナ臭さと、トランプ減税の期待が入り混じり、膠着状態になっています。

それにしても昨日の欧州債券市場の荒れ方は凄まじいものでした。

フランスの選挙結果を受け、フランスの10年債は0.11%買われ、ドイツの10年債は0.08%売られ、つまりフランス国債とドイツ国債の金利差は一日で0.2%変動したことになります。
更にユーロの安定が重要であるポルトガルやギリシャなどの債務国の金利は0.2%以上の低下となりました。

終わり値でこの状況なので、日中の変動はもっと大きかったということです。

事前想定通りの結果だったにも関わらず、乱高下してしまった金融市場。どうやら昨年一年のイベントリスクに膾を吹いてしまっているのかもしれません。

寺本名保美

(2017.04.25)



目覚め

フランスの大統領選挙は、5月7日の第二回投票を経て、無事にメインシナリオ通りのマクロン大統領が誕生する可能性が高くなりました。

今回のフランスの選挙は、「反EU・保護主義」や「極端なポピュリズム傾向」の収束、というだけでなく、フランスが欧州経済において、主体的な役割りを果たせる国に変われるかどうか、という点においても大きな意味を持つ選挙となると考えています。

フランスの政治と経済は、戦中戦後のカリスマ指導者であったドゴール大統領以来、長い長い冬眠状態にあります。

ルペン候補の主張は、保守的になってしまった現在の右派に対し、より伝統的なドゴール主義に近い原点回帰を目指すものです。

一方のマクロン候補の主張は、ドゴール以降止まってしまったフランスの時計の針を前に進めることを目指すものです。

ルペン対マクロンという構図は、フランスが力を持っていた時代に戻るのか、フランスが力を持てるような時代を作るのか、という2者択一の構図でもあるのです。

文学的センスより実は数学的にセンスに長けたフランス人の論理性が、「後退」ではなく「前進」を選択し、長い長い眠りから覚めてくれることを心から期待しています。

寺本名保美

(2017.04.24)



見えないリスク

日本企業で海外子会社や買収先が原因の巨額損失が発覚するケースは今後益々増えてくるでしょう。

同業他社の買収であればまだしも、足元で増加しているような、異業種でのクロスボーダーでの買収については、リスクを事前に掌握するだけの知見がそもそも買収側に足りない可能性もあります。

こうした買収先や子会社リスクは経営側だけでなく投資家側にとってもいわば時限爆弾や地雷のようなものなので、リスクの取り扱いとしてはとても厄介です。

2002年のエンロンワールドコム事件後しばらくは、事業ポートフォリオの判り易さがアナリストの中でも重視される傾向にありましたが、この数年は再びコングロマリット的な事業形態が増加しているようにも見えます。

環境が良い時ほど足元がすくわれ易い、という言葉をよく噛みしめていかなければいけないのだと思っています。

寺本名保美

(2017.04.21)



普通?

昨日の米国の財務長官の為替を巡る発言を深読みしてみましょう。

①「為替操作とは米国の不利益になるように行われるものだ」と述べ、米国の利益になるのであれば為替操作とはみなさない

②トランプ大統領には自身の発言によってドルを押し下げようとする意図は絶対にない

前日に行われた日米経済相会談での、日米の経済協力は安倍政権の3本の矢を推進するとの文言と合わせて解釈すると、「日本の金融政策が日本の内需拡大に寄与し、それが米国からの輸入拡大に繋がるのであれば、その結果としての円安は許容する」と言っているようにも読めます。

元々ムニューチン長官は長期的にはドル高が米国経済の利益になると言っている人なので、少々割り引いた解釈が必要ですが、最近発言が「普通になってきた」と囁かれているトランプ政権。

このまま安全運転でいてくれるととてもありがたいのですが。

寺本名保美

(2017.04.20)



振り出しに戻る?

