2018年05月の思いつき


物価って面白い

日本の物価が上がらない理由について、会議等で同席した方々とディスカッションする機会が多いのですが、内容は色々でとても面白いです。

例えばマンションの販売価格は明らかに上昇しているものの、そのマンションを賃貸に出すときの賃料は据え置かれている、とか。

高級ホテルを含め既存ホテルの宿泊単価が上昇してきたかと思ったら、民泊とか新発想の格安ホテルが登場して、単価の上昇は頭打ち、とか。

一つのブランドで高級版と廉価版とを共存させて成功している話とか。

確かに原材料や人件費は上昇しているし、既存商品やサービスの多くは明らかに値上がりしているものの、物価全体でみると上がっていないのには、日銀が言っているような「消費者センチメント」の問題や賃金の問題以外にも、企業のイノベーションを含む社会構造の変化も含めて考えていく必要があるのでしょう。

日々買い物をする立場からすれば、物価が上がらないに越したことはないというのが本音なのですが。

寺本名保美

(2018.05.31)



金利のある国がら、金利のない国へ

ドルの短期金利が復活して、日本に短期金利が無い状態において、ドル建の運用商品を円ヘッジで投資する際には、従来とは異なった潜在リスクを意識する必要があります。

ドル建で運用しているファンドマネジャーにとっては、短期金利が元本割れを回避するためのバッファーとなります。短期金利が2%あれば年間2%の損失までであれば元本割れにはなりません。

一方で、為替ヘッジ後のリターンを受け取る日本の投資家からすれば、短期金利分はヘッジコストで無くなっていますので、2%の損失はそのまま2%の元本割れになります。

運用している側は、基本的に円ヘッジ投資家の心象など考慮しません。短期金利がある分だけ心理的なリスク許容度が増えるため、運用上のリスクを取りやすくなります。

円ヘッジ後の投資家から見れば、リターンの幅が大きくなる一方で、元本割れの可能性も知らぬ間に拡大することになるのです。

この先暫くは、ドルにだけ金利が復活し、円には金利が無い環境が継続することになります。

ヘッジコストが高いか安いかだけでは無い、潜在リスクについて、意識を喚起する必要がありそうです。

寺本名保美

(2018.05.30)



マクロン旋風の反動

約一年前、EU加盟国の離脱問題が燻る最中に起きたマクロン旋風によって15%以上上昇したユーロが、今回のイタリア問題で上昇幅の3分の1程度を失っています。

止んでいたように見えた反EUの風が再び吹き始めてしまったことに、市場はやや警戒感を高めています。

とはいえ為替だけでみれば、まだまだ上昇幅の範囲内。
むしろこの一年のユーロ高で減速気味だったドイツにとっては、むしろ願ったりのユーロ安ともいえそうです。

あまり楽観するつもりもないのですが、暫し静観していたいと思っています。

寺本名保美

(2018.05.29)



寂しい業界

日本の運用機関TOPの発言を見聞きする度に、

日本の運用機関にとっての経営課題や目標は「運用能力の向上」にはない、

ということを痛感します。

「運用機関ビジネス」だから仕方がないか…

監督官庁も業界団体も含め、誰も日本の運用機関の運用能力に興味を示さない。

良くなるわけがない。

寺本名保美

(2018.05.28)



悪材料のごった煮

米朝会談の中止、自動車への25%関税、トルコリラの急落、日本の政治、EUの対英交渉の強硬姿勢とFOMC議事録。

この数日の金融市場におけるボラティリティを上昇させている最重要項目はこの中のどれなのかと考えています。

少なくても為替が動いたきっかけは、米朝会談への不透明感でしたが、欧州市場ではトルコの問題が小さくはなかったように見えます。

一方で、自動車の25%関税に関しては、日本時間においてはそれほど金融市場全体への緊迫感を高めているようには見えず、今晩の欧州市場での反応次第というところでしょうか。

テレビやネットニュースをみていると、日本では国会が非常に大きな転機を迎えているようではありますが、金融市場では不思議な程材料にはなりません。

ここからそれぞれの材料が一つずつ動いていく中で、投資家心理がどのように変化していくか。ここから1年の市場を占うにはよい参考になるかもしれません。

寺本名保美

(2018.05.25)



リスクのアンテナ

トルコの金融政策を巡る混乱は昨日の利上げ収束に向かうことが期待されています。

一方でマレーシアの財政に虚偽記載があったとの報道については、2011年のギリシャ危機の発端を彷彿させる、嫌なニュースです。

米国の金利引き上げそのものによるリスクというよりも、米国の金融政策の変更が市場に正常なリスク判断機能を復活させた結果、潜在的な歪みに対して反応が出てきたということなのかもしれません。

久しぶりに、少しリスクのアンテナを伸ばしておこうかと思い始めています。

寺本名保美

(2018.05.24)



21世紀の黒船来襲?

