2018年11月の思いつき


日柄

ビットコインについての否定的な記事を多く見かけるようになりました。

2017年12月17日のピークから足元までで約80%の下落です。

時価総額でみると3200億ドル(約33兆円)から670億ドル(約7兆円)となり約26兆円強の価値が消滅しました。

単なる偶然かもしれませんが、ビットコインが高値から急落した約1っか月後に、株式市場も高値を付け急落しています。

双方に因果関係があるかないかは別として、ビットコインに代表されるような投機的な心理状態のピークは、どうやら2017年末ぐらいから沈静化に向かっていたのではないか、ということは想像に難くありません。

そういう視点で見れば、足元の株価の調整の起点はこの10月の急落ではなく去年の12月頃であったということもできそうで、来年の市場についてはそれほど弱気にならなくてもよいのではないかとも思ったりもします。

とはいっても相変わらず酷く政治が騒がしく、投資家心理が中々落ち着かないのもまた事実。

もうしばらく日柄整理には時間が掛かるのかもしれません。

寺本名保美

(2018.11.28)



ネタ不足

2025年の大阪万博。

「EXPO70エキスポ70」という言葉の響きが懐かしい年代です。

アメリカ館の月の石に並んでその小ささにがっかりしたり、ソ連館で初めて食べた「ピロシキ」に感動したり、確かスピード別に5本ぐらいあったジェットコースターで低速にしか乗らせてもらえず大泣きをしたり、という記憶が蘇ります。

太陽の塔が刻印されたメダルの縁には名前の打刻ができて、とても大事にしていたはずが、さてどこにいってしまったのか…

日本の製造業が世界を席巻する象徴となった1970年の万博。
さて2025年の万博の先には日本の明るい未来が見えてくるのでしょうか。

統合リゾート法での跡地の有効利用の議論も大切ですが、まずは2025年日本が何をアピールできるのか。今の段階ではややネタ不足に思えて心配です。

寺本名保美

(2018.11.27)



国民投票の恐ろしさ

英国とEUとの合意が成立したにもかかわらず、先週の急落水準からほとんど反応しないポンドを見ていると、英国議会に対する市場参加者の不信感がよくわかります。

確かに今回の合意内容は、まさに先送りばかりのように見え、最大の懸案であったアイルランド問題が解決しない限り英国は関税同盟から離脱できない、という文脈一つみても、離脱推進派からも離脱反対派からも反対される、どうにもならない状況がむしろ現実味を帯びてきたともいえそうです。

あの国民投票さえなければ、と今更言ってもしかたがないことではありますが、「解無し」の現状からは、その一言しか思い浮かびません。

「民主主義における国民投票」というものの恐ろしさを、改めて認識しています。

寺本名保美

(2018.11.26)



ワイドショーな市場

テレビのワイドショーの番組ネタと、日々の金融市場動向が、同じであるという現実が、足元の運用環境の不安定さをよく表しています。

ホワイトハウスで起きていることも、イギリス議会で起きていることも、サウジアラビアも中国も、そして日本の大企業で起きていることまで、不可解で混沌としていて、分析ではなく推測しかできず、金融機関のプロが発するコメントもワイドショーのコメンテーターのコメントも大差ない。

ヘッジファンドを始めとするアクティブファンドの運用成績が世界的に冴えないのも、無理はないかと思えてしまうのもまた情けなく。

年が明ければ、このスキャンダラスな相場からも脱することができるのかと、早々と2019年への期待を膨らませてしまいます。

寺本名保美

(2018.11.22)