イギリスのメイ首相が突然総選挙宣言をしました。

一言で言ってしまえば、BREXITに向かって議会を強固な一枚岩にするための総選挙となります。

何やらBREXITのきっかけとなった前首相の国民投票を彷彿させるような総選挙ですが、大丈夫なのでしょうか。

昨晩から今日にかけての解説は一様に、今の保守党への支持率は高くメイ首相が期待するような圧勝になるであろう、とのコメントが主流のようですが、政党支持率とBREXIT支持率とは無関係であるとは前回の国民投票で証明済です。

英国の総選挙が政党総取り方式であることから、国民投票のような波乱はないとみられているようですが、「従来の政党」という枠組みが崩れつつある中において、「従来通り」の選挙予想が成り立つのかにも疑問があります。

フランスの大統領選挙とドイツの総選挙の間で行われるこの総選挙。再び英国が台風の眼になるかもしれません。

寺本名保美

(2017.04.19)



中途半端はもうやめにして

麻生大臣が信託大会で、信託銀行に国民の財産を託せる信託商品を開発して欲しいと、おっしゃったそうですが、一方で信託にはコーポレートガバナンスの観点から自社運用をするべきではないのではないか、との意見もあり、どうにも難しい立場にありそうです。

そこで思うのですが、信託銀行には金融商品の受託機関としてのデューディリのプロフェッショナルになってもらい自社運用はしない、一方で投資顧問会社は自社運用のプロフェッショナルになってもらい外部委託商品は扱わない、といった棲み分けをしてみたらいかがでしょう。

現状は信託も投資顧問もお互い中途半端に役割を担っていて、本当の意味でのデューディリの専門家も育たなければ、自社の運用成績だけで勝負できる運用会社も育たない状況にあります。

国民の基調な資産が長期的な投資に向かわせるには麻生大臣が言うように「信託財産」という形を経由させることが重要な手段だと思います。信託銀行と投資顧問という日本における二つのアセットマネジメントビジネスの主体がそれぞれ本来の機能を果たすにはどうしていけばいいのか、業界としてもう少し真剣に考えてみてはいかがでしょう。

寺本名保美

(2017.04.18)



流れ星に祈りを

フランスの大統領選挙の第一回投票日まで1週間となりました。

これまでのメインシナリオは、極右のルペン候補と中道のマクロン候補が勝ち残り、5月の決選投票に望む、というものだったのですが、ここにきて、急進左派のメランション候補の躍進が伝えられています。

このメランション候補ですが、一部報道ではロシアに憧れ、チャベスに心酔し、カストロ兄弟を愛す、と噂されている人物のようで、反EUどころではなく反NATOを掲げています。

本当に万・万が一、極右と極左の決戦投票ということになれば、欧州の混乱はBrexitの比ではなくなる、かもしれません。

ということが、先週後半になって突上浮上し混乱を始めた欧州金融市場。

彗星のように現れたマクロン候補が、彗星の様に消えてしまわないことを、心から願います。

寺本名保美

(2017.04.17)



地政学リスクというもの

地政学的リスクは市場変動を起こす触媒にはなるが、市場変動の要因にはなりにくいものです。

言い換えるなら、市場価格が割高であったり、高値警戒感が醸成されている環境において、価格を修正させるきっかけにはなりますが、「平温」な市場における影響は限定的です。

足元の地政学リスクによって大きく価格が修正されている市場があるとするなら、その市場価格について元々市場参加者に警戒感があったからで、地政学リスクの影響を吟味して売っているのではないのです。

だからこそ地政学リスクでの価格調整は長引かないと言われていますし、逆に地政学リスクがきっかけで壊れてしまうような市場は地政学リスクがなかったとしても早晩壊れていたということになります。

暫くは気持ちの悪い展開が続きそうですが、少し様子を見ます。

寺本名保美

(2017.04.14)



少々緊張

日本のことを島国だから、と表現しますが、米国の軍事的行動を見ていると、アメリカ大陸もまた巨大な島国なのだと感じます。

中東問題にしろ、アジアの半島問題にしろ、軍事行動への決断が早いのは、アメリカ本土からの距離の遠さと、無関係は無いだろうと思うのです。

逆に言えば、本土から遠く離れた地域で、自国民の命や巨額の戦費を消耗してまで、何かを守ろうとすることはある意味では褒められるべきことなのかもしれませんが、地理的な遠さが決断を必要以上に軽くしている懸念は拭えません。

足元で少々気持の悪い緊張感があります。

寺本名保美

(2017.04.13)



これもフェイク

CNNによると、「米証券取引委員会(SEC)は12日までに、特定企業の株価をつり上げる目的で中立を装って宣伝記事を執筆し、大手投資情報サイトに掲載させていたとして、ライターや企業など27の個人と組織を摘発した。」
そうです。

