ボラティリティ相場

世界的なゼロ金利も、一方方向の利上げも終わり、金融市場の要である金利市場にボラティリティが復活したことで、株式も為替も商品も、金融市場全体のボラティリティが高まっています。

市場全体のボラティリティが復活すれば、ボラティリティそのものを投資対象とする戦略も増えてくるので、短期的な市場変動はさらに大きくなって行きます。

ドル円相場はその最たるもので、これからの金融投資も企業投資も、通貨市場の影響を過度に受けないための設計をすることが、重要となっていきます。

ゴールデンウイーク後半。市場参加者が少ない中で、ボラティリティを稼ぐ売買が活発化したとしても、とりあえずは一喜一憂しないことが鉄則です。

寺本名保美

(2024.04.30)



天恵の終わり

足元の株式市場における価格調整が、中東情勢だけを原因としたものとは思いませんが、今後こうしたバリエーション調整のきっかけとして地政学リスクが話題になるケースは増えてくるでしょう。

リーマンショック後の金融市場では、適温相場(ゴルディロックス)という言葉が頻繁に使われてきました。

世界的な低金利と低インフレは、世界経済を広く薄く長く潤し、高揚感はないものの国内外の所得格差は相対的に縮小し、結果として国内外の治安状況も比較的穏やかに推移してきました。

こうした金融経済の安定と社会治安情勢の安定は、コインの裏表のようにお互いに影響を与え合ってきたものと言えるでしょう。そして今このコインの両面が呼応するかのように、安定性を失いつつあります。

金融経済環境が適温相場から過熱相場へと転換したことで、世界経済には不安定な高揚感が蔓延し、国内外の所得格差は劇的に拡大し、結果として治安状況の不確実性が高まっています。

治安状況の不確実性は社会の維持コストを引上げ、沈静化しつつあったインフレに次の薪をくべるため、インフレ動向が元の鞘に収まることはないでしょう。

企業業績も個人消費も改善していくものの、地政学リスクや治安リスクは増大し、株式市場は業績で買われイベントリスクで売られるというボラティリティの高い環境が常態化していくのだと思っています。

ゴルディロックスというものは、世界的な金融危機で傷んだ世界経済を回復させるための天恵のようなもので、それが常態化することなどありえないのです。

金融経済環境だけでなく地政学にもボラティリティが復活したと割り切って、一喜一憂しないポートフォリオ戦略を改めて考えていきませんか。

寺本名保美

(2024.04.22)



いつの間にか決まっている

岸田首相の米国議会演説は、これからの日本外交の座標軸を国内外に宣言するものとなりました。

対外的な演説としては、とてもよくできた演説だったと思う一方で、ここまで自国民の心に響かない首相演説も珍しいかもしれないとも思いました。

外交政策としての自国の立ち位置を明確に示したことについては、外交的手法としても賛否もあるでしょう。それでもここまで言い切らざるを得ない程の緊迫感が、今の国際社会にはあるということです。

演説が国内世論に響かないのは、この演説の前提となる緊迫感を国内で共有するというプロセスが現政権において完全に欠如しているからです。これは外交政策に限ったものではなく、岸田政権のあらゆる政策に共通した特徴ではあるものの、さすがに自分の国がどこに行こうとしているのかを、他国への説明で初めて聞くというのは
如何なものかと思います。

欧州と共に第三極を模索する、という選択肢もなかったわけではないような気もするのですが、この演説によってそういう可能性も断ち切ったことになるのでしょう。

その他多くの国会議員も、メディアも、世論も、スキャンダルばかりを追っかけている間に、とても大きな方向性が粛々と決まっていきます。

寺本名保美

(2024.04.15)



単なる引っ越し需要?

今、世界中で新たな地政バランスを前提としたサプライチェーンの再構築が進んでいます。

この再構築による設備投資需要の拡大が、世界景気の先行きを明るく照らし、株式市場は下がらないインフレや高止まる金利への懸念を一旦忘れて、ノーランディングシナリオへ舵を切りつつあります。

ただ少し考えればわかることではありますが、サプライチェーンの再構築そのものは、スクラップアンドビルドなわけで、中国で製造していたものを日本や米国に移動させ、米国やメキシコで製造していたものを中国に持ち帰ってきたところで、全体量が変わるわけではありません。

もちろん生成AIのような新しいインフラ技術が急速に発展したことで、新規需要が生まれているという側面があることは理解していますが、今の需要のどこまでが純粋な真水需要でどこまでが拠点移転に伴う引っ越し需要に過ぎないのかを見極めることは困難です。

金融でも消費でもなく、製造業中心の景気拡大という、1980年代以降の世界経済が初めて経験するバラ色のシナリオが、どこまで持続可能なものなのか、そろそろ疑いを持った視点が必要になるかもしれません。

寺本名保美

(2024.04.10)



体感を確認する

今日の午前中も、九州地方でやや大きな地震がありました。

今年になってから地震が多い気がする。とか、否、新年の能登半島地震の余震のために多く感じるだけ。とか、地震の話題には事欠かない日々となっています。

ということで気象庁のデータベースを確認すると、2024年になってから震度4以上の地震は19地域で85回。2023年から2019年までを見ると20~19地域で40~54回という年間回数なので、やはりこの3か月のピッチは回数は多く、発生地域の展開も広そうだということが解ります。

こうした体感を数字で確認する作業は、金融市場で仕事をするにあたっては大事な基本動作です。数値を確認することで、今まで気付かなかった視点が開けることもあります。ネット上で公開されているデータベースは多岐多様で、大概の疑問は公開データで確認することができます。

地震がどうなるか、を書きたかったわけではなくて、違和感があった数値に当たる、という基本姿勢のお話をしたかっただけです。


寺本名保美

(2024.04.08)



リスク耐性

マクロ環境に不安を抱えながらスタートし、望外の収益を獲得した令和5年が終わり、マクロ環境は期待しつつも想定外の波乱に怯える令和6年が始まりました。

何が起きると言っているわけではないのですが、長く続き過ぎているリスクオン環境が、市場の何処かに思いの他大きな歪みを形成していないかと考えてしまいます。

市場の価格形成の多くが既にAI判断に依存していることで、実際に市場で取られてるリスクの所在が見え難くなっていることや、投資の回転率が速くなっていることも、市場全体のリスク耐性を弱めています。

好調なマクロ環境に牽引されて、まずまずの一年となることがメインシナリオではあるのですが。

寺本名保美

(2024.04.02)



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