2017年10月の思いつき


希望

米国株式が高値を更新し続けてもバブル感が薄いのは、産業界や経済がついてきているから。

日本株式がようやくバブル以降高値を更新しただけなのにバブル感が強いのは、産業界や経済がついてきていないから。

流行りの言葉でいうなら、米国株式には希望があり、日本株式には希望がない。

ただそれだけ。

寺本名保美

(2017.10.25)



カナリア

日米共に主要指数は高値を更新しているものの、中身をみると少し変化が見られます。

日本で言えばJASDAQやマザーズの指数は下落に転じ、米国で言えばいわゆるFANGに代表されるネット銘柄の下落が目立ちます。

今年一年を牽引してきた銘柄群が年末を前に利益確定の対象となっていること。
米国中心に利上げ局面に入っていることで、金利感応度の高い新興株のバリエーションに見直しが入りやすくなっていること。
市場全体の短期的な下落に備え、下落局面での流動性に対し投資家がリスクを感じ始めていること。

といったところが主だった要因でしょうか。

日本において新興市場は大型指数に先行しやすいという特徴があります。

炭鉱のカナリアの声に耳を澄ます時期が来ているのかもしれません。

寺本名保美

(2017.10.24)



少し落ち着いて

都議会選挙で売って、衆議院議員選挙で買い戻し。

小池さんに振り回されたのは、前原さんも投資家もどっちもどっち。

日本の政治は、ヨーロッパとは違ってそう簡単には変わらないです。

政権の安定性の議論はここで一旦収束。
次は政策の具体性の話。

米国も中間選挙まで1年となり、お互いの足の引っ張りあいから、政策議論に軸足が移りつつあります。

暫くは地に足がついた話が聞けると嬉しいのですが。

寺本名保美

(2017.10.23)



打ち上げ花火

もしここで、日本の株式市場が、10%程度の適度な調整をしてくれるなら、今後暫く株式投資の未来は明るいでしょう。

しかし、このまま調整らしい調整がないまま、上に突き抜けてしまうなら、この後の下落の痛みは大きくなると思います。

主要業種である自動車産業の先行きは暗澹とし、上場企業の不祥事は続き、政策は選挙で中断し、イノベーションの先行きは見えない中で上がり続ける株式市場に、付いていけていない投資家は幾らでもいます。

この人達の多くは、多少調整してくれることを祈りつつ、今これから買うことの言い訳を探す日々を送っています。

この言い訳となる材料が見えた瞬間、市場は最後の花火が打ち上がる体制が整うのです。

今はまだバブルではありません。だからこそ、多少下がったとしても立て直しは効きます。
一旦花火が上がってしまった市場には、焼け跡しか残りません。

総選挙後の相場。少し冷えてくれるといいのですが。

寺本名保美

(2017.10.20)



忖度からルールへ

FRB議長人事が今週中に決定する見込みとなったことで、ドルの買い戻しが進んでいます。

言われているように市場対話より理論を優先する人事になった場合、利上げテンポは想定より早くなると考えられるからです。

金融危機対応の異常な金融緩和が、グローバルな政治や経済の波乱を受けて、本来よりも少々長引きすぎているという批判が今のFRBにはあります。

忖度からルールベースの政策にFRBが変わるとするならば、それこそ本当の意味での金融危機からの脱出を意味します。

米国がとのような結論を出してくるのか、とても楽しみでもあり、不安でもあります。

寺本名保美

(2017.10.19)



これも機能不全

日本の大企業に問題が発生したとしても、株式市場全体に与える影響は今のところ限定的です。

一方で原則として大企業しか発行していない、公募社債の市場においては、一社の信用リスクが市場全体に与える影響が大きくなります。

東芝は株式市場においては、通常取引に戻りつつありますが、社債の値段を見る限り、平時には程遠い印象を受けます。

足元で不正が取り沙汰されている大企業についても、「流動性の枯渇」という意味も含め、影響は株式より債券市場の方が深刻で長引くかもしれません。

今のところ日銀の買いオペが駆け込み寺となっているため、こうした問題企業債券は日銀に蓄積されます。日銀が大量保有者だからこそ、問題企業のデフォルトだけは避けなければならない、という暗黙の了解が蔓延する不健全さは、市場関係者誰しもが気がついていることです。

日本の債券市場の機能不全は、マイナス金利以外にも、原因は色々とありそうです。

寺本名保美

(2017.10.18)



