2019年08月の思いつき


全く理解不能

イギリスのジョンソン首相はどうしても10月末に合意なきEU離脱を実行したいようです。

最近のブレグジット問題においての最大の変化は、ジョンソン首相がEUからの妥協を引き出すためにハードブレグジットを掲げているのではなく、どうやら本当に合意なき離脱を目指しているように見えてきたことです。

議会で日程を変更し、議論の場を閉じてまで、合意なき離脱を強行するメリットが、国外の我々にはさっぱり理解できません。

イギリス議会は9月9日に閉会し、10月14日に再開。EU首脳会議が10月17日18日に行われ、そこで英国に対する譲歩が引き出せなけばいよいよ10月31日のハードブレグジットに突入することになります。

このジョンソン首相の強行策に対し内閣不信任案が可決されれば、再び総選挙となり、そんなことをしている内に時間切れでハードブレグジットに突入。というシナリオもジョンソン首相は想定済だという見方もでています。

いまでもまだ金融市場では、ハードブレグジットはギリギリで回避される、というのがメインシナリオです。

心配を超えて、もはや謎です。

寺本名保美

(2019.08.29)



前提一つで絵は変わる

年金財政検証の感想として、結果というよりも前提条件に違和感が残りました。

経済成長はバブル崩壊後の過去30年の実績を参照した低成長で、物価上昇は政府日銀が目標とする2%を掲げ、賃金は経済成長を参照しつつも物価を上回る、というのがざっくりとした前提です。

一番知りたいのは、足元で世界的に問題になっているディスインフレ下の経済成長というシナリオが超長期の財政検証にもたらす影響だったので、少々梯子を外されたような気分です。

財政検証の為の数値は経済予測ではなく、より保守的な検証を行うためのシナリオでしかない、というのはよくわかるのですが、それにしても、一つ一つのファクターの根拠がバラバラで、どうも現実感に欠けます。

メディアでは前提が甘すぎると言っているようですが、むしろ敢えて厳しい財政結果を示して、給付年齢の引き上げを狙っているのかと、思ってしまったりします。

企業年金のALMも同様ですが、前提一つで結果が大きく変わってしまう長期シミュレーションの取り扱いには本当に注意が必要です。

寺本名保美

(2019.08.28)



金が、高い

金価格が上昇しています。

ドルベースでは、2011年から2012年にかけての高値に迫る勢いです。

2011年から2012年というのは、欧州危機の最中で、ユーロの体制維持への懸念が高まった時期でした。

今回金が上昇したきっかけは、ポーランド政府による外貨準備の積み上げと言われていますが、ポーランドだけでなく各国の外貨準備での金購入が増加している背景には、ドルやユーロと言った既存の外貨準備通貨に対する信任の低下があるのかもしれません。

政治の混乱を、金利低下と財政拡大で誤魔化している主要国に対する不信感が、普段は大人しい金市場を動かしているともいえそうで、あまり気持ちがよくありません。

寺本名保美

(2019.08.27)



インデックスの無い四半期報告

このところ、特定のインデックスに追随させない、所謂ノンベンチマーク戦略を採用するお客様が増えています。

そうした戦略の四半期報告は、ベンチマークとの差異やファクター分析に時間を割く四半期に比べると、圧倒的に面白く有意義な時間を過ごすことができます。

ベンチマークとのトラッキングエラーについての説明は、所詮パフォーマンスの後講釈に過ぎず、どこか言い訳がましく聞こえます。

ノンベンチマークでは、何故?や、これからどうする?に集中するので、一方的な報告ではない、ディスカッションが成立します。

インデックスを一概に否定するものではありませんが、インデックスがあることの弊害もそろそろ念頭に置いておかなければいけないのではないかとも思います。

資産運用も、色々曲がり角に来ているということなのかもしれません。

寺本名保美

(2019.08.26)



政治という災難

ブラジルでの大規模な森林火災が、南米とEUとの貿易協定を揺るがす事態になりつつあるようです。

ブラジルでボルソナロ大統領が就任して以来、アマゾンでの森林伐採に歯止めがかからなくなっていることについては、ブラジルの農作物をボイコットすべきとの過激な意見が出るほど、欧州を中心とした国際社会が懸念を表明していました。

その最中に起きた今回の大規模な森林火災については、ボルソナロ大統領が補助金を減らされたNPOの自作自演を主張する放言を繰り返していることで、環境問題に対して厳格な欧州勢から、一斉に非難の声が上がっています。

自らの主義主張を押し通すことで、結局自国産業を窮地に陥れてしまう政治家が、最近彼方此方で見かけるようになりました。

自ら選んだとはいえ、国民にとっては災難な事です。

寺本名保美

(2019.08.23)



共通の敵?

