2017年06月の思いつき


ミニ バーナンキショック

今週になって欧州の10年金利は軒並み0.2%程度跳ね上がっています。

ECBの量的緩和縮小の議論が、ドラギさん以外からも聞えてくるようになりました。

2013年の米国のバーナンキショックのように、テーパリングを織り込みにいく当初の金融市場は、株安と債券安を同時に引き起こします。

今の欧州はまさにその局面に入っていて、且つそれに加えこれまで経済に優位に働いていたユーロ安も転換しているため、目先は少々厳しい局面に入るかもしれません。

とはいえ、こうした影響を十分に承知した上でのテーパリング議論ができるようになったというだけでも、欧州各国の経済が1年前と比較して各段に落ち着いてきていることを示唆しています。

とりあえず、株安と債券安によるリターンの悪化については、ユーロ高がカバーしてくれているので、ここは慌てることなく、欧州経済の将来に期待することとしましょう。

寺本名保美

(2017.06.30)



欧州の巻き返し

ドル円112円39銭
ユーロ円128円08銭

この数字、今日の為替レートではなく、2016年3月末の為替レートです。

2016年度は、英国のEU離脱や米国の選挙など、政治リスクが高まる中で、為替は経済や金融政策とはやや乖離した動きが続いていた一年です。

ドル円については、トランプ相場でドル高に戻りましたが、ポンドに引っ張られて戻りの悪かったユーロについて、足元でようやく正常化した、というところでしょうか。

欧州については、英国は横に置いておくとして、南欧の銀行の不良債権問題にも動きがみられるなど、前向きな方向性の兆しが見え始めています。

ユーロの巻き返しがこれから先も続くかどうかはまだ定かではありませんが、通貨だけでなく欧州の巻き返しがこれからしばらくの市場テーマになるかもしれません。

寺本名保美

(2017.06.29)



遠くて近い話

破綻したプエルトリコが、水道や電力等のインフラ事業を民間のインフラファンドに売却することを計画していると報じられています。

開発型ではない、このようなキャッシュフロー型のインフラファンドに注目が集まる時は、90年代初頭のイギリスのように中央政府にお金がなく、且つ金利水準も高く、政府債の発行も儘ならない状況が背景にあります。

そういう意味において、今回のプエルトリコのインフラ売却は、正にセオリー通りの展開と言えます。

当然、市場の見方には賛否両論があり、売却金で一時的に財政が改善しても将来的には住民負担が増えるだけだ、とか、ファンドに安く買い叩かれるのではないかとか、の否定的なコメントも多く見られます。

インフラファンドのフェアバリューとはなにか、というこうしたタイプの議論も、投資家として、インフラファンドに関わる際に、いつも繰り返される議論の一つです。

プエルトリコで起きているインフラ議論は、今後遠くない将来、もっと身近な国で起きる可能性のある、遠い国の身近な話だと思っていた方が良いのかもしれません。

寺本名保美

(2017.06.28)



もっと普通の行政を

素朴な疑問。

大学を作るのに、どうして国を挙げての総数や学部枠の管理認可が必要なのかよく解らないです。

補助金がでるから?補助金を要りませんと宣言したら自由に作れるようになる?

教育の質を担保する必要があるから?だったら金融機関のように個別審査や監督体制を強化すればよいだけで、新設枠の管理の理由にはなりません。

既存大学の経営の安定性?大学といっても所詮民間法人。競争相手の数の制限が経営の安定に繋がると行政が思っているとするなら、過保護にも程があります。

一般企業のように、もっと自由競争ができる仕組みを取り入れて、大学そのものの新陳代謝を上げて、その代わりに大学に万が一のことがあっても学生の単位や学位には保全させるセーフティネットを作る、という、常識的な方向に舵を切るべきだと思うのです。

そうすれば、よけいなソンタクなど、起きずに済むものを。

寺本名保美

(2017.06.27)



自動車産業が描く未来

国内外で自動車産業界の先行きに対する懸念の声が聞こえて来るようになりました。

夢の技術革新が夢では無くなった時、既存の製品の賞味期限はカウントダウンを始め新製品にへの興味は高まるものの、技術と価格がこなれるのに時間を要するため、旧製品、新製品ともに、消費者は買い控えをすることになるからです。

でもそこを抜けない限り、この業界のイノベーションは成功せず、それに耐えられない既存メーカーは身軽なベンチャーや、新規参入組に、追い落とされることになります。

自動車産業に支えられてきた日本の製造業にとって、自動車産業のイノベーションが吉とでるか否かが、日本の株式市場を占う大きな試金石となることは間違いありません。

寺本名保美

(2017.06.26)