電子対リアル

WSJによると、米国で電子書籍から従来の紙の書籍に売上が回帰する動きが見えているそうです。

キンドル等の電子書籍に押され、紙書籍は早晩絶滅するであろうと言われていたことを考えると、これは大変意外な展開だと、WSJも書いています。

確かに意外ではあるのですが、私個人の感覚は、この変化に近いものがあります。

周辺の本好きな友人達の声を聴いても、
電子書籍は読むには便利でも、選ぶのは不便である。とか
電子書籍で読んだ文章は不思議と頭に残らない。とか
更には、電気的刺激でインプットされる文字と、光の反射で認識される印字された文字とでは脳に認識されるプロセスが異なる気がする。とか
まぁ色々あります。

これからのネット化社会のフロントランナーだった電子書籍分野が、これからどのようにリアルの満足度を維持し成熟していくのか、電子対リアルの戦いを興味深く体験していきたいと思っています。

寺本名保美

(2017.10.17)



そろそろ

日経平均10連騰です。

材料的にはさほど恵まれているわけではなく、上がるから買う、買うから上がる、のスパイラルに入ってきた感触があります。

国内外の企業業績や、中国経済等、外部材料に反応しているのは事実ですが、直接のきっかけは、自民党大勝の世論調査結果でしょうか。

選挙はみずもの。相場もみずもの。

オーストリアでの右派台頭や、国内の大規模不正。米朝関係に加えて中東でも喧嘩を売り始めているトランプ政権と、火種には事欠かない情勢は継続です。

この数年、強気を続けて来ましたが、そろそろ居心地が悪くなってきました。

寺本名保美

(2017.10.16)



ファンドベンチャーは甘くない

東京都が金融ベンチャーを育成する財団を設立するということが報道されています。

そのこと自体には良いことなのだと思います。

一方で、この財団の基金で、ファンドマネージャーにシードを出すことを検討しているということも書かれています。これについては、如何なものかと思います。

優秀なファンドマネージャーに資金を提供し育てる、と言うは優しいですが、現実感は全くありません。

欧米のヘッジファンドの世界にも、シーディンクファンドというものがあります。まだトラックも短く、投資家から充分な評価を受けていないファンドや、大手のファンドから独立したいファンドマネージャーなどに、投資資金やインフラを提供し、ファンドが大きくなることを支援する、ヘッジファンド育成ファンドです。

ヘッジファンドの経験豊富な専門家が、「優秀な」ファンドマネージャーを厳選するこうした仕組みにおいても、ヘッジファンドベンチャーの成果は残念ながら誉められたものではありません。

ファンドシーディンクはとてもリスクの高い取り組みです。証券会社や運用会社が将来への投資と割りきって自己資金で行うならわかりますが、税金を持ち出して行うような種類のものではありません。

東京フィンテック構想。どこか上滑りしているような気がして心配です。

寺本名保美

(2017.10.13)



季節感なし

毎年4月後半に機嫌が悪くなる私の気管支が、季節外れに愚図るので、まさかと思いPM2.5警報をチェックしてみました。

当たりです。

中国の景気がこの数カ月持ち直してきたからか?

火山の噴火のせいか?

カリフォルニアの山火事は関係なかろう…

と、不満のぶつけ先を探してみたり。

こうなると無口になるので、私の周辺の環境にはプラスかもしれませんが。

寺本名保美

(2017.10.12)



ただ健全なだけ。

日経平均が1996年の12月以来の高値を更新しました。

1996年12月。
バブル崩壊と深刻な円高に対し、日銀が行った低め誘導と、米国の株高の恩恵とで、一時的に景気と株価が戻っていた頃のお話しです。

水面下に沈められていた「不良債権」という魔物が、ドクドクと脈打つ音に必死で耳を塞いでいた頃のお話しでもあります。

21年ぶりと聞くと、なにやら高値な印象を受けますが、日本経済にとってはドン底に近い環境下の水準を超えただけとも言えます。

日本の経済力が、96年当時の同じぐらい傷んでいるのなら、今の株価には警戒が必要です。
日本の経済力が、当時に比べ相対的に健全であるならば、今のレベルに一喜一憂する必要はありません。

さて、今の日本。
健全ではあるものの、稼ぐ力は相対的に落ちているような気もしています。

バブルではないとは思っていますが。

寺本名保美

(2017.10.11)



目先の利益と将来の共倒れ

前回のセミナーでも引用しましたが、社会システムが大きく転換する中において、既得権益の維持に固執する業界団体や政府に依存する産業は崩壊するだろう、という一説が頭から離れずにいます。

米国の自動車団体がオバマ政権時に決めた米国燃費基準を緩めて欲しいという要望を出していると伝えられています。

ガソリン価格が100㌦近い水準の時に定められた基準は現状に適合していないという主張です。

一面では正しいと思うのですが、一方でグローバルな自動車産業の変化の方向性からみると、相変わらず時代遅れの象徴のような団体だという印象も受けます。

米国の自動車産業が二酸化炭素を吐き出しながら崩壊するのは勝手ですが、それに日本の自動車産業が巻き込まれるのは御免です。

目先の販売台数と、将来の共倒れ。

究極の選択です。

寺本名保美

(2017.10.10)



