2020年05月の思いつき


奇跡は続かない

今回の日本のコロナ対応が「日本の奇跡」になるか「日本の惨劇」となるか、二つに一つの大勝負は、とりあえず日本の奇跡で第一幕を終えました。

今世界から見えている日本は、ミラクルでありミステリーであり、呆れるほどのアナログ社会です。

当の日本に住む人々は、ミラクルを起こしてしまったために、アナログ社会であることのデメリットを深刻に受け止める機会をまた逃し、ミゼラブルな経験をした各国がなお一層のデジタル化に邁進する中、出遅れ感は半端なく広がっていくことになります。

原因不明のミラクルが時間を稼いでいるうちに、少しでも社会インフラの整備を進めないと、次に来るのは救いようのないミゼラブルかもしれません。

奇跡が二度三度と続くことを期待するのは、愚かな程の楽観者だけでしょう。

寺本名保美

(2020.05.28)



サービスの二極化

ここから先のサービスは、コストが二極化すると思っています。

多くのサービスはバーチャルで安価に提供される一方で、リアルでヒューマンなサービスには高額な付加価値が付くようになるでしょう。

例えば、劇場で演劇をリアルに観たいと思えば、従来の半数以下となった客席を従来の倍額の値段を払って観ることになり、方やバーチャルで良ければ安価な有料配信を自宅で気軽に観ることができる。

有名シェフの料理を除菌設備の整った快適な個室で味わうには酷く高いコストがかかるかもしれないが、快適な自宅に有名シェフの料理をいつでも取り寄せられるようにもなる。

バーチャルだから一概に味気ないということでもなく、リアルが時代遅れの遺物になるわけでもなく、どちらが好ましいかは消費者各々の価値観に
よって異なってくるでしょう。

こうした新たなビジネスモデル実現への最大のハードルは高付加価値に見合う価格の切り上げをどれだけ恐れずに進めていけるかです。

デフレ慣れした日本においては、かなり困難なチャレンジではありますが。

寺本名保美

(2020.05.27)



ヘッジファンド業界へのエール

株式市場の急落を経験する度に、ヘッジファンド業界への失望感に苛まれるのはどうしたものかと思っています。

リーマンショック以降、伝統的な資産運用会社においても、ロングショートや、キャッシュ化による元本確保などのヘッジファンド的な運用手法を積極的に取り入るようになり、ヘッジファンド業界の優位性はそもそも薄れています。

そういう意味において、現在のヘッジファンド業界というものが、高いレバレッジと低い流動性を担保にした、単なるハイリスクファンドになってしまったように思えなくもありません。

恐らくこうした感覚は、グローバルな投資家全般に共有されていて、だからこそ過去一年以上、ヘッジファンド業界からの投資資金は減り続けているのでしょう。

今回のコロナショックの結果を見ても、ヘッジファンドの「ヘッジ」という冠はお飾りか、と言いたくなるような有様です。

私が書くべき文章では無いのかもしれないと思いつつ、情けなさから書かずにはいられませんでした。

ヘッジファンド業界はどこへいく?

寺本名保美

(2020.05.26)



まだまだ慎重に

本日、緊急事態宣言が解除されました。

弊社においては当面の間、テレワーク等を活用し、公共交通機関の利用をできるだけ回避した勤務体制を継続させていただきます。

また、外部の方々との面談につきましても、極力電話やWEBを活用していく予定です。

皆様にはご不便をお掛けいたしますが、サービスの質を落とさぬよう努めて参りますので、何とぞご理解いただきますようお願い申し上げます。

社会生活も金融市場も、暫くはこれから冬を迎える南半球での感染状況を見ながら、次の波に備える数ヶ月になりそうです、

今は何事にも慎重すぎるぐらいが丁度よいと思っています、

寺本名保美

(2020.05.25)



高速逆回転

中国が香港に対し国家安全法の適用を検討しているとの報道に、米国のトランプ政権が強く反発しています。

ファーウェイへの制裁強化、米国市場への中国資本の参入制限、そして香港問題。

2019年9月以降の米中雪解けを、あたかも高速で巻き戻しているような状況に至っています。

ちなみに昨年9月末のS&P500は2976でほぼ足元の水準と同じです。

今後今年1月15日に署名された第一次合意の破棄にまで状況が悪化したとしても、株式市場は既にコロナ問題で水準訂正が終わっていると言えないことはありませんが、そこまで楽観的になるのは時期尚早なのではないかと思っています。

寺本名保美

(2020.05.22)



どこか人ごと

リーマンショック時と今との最大の違いは、起点が金融危機か経済危機かの違いです。

リーマンが破綻した時、速攻でパニックに陥った金融業界に対し、それが実体経済に深刻なダメージとなることを直ぐに想像できた実業者は、恐らく皆無に等しかったと思われます。