少し気になること

ファイナンシャルタイムズによると、中国金融監督庁が国内の主要銀行に対し、「Dalian Wanda」「Fosun International」「Anbang」 等4社に関するエクスポージャーについてヒヤリングし、これを受け当該4社の株式が昨日急落したと報じています。

例えば「Anban安邦保険集団」は老舗ホテルウォルドーフアストリアの買収で、「Dalian Wanda 大連万達」は欧米の大手映画運営会社の買収で、「Fosun」は中国のウォーレンバフェットとして、それぞれ名を轟かせている一方で、当局との軋轢もしばしば噂されている企業です。

当該4社は、この数年M&Aにより急激に業容を拡大しており、負債レバレッジの高さが欧米のアナリストからも指摘されていました。
短期調達に対し資産側のキャッシュフローが追いつかない、深刻なミスマッチが起きている可能性についての懸念をFTは指摘しています。

巨大になりすぎた投資家集団に対し、当局が圧力をかけてきたとみるか、中国金融のシステミックリスクのコントロールとみるかは意見の分かれるところでしょう。

いずれにしても、頭の片隅に置いておいた方がよい話題のような気がしています。

寺本名保美

(2017.06.23)



越冬つばめとハシビロコウ

人間ドックにきています。

毎年同じ病院でお願いしています。

検査のの質のことはよくわかりませんが、サービスの質については、この1-2年で明らかに向上しています。

東京周辺の大学病院は、建て替えラッシュが起きていますが、これもサービス向上の一環なのかもしれません。

最近学校法人経営のお話をうかがう機会が増えているのですが、学校法人経営においてもサービスや質の向上に向けて具体的な動きがかつてなく活発化しているように聞こえます。

病院も学校も人口減少の中でどう生き残っていくか、真剣味が増しています。

じり貧だと嘆きながら、周りの様子を窺うだけのハシビロコウの様な我が業界とは大違いです。

まぁ、ハシビロコウも本当に危険が迫れば飛ぶらしいですが。

寺本名保美

(2017.06.22)



潜在リスクの上昇

このところ、日本も米国も株式市場の政治離れが著しく、両者が別世界のものとなりつつあります。

政治の混迷が深まる中、株式市場が安定しているのはよいことではあるのですが、あまりにも長い政治の混乱にはそろそろ警戒が必要になってくるかもしれません。

恐怖指数と言われている米国のVIX指数は外部材料に全く反応することなく底辺を横ばっており、むしろVIX指数を使ったトレーディング戦略での損失の方が懸念される状況になりつつあります。

金利市場においてもFOMC前後に振れるだけで、イベントが過ぎれば市場の変動は殆どありません。

足元の市場のボラティリティが落ちると投資家のポートフォリオにおけるリスクの組み入れ比率が上がります。VIXのようにヘッジ目的で組み入れている資産の損失が膨らみヘッジポジションを減少させる動きも加速します。

現在のようなボラティリティを伴わない市場上昇というものは、市場の将来リスクをじわじわと上昇させていくことになるのです。

市場変動への備えが薄くなってきている今のタイミングで、これ以上の政治の混乱はできれば避けていただきたいのですが。

寺本名保美

(2017.06.21)



通説が通らない

普通、産油国で地政学リスクが高まると、原油価格は上昇します。

普通、S&P500が新高値を更新するような経済情勢であれば、原油価格は上昇します。

現実には、過去1か月で原油価格は13%下落しました。

一ついえることは、原油価格が50ドル台を維持できていたのは、産油国とロシアが仲良く減産に合意してきたからです。

中東・シリア情勢の緊迫化が、この「仲良く合意」という前提を覆す可能性があるなら、原油価格は減産合意前の30ドル台へ逆戻りとなるでしょう。

もう一つ、「産油国である」米国が一人勝ちする世界経済が続くとするなら、今後景気と原油価格との正の相関は益々薄れていくでしょう。

世界経済の構造が変われば、市況の構造も変わります。

ステレオタイプな投資戦略にある落とし穴に充分注意していく必要がありそうです。

寺本名保美

(2017.06.20)



チラホラな情報

フィリピンのミンダナオ島を含む周辺域がISの占拠状態にあるという報道が、チラホラと出ています。

あえてチラホラと書いたのは、どういうわけかチラホラだからで、出てきている情報を見る限りにおいて、チラホラで済むような状況ではないようにみえるからです。

カタールのその後についても、日本のメディアは殆どフォローをしていないように、日本で流されるニュースの厚みが、このところ一層薄くなってきているようにみえます。

おそらくこうした情報の偏りは日本だけでなく米国でも起きていて、トランプ政権後の外交政策の偏りや、対メディアとの確執が、情報の質の劣化を生んでいるのかもしれません。

それにしてもフィリピン。
大丈夫なのでしょうか。

寺本名保美

(2017.06.19)