狸寝入りも選択肢

2016年後半から2017年末までの約一年半、グローバルな投資信託の資金フローをみると、株も債券も同様に資金流入が続いていました。

2018年になって、この動きが一旦止まり、資金フローとしては何も起きていない中、スルスルと米国のネット関連株だけが上昇したのが9月までの市場です。

そして10月以降、とうとう逆回りが始まりました。

先物主導で米国株が売られ、ネットフラックスが急落し、株式からも債券からも投資家資金が逃げ出したのが10月から足元までの動きです。

株買い債券買いの時期が長く続いただけに、整理がつくには、もう少し時間がかかるかもしれません。

ここから先中途半端な値ごろ感で買う人が多ければ多いほど調整の谷が深くなります。

少し早めのクリスマス休暇をとって、一旦市場のことを忘れてしまうのが一番かもしれません。

寺本名保美

(2018.11.21)



産業大転換

世界的に自動車産業というものは産業史上かつてない曲がり角にいます。

一歩間違えば、異業種に取って代わられるかもしれないという状況において、旧来の自動車メーカーの経営者には深刻な危機感と焦りがあります。

国境やブランドを超えた統合は今後加速していくでしょうし、テスラとパナソニック様な国境も業態も超えた協業も加速していくでしょう。

今回の日産の事件からは、自動車産業界の老朽化した屋台骨の軋む音が聞こえてきます。

何が切っ掛けになるにしても、自動車産業は変わらなければならないのです。

何を守るための戦いなのか。何を捨てるための決断なのか。

大きな痛みを伴うかもしれませんが、これが日本の自動車産業の明るい未来に繋がる第一歩になればよいと心から願います。

寺本名保美

(2018.11.20)



個人の思惑

政治家が、残された期限の中において、拙速な成果を求めて行動すると、社会の予定調和が崩れます。

トランプ大統領は2年。
安倍首相は長くて3年。
メルケル首相は2年。
プーチン大統領は5年。
中国だけは期限なし?

合意文書なしで終わったASEAN。
合意文書のない国際会議など、やらない方がマシ。

各国の、ではなく、首脳各人の、それぞれの思惑が強すぎます。

予定調和が無い地雷だらけの金融市場。

ボラティリティの上昇もさることながら、投資家の参加意欲の減退がもっと心配です。

寺本名保美

(2018.11.19)



市場の評価

ブレグジット合意が動きだせば、メイ首相の解任動議やEU離脱を見直す議論などが噴出するであろうことは想定の範囲内です。

ポンドの乱高下も想定の範囲内。

合意問題が動きだしたことによって、米中問題や米国中間選挙の陰に隠れてあまり材料にされてこなかった「ブレグジットリスク」が、改めて投資家に認知されたことで投資家心理にどのような変化が起きるのかはまだ未知数。

1992年、ヘッジファンドによるポンド売りで、英国政府はEU統一通貨への加盟を断念するに追い込まれました。

さて今回。今はまだブレグジットに対し明確な意見表明には至っていない市場の声。進むことも戻ることもできない英国政府を動かすのは、国民の声か市場の声か。
どちらに動くのか、全く先が見えません。

寺本名保美

(2018.11.16)



フェードアウト

Brexitの合意草案が英国の閣議を通ったものの、世の中の反応は極めて限定的なものとなっています。

これが英国議会を通過できるのかという疑問に加え、英国経済にとってはやはりかなりのダメージがあるのではないかという懸念が加わります。

英国の国民投票後に呟かれた、英国経済の『緩やかな死』という言葉が、妙に現実味を持って頭をよぎります。

このまま英国が世界経済からフェードアウトしてしまうシナリオを、そろそろ念頭に置かなければいけないのかもしれません。

寺本名保美

(2018.11.15)



原油は高いほうがいい

トランプ大統領が意図しているところがよく判らないのですが、今のグローバルな政治経済環境において、原油価格が40ドル台に下落することは、決して好ましいことではありません。

2015年の急落の原因の一つは中国経済の減速であり、もう一つは原油の急落を受けた資源国による資産売却への懸念でした。

実際のところ産油国が金融資産を売却したかどうかは定かではありませんが、これ以上の原油価格の下落は金融市場に当時の記憶を蘇らせます。

2015年の原油安による経済困窮を受け、サウジもロシアも脱石油経済宣言を行うに至りましたが、その後の原油価格が反発したこともあり経済改革が目に見えて進行しているようには思えません。