日本の週刊誌や雑誌などを見ていても思うのですが、ライターや評論家という立場の人達が不特定多数の購読者を相手に特定の銘柄の推奨記事を書くことに、どうして規制がないのか、不思議で仕方がありません。

このアメリカのケースでは、PR会社が株価を上げたい企業から宣伝記事企画をし受注し、ライターに株価上昇に寄与するような記事を書かせたとされていますが、例えば株式ではなくて特定の新商品の提灯記事を書くことで間接的に株価を上げされていることなどを含めれば、この手のことはいくらでも実例がありそうな気もします。

書いたもの勝ちの様相を呈している、昨今の情報社会において、フェイク記事を見極める見識眼を持つことは容易なことではなさそうです。

寺本名保美

(2017.04.12)



周回遅れの上場廃止騒ぎ

日本における「上場廃止」議論というものに、非常に大きな違和感を持ちます。

例えば、米国においては単に「債務超過」であったり「赤字」であったり、という決算数値で上場廃止基準が定められているわけではなくて、そういう企業においては単純に株価が1セント(1円)になってしまうだけのことです。

そもそも、米国等では残余財産や経営資源の温存を目的とした早めの法的整理をすることが王道であるため、上場廃止議論が起きるタイミングが発生しない、というのが実態かもしれません。

残余財産があれば上場が廃止されたとしても株主価値は残ります。
残余財産がなければ上場してようかしていなかろうが株主価値はありません。

上場維持に拘るあまり、時間を浪費し、経営資源を切り売りしてしまえば、結局そこには中身の空っぽな株式という箱が残るだけです。

今回の上場廃止騒動は日本の資本市場が如何に世界標準から取り残されているかを如実に表しているともいえそうです。

寺本名保美

(2017.04.11)



働けど働けど…

日本の完全失業率は2.8%という水準は1993年以来の低水準です。
昭和の高度成長期には1%台の失業率が続いていたので、史上最低水準というわけではありませんが、バブル崩壊後の低成長期においては画期的な数値です。

FRBではないですが、雇用の数値を見る限り、日本銀行は緩和の継続より、雇用等のコストプッシュによるインフレを視野にいれた政策判断をしなければいけない時期が近づいているように見えるのですが、現実的にはその気配は全くありません。

この疑問を解くために雇用統計の中身を見てみると、過去10年間で雇用が大幅に増加した業種は、「医療・福祉サービス」や「飲食・宿泊サービス業」。逆に雇用が減少した業種は「製造業」や「小売:卸売業」です。これに賃金統計を重ねてみると「低賃金」に属する業種の雇用が伸び、平均以上の賃金の業種が減少していることが判ります。

あえて一括りで言ってしまうなら、賃金ベースの低い分野での職が増え、高い分野での職が減り、全体として職は増えたものの、平均的な手取りは減っている。というところでしょうか。

例えば外国人労働者を迎え入れ、医療福祉サービスの担い手を増やせば、人手不足は解消するかもしれませんが、この分野における既存の雇用者の低賃金もまた固定化されてしまいます。

医療福祉サービス系の労働の賃金とそれに見合う労働の質の向上が急務であるように感じます。

寺本名保美

(2017.04.10)



進め!

気候や山海の幸に恵まれている土地はあまり経済が発展しないことが多い、という話を耳にする度に、私は「フランス」を思い出します。

平野部の多い国土に大きな水源を持ち、大海に面し天災が少ない。北部と南部とで異なる気候が食文化のバリエーションに貢献しています。

昔からの完全自給国であり、惠みは全て国内にあり、災いは全て国外から来る、と思っている人々。
生活の糧はそこにあり、生きていくだけならば、敢えて成長や変化に思いを巡らす必要のなかった人々。

外から来るモノに対し、自分達に関わりが無い限りにおいては極めて寛容である一方、自分達の社会への干渉には極めて拒否的な反応をする人々。

そんなフランスの人々が、4月23日からEUの命運を掛けた大統領選挙に臨みます。

彗星のように現れた39歳のマクロン候補の掲げる「En Marche!」は「進め!」というような意味です。米国のような「Change!(変化)」ではなく「進め!」であるところが、フランスという国をよく表しています。

この数十年、内に籠もり続けてきたフランスに「動く」気配が見えてきたということは、方向性はともあれ画期的なことです。

今度の大統領選挙、色々な意味で面白くなりそうです。

寺本名保美

(2017.04.07)