今回、経済活動が停止したことにより、実業者達が速攻でパニックになったのに対し、金融業界はどこか楽観的に見ているような印象があります。

人は誰しも、自らのフィルターを通して、世界を俯瞰するものであり、自らが傷んでいれば悲観的に、また自らが健全であれは楽観的に物事を把握する傾向があります。

足下で、実体経済の傷の深さを把握しきれていないにもかかわらず、上値を追っている株式市場を見ていると、今回相対的に傷が浅かった金融業界ならではのバイアスが掛かっているような気がしてなりません。

上がることは嬉しいのですが、あまり調子に乗っていると、後からの災いに足をすくわれそうで心配です。

寺本名保美

(2020.05.21)



前へ

企業収益も経済統計も、前年度比や前期比での表示を一旦止めてみたらどうかと思います。

経済活動が停止したという異常事態において、前年対比をすることに意味がなく、マイナス95%という数字を見せられることが消費センチメントを必要以上に悪化させる、ということが理由の一つ。

もう一つは、前年比の数値に拘り続けることが、各企業の事業モデルや社会における人的資源の再配分を行うことへの心理的障害になると思うからです。

どこに戻るか、ではなく、どこに行くか、を政治も企業もそして個人も、積極的に考えていかなければならないとするなら、バックミラーの数値には意味がないはずです。

元に戻りたいと思えば思うほど、戻れない現実が心を塞ぎます。

心が塞がれていたままでは、判断に狂いが生じ、進むべき方向が見えなくなります。

前へ。

寺本名保美

(2020.05.20)



我慢の先

2019年1月にダボス会議に提出されたパンデミックに対する警告には、世界規模での感染症の爆発の前兆が複数あるということが書かれています。

グローバルな人の移動が日常になっている現代社会において、今回のCOVIT-19に匹敵する感染症が、今後も何時どこで爆発することは想定内の事象として捉えるべきだということです。

今後、各国は、今回のパンデミックへの対処や医薬の開発を進めるのと同時に、今後同じ環境が発生した時に備えた、社会的インフラの整備を進めていかなければならないのです。

あと数か月とかあと数年の我慢の後、またこれまで通りの感染対策のない世界に戻ってしまうことは、恐らくないし、あってはいけないのだと思っています。

寺本名保美

(2020.05.19)



単なる昔話です。

1998年、アジア危機とロシア危機発の市場変動により、実質破綻したヘッジファンドに対し、米国を中心とした各国中央銀行は大量の資金供給を行い金融システムの安定化をはかりました。

金融機関でもない、単なる一ファンドが世界の中央銀行を動かした、希有な事例です。

そのファンドを運用に携わっていた人々は、当時の時代の寵児的な存在であり、破綻する直前まで自信に溢れ、振り返ってみれば身の丈に合わない借入金を抱えていました。

このファンドに資金を貸し付けていた金融機関は、このファンドに資金を貸し付けるだけでなく、このファンドの運用手法や投資先を模倣することで、ファンドの破綻リスクを何重にも負う構造になっていました。

今日発表された巨額投資会社の決算発表をみていて、ふとこんな昔話を思い出しています。

寺本名保美

(2020.05.18)



手負いの獅子

例え今が新型コロナウイルス問題の最中でなかったとしても、トランプ政権の対中制裁が資本市場に及んだ場合、金融市場は大きく動揺します。

この数日のトランプ大統領の過激な発言が市場にそれほど大きなダメージを与えていないのは、大統領選挙前の国内向けリップサービスであろうと思われていることに加え、新型コロナ問題によるダメージ大きすぎたため、その他の材料への反応が鈍くなっていることも一因でしょう。

但し、米国が中国企業を米国の資本市場から本気で締め出し、、それに対し中国が何等かの対抗措置を出すということが現実に起きうる、と市場参加者が考え始めた時、債券も株式もクレジットも不動産も非常に大きな影響を受けることになります。

この世界の非常時に、まさかそのようなことはないと信じていますが、今のトランプ大統領が手負いの獅子のように見えることが、なんとも不気味でしかたありません。

寺本名保美

(2020.05.15)



地政学リスク

未曾有の国難に対峙した時、国外に敵を作ることで政権と国民との一体感を作り出す、というのは古典的な政治手法です。

現在のトランプ政権を見ていると、この古典的手法が、現代の資本主義国家においてもまだ有効である(と思われている)ことに、驚きを覚えます。

一方で、我が国においては、国難というものが、どういうわけか「国家VS国民」という構造になりがちで、コロナという外敵に対し国家と国民に一体感が醸成されることなく、国民の不満のはけ口が国民を守ることができない国家に向かっています。

米国の反応も、日本の反応も、今後新興国を含め、どの国においても起きうる反応で、元来の政権基盤が弱い国であるほど抑制が効かないために、無用な軍事衝突や内乱に繋がりやすいことが懸念されます。

アフターコロナのリスクの一つが、地政学リスクの高まりになる可能性は否定できません。

寺本名保美

(2020.05.14)