ベネズエラのように経済が実質破たんしたまま立ち直っていない国もあるなかで、原油急落の悪夢がよみがえることは、ただでさえ不安定な地政学リスクを増幅させることにもなるでしょう。

目下の最大の懸念であるブレグジット問題が一歩前進しようとしている中、新たな火種を作ることはやめてほしいものです。

寺本名保美

(2018.11.14)



構造改革と戦略

11月の国内株式における通信セクターは鬼門のようです。

11月1日に政府による料金引き下げ要請を受けたNTTドコモが大幅減益見通しを発表したNTTショックが収まる間もなく、市場最大規模の通信会社のIPOが発表されたことによる需給不安に見舞われました。

通信セクターは基幹インフラに属する分野なので、一般的には業績の上下動は小さく、成長性はない安定配当銘柄として、いわゆる高配当や低ベータ系戦略のコアとなる銘柄を多く含んでいます。

楽天の参入問題もあり、通信セクターについては、今後のイノベーションや規制構造改革の影響を最も強く受けていく業態になる可能性があります。

高配当や低ベータ戦略が好む「小売り」も苦戦が予想される中、こうした戦略における投資戦略においては、一度コンセプトを見直す必要があるのではないかと思っています。

寺本名保美

(2018.11.13)



円安でも不安

足元での円安ドル高が国内株式市場の下支えにはなっても、買い要因にはなっていない理由の一つは、米国の利上げ局面への警戒感があるからですが、もう一つはドル高の裏にあるユーロ安とポンド安が意味する潜在リスクが重しになっているからでもあります。

英国の人と話していると、当然のようにハードブレグジット(事前合意なきEU離脱)を前提にしているように思え、とても不安になります。

少し前までは、ハードブレグジットになるぐらいなら、ダラダラと交渉を先延ばしにするのが金融市場的にはベストかと思っていたのですが、そういう状態が長引くと、結局英国でも欧州でも設備投資の計画が立たなくなるため、景気にとっては明らかなマイナスになります。

クリスマス前と切っている交渉期限まであと1ヶ月。英国議会の統制は全く効いていない状況が続くなか、目先の潜在リスクは高まるばかりです。

寺本名保美

(2018.11.12)



平穏が必要

10月の株式急落後初めてのFOMCにおいて、市場の混乱に全く触れなかったことで、市場では今後のFRBの利上げプロセスに変化が無いことを確認する結果となりした。

米国の中間選挙が、久しぶりに想定通りの無風の選挙結果に終ったことも含め、このところのニュースにはサプライズがありません。

投資家心理にとっては、内容の良い悪いよりも、結果が想定の範囲内に収まっているかどうかの方が重要なので、そういう意味では11月に入ってからの市場環境はやや落ち着きを取り戻しつつあります。

7-9月の米国株式独歩高の環境に違和感をもっていた投資家にとって、あとはボラティリティさえ収まってさえくれれば、買いやすくなります。

暫く平穏に時間が過ぎればよいのですが。

寺本名保美

(2018.11.09)



景気がよいうちに。

企業破綻というものは、景気が悪い時よりも景気が良い時に意外に多いものです。

もう少し正確にいうなら、景気が少し下降線を描き始めた頃が一番危ない。

金融機関や取引先等に損失を計上できるだけの財務余力はあって、でもこれ以上業況が回復する見込みがない場合、体力があるうちにリストラをしてしまおうという経営判断が働きやすいからです。

株価の調整は一段落していますが、景況感の先行きについては、経営者も金融機関も少し慎重になり始めました。

想定外の地雷を踏まないように、株式も債券も銘柄選択が重要な時期が近づいています。

寺本名保美

(2018.11.08)



一難去ってつぎは?