全くまとまる気配が無く、早々に共同声明を出さない可能性も示唆されている週末のG7。

まとまらない集団をまとめるには、共通の仮想敵を作るのが一番なので、今回そのダーゲットにされるのは、GAFAに代表されるITブラットファーマーということになりそうな気配がします。

元々規制強化に積極的な欧州と、巨額な利益に目を付け情報課税を目論む米国と、暗号通貨に警戒感を持つ中央銀行とが、同床異夢であっても同じテーブルを囲むことはできるでしょう。

既存の公的権力と、振興の民間権力との戦いは、今後の世界経済に予想外の波乱要因となるかもしれないと思っています。

寺本名保美

(2019.08.22)



領土を買う?

「グリーンランドを買うことに興味がある」

トランプ大統領就任以来の発言において、ある意味最も驚愕した発言だったといえるでしょう。

冗談かと思いきや、デンマーク政府が即座に却下したことで大統領のデンマーク来訪がキャンセルされたところをみると、意外に本気だったのかもしれません。

グリーンランドが軍事上の要所であることとか、北極圏の開発に中国とロシアが進出してきていることとか、重要な根拠があるかどうかが問題ではなくて、「領土」を「金銭」で解決することに何の躊躇いも感じていないように見えることに驚愕したのです。

似たようなことを中国は行っているではないか、というかもしれませんが、他国の港湾施設を買って実行支配していることと、国境線を丸ごと買う話は同じではありません。これが成り立ってしまうということはある意味において強国が他国をチカラで支配する「帝国主義」が再来するということです。

最近、時間の経過とともに、トランプ大統領の粗が目立つようになりました。

やはり来年の11月までがこの政権の限界なのではないかと感じています。

寺本名保美

(2019.08.21)



無い無い国とあるある国

金利のない国はお金を出し、お金のない国は金利を下げる。

利上げをしてきたお陰で金利があり、あと2年間という期間限定で財政制約が解除されている米国は、とりあえず金利を下げて、次の一手を考える。

金利はないが財政は健全なドイツは、お金を出す。

金利はあって、お金もある、中国は、お金をばら撒き、金利も下げる。

金利は無くて、お金も無いと言われている日本は、残り少ない最後の一手を考える。

こうして比べると、戦う武器が豊富なのはやはり中国で、次に米国、ドイツ、最後に日本、ということになる。

多分これが、景気拡大に次に転じた時の順番。

金利は上げられる時に上げておかなければいけないという事で、トランプ大統領のは歴代のFRB議長に感謝すべき、ということです。

寺本名保美

(2019.08.20)



ロボットに支配される日

お盆休みを経て、我が家の一室が、スマートホームになりました。

テレビとエアコンとステレオが、呼びかけで反応します。

設定の面倒さと、設置後の利便性を比べると、今のところ面倒さの方が勝るので、皆さんどうぞ、という感じではありません。

とはいえ、当初こんな訳のわからないものは要らない!と言っていた母が、いつの間にか、「あらアレクサ 〜」と親しげに話しかけるようになり、ロボットに人間が支配される日は近いと実感する毎日です。

寺本名保美

(2019.08.19)



あちらこちらの底

お盆休み中、ネットで市況をチェックしているだけでも、船酔いをしそうな1週間でした。

底が抜けそうになると、タイミングよく、トランプ大統領のポジティブ発言が下支えをする、マッチポンプ相場が極限にきている印象です。

勝手に底が抜けているのが、英国のポンドと株式市場。こちらについては、もはや誰も心配すらしない、というところでしょうか。

一方で、長期金利の底も突き破られ、再び米国の逆イールドという亡霊が市場を彷徨い始めています。

今のところ、この中で最も深刻なのは、各国の長期金利の底。イタリア国債利回りが米国国債利回りより低い状態一つ見ても、債券市場から正常な価格形成機能が失われつつあることが窺えます。

ネットバブルが債券バブルに置き換わっただけに見える今の金融市場。無駄な流動性供給のつけを最後に払わされて底が抜けることになるのは結局どこの市場になるのでしょう。

寺本名保美

(2019.08.16)



お盆休み

暑中お見舞い申し上げます。

来週は13日より15日までお盆休み兼システムメンテナンスの為、通常業務はお休みとさせていだたきます。

お客様におかれましては、ご不便をお掛けいたしましますが、メールにて対応させていただきます。

酷暑の後は全国的に荒天が予想されているようです。

荒天は政治と市場だけで十分です。

来週金曜日、明るい気分でコラムが再開できることを心から祈っています。

寺本名保美

(2019.08.09)



あまりに暑いとテレビが売れる?