強く楽しく厚かましく

WSJに掲載された『「国境の壁」アイディア一満載の完成予想図』という記事を読むと、良くも悪くもアメリカらしさを実感します。

米国税関国境警備局が「メキシコの壁」の設計デザインを求めたところヒスパニック系を含む約200社が応募に興味を示しているそうで、そのデザインイメージが一部公開されています。

WSJの表現を借りるなら「機能性や美しさを競う」提案が行われており、「パルテノン神殿のように美しい」壁、や「巨大な産業廃棄物の埋蔵施設との兼用」、彫刻や着色ができるコンクリート材を活用する案やドローンなどを使ったハイテク案まで、アイディア満載な提案が行われているようです。

なんでも商売にしてしまう図太さや、なんでも面白がってしまう明るさは、バイタリティに欠ける私などからみれば羨ましい限りでもあります。

とはいえ、まだ予算が付くかどうかも怪しいプロジェクト。今のところ応募する側もどこまで本気なのかは定かではありませんが。

寺本名保美

(2017.04.06)



値段より気持ち

貿易赤字がどうして悪いのか?という問いには議論の余地がありそうに思うものの、トランプ政権が本気で貿易赤字を減らしたいと思っているのなら、国内景気だけでなく海外景気を刺激する政策を取るべきだ、ということが今回の貿易収支統計をみるとわかるでしょう。

今回貿易赤字が改善した要因は、ドイツと英国と日本への輸出が増えたことです。特にドイツと英国における足元での個人消費動向の強さは、米国の輸出には恩恵をもたらしています。

米国からドイツに輸出しているもので金額が大きいものは、「航空機やロケット」だけでなく、意外に「自動車やバイク」の比率が大きいので、ドイツの個人消費動向とは無関係ではないのです。

ドル高とドル安と米国にとってどちらが優位か、という議論はトランプ政権になって以来、延々と続いているようですが、所詮デフレ環境ににおいてモノを買うかどうかは値段よりも懐の温かさに依存するとするなら、基本的には多少のドル高を我慢してでも、取引相手国に気持ちよく消費してくれる環境を整えた方が得策でしょう。

資産運用にとっていえば、水準はどこでもいいから動かないのが一番、なのですが。

寺本名保美

(2017.04.05)



テスラが欲しい

2003年に設立し2004年に750万ドルのベンチャー資金で生産を開始したテスラモーターズの時価総額が、480億ドルとなりフォードの時価総額を抜いたそうです。

2004-5年は日本でもベンチャー投資がブームになっていて、電気自動車という面白そうなモノを作る「テスラ」という会社がシリコンバレーで注目されているらしい、という噂が聞こえてきていました。

それから15年も経たない間に、時価総額はなんと6400倍。2004-5年当初からテスラに資金を出していたPaypalやe-bayやGoolgeの創設者達はテスラへの投資においても、企業家としての優秀さを証明したことになります。

2005年当時に一斉を風靡した日本のベンチャーキャピタルですが、今に足跡を残せている会社はどのぐらいあるでしょう。

日本でテスラを育てていくには何が欠けているのか、真剣に考えていかなければならないのでしょう。

寺本名保美

(2017.04.04)



曇りのち晴天のち台風?

波乱の平成26年度が終わりました。

年度前半のBrexitでの欧州通貨の急落と、年度後半のトランプフィーバーでの先進国株式の急騰とでほぼ年間収益の説明がついてしまう一年でした。

金融政策についても動きはあったものの、市場の方向性を左右するほどの影響力は徐々に減退傾向になり、市場の温度調節やセーフティーネットという本来の機能に戻りつつあります。

平成27年度については、平成26年度に投入された材料をとりあえず消化していく一年になりそうです。欧州圏ではBrexitが本格的な交渉過程に入り、米国では新政権の経済政策の実効性が問われます。日本では残り1年を切った黒田日銀において硬軟取り混ぜた出口議論が活発化しそうです。

経済環境だけみれば、決して悪くない平成29年度ですが、前向きな気持ちになりきれないのは、ひとえに政治的な不透明感でしょうか。

政治の雲行きが晴れるころ、まぶしいぐらいの晴天が待っている、ことを期待して、今年も一年頑張りましょう。

寺本名保美

(2017.04.03)


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