2020年08月の思いつき


政治の季節の地雷

小中学校の教科書をタブレット化する試みは、コロナ禍での遠隔授業があろうがなかろうが、もっと早く実現すべきものだったように思います。

電子書籍にすっかり慣れてしまい、通勤時に電車の中で読む本一冊ですら重くて持ち運ぶ気になれない私のような大人が沢山いる中、どうして子供達がキロ単位になる教科書を毎日運んでいることに、深い疑問を持っています。

そしてこのタブレット化の障害の一つが、通信料金の高さな訳で、次期首相の可能性が高いと言われている菅官房長官が毎日下がれ下がれと呪文を唱えている訳です。

出費の大きい子育て世帯の負担にならないような通信費が、幾らぐらいなのかは私はわかりませんが、恐らく菅長官の頭の中には具体的な数値が既にあるのかもしれません。

呪文で下がるのは通信料金だけではなくて、通信キャリアの株価ももれなく下がる訳で、もしこのまま菅内閣総理大臣が誕生したとすると、通信キャリア各社の受難は、当分続くことになりそうです。

そして通信キャリア各社の受難は、そのまま国内株式市場での高配当や低ボラティリティ特性のマイナス要因に繋がります。

政治の季節の株式市場には、地雷が彼方此方に埋められていて、少々厄介です。

寺本名保美

(2020.08.31)



首相望むこと

FRBが政策目標に雇用の正常化を優先すると明言しました。

今の経済の抱える問題の根幹に正面から向き合う、的を射た結論だと思います。

トランプ大統領の大統領選公約にも、雇用の回復が掲げられています。中国から製造業を全て米国に取り戻す、という方法論の是非は別として、米国の抱える課題についてはFRBの問題意識と共有しているようです。

一方日本の失業率の上昇は、米国よりも緩やかに見えるのは、雇用の仕組みの違いであって、恐らく日本の失業率はこれから上昇スピードを上げていくと思われ、コロナ禍が失業者を生み出す社会的な構造は、日本も米国も共通です。

期せずして安倍首相が退任し、日本の経済金融政策はアベノミクスの次の時代へと移行することになりました。

名目経済成長率の上昇から、雇用の創出へと政策目標を変更するには良い機会だとも言えます。

アベノミクスの継続を謳うだけではない、今の現実に即した政策ビジョンを次期首相には早急に示して欲しいと強く希望しています。

寺本名保美

(2020.08.30)



金融政策の行き詰まり

今年度に入って、株式、債券、クレジット、商品と、各種様々な金融資産が、総じてほとんど上昇しているのに対し、国内債券の投資収益率は順調にコツコツとマイナス幅を広げています。

コロナ禍において、各国の長期金利が低下している中、何故日本の長期金利は上昇しているのかとブロ達に聞けば、皆口を揃えて日銀が金利低下を望んでいないから、と答えます。

では何故未曾有の経済危機において日銀は金利低下を望んでいないかと聞くと、金融機関の収支の改善のためと答えます。

長期金利がマイナス圏になれば、住宅ローンに代表される地方金融機関の貸出金利が更に低下し、地方金融を維持できなく、という理屈はわからないでもありません。

ただその結果、日本の債券市場からボラティリティが枯渇し、市場から期待値が消え、ショック時のリスクバッファーとしてのポテンシャルも失った後に来るのは、国内外の機関投資家からの見切り売りでしょう。

今後国債の増発の可能性もある中、国債の買手が日銀と国内金融機関のみという不健全な市場になってしまうことは、日本の財政政策においても、とても危険なことです。

金融機関の健全性と、市場機能の健全性。
二つを天秤にかけなければならないほど、我が国の金融政策は行き詰まっているということなのでしょうか。

寺本名保美

(2020.08.27)



円債のステータス

下がる時は人一倍下がるのに上がる時は半分しか上がらない。

上がる時は人の半分も上がらないのに下がる時は人並みに下がる。

という日本の市場。これまで株式市場のことだったのですが、どうやら債券市場も、このトレンドの仲間入りをしそうな気配です。

ドルの調達コストが下がり日本からのヘッジコストが劇的に低下したことで、本邦投資家にとっては米国債券投資が行い易くなりました。

裏を返せば。米国の投資家からすると日本の債券に投資する魅力が著しく低下したということになります。

またこれから先。グローバルな国債市場のメインテーマがどこかで財政問題になるとするならば、米欧金利が上がっても日本だけは上がらない、というかつてのアンカー論が今後も通用するかどうかは定かではありません。

日本国債が世界で一番安全な金融資産としての地位を明け渡す時がそろそろ近づいてきているのかもしれません。

寺本名保美

(2020.08.26)