AMAZONが日本において、1000人の正規社員を採用すると発表しています。

日本におけるAMAZONの勢いはそれなりにあるものの、日本では事業主体として社会構造を変えるほどの勢力にはまだなっていないように思います。

今回のAMAZONのプレスリリースを読んでいると、日本におけるビジネス展開にとうとう本気になってきたような印象を受けます。

米国の株式市場経由で見ていると、AMAZONが変えているのは、小売りを中心とした流通機構だけではなく、メディア・通信・不動産・金融と、業種を殆ど問いません。

プレスに書かれている、「当社が意識するのは同業他社ではなくカスタマーです」という文言には、業界の破壊者としての凄みすら覚えます。

さて、今回のIOT革命において、かなりの出遅れが目立つ日本社会。AMAZONがどう展開し、どう変化させていくのか、楽しみでもあり、かなり恐怖でもあります。

寺本名保美

(2018.05.23)



ブロという選択肢

高度プロフェッショナルという言葉から来るイメージは、高度なスキルを持ち、高度なパフォーマンスを期待され、相対的に高額な報酬を得られる仕事人、という感じでしょうか。

一番イメージに近いのは、プロ野球選手。

ドラフトでスキルを評価され、結果は白日の下にさらされ、実力があれば報酬は上がり、報酬に満足できなければ、転籍をする。スキルはチームに依存せず、本人の能力に依存する。

スポーツだけでなくこういう感覚で仕事をしている人は少なからずいるわけで、こういう仕事の仕方を全面的に否定するのは非現実としか言いようはなく。

だからといって、同じ職種であったとしても、組織に依存し、身分や報酬が安定した就業体系を望む人ももちろん存在して、どちらが上でも下でもなく。

大切なことは、どんな職種であろうと、本人がリスクを取ってプロ的契約をしたいと望むなら、それが実現できるような法律があれば良いのであって、今議論しているような職種限定一律適用みたいな方向性は、違うのではないかと思うのです。

リターンはリスクの裏返しですし、リスクをとるならリターンが必要です。

賛成している側も反対している側もどこかずれていると思いながら、グダグダの国会を眺めています。

寺本名保美

(2018.05.22)



ウサギと亀

ロボット開発の専門家の方が、如何に転ばないかを精密に設計し続けた日本のロボット開発と、ひたすら転ばせることで転ばないことを習得させた米国のロボット開発との、プロセスの違いについて書かれたものを興味深く読みました。

足元で、自動走行やドローンなど各種新技術が実用化される中で、様々な事故や問題が出てきています。こうした問題が出てくるのを見ると我々はこれで新技術の商品化が減速するのではないかと考えがちですが、恐らく現実には開発はむしろ加速するのだと思います。

机上の設計から、リアルな実働に移行する中においては、倒れたり事故ったりしながらの調整が必ず必要になります。人の命がかかるような実証実験など論外だとは思うものの、今の世界の開発スピードは、それすらも飲み込んでしまうほどの勢いがあります。

日本としては、巡回遅れになったとしても、他国で安全が確認されたものを取り入れていくことになるのでしょう。

それはそれで、一つの社会の有り様で、私は嫌いではないのですが。

寺本名保美

(2018.05.21)



喧嘩するほど仲が良い

世の中に、喧嘩するほど仲が良い、という言葉があります。

今の米国と中国とを見ていると、そんな言葉を思い出します。

トランプ政権側からは取れそうもない所謂ハイボールが矢継ぎ早になげこまれるものの、中国側は比較的冷静に身を交わし、トランプ政権側の混ぜる緩いボールは確実に打ち返す、好ゲームが繰り広げられているようにも見えます。

ボールを投げ続ける側にも、受け続ける側にも、退場する気配はなく、対等にゲームが進行している現状は、数年前の米中関係においては想像できなかった光景です。

このゲームに日本の姿はありません。

寺本名保美

(2018.05.18)



こんなものもデータ化

ロイターの特別リポート「加熱式たばこiQOSに喫煙データ収集機能という記事を色々な意味で面白く読みました。

この商品にはBluetoothで通信されるチップが内蔵されていて、メーカーは使用車の使用履歴をデータ化して収取することができることを、専門家に製品を分解させた写真と共に記載しています。日本では購入時に身分証明が必要であるので、この情報と組み合わせれば理論的には性別や年齢別のニコチンの消費量をデータ化するというようなことも可能となります。