本質的な議論

タカタのリコール問題が発生して10年。

東京電力の原発事故から6年。

東芝の粉飾決算発覚から2年。

何度も書いていますが、企業の存続・事業の存続・株式価値の存続は、全て意味が異なります。

日本の企業経営においては未だに、この3つにおける優先順位の整理がついていません。

証券市場のガバナンス問題。
本質的な議論が如何にされていないかの証左のように思うのです。

寺本名保美

(2017.06.16)



大きな意味を持つFOMC

昨晩のFOMCの声明の評価は、人によっても、市場によっても、バラバラなものとなりました。

FOMC声明前に出た米国指標が想定外に弱かったことが、ドルの上値を重くしているためイメージがズレているのですが、今回のFOMCでFRBのバランスシートの縮小についてのプロセスが明確に提示されたことは、米国の金融政策の正常化プロセスの大きな前進を意味します。

にもかかわらず、米国の長期金利が低下し、ドルの買い戻しが鈍いのは、雇用とインフレという二つのトリガーの内、雇用というトリガーのみで本格的な引き締めに転じようとしているFRBに対する、市場の警告であるということができそうです。

年内のバランスシートの縮小にはファンダメンタルズに大きな変化が生じないことを条件としているため、現在の不安定な政治経済の環境下では実現可能性が低いのではないかという意見や、この程度のファンダメンタルズで引き締めを強行するならその先にあるのは日本の失われた20年と同じような深刻なデフレであろう、という悲観論などが見られます。

実現可能性には不安は残しているものの、後から振り返ってみると、今回のFOMCが米国の金融政策にとって大きな転換点となるものとなるかもしれないという認識は持っておいた方がよいと思っています。

寺本名保美

(2017.06.15)



内輪揉めをしている場合ではなくて

どこもかしこも政治の混乱は収まらず、中東では国を挙げての情報操作合戦が拡大中と言われ、岩盤かと思われたプーチンロシアでもやや雲行きがおかしくなりかけている政治の向こうで、産業界から漏れてくる新技術の話は日々「星新一」の世界に近づいています。

中国では車は空を飛ぶらしく、
Facebookではメールがテレパシーで飛ぶらしい。

どこまでが、流行りのフェイクで、どこまでが、事実なのか、全く判断がつきかねる情報が錯綜しています。

面白い世の中です。でもここでコントロールをしなければ100年後の地球はないかもしれない、という怖さも感じる世の中です。

政治が内輪揉めをしている場合ではないのですが。

寺本名保美

(2017.06.14)



テックから金融、そして?

先週末から続く米国テック銘柄の急落ですが、裏側では金融銘柄が急騰しています。

今週のFOMCで利上げが決定されると共に、FRBのバランスシートの縮小について言及されれば、米国の長期の金利には上昇圧力が掛かり、金融セクターにとってはプラスの効果が、負債比率の高いテックセクターにとってはマイナスの効果が発生するという思惑が背景にありそうです。

足元まで買われていたテック関連を利食い、頭の重かった金融株へ入れ替える動きがいっきに出た、大きな流れでいえば業種間の適正なバリエーション調整の範囲内です。

とはいえ、これまで市場を牽引してきたテック銘柄の急落が、投資家センチメントを一時的に悪化させているのは確かです。外部の悪材料にこれまで全く反応してこなかった株式市場が、そろそろ踊り場に入るのか、このまま階段を上り続けるのか、今週はやや大きな節目になるのかもしれません。

(2017.06.13)



ギルド

トランプ政権が欧州型の徒弟職能制度の導入を検討していると報じられています。

日本でも1か月程前に似たような制度について報じられていましたが、
トランプ政権が言っているのは、日本で想定されているようなITやプログラミングの専門教育、という偏った分野ではなく、ドイツのマイスター制度のように大工さんとか工芸士さんといった、本来の職能制度に近いもののようです。

何処の国も、人口の伸びに期待できない中、人材の質によって労働生産性を上げるための基礎投資が必須の状況になっています。

ここでの人作りの方向性が、20年後50年後のその国の社会の方向性に直結します。

何か日本だけ方向性がズレているように思うのは気のせいでしょうか。

寺本名保美

(2017.06.12)



どっちもこっちも古臭い

昨晩テレビに小池都知事が出ていました。

東京金融センター構想について話していました。

以前も一度書きましたが、私は東京を金融センターにすることについては賛成でも反対でもありません。

但し、昨晩も言っていましたが、「バブル崩壊前のキラキラと輝いていた東京がとても素敵だったから」みたいな理由で金融センターを語るのだけはやめてほしいのです。

小池さんって奇抜な発言が多いようにみえるものの、その言動をみているととても伝統的な政治家で、悪くいうと意外に古臭い。

国会も含め日本の政治の世界、いつまでも1年生議員とか2年生議員とか雑巾がけとか、くだらない単語を封印して、カナダやフランスのように若い力が国を動かすようにしてほしいものです。