来年の今日はオリンピックの最終競技日。

毎日あまりに暑いので、オリンピックはテレビで観るに限る、と心底思い、今のうちにテレビを買い換えようかという話に花を咲かせたりしています。

消費税前の駆け込みも消費税後の反動減も、今回はあまり無いのではないかと言われている中、オリンピックに向けてのテレビ需要が、今年後半の消費を下支えするかもしれません。

あと数年もすれぼ、テレビとパソコンモニターは完全に一体化しているかもしれず、今のテレビの形を買うのはこれが最後になる可能性もあります。

前回のエコポイントの時に買ったテレビはそろそろ10年選手になってきて、暑さの為か時々ブラックアウトをするようになりました。

消費税前に駆け込もうとは思いませんが、今年の年末商戦あたりを狙ってみましょうか。

寺本名保美

(2019.08.08)



行き場のない投資資金が支える怖さ

先週末からの米中問題への市場の反応は、限定的な範囲で収まっています。

市場参加者だけでなく、基本的にはホワイトハウスもサマーバケーションに入ることから、当面大きなサプライズはないだろうと大半の普通の人は思います。

問題は当事者達が普通の人ではないことで、あまり安心し過ぎるのも危険なのではないかと思っています。

とはいえ結局のところ、主要国のみならず、主要な新興国も揃って金融緩和に走り始めた環境下、行き場のない投資資金が右往左往しているのもまた現実でもあります。

この辺りで一旦バリエーション調整をした方が、将来リスクが低減するので有難いのですが。

寺本名保美

(2019.08.07)



振り落とされる対象

普通のリスクオフの時まず売られるのはこれまで買われて割高になっていた市場や銘柄です。

リスクオフが大きくなると、市場を問わずリスク資産が同時多発的に売られるようになります。

リスクオフの最終局面では、財務が脆弱である企業や国の通貨、そして上昇余地の小さいと思われている市場が売られます。

危機的なリスクオフになると、リスク資産、安全資産を問わず、流動性の高い資産から順番に売られるようになります。

そしてリスクオフが終わり、リスクオンに転じる時の順番は、大概上から順番に買い戻されます。

結局脆弱で魅力の乏しい市場は、売られるときは人並み以上に売られ、買い戻しは一番後回しにされ、市場の体力の毀損が深刻化します。

今回のリスクオフが本格化した場合、国内株式市場の体力が今以上に毀損していないことを祈ります。

寺本名保美

(2019.08.06)



危険な駆け引き

トランプ大統領が、株式の下落は問題ではない、という発言をしたことが、株式市場に与えた影響はトランプ大統領が考える以上に大きかったようです。

これまで株式市場がトランプ発言に寛容であったのは、トランプ大統領の言動によって経済活動が一時的に影響を受けたとしても、最終的にトランプ大統領が自らの通知表である株式市場を大きく下落させるような政策を取るわけが無いと信じていたからです。

今回トランプ大統領が株式市場を見放す様な発言をしたことで、これまで押さえ込まれてきたトランプ政治への不安が一気に噴出しています。

どこまで相場が崩れれば、トランプ大統領が救いの手を出してくるかの催促相場の様相も呈してきました。

大統領と市場との、危険な駆け引きが始まったように見えて、少し不安です。

寺本名保美

(2019.08.05)



欧州いじめてもいいことない

トランプ発言でリスクオフになればドル円は売られるものの、対ユーロではドル高になってしまいます。

それが気に入らないトランプ大統領が、今度は欧州に対し何を言おうとしているのか、市場では警戒が高まっています。

今の欧州はただでさえブレグジットも抱え体力がない。そこに圧力をかけてもドル高になるだけで米国にはメリットがない。

と、誰がトランプ大統領に伝えてください。


寺本名保美

(2019.08.02)



日銀の轍

昨日のFOMCの結果は、とても真っ当で、金融政策の健全性を担保しつつ市場の期待に応えるという観点において理想的な結果だったと思います。

金融政策に求められる、セイフティネットという役割を果たすには、いざという時に金融緩和をする余地がなければいけないわけで、今回下げすぎてしまば、むしろ将来不安を高める結果になります。

ある意味今の日銀が良い例で、危機でもないのに緩和をし続けた結果、これから先の緩和手段が限定されてしまっているのです。

不必要な緩和は将来の金融政策の柔軟性を奪うリスクについて、FRBは日銀の轍を踏まなかったというところでしょうか。

寺本名保美

(2019.08.01)


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