他国を見てから選ぶ

安倍首相の健康問題が再燃したことで、次期首相への思惑が一気に加速しています。

任期満了まで行くとするならば、米国の大統領選挙も終わっているので、それを加味した適任者を選ぶことができそうです。

今の世界の首脳は、トランプ大統領タイプの独断専行型、マクロン大統領タイプの実務型、メルケル首相タイプの調整型、と幾つかのパターンがありそうです。

今のところ米ロ中の3大国が独断専行型で揃ってしまったため、周辺国の首脳にはメルケル首相のような調整型の人材が必要不可欠です。

そういう点から見れば、安倍首相の各国に対しての等距離外交は、ややこしい3大国の首脳間で立ち回るには丁度良かったのかもしれません、

さて次期米国大統領が、老獪なバイデン候補となった場合、世界の首脳間におけるパワーポリティクスも大きく変化するでしょう。

今の時代、日本の首相がどのタイプのリーダーであることが日本の国益に最も寄与するかは国内情勢だけでは判断できなくなっています。

とはいえ、それほど選択肢があるわけでは無いのが、日本の政治の悲しいところではありますが、

寺本名保美

(2020.08.25)



新しい雇用を作る

ドイツでユニバーサルベーシックインカムの実証実験が行われると報じられています。

パンデミックがもたらした深刻な雇用に具体的な解決策が見出せない状況が長引けば、早晩どこの国においても、こうした議論を抑えられなくなるでしょう。

ただでさえ、非接触型社会への転換で、社会構造もビジネスモデルも大きな岐路を迎えている中、更にベーシックインカムの導入を織り込みに行くとなれば、産業界の視界は一層混沌とします。

そうならない為に出来ることは、各企業、各国政府、各々が、雇用の創出に真剣に取り組むことです。

新たな雇用の創出に成功しなければ治安の悪化が顕在化し、ベーシックインカムに象徴されるような更なる財政の拡大を迫られることになります。

本来のベーシックインカムは、政府の行う社会保障政策の代替として現金を支給する、小さな政府を目指すもののはずですが、今の流れで議論されると、単なる財政の大判振る舞いに終わってしまいそうな気がします。

いずれにしても、雇用の拡大を伴わない経済成長は必ずどこかで破綻します。

新しい技術を開発するのと同等の資本とエネルギーを、新しい雇用の創出に振りむけないと、その社会は崩壊します。

寺本名保美

(2020.08.24)



スマートβ戦略のつけ

4月以降の世界の株式市場において、低βや高配当株式のパフォーマンスが歴史的な低迷状況となってしまった原因は、過去数年にわたり拡大してきたスマートβインデックスにあると感じています。

本来は株価動向の結果であるはずのβ特性や配当性向を、その銘柄や業種の所与の特性としてグルーピングし、インデックス商品としてしまったことで、グループに所属する特定の株式の波乱が、そのグループに所属する全ての株式に波及することになりました。

もちろん、巻き添えで下落した株式については、早晩バリエーションは修正されることになるでしょうが、一方でスマートβインデックスの見切り売りは、これからが本番となるとすれば、巻き添え組の修正にはまだ時間がかかるかもしれません。

お手軽で廉価なアクティブファンドとして拡大してきたスマートβ戦略に頼ってきたつけを、投資家全体で払わされているようで、少し不愉快です、

寺本名保美

(2020.08.23)



安全資産?

金 の上昇が続いています。
金が買われていることの解説として、経済の不透明感の現れであるという説明を見聞きしますが、私には過剰流動性相場の典型的な現象にしか見えません。

何故買われているかを探ることは、その資産がどのような環境になったら売られるがを想定するにはとても重要なことで、今の金がリスクヘッジとして買われているのか、リスク資産として買われているのかによって、金融市場の反転時の価格動向は正反対の反応となるでしょう。

2018年の年頭に金融市場がピークを付ける直前、伝統的な金融資産の逃避先であったはずのビットコインが株式市場共々急騰したことがありました。

結果、その後の株式の急落時にビットコインは他のいずれの金融資産を牽引するかのような大暴落を演じたことを、今の金相場を見ていると思い出してしまいます。

金に対する過剰な安全神話を信じすぎることは、そろそろ危険かもしれません。

寺本名保美

(2020.08.20)



これからの五箇条

バブル相場の鉄則。

1.追いかけない。
2.逆らわない。
3.儲け損ねた金額より儲かった金額を数える。
4.他人と比べない。
5.急落後の値頃感には手を出さない。

以上

寺本名保美

(2020.08.19)



試行錯誤

夏季休暇は先週末で終わり、昨日からこのコラムも再開するはずが、HPのサーバー障害が発生し一日遅れのご挨拶になりました。

「お知らせ」欄にも記載させていただきましたが、事務所を取り巻く地域環境がやや悪化したため、緊急事態宣言時と同様の対応に戻すことになりました。

会議室にお客様に来ていただき、運用機関の皆様とWEBでミーティングをする「仮想会議室」も、お客様の評判も上々で新しい形が見えてきたところだったのですが、こうした試みも暫く中断です。