富裕層がいない国の税制

米国には富裕層というちょっとした上場企業に匹敵する程の資金力を持ったお金持ちがいます。

米国の税収に占める法人税の比率は20%以下で、税収の8割がたを所得税がしめています。

一方の日本は、法人税の占める比率は約20%、所得税で30%、消費税で30%というところでしょうか。

資産効果の影響を大きく受ける富裕層を抱える米国においては、資産価値の上昇と所得税の上昇とには密接な関連性があります。

一方で富裕層比率の小さい日本における税収の核となっている所得税と消費税は、実質賃金と購買力に依存します。資産インフレは購買力の増加には寄与しますが、税収に直結はしません。

景気が良くなれば税収が増えるのか?株が上がれば税収は増えるのか?

米国とは大きく異なる日本において、このロジックにはどうしても無理があります。

このロジック成り立つように、社会構造を変えるか、さもなくば淡々と消費税を上げるか、二つに一つだと思うのですが。

寺本名保美

(2017.10.06)



言語の支配力

Googleから、翻訳イヤフォーンが発売されるそうです。イヤーフォンをGoogleスマホに繋げておくと、会話がリアルタイムで翻訳されてイヤーフォンから聞こえてきて、全世界40言語に対応しているとのことです。

もちろん、違和感はあるでしょうが、セミナーでの同時通訳の違和感程度に収まるなら使い道はありそうです。

英語はともかくとして、40言語の普通の人達と、普通にコミュニケーションができるようになる世界。想像するととても愉快な気分になってきます。

それにしても、この技術が本当に実用化されていくと、英語の持つ戦略的な価値が毀損していくことになります。

ここまでの米国の国力を支えてきたのは、人口、軍事力、基軸通貨、そして国際通用言語である英語です。

この言語としての支配力が今後に低下していくとするならば、少なくても経済における米国の国際支配力にも少なからず影響がでてくるかもしれません。

色々な意味において、面白い世の中が近づきつつあるのかもしれません。

寺本名保美

(2017.10.05)



具体的な議論が成り立つ国、成り立たない国…

今四半期の最大の市場テーマは、日本の総選挙でも、EUのテーパリングでもなく、おそらく米国の税制改革法案の行方になりそうです。

際立った成果なく1年を迎えようとしているトランプ政権と共和党にとって、今取り組んでいる税制改革法案の成立の如何は、来年の中間選挙を左右する大きな試金石となるでしょう。

具体案が出てきたことで、金融市場や財界等を含めた、議論が活発化してきています。こうした議論の過程を通して、現在の米国経済の本当の姿が見えてくる良い機会でもあります。

具体的な経済政策に対し、具体的な批判や議論が成り立つという意味において、米国はやはり健全なのだと感じます。

寺本名保美

(2017.10.04)



だれも市場を気にしていないけど

良くわからない国政選挙騒動の中において、一つはっきりしたことがあります。

これで日本の2020年の財政健全化公約達成は無くなった。

自民党は消費税を目的税化してしまい、対抗する希望の党は、消費増税を白紙化するといっています。

どちらに転んでも、プライマリーバランスのお話は無し。

憲法改正より経済対策を優先して欲しい、と言っていた株式市場の声も、どこにも届かない。

財政再建が棚上げされ、経済対策は後回しにされる、という印象が対外的に残ってしまったら、日本の債券も株式も海外投資家から背を向けられそうな気がします。

目先、心地よく上昇しているからと言って、政治家のみなさん、金融市場を甘くみてはいけませんよ。

寺本名保美

(2017.10.03)



強気の独立は厄介

日本市場では、為替も株式もほとんど反応していませんが、スペインのカタルーニャ地方の独立投票は、想定を超える混乱となりました。

スペイン中央政府からすれば、税収の2割を占めるこの州を手放すことなどあり得ないことでしょうし、州側からすると貧乏な国と心中する必要はない、ということになるのでしょう。

英国の独立運動にも共通しますが、独立する側とされる側との力関係によって独立運動というものの様相は変わります。

英国EU離脱の場合は、経済力のあるドイツが居るEU側にあまりデメリットがないことが、英国の立場を難しくしています。

今回は出ていきたい側に経済力があるパターン。喧嘩をすれば出て行って欲しくないスペイン政府にとっても交渉が難しくなるだけです。

今のところ落としどころが見えず、この後の展開にややリスクを感じます。意外な冷水にならなければよいのですが。

寺本名保美

(2017.10.02)


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