カジノの撤退

世界最大のカジノ会社が、日本での統合リゾート事業のライセンス取得を断念する方針であると、Bloombergが報じています。

記事の中では、原因が今回のパンデミックであるとは書かれていませんが、大なり小なり影響はあったとみるべきでしょう。

これは特に日本に限定した話ではなく、海外旅行者を対象としたサービス業が今大きな岐路にあることは間違いなく、そうした状況において、兆円単位での新規投資を行うことを躊躇するのは当然のビジネス判断といえます。

カジノなどなくても十分に観光立国として成り立っている、といえたのはコロナ前の話であって、今となっては世界最大のカジノ会社の撤退が我が国が観光立国という看板の存続を問われているようにも思えます。

日本の地方経済再生計画がここでも大きく揺らいでいます。

寺本名保美

(2020.05.13)



視点の逆転

東京に住んでいれば、自家用車はいらない、と思っていたのですが、今のような環境では、ペーパーゴールド免許が恨めしく、少し状況が落ち着いたら、教習所に行きなおそうかと思っています。

また、スマホ慣れした若者達のPC離れによって、風前の灯火だった個人向けPCも、ここにきて復権の兆しが見えているようです。

今後在宅での仕事が増えることが想定されるなか、年齢関わらずPC触れませんでは、仕事になりません。

自動車にしろPCにしろ、過去の遺物にされかけた間際だったものが、土壇場で逆転することもあります。

コロナ前とコロナ後。様々なところで視点が逆転していきます。

寺本名保美

(2020.05.12)



不動産の価値

商業用不動産の賃料というものは、その不動産を利用した経済活動から生み出される利益に依存します。

また、サービスや生産活動にかかるコストが全て同じであるとするならば、賃料の高低はその不動産の集客量とブランドを付加価値として決定されます。

今回、我々が、世界規模の感染症を経験したことで、商業活動における「場」の価値が大きく変動してしまうリスクを考えています。

年間で半年しか活動できないリスクを加味した集客量。

一時に集まれる最大人数の半減。

そもそも店舗を構えることの付加価値の低下。

客数の減少を客単価の上昇で補えなければ、その不動産の持つ潜在利益は半減します。

賃料が半減すれば、自ずと不動産の評価価格も下落するでしょう。

変わりつつあるとはいえまだまだ不動産資本主義の日本にとって、不動産のバリエーション調整は、非常に大きな潜在リスクです。

寺本名保美

(2020.05.11)



常態化する非日常

「自粛」という一時的な対応が終わり、ここから先は常態としての非接触を前提とした社会活動の設計に向かっての数か月になります。

高温多湿でウイルスが弱くなるということを信じるなら、秋までの4ヵ月が非接触社会構築に残された唯一のチャンスとなります。

新しいサービス形態も登場するでしょうし、残念ながら継続が難しくなる業態もでてくるでしょう。

人件費の分配も変わっていき、これまで低コストと思われたサービスの値段が上がり、高コストと思われたサービスは意外に不要不急であるとみなされるかもしれません。

時間はあまりありません。

身体は在宅で動かせなくても、考えなければならないことは、山ほどありそうです。

寺本名保美

(2020.05.08)



出たとこ勝負

日本を含め、各国で経済活動の再開が始まっています。

感染爆発がピークアウトした安心感からか、トランプ大統領が対中圧力を復活させ、一方の中国はコロナ外交を積極化させるなど、政治的駆け引きも活発化しています。

米中問題を契機に分断を始めていた世界が、地球規模のパンデミックにより、協調体制を取り戻してくれるのではないか、という一時の期待は見事に消え去りました。

人々も、政治も、経済も、正常化に向かって自我を取り戻しつつあるなか、この自我の招く結果が吉と出るか凶とでるかは、時間の経過が教えてくれます。

逆にいうなら、時間の経過しか教えてくれない、文字通りの「出たとこ勝負」の結果待ち。というのが今、我々が置かれた環境です。

金融取引において取って良いリスクは、統計的に予測可能で且つ管理できるリスクです。

出たとこ勝負の結果に依存するリスクは、取ってはいけないリスクの典型です。

だから、例え乗り遅れたとしても、今の経済再開にもどつく市場の反発については、距離を置いて冷静に見ておく必要があると思っています。

寺本名保美

(2020.05.07)



定性的なリスク管理

ファンドのリスク管理において、ファンドマネージャーや運用チームの顔色を見たり、声や態度から出てくる気配を感じたりすることは、とても重要な意味を持っています。

結果が良い場合も、悪い場合も、出てきた数値結果に対し、当事者として納得しているのかしていないのか。
現在の環境が自らの投資戦略にとって心地よいのか悪いのか。

もちろん文章や場合によってはビデオ会議で確認することはできますが、それはあくまでの報告用の姿であって、日常の反応ではありません。

顧客や我々のような外部の評価会社にとってというよりも、社内でのリスク管理が今のようなリモート体制において、こうした日常の動的管理はより重要度をもっています。

定量的なリスク管理だけでは把握できない潜在リスクについて、目を配りながらパフォーマンスを見ていきたいと思っています。

寺本名保美

(2020.05.01)


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