社会環境が刻刻と変化する中で、業務の形も中々固定化することができません。

社会生活が極めて不安定しているなか、金融市場だけは階段を上り続けていてくれることは、経済全体でみれば極めて有難いことです。市場が時間を稼いでくれているうちに各国も各企業も各個人も各々で今後の進むべき方向性を見出さなければなりません。

弊社も含め、試行錯誤はまだまだ続きそうです。

寺本名保美

(2020.08.18)



酷暑お見舞い申し上げます。

8月12日より14日まで、弊社夏季休暇とさせていただきます。

当コラムも今週はお休みです。

コロナ禍に加え、酷暑の日々となっています。

皆様、くれぐれも、ご自愛下さいませ。

少しなりとも視界が開けた連休明けを祈りつつ。

寺本名保美

(2020.08.11)



見て見ぬ振り?

米中問題が、金融取引にまで拡大する気配を見せる中、金融市場がいつまでこの問題を無視し続けることができるでしょうか。

今のところ、コロナの感染拡大については大規模金融緩和や財政政策が緩衝材になっていますが、米中摩擦の拡大まではカバーされていないように見えます。

金融市場がこの問題に深刻に向かい合っていないのは、政治的に成熟した米中による出来レースだとタカを括っているのか、それとも今の過剰流動性があれば多少のショックは吸収できると思っているのか、はたまた大統領選が終われば大統領が誰になろうと、一度リセットされると思っているのか。

この問題、想定外に大きくなりそうな嫌な予感がしています。

寺本名保美

(2020.08.10)



コロナ一色

今回の四半期報告。コロナとテック銘柄以外の話は一切出てきませんでした。

米中摩擦の話も日本のオリンピック延期の話も米国大統領選の話も本来であれば株式市場に大きな影響与えるような話題について全く触れられることがありません。

コロナの話が大きすぎて他のことに頭が回らないのか、金融緩和が大きすぎてリスクシナリオを考える余地がないのか。

せっかく回復している市場に水を差すようなことをもう考えたくないのか。

いずれにしてもまだまだ織り込んでいないリスクが市場にはたくさんあるんだと言うことを実感する四半期報告会です。

寺本名保美

(2020.08.06)



面白そうでもダメ

今の米国株市場の過熱感をITバブル期と比較すると、おおよそ7合目近辺でしょうか。

あとは、今のFANG+Mに乗り遅れた人達が慌てて飛び乗ると、バブルが完成します。

ここから先付き合ってはいけません。

寺本名保美

(2020.08.05)



バブルの様相

米国の株式市場の中で、様々な歪みが見られるようになってきました。

一部のネット銘柄への集中。ファクター間の不均衡。PERの上昇。

弊社が計測するGDPをベースとした理論値との乖離も含めて、様々な数値が99年のドットコムバブル期の歪みに近づいてきています。

99年のドットコムバブルが崩壊したきっかけは利上げでしたが、今回は利上げが起こる可能性はかなり低いでしょう。
ならば、金融の引き締めがない限り、バブル崩壊は起きないのかといえば、ここまで歪みが拡大してまうと大きな材料がなくてもちょっとしたきっかけで崩壊が起きる可能性も否定できません。

日本でも日経平均とTOPIXとの乖離が異常に拡大しています。

パンパンに膨らんだ風船を破裂させる針はどこに潜んでいるのでしょう。

寺本名保美

(2020.08.04)



WITH AIの時代?

感染防止とスマホアプリというと、接触確認や行動記録などをイメージしますが、WSJにウェラブル端末が感染を検知できる可能性について興味深い記事が掲載されていました。

時計型や指輪型の身に付けるタイプの端末で体温や脈拍等のバイタル情報を測定すると、AIが新型コロナ感染の特異な傾向と比較して、感染の可能性について知らせてくれるようになるかもしれない、とのこと。

ウェラブル端末には元々健康状態の変化をモニタリングする機能があるわけで、言われてみれば当然そういった使い方はあり得るわけです。

そのうち、列ができるのは、病院ではなく、ウェラブル端末を売っている家電量販店やAppleストアになるのかもしれません。

WITHコロナがWITH AIの時代になる日は意外に近そうな気がしてきました。

寺本名保美

(2020.08.03)



米国は買いなのか売りなのか

現職大統領が、大統領選挙の延期を主張するという、彼方の独裁国家のような不規則発言に、通貨市場では米国の信任が揺らぎ、何があっても好決算を叩き出す米国ネット関連企業の安定性に、株式市場ではGAFA各社への信任が一層強まる展開となりました。

米国では金融市場と経済のデカップリングに加え、政府と企業との信頼感もまた乖離を広げています。

政治の不確実性をカバーしてきたプラットフォーマーに政治が過度に干渉するようになれば、政治の不確実性はウィルスのように株式市場にも伝播していくことになるでしょう。

米国は買いなのか売りなのか。

微妙な均衡を大統領自らが打ち壊すようなことにならなければいいのですが。

寺本名保美

(2020.08.02)


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