米国中間選挙はほぼ想定通りの捻れで決着しそうです。

結果はともあれ、イベントが終わったというだけでの買い戻し一巡後の市場のテーマは、いよいよBrexitになっていきます。

国内市場のテーマは、やはり海外労働者の受け入れ法案になるでしょう。海外投資家にとっては長年待ち望んでいたテーマの実現になるわけですが、待ちくたびれて時期を逸した感もあり、反応してくれるかどうか微妙です。

悪い材料、良い材料が、日々混濁する展開が想定されます。

中間選挙で一段落、というわけには、まだまだいかないなもしれません。

寺本名保美

(2018.11.07)



ぼろぼろ

10月の運用結果が出そろいつつあります。

機能したのは低ベータ特性と、ボラティリティトリガーのキャシュ化ぐらいでしょうか。

個別銘柄ピックアップもモデルもトレンドフォロー系も国内外問わず、株式債券問わず、壊滅した一か月でした。

そういう意味では2月の急落とも8月の急落とも、少し様相が異なります。

リスクパリティ型の先物主導の売りと説明されることもありますが、それであればここまで個別銘柄での損失は膨らまないと思います。

いずれにしても、単なるβの調整以上に、ファンド内での損失が膨らんでいるようにも見えることが、この先の不安材料となりました。

明日の米国中間選挙が終われば、一旦買い戻される場面もくるかもしれませんが、少し慎重に見たいと思っています。

寺本名保美

(2018.11.06)



安定していた弊害

波乱の10月の収益率の報告が揃い始めました。

特徴的だったことは、株価の急落に対し金利の低下が限定的であったことと、先進国株発のリスクオフに対し新興国市場の下落が限定的であったこと、でしょうか。

今回の急落の一つの切っ掛けとなった9月のFOMCでの「緩和的」という文言の削除ですが、米国の株式市場が1割2割調整することについては中央銀行としては何の懸念も持っていないと思われ、且つ5月8月にIMFから非難された新興国市場への影響も今回は限定的であったとすると、パウエル議長が「緩和的」という文言の削除を反省する余地は殆ど無さそうに思えます。

通常株価がこれだけ急落すると中央銀行の政策の変化に期待が集まるものですが、今回はその気配は全くありません。結果として債券価格の上昇も限定的な範囲に留まることになりました。

新興国市場の安定は、今回に限っては市場の回復を遅らせる一つの要素になるかもしれません。

寺本名保美

(2018.11.05)



日本の消費が世界を救う?

過去何度か、グローバルな株式市場の変調が、アップルの決算で落ち着きを取り戻すという展開が続いてきました。

10月の米国株式の急落においても、AmazonやFacebookといった情報サービス系の株価の下落に比べ、アップルやマイクロソフトなど製品系の株価の下落が限定的だったのも、9月決算に対する期待があったからです。

昨晩の引け後に発表された決算は、営業利益で過去最高となってはいるものの、10月以降のガイダンスが市場予想より弱気だったことで、市場にはやや失望感がでています。

それにしても、もっとも売上が伸びているのは、断トツ日本。
年内に予定されている新製品の成否も日本の消費者にかかっていて、
つまりは、株式市場がここで止まるかどうかも、日本の消費者次第!

トランプ大統領には、ここのところ、ちゃんと理解してくれているのでしょうか?

寺本名保美

(2018.11.02)



久しぶりの前進

イギリスとEUがブレグジット後の金融サービス分野について、暫定合意をしたと報道されています。

とりあえず、小さな一歩ではありますが、久しぶりに良いニュースです。

メイ政権が合意した内容が、議会でひっくり返されないか、という問題はまだ未知数なので、楽観はできません。

注目の米国の中間選挙が近づいてきましたが、市場の興味は以前ほど高くありません。

日本の総裁選の時のように、イベントをこなせば、結果はともあれアク抜けと、なればいいのですが。

寺本名保美

(2018.11.01)


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