寺本名保美

(2017.06.09)



英国から大陸へ

今晩、英国の総選挙結果が判明します。

当初想定していた保守党の大勝利による議会の安定化が実現する可能性は遠のいてしまっているように見えます。

だからといって公共事業の国有化や増税を掲げる労働党政権ができてしまうことが市場環境にとってプラスであるというわけでもなく、英国やポンドについては、今回の結果に関わらず、今後は厳しいものになっていく可能性が高いかもしれません。

この後はブランスの議会選挙があります。最終確定は来週の日曜日ですが、今週日曜日の第一回目の選挙で大方の方向性は見えてくるでしょう。こちらは英国とは逆で、議会選挙では苦戦するとみられていたマクロン大統領率いる新政党が意外に善戦するのではないかとみられています。

選挙結果により政治が不安定化する国と安定化する国のコントラストが明確になると、英国から欧州大陸への資金移動が本格的にスタートすることになるのかもしれません。

寺本名保美

(2017.06.08)



変化の時代の公共投資

東京都の豊洲市場移転問題をみていると、公共投資の時間軸の難しさを感じます。

築地移転が本格的に議論され始めた2000年代初頭、「観光立国」などという発想は日本のどこにもなく、「食の安全」が話題になることも殆んどなく、「築地」という二文字が国際的なブランドになるなど誰も想像していませんでした。

それから15年以上の月日が経ち、立派な箱物が出来上がった時には、築地を取り巻く環境は一変してしまっていたのです。

ある時点で必要であると判断された箱物ができた頃には無用の長物となっている事例は過去に幾つもあったでしょうし、ある時点では価値を見いだせなかったモノの評価が、10年経ってみて激変することもあります。
特にこれからの10年、社会の仕組みも価値感も、想像以上の変化が起きることは間違いのない事実であるなか、10年後20年後に意味のある公共投資を選択していくことは、本当に困難な作業であると思うのです。

築地がこれからどうなるのかは、皆目検討がつかない状況が続いていますが、今回の築地豊洲問題は、これからの公共投資の方向性に一つの大きな教訓を残しているのだと感じています。

寺本名保美

(2017.06.07)



カタール?

昨晩中東5カ国(現時点では6カ国)が、中東の小国カタールとの国交を断絶すると宣言し、金融市場は動揺しています。

昨年の1月3日、サウジアラビアとイランが国交を断絶すると宣言をして以来、中東では色々あったものの、両国関係はいわゆる冷戦状態となり、国交断絶が話題になることもあまりなかったのですが、それが突然カタールに飛び火しました。

このカタールという国のことについてほとんど知識がなく、サッカーのドーハの悲劇、ぐらいしか思いつかないため、只今、俄か知識を収集中です。

状況を理解できていないせいなのかもしれませんが、意外に大事になりそうな気がして、気分が落着きません。

寺本名保美

(2017.06.06)



休載のお知らせ

本日は一日屋外のため休載いたします。

(2017.06.05)



ほろ苦い記憶

日経平均が20000円を越え、米国の主要市場も高値を更新しました。

今すぐにどうなるというわけではないのですが、世の中の空気が久しぶりに浮わついてきたように感じ始めています。

例えば2006年1月に破裂した日本のミニバブルを基準にすると、今はまだ2004年の後半位の印象なので、市場の展開が以前より早いことを加味したとしても、まだ延びしろはあるかもしれません。

官民あげて新技術を煽り、世界中からの周回遅れを取り戻そうと焦り、外部材料への感度が落ち、投資家の視野が狭くなる。

そんな懐かしくもほろ苦い感覚が、ほんの少し甦っています。

まだまだ、ほんの少し、ですが。

寺本名保美

(2017.06.02)



緊張感のないありがたさ

昨晩、通りがかった渋谷のハチ公広場には、国内外の老若男女が本当に種々様々な装いで、夜の東京を楽しんでいました。

ダースベーダ―に成りきって写真を取り合う人、スクランブル交差点を踊りながら行進する人、背広を手にひっそりたたずむ人、何が楽しいのかよくわからないけどとにかく楽しそうな若者…

不思議な光景に唖然とするとともに、キャラクター衣装も、背広も、学生服も、着物も、民族衣装も、性別も、国籍も、全てを同質に溶け込ませてしまう、寛容で平和で緊張感のないこの空間が、現代の地球上でとても貴重でありがたい存在であることも実感しました。

この平和がいつまでも続きますように、と願う今日この頃です。

寺本名保美

(2017.06.01)


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