もちろんメーカー側はこの情報をマーケティングに使用することは絶対にないと言っているようですが、データ化されていることには変わりありません。

スマホとか経由での個人情報のデータ化はイメージがありましたが、タバコ製品のような日用品でまでデータ問題が発生するということにはやはり驚きを感じます。今回はタバコでしたが、今後同じような問題はあらゆる場面で発生するのでしょう。

電子タバコについてはどういうわけか日本でのマーケティングが世界で一番進んでいます。スマホでの個人履歴の収集に敏感な日本において、この問題に愛好者がどのような反応をするのかも、興味深くみていきたいと思います。

寺本名保美

(2018.05.17)



日本だけ停滞

消費税の引き上げによる消費減の緩和措置として、住宅や車の減税を検討しているとか、今回のGDPがマイナスだったのは、住宅購入意欲の減退が原因だとか、間違いではないにせよ、いつまで、住宅と車頼みの消費構造にこだわるのかとも思います。

国内株の話を聞いていても、この半年程、日本企業全体に停滞感が出て来ているようにも感じます。

海外のアクティビティがあるだけ、日本の緩慢さが気になり始めました。

そろそろ頑張らないと。

寺本名保美

(2018.05.16)



最低限の知識

証券会社のOBと話していると、今の営業担当者は、個別株を売る知識がないと言い、
銀行のOBと話していると、今の営業担当者は金利の計算ができないと言い、

とまぁ、金融界の話しだけではないのかもしれませんが、それぞれの業界において、その業界の基礎となる最低限の知識というものが世の中にはあるものではないかと思うのです。

そんなことを知らなくても、今の仕事には支障はない。

とはいえ、そんなことを知らなかったら、きっと自分の働いている業界の歴史を理解することもなく、仕事への愛着も生まれない。

なによりも、何か大きなトラブルが発生した際に対応できる応用力もない。

仕事のやり方が変わっても、変わらずにいなければならない最低限のレベルというものが、今の金融界には失われてしまったのかと暗澹たる気分になっています。

寺本名保美

(2018.05.15)



アルゼンチンに思う

足元で急激に浮上してきたリスクの一つが新興国リスクです。

発端はアルゼンチンがIMFへ金融支援を要請したことにあります。

そもそも、2001年のデフォルトの記憶がまだ残る中、昨年100年債を発行し、その売れ行きが好調であった、という事実が理解し難く、ここでアルゼンチンがまたデフォルトしたとしても金融市場としては、投資家責任としか言いようがありません。

足元で、通貨安に見舞われているのは、アルゼンチンの他ブラジルやトルコです。ブラジルにしてもトルコにしても、国内の内政に問題を抱えている国で、今回の通貨ショックの原因を米国の金融政策だけに起因させるのは、ややミスリードであるようにも思います。

資源価格も上昇し、グローバルな実需も健全な経済環境において、危機に陥る新興国があるとするならば、それもまたその国の自己責任であると思うのです。

アルゼンチンを見て、米国の金融政策を論ずると、方向性を間違うかもしれません。

寺本名保美

(2018.05.14)



92歳の復活

マレーシアにマハティール首相が返り咲きました。

アジアショックの記憶がまだ残る金融機関関係者にとっては、時空を超えた再任です。

現在92歳。アジア危機の時は70歳代前半だったということで、あの時でさえ既に老齢であった印象があったのですが、今から見れば若かった。

マレーシアの汚職については金融市場への影響も小さくはなく、この数年気に掛かる事件ではありました。マハティール元首相がこの件に関し口を出しているのは、メディアから聞こえてきていましたが、まさか本人が再登壇するとは思っていませんでした。

自らが逮捕した政敵が、釈放せれた後はその政敵に禅譲する意向だとも報じられていますが、一旦権力についた高齢の指導者がその地位に固執する事例は政財界問わずよくある話です。

最近隣国のシンガポールもあまり元気がありません。長い経験と知見とで東南アジアの優等生を復活させてくれること期待しましょうか。

寺本名保美

(2018.05.11)



助っ人の役割

この数年、日本企業の過去の買収案件で、巨額の減損が発生するケースが目に付きます。

そういうニュースを見る度に、買収案件においてアドバイザーを務める金融機関の責任について考えます。

買収される側についたアドバイザーは、少しでも高い値段で取引されることにおいて、企業や株主の利益を代表することができます。高く売る、という点において利益相反はありません。

一方で買う側につくアドバイザーは、それが適正価格であるということよりも、その案件が成就するかどうかに重きがあるため、価格に対する意識は企業や株主と一致しているとは限りません。

もちろん、企業経営上買収したい、という意思を持っているのは買収企業ですから、その希望を実現するためにアドバイザーが動くのは当然のことです。ただ、出来るだけ高く売るために総力をあげる売り手側連合に比べ価格面で戦うというインセンティブが買い手連合側には相対的に低いという事実が、買収後の巨額焼却に繋がってしまうのではないかという疑問を払拭することはできません。

今回の武田とシャイアーの巨額買収案件が、武田にとって本当に価値のあるものとなることを心から祈ります。

寺本名保美

(2018.05.10)



筋は通っているので

トランプ大統領によるイラン核合意離脱について、メディアの論評は極めて悪いものの、この件に関するトランプ大統領の演説そのものは、「トランプ大統領にしては」冷静で筋の通った内容であったように見えます。

イランと北朝鮮との関係についての噂が絶えない中での、対イランへの強硬姿勢は、北朝鮮問題に関する主導権が米国側にあることを、北朝鮮だけでなく、関係国全てに対する強烈なアピールであるといえそうです。

逆に言えば、トランプ大統領の北朝鮮問題に対する取り組みは、それだけ本気であるという証左ともなるでしょう。

弾みで上昇してしまった原油価格がやや懸念ではありますが、北朝鮮情勢については、一応前進していると判断しておきましょうか。

寺本名保美

(2018.05.09)



禅僧のように

そのことが市場でどの程度の重みを持っているかは、そのことが崩れてみて初めて解ることもあります。

米朝会談による、朝鮮半島の非核化について、実現性があると思っているのか、実現することにどの程度の期待をしているのか、実際のところは各人各様でよくわからないのですが、今日のように非核化について北朝鮮側から否定的なコメントが出された時の反応を見てみると、市場の期待値は意外に高いということがわかります。

イタリア経済の回復への確信度も似たようなもので、再び政局の混乱が意識されると、市場が南欧危機のトラウマから脱しきれていないことに気が付かされます。

政治に振り回されながら、潜在意識に目を向ける、禅僧のような日々が当分続きそうな気配がします。

寺本名保美

(2018.05.08)



方向性に変化はなし

今年のゴールデンウィーク中に注目されていた米国の金融政策についての評価は、対円為替ではなく、対ユーロ為替での判断の方が適切かもしれません。

FOMCも雇用統計もサプライズはなかったものの、年4回の利上げを織り込みに行っていた4月までの方向性を大きく変えるものでもなく、ドルのユーロに対しての上昇は継続しています。

側面からみれば、原油価格が2014年の年末以来の70ドルを超えてきており、物価面でも金融政策への圧力が掛かりつつある局面に入っています。

足元の欧州での経済指標がやや軟化していることが、欧州と米国との金融政策の方向性の違いを意識させる結果ともなっています。

米国の金利の上昇を織り込む展開は、為替でも株式市場でもまだ始まったばかりです。

寺本名保美

(2018.05.07)



また逃げた

この20年、欧米の資産運用会社において、銀行が主導する買収や合併が成功したケースを殆ど見たことがありません。

なぜ銀行経営者には資産運用会社の経営ができないのか、この仕事を通して持ち続けている疑問の一つです。

銀行業における規模の拡大と資産運用業における規模の拡大とは同義語ではありません。

少なくても資産運用業においては成功も失敗も先行している欧米市場から日本の資産運用業界は何を学ぶのか。

何かを学び始めて来たようにも思えたこの国の資産運用業。建設的な未来が見えそうになると、逃げ水のように消えてしまいます。

寺本名保美

(2018.05.02)



運の切れ目

ある調査によると、米国でトランプ大統領への支持率が1年ぶりに上昇しているそうです。

日経新聞の世論調査によれば安倍政権の支持率49%不支持51%とほぼ拮抗しているそうです。

どんな時代においても、時の政権の支持率と景況感というものには、一定の関連性があるのでしょうが、トランプ大統領にしても安倍首相にしても、足元の景況感に多分に助けられていることは事実でしょう。

今の景況感を引き寄せたのは、トランプ大統領でもなく安倍首相でもなく。

それでも、国を背負っていく人にとって、運を引き寄せる力も実力の内。

今はまだ、運の切れ目とはなっていないようではありますが。

寺本名保美

(2018.05.01)


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